October 13, 2009

ちょっと時間があいてしまったが、ヘルナンデスとロブ・ジョンソンの「サイ・ヤング バッテリー」が19勝目を飾った最終テキサス戦のことを書いてみる。
Texas vs. Seattle - October 4, 2009 | MLB.com: Gameday


このゲームについては、すでに初出の記事で「高めの球を効果的に使った好リード」と、明確に書いておいた。もちろん、ちゃんと理由があってのことだ。
2009年10月4日、ロブ・ジョンソン、高めの球を効果的に使った好リードや8回の刺殺などでヘルナンデスに5連勝となる19勝目、ついにア・リーグ最多勝投手達成!!

ロブ・ジョンソンの今シーズンの英雄的な勝率の高さについては、馬鹿な城島オタや、データも無しに「気分」でモノを言ったり書いたりする評論家やライター、あまりバッテリーワークの細部を見ずにモノを言うアホウが、雁首そろえ、しかもジェラシー丸出しにして(笑)、「勝てるヘルナンデスを担当しているんだから、勝率が高くて当たり前」みたいな、理にあわないことを言う場面を何度となく見せてもらって、いつも腹を抱えて笑わせてもらっていたものだ。こんな馬鹿丸出しの話はない。
ヘルナンデスを担当するだけでサイ・ヤング賞がとれるなら、コネ捕手城島だって去年まで3年連続でサイ・ヤング賞とはいわないまでも、ヘルナンデスやウオッシュバーンに月間最優秀投手くらい受賞させていなければおかしいわけで、理屈にあわない。
いい大人が子供でもわかるヒガミをクチにして得意げになっていては、恥をかくだけだ。

今シーズンのロブ・ジョンソンとヘルナンデスのバッテリーについては、何度も記事を書いたが、思うのは、「彼らはすべてのゲームで成功してきたわけではない」ということだ。
ときには、ストレートにキレがないために、なかなかストライクがとれないゲームもあった。また、初回から相手チームにヘルナンデスの配球の基本であるストレートに狙いを絞りこまれ、対応に苦しんだゲームもあった。特に8月は、対戦相手が思い切って狙い球を絞るゲーム運びをしてきたケースが続き、相手打線の狙いをはぐらかすのに苦労したものだ。
だが、たとえ対戦相手から研究され、スカウティングされようと、それを乗り越え、相手を研究し返し、苦しいゲームを乗り切ったときに、はじめて、「ア・リーグ最多勝」「月間最優秀投手2回」「サイ・ヤング賞有力候補」というような、栄冠が得られるものだ。

名誉がなんの苦労もなく手に入るわけはない。
勘違いしてもらっては困る。



まぁシーズンも終わったことだし、そんな苦労の多かったロブ・ジョンソンにとって、名誉あるシーズンの締めくくり、集大成になった最終テキサス戦をサンプルに、今シーズンのバッテリーとしての工夫ぶりや、ロブ・ジョンソンの「引き出し」の多さについてのメモを書きとめておこうと思う。


このテキサス最終戦で、ヘルナンデスが対戦した打者は25人。
ゲームを見ていても「高めの球をうまく使っている」と感じたわけだが、後で調べてみると、ヘルナンデスが「初球に高めのボールを投げた打者」が9人ほどいる。対戦したバッターの3分の1程度には、だいたい同じ球を高めに投げていることになる。
この「3分の1」、というのが、いかにもロブ・ジョンソンらしさである。これが2分の1になって、相手に読まれてはいけないのである。

2回 ティーガーデン 三振
2回 キンズラー   レフトフライ
3回 ジェントリー  サードゴロ
3回 ジャーマン   ライトフライ
4回 マーフィー   レフトライナー 左打者
4回 ブレイロック  三振 左打者
5回 ジェントリー  ショートゴロ
7回 ブレイロック  四球 左打者
7回 ティーガーデン サードゴロ
(7回 ジェントリー レフトライナー 投手メッセンジャー)

初球、右打者には(1人をのぞいて)「インハイ」、左打者には「アウトハイ」に投げている。球種はほとんどがストレート。
要するに、投手ヘルナンデス側からみれば、「9人に、初球をまったく同じコースに投げた」ということだ。投手にしてみれば、同じコースに投げればいいわけで、たいへん投げやすいはずで、余計な気を使う必要がなく、精神的な疲労感が軽減できる。


なぜ、これら9人のバッターに「高めの球から入ったか」といえば、理由は簡単だ。
テキサス打線の大半が「高めの球、特にインハイが苦手だから」だ。

だからこそ、これらのバッターはのべ9人が9人とも、ヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリーの「高めの初球」をヒットすることはできなかった。4人がストライクを見逃している。

初球の高めの球を打てないテキサス打線
2回 ティーガーデン ボール
2回 キンズラー   見逃しストライク
3回 ジェントリー  見逃しストライク
3回 ジャーマン   見逃しストライク
4回 マーフィー   空振り
4回 ブレイロック  見逃しストライク
5回 ジェントリー  ファウル
7回 ブレイロック  ボール
7回 ティーガーデン ボール

