June 24, 2010

本当に凄い投手だ。
鳥肌モノの9イニングだった。
Chicago Cubs at Seattle Mariners - June 23, 2010 | MLB.com Gameday


6月に入って5回目の登板だったが、これで4試合連続の無四球試合。4試合34イニングを投げて、ただのひとつも四球も出していない。クリフ・リーを見慣れてしまうと、あたかも無四球試合が簡単であるかのような錯覚に陥りそうになる。もちろんそれは大きな勘違いで、1ゲームやるだけで凄いことなのだが、それを4試合も続けてしまえるのが、クリフ・リーだ。
クリフ・リーのゲーム・ログ
Cliff Lee Game Log | Mariners.com: Stats

クリフ・リーはけっこうヒットを打たれる。今日なども、完投とはいえ、相手チームのシカゴに9安打も打たれている。無死2、3塁なんていうイニングすらある。なのに、シカゴはソロホームランの1点どまり。それがクリフ・リーである。

何度も何度も見てきて、何度も何度も書いたことだが、クリフ・リーは四球による無駄なランナーを出さないし、出したランナーをホームに帰さない。そして「ここで三振が欲しい」という場面では、ずばぁああああっと、目の覚めるような3球三振がとれてしまう。
こんな投手を見ていると、ある意味しかたないホームランやヒットによるランナーより、バッテリー(あるいは投手)が防ぐことのできる四球によるランナーのほうがずっとやっかいだし、失点の原因になりやすい、という当たり前のことを痛感するし、四球がゲームに与えるダメージの重さがよくわかる。
守備時間を長くしやすい四球乱発は野手の疲労をまねくために、打撃、ラン・サポートにも大きな影響がある、ということもある。

SO/BB(キャリア)
クリフ・リーは44位。現役投手第1位はダン・ヘイレン
Career Leaders & Records for Strikeouts / Base On Balls - Baseball-Reference.com
SO/BB(シングルシーズン)
1位は、サイ・ヤング賞2回のブレット・セイバーヘイゲンで、11.0000。ところが今シーズンのクリフ・リーは、なんと19.0000。もしもこのレベルでシーズンが終われば、とてつもない記録が出る。
ちなみに大投手ロイ・ハラデイはトロント在籍時代に3回、シングルシーズンのSO/BBトップに輝いていて、ナ・リーグに移籍した今年も、ナ・リーグトップを走っている。
Single-Season Leaders & Records for Strikeouts / Base On Balls - Baseball-Reference.com

SO/BB 19.0000。本当に素晴らしい数字だ。
これは今シーズン、クリフ・リーが投球術において、あの大投手ロイ・ハラデイと肩を並べるシーズンになることだろう。



今日クリフ・リーが投げたのは115球だが、そのうち、何球がストライクだったか。

90球

そう。90球である。

ストライク率にすると、78.3%
。もう、べらぼうに高いとか、そういう言葉すら追いつかない。ちょっと普通では考えられないくらいに、馬鹿みたいに、高い。

6月7日の登板のときにも、
「クリフ・リーが投げた107球のうち、84球もの投球がストライクだったことには驚かされた。」
と書いたわけだが、そのときのストライク率は78.5%で、今日6月23日とほとんど同じストライク率である。要は、相手がどこだろうと、まったくピッチング・スタイルが変わらない、それが今シーズンのクリフ・リーだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月7日、クリフ・リー、シアトルが苦手とするアーリントンのテキサス戦で貫禄の107球無四球完投、4勝目。フィギンズの打順降格で、次に着手すべきなのは「監督ワカマツの解雇」

2010年6月23日 6回表1死1、2塁 デレク・リー三球三振6回表1死1、2塁
デレク・リー三球三振

初球 インハイのカットボール
2球目 インコース低め一杯に決まるカットボール
3球目 ほぼ真ん中のストレート(空振り)


2010年6月23日 6回表2死1、2塁 ネイディ三球三振6回表2死1、2塁
ネイディ三球三振

初球 インコース ハーフハイトのカットボール
2球目 インコースのストレート
3球目 高め一杯のゾーン内にストンと落ちるスローカーブ


2010年6月23日 7回表1死2、3塁 カストロ三球三振7回表1死2、3塁
カストロ三球三振

初球
真ん中低めのチェンジアップ
2球目
高め一杯のカットボール
3球目
外から入ってくるカーブ
(見逃し三振)


