November 04, 2009

2009MLBキャッチャーの年齢別分布

メジャーのキャッチャーの年齢分布図(2009)
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Fielding Bible賞2009でトップ10を占めるキャッチャーたちは、もちろん守備の良さを表彰されているわけだが、Fielding Bibleの考える「守備の良さ」とは、いったい守備のどんな面を評価対象にしているのか、それを考えずに、表彰結果だけを見て自分のご贔屓選手がランキングに入った、入ったと、手を叩いて喜んでいてもしょうがない。


「失点しない能力」の重要性

Fielding Bible賞トップ10には、ラッセル・マーティンロブ・ジョンソンはじめ、メジャーでも達成人数が毎年たいへん限られるCERA3点台の「失点しないキャッチャー」たちが多数選ばれている。
では、Fielding Bibleが、彼らの「失点しない能力」を評価しているのか。また評価しているとすれば、どういう指標を使ってそれを判断しているのか。たいへん知りたい部分だが、残念ながら詳細はいまのところ不明だ。

だが少なくとも、マーティンやジョンソンのような、バッティングはたいしたことがないが防御率のいいキャッチャーがトップ10に選ばれる一方で、ビクター・マルチネスや、ワールドシリーズに出ているポサダのような、打撃はいいが、CERA5点台、つまり失点がむやみと多いキャッチャーについては賞のランキングに入れるどころか、1ポイントすら与えていないことは、バッティング要素を排除してキャッチャーの守備を評価しようとするFielding Bibleの主張としては、整合性がある。

なぜなら、そもそも彼らがゴールドグラブに疑問をもち、Fielding Bible賞を創設した理由のひとつは「ゴールドグラブは守備の賞のはずなのに、多少なりとも打撃成績を加味して評価されてしまっている」ことだから、お世辞にも守備がいいとはいえないビクター・マルチネスやポサダを選んでいては、たいへんおかしなことになるわけで、当然いえば当然だ。
これは言い方を変えれば、
「あまりにも失点を防げないキャッチャーを打撃面とのバーターでうめあわせて守備評価するなど、とんでもない間違い」

という意味になるし、もう一歩すすめて、奥にある意識を探るならば
「キャッチャーは失点を防ぐべきポジション」
「もうこれからは失点を防げないキャッチャーを高評価すべきではない」

という時代感覚なのではないかと思う。
(逆にいえば、打撃のいいジョー・マウアーがFielding Bible賞キャッチャー部門3位にもなっているのは、「1983年世代」のマウアーが、たとえ打撃力がまったく加味されなくても、十分に評価に値する高い守備力を持っている、という意味になる)

だから少なくとも、Fielding Bibleは「失点しないこと」を守備評価の指針のひとつとして、かなり重視して賞を選考しているはずだと考える。そうでなければ、Fielding Bibleがロブ・ジョンソンを9位に選んだ理由もみえてこない。
打撃が優れているというだけで投手を炎上させてばかりいるキャッチャーや、肩がいいという理由だけで5失点以上するキャッチャーを賞に選んでいては、Fielding Bibleもゴールドグラブとかわらなくなる。


古い攻撃型キャッチャーイメージ
というか、ただの都市伝説


30歳以上でメジャー正捕手に踏みとどまっているキャッチャーの代表格といえば、やはり「攻撃型」キャッチャーになる。ビクター・マルチネス、ホルヘ・ポサダ、イヴァン・ロドリゲスといったタイプであり、防御率の悪さ、リードの下手さを、バッティングでなんとか帳消しにしてきた。シアトルを退団した城島も、まさにこのタイプだ。

かつての「古い」メジャーのキャッチャー像は、こうした攻撃型キャッチャーのイメージ(というか勝手な想像)に大半を依存してきた。
実際には色々なタイプがいるにもかかわらず、日本のプロ野球ファンが想像するメジャーのキャッチャー像の原型は、ほんの数人のよく知られた攻撃型キャッチャーが元になっている、ということだ。そして、いまだにそれを鵜呑みにしたまま、あらゆる世代のキャッチャーを「古い」視点から語ってしまってる人も多い。
「メジャーのキャッチャーはバッティングさえよければ、守備はイマイチでもいい。CERAなど関係ない。キャッチャーはパスボールさえしなければ、壁でいい。肩は強いにこしたことはないが、必須条件ではない」
どれもよく聞く話ではあるが、これは実は、ひと時代前の、ほんの数人の攻撃型有名キャッチャーのイメージが原型になっている。擦り切れた昔のイメージだけで、いまのメジャーのキャッチャー像全体を語るのは、いい加減やめにしてもらいたいものだ。

もちろん城島はまさにこの「古いキャッチャーイメージ」にきっちりあてはまる。しかも、打てるならまだしも、「まったく打てないポサダが、ポサダ並みに金をとる」のだから、始末が悪い。日本の野球をメジャーにもちこむどころか、むしろ城島はもともと、古いタイプの攻撃型キャッチャーの、しかも壊れた中古品といったところだった。

