October 28, 2009

地方中枢都市であるカンザスシティにはプロスポーツもいくつかあり、MLBのロイヤルズ以外に、NFLではAFC西地区所属のチーフス (Kansas City Chiefs) があり、メジャーリーグサッカーのカンザスシティ・ウィザーズ(Kansas City Wizards)もある。
そのスポーツの大好きなカンザスのスポーツを扱うサイトKansascity City Star電子版Upon Further Reviewが、今年のサイ・ヤング賞を占った連載記事を載せている。
Greinke vs Hernandez: My Vote | Upon Further Review
Submitted by Martin Manley on October 9, 2009 - 3:43am.

元日本ハムの監督ヒルマン率いるカンザスシティ・ロイヤルズは、今シーズンのサイ・ヤング賞候補グレインキーの所属球団。このサイトでは今年のサイ・ヤング賞について、最有力候補のヘルナンデスとグレインキー以外にも、ヤンキースのサバシアなども含めていろいろと候補たちのデータを考慮した上で、「どうみても今年のサイ・ヤング賞はヘルナンデスとグレインキーの一騎打ちだろう」と熱弁をふるっている。


この記事をとりあげてみたのは、アメリカ人がプレーヤーの残す「数字」、つまり成績を評価するのに、どういう角度から見ているか、という点が多少なりともわかるからだ。

例えば、ヤンキースのサバシアについては「データでヘルナンデスと比べれば、サバシアにサイ・ヤング賞はありえないこと」と断定してるが、比較に使うデータは、例として次のような項目があがっている。
たしかに日本でも最近は、OBP(出塁率)やSLG(長打率)などもだいぶ気にするファンが増えたが、まだまだ日本にはないデータも多く、たくさんのデータが実際に活用され、毎年開発されてもいる。
下記にサバシアとヘルナンデスの比較に使われたデータ項目を列挙してみたが、どれも珍しいものではない。むしろライター氏に言わせれば、詳細なデータがもっと必要なら、いくらでも挙げられるよ?という気持ちがあるはずだ。

ERA 防御率
QS% Quality Start Percentage、QS率
平均スコア
勝率
SO 奪三振
SO/BB 三振/四球
HR/9 被ホームラン率
BA 被打率
OBP 被出塁率
SLG 被長打率
WHIP Walks plus Hits per Innings Pitched「投球回あたり与四球・被安打数合計」

Hernandez has a better ERA, Quality Start percentage, Average Game Score and Winning percentage. That’s a few miles more than enough.

However, Hernandez is also better in SO, SO/BB, HR/9, BA, OBP, SLG, and WHIP. In fact, there isn’t a single stat of any substance where Sabathia leads Hernandez. Hernandez is first or second in seven of the above categories. The best ranking for Sabathia in any of them is third!


またヘルナンデスとグレインキーとの比較についても、見た目の勝ち数と防御率だけで比較するような単純なことはせず、いろいろ補正を加えた上で比較している。

例えば「シーズン勝敗」だが、見た目では19勝5敗のヘルナンデスに対して、グレインキー16勝8敗だから、ヘルナンデスに軍配が上がってしまうが、ライター氏は自分なりの補正を加え「両者21勝6敗」として、「両者甲乙つけがたい」と言っている。
もちろんグレインキーの地元メディアだけに、なんとか彼グレインキーに有利にしたいために数字に工夫するという心理がまったく働いていないかといえば嘘になるだろうが、それでも、無理な補正ではない。
たとえばヘルナンデス先発で負けていて、9回裏にイチローがリベラからサヨナラ2ランを打って勝ったあのゲームなども、まぁ、たしかに単純に投手力だけで勝ったゲームではないことはシアトルファンもわかっているわけで、無理矢理ではない補正を加えることについては、どちらのファンも納得できるわけだ。

