June 14, 2010

偉大なるバカボンの父も言っている。

「 これでいいのだ。 」

Seattle Mariners at San Diego Padres - June 13, 2010 | MLB.com Gameday

"I was fine, I was strong,"
「ピッカピカだったろ?俺って強ええからな、イェイ」

わざと意訳したが(笑)、ゲーム後のインタビューでヘルナンデスはひさしぶりに彼の年齢相応らしい感情の爆発のさせかたをした。これから長いメジャー生活を送るであろう彼の今後のピッチングスタイルを考える上で、たいへん意味のあるインタビューである。読む価値がある。
Mariners win finale behind Felix's gem | Mariners.com: News


結論を先に書いておこう。
6月7日のクリフ・リーが「ストライクの鬼神」であるとすれば、本来のヘルナンデスは、同じ神でも「バランスの鬼神」である。
つまり、こういうことだ。ヘルナンデスは「ストライク・ボールの適度な混ぜ具合」や「球種を適度に混ぜるバランスの良さ」がピッチングの鍵になって、打者をゴロの凡打に打ち取る投手であり、だからこそ「ピッチング全体の適度なストライク率」あるいは「その試合におけるコントロールの出来の良さ・悪さ」が、他の投手よりもずっと大きな意味をもつと考えるのである。
「バランスが命」であるからこそ、キャッチャーとの相性が大事で、ヘルナンデスが本来もっているコントロールの悪さや、ピッチングの単調さを、補う役割がキャッチャーに求められる。
クリフ・リーは6月7日の登板で「78.5%」などという驚異のストライク率を記録して、シアトルの鬼門であるアーリントンでレンジャーズ打線を沈黙させてみせた。(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月7日、クリフ・リー、貫禄の107球無四球完投で4勝目。フィギンズの打順降格で、次に着手すべきなのは「監督ワカマツの解雇」
あのときのクリフ・リーが「ストライクの鬼」であるとすれば、ヘルナンデスは「バランスの鬼」であり、クリフ・リーとヘルナンデスは求めるべき目標が違うのである。



個性は、それぞれに違う。
違うから面白く美しく、また自分だけの個性という貴重な宝石を誰もが探し求める。みんな同じでは、どこまでも続くどんよりした梅雨空のようになってしまい、つまらないこと、このうえないし、価値もない。
大投手ロイ・ハラデイにはハラデイの投球術があり、「ストライクの達人」クリフ・リーのとは違う。リンスカムにはリンスカムのピッチングフォームがあり、ヒメネスとも、クリス・カーペンターとも違う。

ゲーム後のインタビューで、サンディエゴの監督バド・ブラックが今日のヘルナンデスのピッチングを絶賛しているが、その要因として「ストライク・ボールの配分の良さ」と「カーブの切れ」を挙げている。
true No. 1 pitchers という言葉のtrueという部分に、重みがある。1シーズンだけ良い投手を、バド・ブラック監督だってtrueとは呼びたくないだろう。
"Felix has come into his own as a staff ace," said Padres manager Bud Black. "He's turned into one of the true No. 1 pitchers. His ball-strike ratio was great, and that's the best overhand curve I've seen him throw."

今日のヘルナンデスは128球を投げ、ストライクを85球。全投球のちょうど3分の2がストライクであり、配球セオリーどおりの配合である。
バド・ブラック監督はこの配球全体をコントロールするヘルナンデスの能力の高さを絶賛しているわけだが、もちろん間接的にはヘルナンデスの良き相棒であるロブ・ジョンソンの素晴らしいリードに向けられた賛辞でもある。投球の3分の2ストライクを投げれば誰でもサイ・ヤング候補になれるわけではない。


ヘルナンデスのピッチング内容とストライク率の関係の深さについては、すでに何度も何度もこのブログで指摘してきた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。(ヘルナンデスの2009ストライク率グラフつき)
今年2010年の4月21日にボルチモア戦で投げたときに、対戦相手のDHルーク・スコットもこんなことを言っている。球種をうまく混ぜたことが、あのゲームで9安打打たれながら自責点ゼロに抑えることができた要因になったというのである。
He did a good job of mixing up his pitches, hitting his spots, good sinker, good velocity on his fastball, hard curve, hard slider, good changeup.
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年4月21日、ヘルナンデス8イニングを無四球自責点ゼロの完投2勝目で、17連続QSのクラブレコード達成、シアトル同率首位!ロブ・ジョンソン、4回裏2死満塁の同点タイムリーと好走塁でヘルナンデスを強力バックアップ。


ヘルナンデスの四球が増えはじめるストライク率の臨界値は、この記事(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。(ヘルナンデスの2009ストライク率グラフつき)を書いた時点では、四球数が3を越えるのを「ストライク率60%あたり」と推測した。
ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係