30代のキャッチャーには、攻撃型だけが存在しているわけではなく、打撃はイマイチだが守備的、と「いわれる」プレーヤーも少なくない。
だが、実際、彼らの守備はどうだろう。
CERAランキングからみると、CERAで傑出している30代キャッチャーは、ボストンのバリテックくらいで、あとはほとんど4点台。また、Fielding Bible賞2009の上位にも、31歳を超えるキャッチャーはロッド・バラハスくらいしかいない。30代の守備的と「いわれる」キャッチャーには、打撃評価を加味しない守備評価を目指すFielding Bibleが高評価を与えるような、完全守備的キャッチャーはほとんどみあたらないのである。
言い方を変えると、守備的といわれる30代キャッチャーは、ある意味、打撃がネガティブだからしかたなく守備的と分類されているだけなわけで、26歳のナ・リーグを代表するキャッチャー、ラッセル・マーティンや、シアトルのロブ・ジョンソンのように、守備の良さをポジティブに評価されてプレートをまかされているわけではないタイプが大半だと思う。

ロブ・ジョンソンは、日本のファンが思っている以上に、画期的なキャッチャーなのだ。


「1983年世代」の台頭によって形成されつつある
メジャー新世代のキャッチャーイメージ


Fielding Bibleが絶賛する守備力で他のキャッチャーを寄せ付けないハイスコアを叩き出し、ダントツのポイント数でキャッチャー部門1位を獲得したヤディア・モリーナは、CERA3点台で、強肩のキャッチャーとしても知られている。
だが、もし彼が「強肩なだけの、CERA5点台のキャッチャー」だったとしたら、Fielding Bibleは彼をキャッチャー部門のダントツ1位に推しただろうか?
数字大好き、総合的な分析好きの彼らのことだから、それはないと、断言していいと思う。

2009年首位打者にして地区優勝を果たし、ア・リーグMVP候補で、Fielding Bible賞3位と、攻守のバランスのとれたジョー・マウアー。規定イニングに到達したMLB捕手ではメジャー最高CERAを記録し、チームを地区優勝に導いたラッセル・マーティン。Fielding Bible賞キャッチャー部門9位で、ア・リーグ最高CERAを叩き出した我らがロブ・ジョンソン。地区優勝した強豪LAAで、同僚マイク・ナポリに比べ守備的といわれ、CERAのいいジェフ・マシス、あるいはチームの3番打者で、攻守のバランスのとれた守備評価も高いカート・スズキ。ナ・リーグオールスター捕手で、シルバースラッガー賞2回の4番打者、CERAも3点台のブライアン・マッキャン

「1983年世代」の新世代キャッチャーたちに共通する基盤、基礎能力は、「バッティングさえよければ、守備力はイマイチでもいい」という、古いキャッチャー像ではとらえきれない。
Fielding Bibleが彼らをどう評価するか知らないが、彼ら1983年世代がプレーヤーとして位置を固めつつある基礎はむしろ、「守備能力の優秀さ」にある。

「1983年世代」の守備力の意味は、ゴールドグラブ的な「単にエラー数が少ないだけ」とか、城島のような「他の能力はダメで、肩が強いだけ」というような、ひとつの指標だけでとらえられる単純なものではなく、「1983年世代」の防御率の良さからわかるように、総合的な失点を抑えられる守備能力にある。
今年からFielding Bibleは、キャッチャーがボールを後逸しない数値を計測しはじめたが、これは「ランナーの進塁を抑える能力として重要だから」カウントしはじめたことを、彼らも明言している。
つまり、これは「失点につながるシチュエーションを増やさない」という守備的意味あいを彼らが重要視している証拠なわけだ。
彼らは、ゴールドグラブ的にエラー数で表彰するプレーヤーを決めるために、パスボールを計測しているわけではない。
このブログがCERAを失点を抑える能力の表現として評価するのも、投手の防御率がそうであるように、守備能力のひとつの断面を数値化した数字でなく、リード面を含めた総合的な失点防止能力としての「トータルな結果」を示す数少ない数字のひとつと考えるだからだ。

「1983年世代」は、「失点しない守備力をベースにした新しいメジャーのキャッチャー像」を担う世代として、優れたキャッチャーを一斉に輩出しつつある。
彼ら「1983年世代」の新世代の守備的キャッチャー群は、いまや攻撃型キャッチャーに率いられた旧世代のキャッチャーたちをおしのけつつて台頭してきつつある。



古いキャッチャーイメージの攻撃型キャッチャーで、しかも中途半端なレベルでしかない城島が、当時25歳だった元・全米大学No.1キャッチャーのクレメントに正捕手を譲り、26歳のロブ・ジョンソンに敗れ、さらに25歳のアダム・ムーアにさえ敗れたのは、こうしてみると当然のことだ。

城島が年齢的な限界にあったのは、最初に挙げたグラフでわかるとおり。コネでもないかぎり、33歳という年齢を越えてメジャーで生き残れるキャッチャーは、攻撃型であれ、守備的であれ、ほんの一握りの有名選手のみだ。
打撃能力はスカウティングを越えていけず、あの程度の打撃能力では攻撃型キャッチャーとして生き残れない。かといって、単にエラーが少ないだけでない新世代の「失点しない総合守備能力」という意味での守備能力はメジャー移籍以来まったく改善されないまま。これではメジャーで台頭しつつある若い守備的キャッチャーに劣る評価しかされないのは当然だ。
城島はメジャー全体のキャッチャーイメージが、1983年世代の若いキャッチャーたちによって古い攻撃型イメージから脱皮して、違うステップを歩みはじめたことにまったく気がつかなかった。これでは、メジャーにいられなくなるもの当然である。







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