つい先日の記事で(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月13日、「メジャーで最もストレートばかり投げる」シアトルのリリーフ陣。なんと「4球のうち、3球がストレート」。(ア・リーグ各地区ごとのピッチング・スタイルの差異についてのメモ))、ア・リーグ東地区の投手が、「ストレートを多用するかわりにカットボールを多投する」というピッチングスタイルを持つ、ということを書いた。
今日ランナーのたまったシチュエーションで3人のバッターを三球三振になで切りにしてみせたクリフ・リーのピッチングは、ちょっと見ると、まさに「東海岸風カットボール ピッチング」にみえる。

クリフ・リー2010年スタイルの要点1
カットボールでカウントを作るという戦略

クリフ・リーが長く所属していたクリーブランド・インディアンズは中地区のチームであって東地区ではない。だが、オハイオ州自体ほとんどアメリカの北東のはずれといってもいいくらいの位置にある州なわけで、インディアンズと東地区各チームとは非常に近いロケーションにある。

では、その地理的に近い意味もあって、クリーブランドは先発投手が非常にカットボールを多用する「東海岸風のチーム」で、それでクリフ・リーもカットボールを多用する、という仮説が成り立つのだろうか?


答えは「 NO 」だ。
クリフ・リーがクリーブランドにいた時代の、クリーブランドの先発投手全体の「カットボール率」を見てみると、その数字はかなり低い。クリーブランドはカットボールを多用するチームカラーではなかったのである。
American League Teams » 2008 » Starters » Pitch Type Statistics | FanGraphs Baseball

チームを見るのではなく、クリフ・リー自身のピッチタイプ、つまり、ゲームで投げた球種の割合を年度別に見てみると、非常に面白いことがわかる。
クリフ・リーがカットボールを多用しだしたのは、フィラデルフィアに移籍して以降、つまり長年在籍したクリーブランドを出た以降のことで、さらにシアトルに移籍してからは、まるでトロント、ヤンキース、タンパベイといったア・リーグ東地区の投手たちのように「ますますカットボールの割合が増えている」のだ。
つまりクリフ・リーがピッチングのひとつの柱になるボールとしてカットボールを多用しだしたのは、ある意味、シアトルに来てから、なのだ
シアトル移籍以降のクリフ・リーのカットボール率はクリーブランド時代の3倍以上に跳ね上がっている。
Cliff Lee » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball

シーズン別 クリフ・リーのカットボールの割合
2004 5.2(%)
2005 2.8
2006 6.3
2007 4.9
2008 6.2 この年までクリーブランド
2009 12.4 フィラデルフィア移籍
2010 17.1 シアトル移籍


クリフ・リー2010年スタイルの要点2
〜0-2カウントから1球遊んで、それから勝負、などという回りくどいことをせず、打者に考える暇を与えない投球テンポの早さ

クリフ・リーは上に挙げた3人に対して、0-2と、カウントを追い込んでから、怖がらずに変化球をストライクゾーンに投げ込んでいる。使われるのは、高い軌道を描いてボールから大きく曲がってストライクになるカーブなどだ。


今シーズン絶好調のジェイソン・バルガスも、もともとチェンジアップを決め球にしているピッチャーだが、今シーズンに限っていえばカットボールをけっこう多めに使いだしているらしい。
そのバルガス、なんでも、クリフ・リーに「カットボールを使うピッチングの要点について質問した」らしい。
で、クリフ・リーがバルガスに答えた「ピッチングの要点」というのは、カットボールそのものの握りだの、使うカウントだのという話ではなくて、「ピッチングのテンポを早めることの大事さ」を強調したらしい。
クリフ・リーいわく、「打者に考える暇など与えず、ポンポンとテンポよく投げろ」と、そういうようなことを、クリフ・リーはバルガスにアドバイスしているらしいのだ。


正直、投手コーチのリック・アデアより、クリフ・リーのほうが、「投手コーチとして有能」なんじゃないか、という気がしてきた







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