記事では、そのほか、両投手の所属チームの強さ、RS(Run Support 味方チームが得点でどのくらいサポートしてくれているか)、守備力など、いくつかの項目をたてて、見た目の勝ち星、見た目の防御率だけではない統合的で補正をきかせた比較を試みている。
RSというのは、このブログでもこれまで何度もとりあげてきたように、その投手が登板したときに味方がどれくらい点をとって支援してくれたか、という数字。チームの打撃力には差があるし、また、投げる投手によっても、妙にRSの多い投手、少ない投手がある。(たとえばウオッシュバーンは、有名なRSの少ない投手)
ヘルナンデスは、あまりにも打撃力の無さすぎるシアトルのエースとして苦労しているが、そのヘルナンデスのRSよりカンザスのグレインキーのほうが、さらに1点くらいRSが少ない。つまりカンザスシティが点をまるでとってくれないままグレインキーは投げていることになる。
記者としては、RSの少なさを示して、グレインキーのサイ・ヤング賞を主張する材料にしたいわけだ。よく両投手とも、19勝だの16勝だのできたものである。


たとえば城島の打率を語る場合に、2007年にはシーズン通算打率これこれなどと、あまりにも大雑把な数字だけで能力を語ろうとする人は、いまだに多い。
だが、シーズン通算打率程度の粗っぽい数字には、プレイオフに進出できにくいシアトルの場合、プレイオフ進出の望みがまったく断たれた後の8月や9月に挙げた帳尻ヒットなども含まれている。
なぜプレイオフ進出の可能性のないプレーヤーの8月・9月あたりの成績を「帳尻」といいたくなるか、というと、メジャー特有のいろいろなシーズンシステムが関係してくる。

チーム間の戦力格差の非常に大きくなっているメジャーでは、7月過ぎに早くもプレイオフ進出できるチームの目星がだいたいついてきてしまうことはめずらしくない。
7月末にトレード期限がくるが、この期限までにプレイオフ進出確実な有力チームは「買い手」に回って、秋のプレイオフ戦線にむけて強化すべき戦力をトレードで集めるが、プレイオフの見込みのないチームは主に「売り手」としてふるまい、余剰戦力を交換に出したりするだけでなく、めぼしい主力を「買い手」に売ったりする。
たとえば、ワールドシリーズをめざすフィラデルフィア・フィリーズは、優勝見込みの全くないクリーブランド・インディアンズから、大投手クリフ・リーを獲得したのも、ポストシーズンの長いシリアスな戦いに備えるためである。

また9月になると、1軍登録できる人数が拡大される。
そのため、どのチームもマイナーから来シーズン使えるかもしれない選手を上げてきてテストするが、この場合も、プレイオフの見込みのないチームでは、ゲームの勝ち負けだけにこだわらずに(というか場合によっては度外視して)若手のテストを試みることも珍しくない。

だから総じていうと、リーグ全体が「フルチャージで戦っている」といえる状態は、7月末とかで一度区切りがついて終わってしまっている。そこからは長い消化試合を続けるチームもあり、若手のテストにむかうチームもありで、全チームでシリアスな戦いだけが続いているわけではない。だから「帳尻」という言い方ができてしまうのである。


ポータルサイトなどの日本のプロ野球についてのページをみても、いまだに打率や打点、ホームラン数といった粗いデータしか表示されておらず、「城島問題」においても、いまだに、城島の2007年の打撃の酷い中身を無視して「メジャー挑戦の最初の2年間に限れば、打撃はまぁまぁだった」などと、誤った理解がいまだにまかり通っている。
なんでもかんでも数字でモノを見ろというつもりはない。
だがたとえ打率が.265あろうと、四球がほとんどなく、併殺だらけで、その上、出塁率が.280くらいしかないようなお粗末すぎるバッティングは、メジャーでは評価されない、ということくらいは、もういい加減、たまに日本のプロ野球のナイターを見るだけのファンの間でも定着してほしいものだと思うのである。







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