April 03, 2010

先日NHK-BS1で、野球のアンパイアが大きな身振りでストライク、セーフ、アウトなどの判定結果を表したり、ベンチとプレーヤーの間でブロックサインが使われたり、つまり、野球に身体を使ったジェスチャーによる意思伝達システムが導入されるようになったのはいつなのか、というアメリカ制作のドキュメンタリー番組を放送していて、なかなか興味深かった。
BSの番組は再放送されることが多いから、そのうちまた放送するのではないかと思う。機会があったら、なかなか面白い番組だったので、見るといいと思う。


番組で紹介しているのは、2つの説。ダミー・ホイ Dummy Hoy起源説と、Bill Klem ビル・クレムを起源とする説。


ダミー・ホイ

ダミー・ホイ Dummy Hoy (William Ellsworth "Dummy" Hoy 1862年5月23日-1961年12月15日) は、メジャー史上3人目の聴覚障害をもったメジャーリーガーで、1888年から1902年までプレーした。イチローがシーズン安打記録を破ったジョージ・シスラーより前の時代の人といえば、その古さがわかるだろう。デビューした1888年には盗塁王になっている。
Hoy became the third deaf player in the major leagues, after pitcher Ed Dundon and pitcher Tom Lynch.
Dummy Hoy - Wikipedia, the free encyclopedia
野球ができた頃、アンパイアは最初は大きな動作はなく、声だけでボール/ストライクのコールをしていたらしい。だが3歳のときの髄膜炎がもとで聴覚障害のあったホイはそれを聞くことができない。そのためアンパイアが一定の動作で判定を伝えるように配慮し、それが審判スタイルとして定着していった、というのが、普通に言うダミー・ホイ起源説だ。
だがBSの番組では、ホイのために、アンパイアではなく、サード・コーチャーがボール/ストライクのコールをサインで伝達した、それが他のチームでも真似されていき、野球のブロック・サインの起源になった、というような、多少違う説明だったと思う。


ちなみに、聴覚や言語の障害を表す英単語や、野球選手のニックネームについて、少し話をしておかなければならない。
deaf 聴くことに障害がある
dumb 喋ることに障害がある
ホイの本名はあくまでWilliam Ellsworth Hoyであって、ダミー・ホイではないわけだが、これはベーブ・ルースの本名がGeorge Herman Ruthというのと同じで、それ自体は特に珍しくはない。
ホイのニックネームになっているdummyダミーという単語は、ほかにも聴覚障害のあったダミー・テイラーという投手がいた例があるように、聴覚障害をもったメジャーリーガーに共通して使われた。
dummyという単語の起源は、「モノいわぬ」という意味のdumbという言葉にあるわけだが、聴覚障害のあったダミー・ホイは、たしかにdeafではあったが、ゲーム中にフライを捕球するプレーで大声を上げて他のプレーヤーに知らせていたように、けしてdumbであったわけではない。
要は、dummyという単語は「トンマな」というような揶揄する意味を含んで使われていたわけである。当時の時代背景において、それがどのくらい侮蔑的な意味だったか推し量るのは容易ではないが、見ず知らずの他人に軽々しくクチにしていい単語ではないのは間違いない。
(なお、一部サイトでDammyと表記しているのを見たが、それは明らかに誤記で、Dummyが正しい)


ビル・クレム (William Joseph Klem、1874年2月22日 - 1951年9月1日)は、1905年から1941年までナショナル・リーグでアンパイアを務め、近代ベースボールの審判スタイルを確立した人。審判として初の野球殿堂入りを果たしている。
例えば、両手を横に大きく広げる動作で「セーフ」を意味するコールをするスタイルを発明したのはこの人で、手を使った判定ジェスチャーを初めて野球に取り入れたといわれている。


さて、この2人のどちらが果たして起源なのか。番組でも断定はしていない。
だが、2人のプレー時期を比べると、ホイのほうが時代が古いことや、ビル・クレムがメジャーのアンパイアとしてデビューする前の1900年前後の新聞記事に、既に「ダミー・ホイのために考案されたサインというシステムを他のチームでもやるようになった」という意味の記事がいくつも出ていることから、少なくともブロックサインについてはダミー・ホイ起源説に分があるように感じた。
また、アンパイアが大きなジェスチャーとともにボール/ストライクのコールを行うになった起源については、どうもアメリカの専門家の間でも意見が分かれているらしく、正確なところはまだまだわからないらしい。







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