August 02, 2010

4月 11勝12敗 .478
5月 8勝19敗  .296
6月 14勝13敗 .519
7月 6勝22敗  .214

これは、2010年シアトル・マリナーズの月別の勝ち負けと、勝率だ。
みてもらうとわかるように、4月と6月にはほぼ5割程度の勝率を残している。特に大事なのは、6月のチーム成績が言うほど悲惨ではないことだ。

しかし、7月に、突然エンジンが壊れた飛行機が急降下するように、マリナーズは墜落した。
今シーズンはこのままだとシーズン110敗を越えるのではといわれているが、その墜落原因が「チームとしての目的の再構築も、きちんとした精神的な準備、後半に使う選手の手配、そんな当たり前の準備すらないまま、突然クリフ・リーを不用意に放出して、投手陣の中心を失い、チームが数少ないストロングポイントを喪失したことにある」のは、火をみるより明らかだ。

これは2009年の7月にウオッシュバーンをデトロイトに放出したのと同じ現象である。

2009年の投手陣の精神的な支柱はウオッシュバーンだったが、2010年の場合、投手陣の精神的なリーダーは明らかにクリフ・リーである。ヘルナンデスはまだ若い。
クリフ・リーが突然いなくなったことで、マリナーズはイチロー以外の唯一の財産であった「優秀な先発陣」の「精神的な支柱」「大黒柱」を失って、残り少ない財産すら失ったのである。


7月以降もマリナーズでプレイする残された選手たちにとって大事なのは、「これからチームが何を目的に、どう戦っていくのか」「7月以降の再構築された目的のために、チーム編成にどういう変更を加えていくのか」であることは、当たり前である。
それなのに、シアトル・マリナーズはおそらく、何の明確な目的再構築のプランも持たず、選手にはほとんど何の説明もないまま、クリフ・リーをただただ安売りした、と、このブログでは推測する。
でなければ、これほどまでにチームが壊れない。今のシアトル・マリナーズは、チーム自体が壊れている


ひとつの人間集団が目的と中心を持たない、もてないことの影響の大きさは、はかり知れない。

なぜなら
目的をもたない人間は弱いからだ。
また、中心をもたない集団は弱いからだ。


こんなのは「兵法の基本」である。こんな当たり前のプリンシプルがわからない人間たちがマネージャーをやっているシアトル・マリナーズに、チームスポーツがコントロールできるわけがない。

シアトル・マリナーズはすみやかに目的と中心を再構築すべきだ。
それをする気がないのなら、球団運営などやめてしまえ。



さて、主な先発投手別に月別の勝ち負けをみてもらおう。
その目的は「月ごとに、誰が投手陣を支えてきたか」を見ることだ。(以下は、その投手の勝ち負けではなく、その投手の登板日におけるチームの勝ち負けである。お間違えなきように)

クリフ・リー登板ゲーム
4月 0勝1敗
5月 3勝2敗
6月 5勝1敗
7月 1勝0敗
Cliff Lee Stats, News, Photos - Texas Rangers - ESPN

ヘルナンデス登板ゲーム
4月 4勝1敗
5月 0勝6敗
6月 2勝4敗
7月 2勝4敗
Felix Hernandez Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN


ダグ・フィスター登板ゲーム
4月 2勝2敗
5月 2勝4敗
6月 1勝0敗
7月 1勝5敗
Doug Fister Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN

バルガス登板ゲーム
4月 2勝2敗
5月 3勝2敗
6月 3勝3敗
7月 1勝4敗
Jason Vargas Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN

ローランドスミス登板ゲーム
4月 2勝3敗
5月 1勝5敗
6月 1勝4敗
7月 0勝6敗
Ryan Rowland-Smith Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN


この程度のデータでも、小学生でもわかることがあるだろう。

4月の中心はヘルナンデスだ。しかし5月の不振はヘルナンデス登板ゲームに負け続けたことが大きい。
6月の中心は、もちろんクリフ・リー。
バルガス、フィスターの2人、特にバルガスは、この間ずっと地道にチームを支えてきた。
5月以降のローランドスミス登板ゲームの極端な負け越し(2勝15敗)を放置し続けたことは、チーム墜落に直結している。




クリフ・リーがマウンドに登れない4月を支えたのはヘルナンデス登板ゲームの4勝1敗だが、他の先発投手のゲームも、ほぼ5割の勝敗になっている。この時点で先発投手陣にはそれはそれなりの一体感があった。

だが、5月にクリフ・リーが復帰すると、ヘルナンデス登板ゲームが0勝6敗となって、結果的にチームは大きく負け越した。
5月のヘルナンデスの登板ゲームだが、彼は6ゲームのうち4ゲームでクオリティ・スタート(QS)を決めているわけで、けして「5月のチームの大きな負け越し」は、ヘルナンデスのせいではない。
だが、月別ERA(防御率)だけでみると、5月以外の月が全てERA2点台なのに対して、5月だけが4点台なのは事実なのであって、けして5月のヘルナンデスが本来の調子ではなかったのもまた事実だ。今シーズンのヘルナンデスは安定感がない。

6月になると、クリフ・リーの登板ゲームが5勝1敗となってチームを支えるとともに、他の投手もそれなりに勝ったために、結果的にチームは6月に限って言えばほぼ5割の勝率を残すことができた。

そして7月。クリフ・リーが同地区首位のテキサスにトレード。


これまでのシーズン、たとえサイ・ヤング賞候補になった年であれ、どのシーズンであれ、まだ若いヘルナンデスがチームの投手陣のリーダーシップを発揮してきたわけではない。やはりそこは、ウオッシュバーンのような年のいったベテラン投手がまとめてきた。
今年に限っては、ジェイソン・バルガスがクリフ・リーにいろいろと投球術を学んでいたという事実があるように、投手陣をリーダーとして引っ張っていたのは、引退したグリフィーでも、まだ若いヘルナンデスでもなく、「動じない男」クリフ・リーだ。


クリフ・リーの放出じたいはやむをえないことであるにしても、その放出先が同地区の首位チームであることの意味不明さや、チームの勝ち頭でリーダーのひとりであるはずのクリフ・リーが突如いなくなって、明らかに負けが増えていくことがわかっているこのチームが、いったい何を目指して戦うのか、そんな重要なことすらまるっきり明確でないようなラインアップ、スタメンが続いている中で、
イチローはじめ、選手たちが、「いったい自分はなんのために戦っているのだろう」などと思うような戦いしかできない状態だとしたら、そこには中心も、目的もありえない。ただの弱々しさだけが残るのは当然だ。


そんなこともわからずにチームスポーツをマネジメントしようとしている人間がいるとしたら、その人間は馬鹿だ。
何もわかっていないし、チームスポーツにかかわる資格がない。








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