FOX SportsのMLBページでは、Hot Zoneといって、打者のコース別の打率を、上下左右に9分割したコース別に公開してくれている。
それをみると、テキサスの打者はかなりの数、というか、大半の打者が「高め」を苦手にしていることがわかる。あの巧打で知られる右打者キンズラーでさえ、インハイは苦手なのだ。

ボーボン インハイとアウトローが苦手
Julio Borbon, Center Field, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
マーフィー 典型的にハイボールヒッター
David Murphy, Left Field, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ブレイロック  インハイとインローが苦手
Hank Blalock, Designated Hitter, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
キンズラー インハイとアウターハーフが苦手
Ian Kinsler, Second Base, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ティーガーデン インハイが苦手
Taylor Teagarden, Catcher, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ジェントリー アウトコース低めしか打てない
Craig Gentry, Center Field, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ジャーマン 高めがまったくダメ。逆に低め、インコースは強い
Esteban German, Second Base, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN

では、
Hot Zoneの示すような「データ的に打率の低いコースに投げてさえいれば打たれない」のか? 打者全員に「初球は打率の低いコースを投げていれば、初球だけは打たれないですむ」のか?

いやいや。そんなわけがない。
それでは打者に配球を読まれてしまう。読まれたら終わりだ。だから「3分の1」の打者にしか、「初球 高めストレート」を使わない。

それに、インハイの打率が低いからといって、それが本当に苦手コースかどうかは正確にはわからない、ということもある。インハイに投げてくる投手が少なかったとか、インハイのサンプル数が少ないだけ、という可能性だってある。



プロの打者というものは、たとえそれが苦手なコースや球種のボールであっても、あらかじめ「来る」とわかっていれば打ててしまう。まして、160キロの速球であろうと、超高速のブレる球、ナックルであろうと、どんな球でも打ちこなしてしまうのがメジャーだ。

余談になるが、どうも「ボールが投手の指を離れ、ボールがホームプレートに到達するまでのリーチ時間」と、「通常の人間の反射スピード」を単純に比較すると、「ボールのスピードや変化のほうが早すぎて、とても打てるはずはない」らしい。
では、なぜプロのバッターがバットにボールを捉えられるのかといえば、トレーニングによって反射スピード(「カラダが反応する」というやつ)を上げている以外に、異常なほどの天性の動体視力、投手のフォームのクセに対する「読み」、配球から次の球種やコースを予測する「読み」など、さまざまな能力がからむことで、それではじめて「打てる」ということらしい。


「初球にテキサス打線の苦手な高め」はいいが、
2球目だって問題だ。

以前に「メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート」というシリーズで紹介した「メジャー捕手と城島の『対角パターン』の正反対ともいえる違い」を思い出してもらいたい。
もしこれがコネ捕手城島なら、「インハイにストレート」を投げたからには、次の球は「アウトコース低めいっぱいの変化球」、とくにスライダーを投げそうなものだ。
城島のよく使う「対角パターン」というやつだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート

だが、しかし、今回とりあげた9人の打者に、ロブ・ジョンソン、ヘルナンデスのバッテリーは、一度も「2球目に、アウトコース低めコーナーいっぱいにスライダーを投げる」ような、無駄に力が入って神経質なだけで、労力のかかる無駄なことをしていない。

たしかに初球に高めを投げた9人のうち、2球目に変化球を投げるケースは半数ほどある。だが、どのケースでも2球目に投げたのは「真ん中低め」(数人は「真ん中」に投げてしまっているが、これはおそらくコントロールミスの可能性が高いだろう)であって、カーブ、スライダー、チェンジアップを投げわけている。もちろん、「真ん中低め」を決め球に使うのは、メジャーの配球のパターンのひとつである。
この結果、何人かの打者は2球目で打ちとっている。また、こうした組み立てをしたのは、2回から5回と、7回の5イニングだけで、1回と6回は組み立てをまったく変えている。

要は、ロブ・ジョンソンとヘルナンデスは「高めから入る組み立て」においては、「2球目で打ち取れるものなら打ち取って、さっさとイニングをすませたい」のであって、ひとりに6球も7球も使って無理矢理三振をとりたいと最初から考えて、意味不明な苦労をみずから背負い込んで投げているわけではないということ。
そもそも「2球目に素晴らしい変化球をアウトコースコーナーいっぱい、いっぱいに使って、絶対に打者のバットを振らせない、きわどいピッチング」をしなければならない必要性など、どこにもない。
気楽にやればいいいのだ。それが、2009年5月にアーズマの言った「サンデー・フェリックス」だ。

カテゴリー.:「サンデー・フェリックス」byアーズマ

2009年5月24日、デイビッド・アーズマが「ヘルナンデスがロブ・ジョンソンと組むゲームと、城島と組むゲームの大きな違い」を初めて証言した。

一応いっておくと、ロブ・ジョンソンバッテリーに「三振を最初から獲りにいく配球戦略」がないのではない。実際、このゲームの6回には、突然、「低めから入る配球」に切り替えて、テキサス打線をズバズバと3者三振に切ってとっている。

そのことについては、また後のほうで書く。







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