October 01, 2009

いやはや。
芸術的な三振だった。

2009年9月30日 7回 ハラデイ、オルティスを3球三振

Toronto vs. Boston - September 30, 2009 | MLB.com: Gameday
上の画像は、さきほどボストンの大敗に終わったトロント対ボストンのゲームで、7回に大投手ロイ・ハラデイが、DHデビッド・オルティースを3球三振にとった場面である。
このゲームで大投手ハラデイは、ポストシーズン進出が決まって2軍を出してきたボストンとはいえ、わずか100球で完封してしまったわけだが、ストライクはまったくセオリーどおりの68球(つまり、ピッタリ3球に2球がストライク)。

この三振を見るだけで、「少ない球数で相手を討ち取る技術にかけてはメジャー屈指の大投手」として名を馳せるハラデイの配球術が、いかに素晴らしく、レベルが高いか、わかろうというもの。

ここまでくると、もう一種の配球芸術ですらある。



初球、チェンジアップをアウター・ハーフに
ストライク


ここでいうハーフというのは、ハーフハイト、つまり「中ほどの高さ」ということ。
ピッチング、というと、コネ捕手城島(笑)ではないが、なんでもかんでも「コーナーいっぱい」に決めるものと思っている馬鹿がいる。あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて話にならない。
ハーフハイト(中間の高さの球)をメインに使った配球パターンくらい、アメリカの初歩の教科書といわず、どこにでも普通に書かれている(例:WebBall.com - Pitch Sequence & Selection)わけだが、コネ捕手さんは、いつまでたっても「ストライクゾーンのコーナーいっぱいにストレートをズバっと決める」みたいな、日本の高校野球みたいなことばかり考えている。(コネ捕手の追従者の馬鹿なライター、新聞記者、ファンも同様だ。だが、いまどき日本の高校野球でもそんな配球ばかりしていたら勝てない。下記の日米比較リンク等を参照)


日米の配球に対する考え方の違いの例
下記のリンクをまとめて言えば、アメリカで最初に教える基本配球パターンは「インコースにストレート、アウトコースに変化球」。また、決め球に変化球が使われることも多い。
ひるがえって、日本の野球では、「アウトコースのストレートがピッチングの基本であり、勝負球でもある」と考えることが多い。(もちろん、その「日本では通用するストレート」がメジャーに来たら通用しないことが後からわかるからこそ、メジャーに来る日本の投手は誰も彼も苦労する。)

(1)コースと球種
アメリカの配球についての記事:6つの初歩の配球パターン
「基本はインコースにストレート、アウトコースに変化球」
WebBall.com - Pitch Sequence & Selection
日本での配球での考え方の例
「配球の基本はアウトコースのストレート」という昔ながらの考え
配球の基本 | 今関勝の野球はやっぱり面白い | スポーツナビ+

(2)特定カウントで使う球種
日本野球での配球の違いに関する発言例:阪神ブラゼル
「昨年はメジャー流の考え方が頭に染み付いていて、日本の配球になじめなかった。例えば、カウント0―2や0―3になれば、メジャーでは間違いなく直球が来るので狙い球が絞りやすい。でも、日本はフォークなどの変化球を投げてくる。しかも、日本の左腕はカーブやスライダーを投げる投手が多い。右に打球を引っ張りたいボクには合わなかった。」
ゲンダイネット

日本野球での配球の違いに関する発言例2:阪神メンチ
「アメリカと配球が逆だ。アメリカは基本的には変化球を決め球で使うことが多い。でも日本は初球から変化球が来て、ストレートを決め球にする。
阪神・メンチ「配球分かってきた」…きょう中日戦 ― スポニチ Sponichi Annex 大阪

高校野球での配球についての記事:
あまりにも極端な配球! 日本文理が仕掛けていた大胆な策。[詳説日本野球研究] - 高校野球コラム - Number Web - ナンバー


2球目、カットボールをインナー・ハーフに
2ストライク


さて、ハラデイの配球芸術の話に戻ろう。
2球目はカットボールをインコースに投げて、速度とコースを変えた。
だが、2球目で最も大事なことは、1球目同様に「ハーフハイト」、つまり「中ほどの高さ」に決まったことだ。
これはもちろん偶然そうなったのではなく、3球目への「布石」だ。ハーフハイトへの投球は、「意図的」にそうしているのであり、コントロールのいい投手でなければ投げられない。
初球にハーフハイトの球で配球を開始するパターンの場合、多くは2球目を低め一杯に決めたりはしない。むしろ、1球目、2球目と続けてハーフハイトに決めて、3球目に(沈む変化球などで)変化をつけることが多い。

もしもこの2球目が、日本のキャッチャーがよくやりたがるように「インロー、内角低め一杯に決まるストレート」だったら、3球目はまるで違った球にしないといけなくなるだろう。
また、たまたま投手ハラデイがコントロールをミスして、2球目のカットボールが「うっかり低め一杯にに決まってしまった」場合も、3球目は、別の球になっていた可能性があるし、3球目を勝負球にしなかった可能性もある。
それくらい、2球目の「ハーフハイト」の高さは大事なのである。


3球目、カーブをインローに
空振り三振


3球目は、インコースの低めいっぱいに、カーブ。打者オルティースのバットが空を切って、見事に3球三振。
この低めへの3球目のカーブをみればこそ、2球目で投げるカットボールは、かえって「低め一杯に決めるべきではない」ということはわかってもらえるはずだ。
3球目をみれば、1、2球目を「中ほどの高さ」にしていること、特に「2球目で低めいっぱいをついてはならないこと」の大きな意味がわかるだろう。「勝負は2球目でおおよそついている」のである。だから3球目が生きてくる。

もし2球目で「低め一杯のストレート」を投げていれば、どうだろう。もし3球目にこのカーブを投げていたとしても、2球目と3球目で球道、つまりマウンドからホームプレートまでの中間のボールの軌道が、まったく違う球が同じコースに来る以上、バッター側にしてみれば、3球目を見切るのはむつかしくない。バットを振ってこない可能性が高い。

同じ球道に、まずストレート系(この場合のハラデイはカットボール)を投げておいて、次にカーブを投げるのは、アメリカでたいへんによく研究されているテクニックである。ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(4)「低め」とかいう迷信 研究例:カーブを有効にする「高めのストレート」
2球目に低めいっぱいのストレートを投げてしまっては、打者に3球目の変化球を見切られやすく、カーブを投げる効果がなくなってしまう。

「高めのストレートを使って打者を凡退させるテクニック」もある
例:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:最終テキサス戦にみるロブ・ジョンソンの「引き出し」の豊かさ (1)初球に高めストレートから入る)その場合は、入りの球からして、別の球になる。
ハラデイがここで使ったのは「ハーフハイトの球を有効に使う配球パターン」であって、「高めの球からわざと入るパターン」ではない。ハーフハイトにきっちり決めるコントロール、変化球のキレ、配球パターン、打者の好みやクセに対する対応。あらゆる点でハラデイの素晴らしい投球術である。



ちなみに、インコースとアウトコースにボールを交互に投げわけた先日のコネ捕手城島の「あまりにも不細工な、醜い配球」を、比較のために挙げておく。アウトコースとインコースにストレートを投げわけただけ(爆笑)こういうのはEast-west pitchingとは、とても呼べない(笑)

ハラデイの芸術と、コネ捕手、両者を比べてみれば、コネ捕手のリードぶりにいかに鮮やかさや芸術性がなく、脳の中身がいかに不細工で知恵がないか、わかると思う(笑)


2009年9月27日 8回 バーノン・ウェルズ 三振2009年9月27日 8回
打者バーノン・ウェルズ


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