October 07, 2009

前の記事(2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。)で、近似曲線を使ってヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を考えてみた。
かつてはストレートばかり投げたがったり、三振をやたらと取りたがったりしたヘルナンデスだが、ロブ・ジョンソンという最高のパートナーをみつけた今シーズンは、ひとことでいって「動じないピッチング」ができるようになったことが、データからもわかった。

どうなんだろう、
他の投手でも同じようなことは言えるのか?
四球数が変化をおこすストライク率の臨界数値は変わらないものなのか。

ちょっとイタズラ心が沸いて、今シーズン絶好調だったヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリーの抜群の安定感を、たいへん松坂君には恐縮だが、四球で崩れることが多いといわれ続けているボストンの松坂を引き合いにして、比較してみることにした。
下記のグラフで、黒い近似直線がヘルナンデス赤い近似曲線が松坂、である。(「近似曲線」とは何か、については、前の記事を参照)

ヘルナンデスと松坂 「ストライク率・四球数」近似曲線の違いクリックすると拡大します
©2009 damejima


なぜ、ヘルナンデスが直線で、松坂が曲線なのか。

見てもらうとわかるとおり、投手によって特性はまったく違っていた。
まず、ヘルナンデスだが、彼の近似曲線を「直線」で表現してあるのには、ハッキリした理由がある。ヘルナンデスの近似曲線が、2次式でも4次式でもたいした変化がなく、ほぼ直線になってしまうのである。
これは、彼のストライク率と四球数の関係が非常に単純で強靭な関係にあることを推測させる。単純に言えば、「ストライクが増えれば、非常に単純に正比例して四球が減る(逆に言えば、ボールが増えれば単純に四球が増える)」という関係にある、ということだ。
だから四球の計算式も、こんな簡単な計算式でほぼあてはまってしまう。
(四球数) = -0.2332 ×(ストライク率) + 17.024
calculating formula made by damejima
©2009 damejima


それに対し、ボストンの松坂の場合は、コトはまったく簡単ではない。
Daisuke Matsuzaka 2009 Pitching Gamelogs - Baseball-Reference.com
近似曲線の形は、設定する関数の次元を上げていくほど、複雑な形状に変わっていく。だいたい5次式くらいの表現が、穏当な意味で実態にあてはまる感じがしたが、その計算式は、エクセルのいうところによれば、こんな複雑な式になるらしい。
とても複雑すぎて表示が手に負えないから画像にしておく。
松坂用の計算式
calculating formula made by damejima
©2009 damejima


ともかく松坂の場合、ヘルナンデスとの比較でいえることは、
(1)ストライク率が65%を越えると四球が急減
(2)逆に、65%を切ると、四球が急速に増える


なぜ松坂にこういう「ストライク率によって、ピッチングの状態が急激に変わる手のひら返し的な現象」が起きるのかは、正直、理由はよくわからない。
おそらく世間で言う「よい松坂」とは(1)の状態を指し、「悪い松坂」は(2)の状態を指しているのだろう。いずれにしても好不調の波が非常に激しく出るタイプなのは間違いない。

ただ、問題はこのデータから見えないところにある。
松坂のストライク率が65%を越えると急激に四球を出さなくなるといっても、そういう「やたらとストライクをとったゲーム」で果たして松坂の自責点が少なくなっているとはいえないからである。
例1)6月7日 テキサス戦 ストライク率69.6%
   5回2/3 自責点5 被安打10 四球なし
例2)6月13日 フィリーズ戦 ストライク率67.0%
   4回 自責点4 被安打7 被ホームラン2 四球1
Daisuke Matsuzaka Stats, News, Photos - Boston Red Sox - ESPN

これだけストライクが増えると急激に四球が急に少なくなる投手の場合、四球をほとんど出さない快投をみせたという可能性より、むしろ、例えばカウントを悪くしてから四球を出すのでなく、ストライクをとりにいってホームランをガツンと打たれている可能性も考えなければならない。
実際、松坂にはそういうゲーム例は多く、簡単なデータからではわからない、なんともいいようのないピッチングの解析しにくさ、複雑さがある。


この点、今シーズンのヘルナンデスの場合は、松坂のような複雑な事態はまったくない。ストライクが増えれば自然と三振が増え、相手打線は沈黙する。ただそれだけ。シンプルな話だ。
好不調の波がほとんどなく、悪いときでも勝てる。
このことが、今年のア・リーグ最多勝につながった。あきらかにこれは「ロブ・ジョンソン効果」である。



ちょっと抽象的になってしまった。具体例を一つだけ示しておこう。
四球数がちょうど3になるストライク率は、縦軸の3の部分を横に見ていけばいいのだが、ヘルナンデスがほぼ60%くらいなのに対し、松坂は62%から63%くらいになる。
つまり、松坂はストライク率がほんのちょっと悪くなるだけで、四球が増え、ピッチングが乱れてくる。
一方、ヘルナンデスは、松坂より低いストライク率のゲームでも、四球を出さない。それだけ、ヘルナンデスのほうが粘れて、ドッシリ構えたピッチングができているはず、ということになる。これが「ロブ・ジョンソン効果」だ。



今年のヘルナンデスは6月のア・リーグ月間最優秀投手初受賞にはじまり、オールスター初選出、ア・リーグ最多勝投手が決定、これに、まだ確定してはいないが、9月の最優秀投手とサイ・ヤング賞が加われば、もう何も言うことはない素晴らしいシーズンになる。
Players of the Month | MLB.com: News

こうした安定感のあるシーズンになった理由は、この近似曲線が示すとおり、調子の良いときも悪いときも大きな波を起こさず、淡々とシーズンを送ってきたことが最も寄与していると思う。

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