November 06, 2009

サイ・ヤング賞はじめ、メジャーも賞の発表シーズンがやってきているが、今年1年ブログを書いてきて真っ先に思い出す他チームのプレーヤーというと、どうしても今年初めてオールスターに選出されたアーロン・ヒルベン・ゾブリスト、2人の二塁手の名前を挙げたくなる。


2005年に引退したマリナーズの名二塁手ブレット・ブーンは、ゴールドグラブを4回受賞する一方で(マリナーズで3年連続、シンシナティで1回の、計4回)、は、2001年と2003年の2度、SLG.500以上を記録し、2001年の打点王と、両方の年のシルバースラッガー賞に輝いた。(だが彼はステロイダーだ。だから評価にはまったく値しない)

いま自分の中ではあらためて「強打の二塁手」というカテゴリーが作られていて、アーロン・ヒルも、ベン・ゾブリストも、そこに分類されている。別にワールドシリーズでフィラデルフィアの「ナ・リーグ最強の強打の二塁手」チェイス・アトリーが5本もホームランを打って長打力をみせつけたから言うわけではない。
2009年にメジャーの二塁手で最も多くホームランを打ったのは、23本のアトリーでも、31本のイアン・キンズラーでもなくて、36本打ったアーロン・ヒルだし、メジャーの二塁手で最高の長打率なのは、.508のチェイス・アトリーではなくてさらに高いSLG.543を記録した、サラリーわずか40万ドルのゾブリストである。

このゾブリストの長打率.543は、メジャーでも歴史的なハイスコアである。メジャーの殿堂入りプレーヤーで、キャリア長打率.500以上を記録している二塁手はロジャー・ホーンスビーただひとりだし、その一方でキャリア.300台という低い長打率で殿堂入りした選手も、5人いる。
いかにゾブリストの.543が歴史的な高率かがわかろうというもの。ゾブリストは2009メジャー長打率ランキングでも、なみいる高額年棒の一塁手、三塁手、DHのスラッガーをおしのけて、堂々19位に入っている。
ゾブリスト、そしてアーロン・ヒルも、十分にシルバースラッガー賞を受賞する資格のある、コンテンポラリーな「強打の二塁手」である。

ブログ注:ロジャー・ホーンスビーの名前表記
「ロジャース」と表記するサイトもあるが、ある英語サイトには、下記のように経緯が記されている。要は、母の旧姓にならって表記はRogersだが、発音は、人生の大半においてRogerと呼ばれていた。このサイトでは通称の「ロジャー」を採用する。ベイブ・ルースのBabeが、本名ではなくニックネームであるのと同じように、本名に厳密にこだわる必要はない。
Hornsby’s odd first name came from his mother’s maiden name, but, despite its spelling, it was actually pronounced “Roger” for most of his life. By the time he became a famous baseball player, though, he relented at allowed its common phonetic pronunciation to be used. So whether you call him “Roger” or “Rogers,” you’re right.
The Will Leitch Experience

殿堂入り二塁手
Baseball Hall of Fame Second Basemen : A Research List by Baseball Almanac
ESPN 二塁手のバッティングデータ(Qualified)
MLB Baseball Batting Statistics and League Leaders - Major League Baseball - ESPN


二塁手というと、なんとなくディフェンシブなポジションと思いがちだ。

たしかに長打力のある内野のポジションといえば、ファースト、次にサードであり、現実に2009シーズンのMLB長打率ランキングでみると、トップ10はプーホールズ、フィルダー、デレク・リー、ハワード、モラレス、テシェイラ、ジョーイ・ボットと、ほとんどナ・リーグの一塁手ばかり。さらに11位以下に三塁手とDHがズラリと並ぶ。


だが、ちょっと待て。
このところの「二塁手の意味」は、ちょっと違ってきてやしないか?、と、思うのだ。


ア・リーグのサードやショートは打てる選手の層がとても薄くなってしまい、ディフェンシブな選手が多くなりすぎている気がする。
いま打撃を補強するなら、もともと人材の薄いポジションに金をかけて必死になるのはコストパフォーマンスが悪く、あまり意味がない。それより、金をかけるならいま層の厚い「強打の二塁手」から人材を探したほうが、よほど現実的じゃないか?という発想がある。


キャッチャーやバッテリーの話題の多いブログだから、よく名前が思い出される選手というと、意味的にシアトルの投手がよく打たれたバッターということになるわけだが、たしかに今年はアブレイユトリー・ハンターと並んで、アーロン・ヒルベン・ゾブリストの名前を、よく記事に書いた気がする。
それはそうだ。2人とも、30ホーマー100打点前後を達成してしまうような画期的な「強打の二塁手」である。