そのため、この1年くらいの登板で「ストライク率が60%前後以下になったゲーム」を太字にして表示してみた。

2009年後半ヘルナンデスのストライク率と四球数
8月1日  104球58ストライク 55.8% 四球4
8月7日  113球70ストライク 61.9% 四球6
8月12日 105球67ストライク 63.8% 四球4
8月18日 106球69ストライク 65.1% 四球1
8月23日 101球67ストライク 66.3% 四球ゼロ
8月28日 104球63ストライク 60.6% 四球1
9月2日  114球67ストライク 58.8% 四球3
9月8日  113球69ストライク 61.1% 四球4
9月13日 109球65ストライク 59.6% 四球1
9月18日 104球65ストライク 62.5% 四球1
9月24日 108球77ストライク 71.3% 四球2 11三振
9月29日 120球69ストライク 57.5% 四球4
10月4日 107球72ストライク 67.3% 四球1
2010年前半ヘルナンデスのストライク率と四球数
4月5日  101球58ストライク 57.4% 四球6
4月10日 110球74ストライク 67.2% 四球1
4月16日 105球63ストライク 60.0% 四球2
4月21日 113球82ストライク 72.6% 四球ゼロ
4月26日 114球74ストライク 64.9% 四球3 負
5月1日  96球53ストライク 55.2% 四球4 負
5月7日  84球48ストライク 57.1% 四球4 HR3 負
5月13日 105球66ストライク 62.9% 四球2
5月18日 118球72ストライク 61.0% 四球2
5月23日 110球73ストライク 66.4% 四球1 負
5月29日 111球71ストライク 64.0% 四球3
6月3日  116球79ストライク 68.1% 四球1
6月8日  107球65ストライク 60.7% 四球3 ER7 負
6月13日 128球85ストライク 66.4% 四球1
Felix Hernandez Game Log | Mariners.com: Stats

見てもらうとわかるが、2009年はヘルナンデスがサイ・ヤング賞候補になった素晴らしいシーズンだが、ストライクが60%以下しか入らないゲームなどいくらでもあった。特に8月末から9月前半にかけて、サイ・ヤング賞が目の前にあるのがわかっていた重要ないくつかのゲームで、ストライクをとれないゲームが続き、あの時期は本当に苦しかったものだ。
だがそれでも、結果だけみれば、面白いように勝てたのである。
当時のブログ記事ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:September 2009)を読んでもらえばわかるが、9月24日の24残塁のように、たとえヘルナンデスの調子の良くないゲームでも、ロブ・ジョンソンがバッテリーとしての工夫などをして、投手単独ではなく「バッテリーとして」勝ちを積み重ね続けたことが、ヘルナンデスのサイ・ヤング賞レースを支えたのである。
もしそういう「歴史」がなかったら、いまごろとっくにヘルナンデスはキャッチャーを変えるかなにかしている。

よくロブ・ジョンソンのことを「投手にとりいるのがうまい」とかなんとか無意味な揶揄をするみすぼらしい人間がいるが、自分の無知を自分で晒すような真似をして何が面白いのだろう。今日もロブ・ジョンソンは3本のヒットでヘルナンデスを支えた。


ヘルナンデスのストライク率は2010年に入って突然落ちたわけでは、けしてない。2010シーズンに突然コントロールが甘くなって、そのために今年のヘルナンデスの調子がいまひとつ上がらないわけではないのである。
メジャーのスカウンティング能力は非常に高いから、ヘルナンデス、ロブ・ジョンソンのバッテリーの配球パターンだって分析され対策されているのは明らかだし、また一度指摘したように、2ストライクをとって打者を追い込んでからの変化球のキレがどうも今シーズンはいまひとつよくないとか、微妙な修正すべき点はたくさんある。
今日のようにカーブが切れると、ヘルナンデスのピッチングは非常に組み立てやすいだろうと思う。逆にいうと、あまりシンカーに頼るより、カーブで緩急をつけるヘルナンデスのほうが、ブログ主としては見ていて小気味いいし、安心できる。


そういう細かなことはプレーヤーにまかせておけばいいことであって、どうでもいいが、そんなことより大事なことは、「ヘルナンデスがどういう投手か」ということだ。
彼は、ストライク率が50%台の半ばに落ちるようなコントロールの甘いピッチングでは苦しい登板になるが、だからといって、クリフ・リーのようにストライクをむやみにとれる投手になる必要など、どこにもない。
ヘルナンデスは「バランスの鬼」。そのことがハッキリしたことが、このゲーム最大の収穫だと思う。

自分が誰なのかわからなくなっているローランドスミスにこそ、このゲームの深い意味をしっかりと噛み締めてもらいたいと思う。






ハワイ移民150周年
No Ichiro, No watch.

Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です




Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
Categories
ブログ内検索 by Google
Google

livedoorブログ内検索
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month