2009年9月24日、先発ゲーム4連勝のロブ・ジョンソン二塁打2四球、ヘルナンデス11三振で17勝目。サイ・ヤング賞レースに生き残る。9月8日の城島のサヨナラ負けがなければ、9月のア・リーグ月間最優秀投手はとっくにヘルナンデスに決まっていた。

2009年9月25日、6月にAロッドにインコースのストレートを5連投して勝ち越し2ランを浴びて負けたシーンをまざまざと思い出させるフィスターのチェンジアップ3連投から、好調アーロン・ヒルに2ランを浴びて完封負け。

2009年9月27日、コネ捕手城島、先発マスク3連敗。「1球ごとに外、内。左右に投げ分ける」ただそれだけの素晴らしく寒いリードで、トロント戦8回裏、期待どおりの逆転負け(笑)ローランド・スミス、自責点5。

2009年4月21日、ロブ・ジョンソンは逆転2点タイムリー3ベースでウオッシュバーンに3勝目をプレゼントした。

2009年4月23日、ロブ・ジョンソンは完封勝ちでメジャーNo.1のCERAを継続した。


秋ともなると全米の電子メディアでも、日本でいうベストナインが発表になっているらしいが、真っ先に目がいったのは「二塁手」の名前だ。アーロン・ヒル、ゾブリストといった、今年このブログでは馴染みの二塁手たちの名前があるかどうかが気になった。
ちなみに各メディアのア・リーグベストナイン2009の「二塁手」はこうなっているらしい。

アーロン・ヒル ESPN、Sporting News、The Baseball Encyclopedia
ベン・ゾブリスト Elias、Inside Edge
イアン・キンズラー CBS

ア・リーグの二塁手はいま、とても層が厚い。子供と爆睡していた岩村がいつのまにかパイレーツに出されてしまうほどだ。とにかく打てる選手が揃っている。
2009年版「強打の二塁手」御三家は、36ホームラン108打点のアーロン・ヒル、27本91打点のゾブリストと、そして3人目は(ちょっとチョイスが難しいが)、31本86打点31盗塁で、30-30クラブ入りを達成したのイアン・キンズラーか、25本85打点で長打率のいいロビンソン・カノーか、ということになったが、ほかにも、2008年リーグMVPペドロイア、25本96打点の我らがホセ・ロペス、16本30盗塁のブライアン・ロバーツ、さらにカラスポポランコと、好打者が揃っている。
(追記:ポランコが11月6日付けで、タイガースをFAになった。タイプA。Tigers face big free-agency decisions | tigers.com: News

ナ・リーグにも、チェイス・アトリー以外に、31本90打点のアグラ、20本98打点25盗塁のブランドン・フィリップス、23本のバーンズプラド、などの役者がいる。Late Bloomer、つまり遅咲きといわれるゾブリストが「強打の二塁手」に加わったことで、メジャー全体の「強打の二塁手」の層はますます厚くなるばかりだ。


ちなみに、アーロン・ヒルは1982年生まれの27歳。まさに「1983年世代」にいるプレーヤーである。
ほかに「強打の二塁手」の「1983年世代」というと、27歳のカノー、キンズラー、26歳のペドロイア、カラスポ、プラド、25歳のホセ・ロペスと、好打者が揃う。キャッチャー同様、二塁手でも「1983年世代」はメジャーで幅をきかせつつある。

2009年11月2日、「MLBキャッチャー世代論」1:堅守を基礎にした「1983年生まれ、26歳世代」の台頭が引き起こす大きなキャッチャー世代交代の波。

2009年11月3日、「MLBキャッチャー世代論」2:古いキャッチャーイメージを淘汰する「1983年世代」の新しいキャッチャーイメージ。

脳内GMごっこは嫌いだが、もし誰かに一番獲りたい成長株の選手は?と聞かれたら、他の誰よりも先に「ゾブリスト」と答えたい。たった40万ドルで彼を保有できるタンパベイが非常にうらやましい。ホセ・ロペスをサードにコンバートしてでも獲りたい選手だ。

上でも書いたが、サードやショートは打てる選手の層が薄くなりすぎている。むしろ打線補強の人材は、層の厚い「強打の二塁手」にこそ宝が眠っている、と思う。

サードもできるアダム・ケネディも悪くない。一度「ジャック・ウィルソンなんかより、よほどケネディのほうがいい」とブログに書いたことがある(下記リンク)。2009年は、11本63打点、.286。三振が多めなのは気になるが、打率がいいし、なにより45四球選んでいるのがいい。いい人材が多い今の時代には、ちょっと他のセカンドプレーヤーよりは落ちるが、LAAに在籍していた選手だし、とにかく頭を使って野球のできるクレバーな選手だと思う。

Adam Kennedy Stats, News, Photos - Oakland Athletics - ESPN

Adam Kennedy » Statistics » Batting | FanGraphs Baseball

Ben Zobrist’s WAR | FanGraphs Baseball

メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(6)実証:アダム・ムーアの場合







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