August 20, 2010

今現在16勝を挙げてハーラートップを走っているのはNYYのCCサバシアだが、今年のサイ・ヤング賞に彼がふさわしいかどうか、という点になると、ちょっとどうだろうと思う。
彼はたしかに丈夫で頼りになる投手で、イニング数、ゲーム数を投げてくれる投手だが、打たれたヒット数、四球数がちょっと多すぎるし、彼にサイ・ヤング賞を与えるくらいなら、まだボストンのバックホルツにでもくれてやったほうがマシだと思うが、もっとふさわしい投手がいる。

それはクリフ・リー

彼の今シーズンの公式スタッツのうち、打ちたてつつある数々の歴史的な記録と、さまざまなスタッツで彼がどれだけ上位にいるかを見てもらいたい。
去年も勝ち数の多いヘルナンデスではなくて、防御率と内容で上回ったカンザスシティのグレインキーがサイ・ヤング賞投手になったが、今年のサイ・ヤング賞も、昨年のヘルナンデス同様に、勝ち数の多いサバシアより、(もう少し勝ち数を増やすという条件つきで)内容のあるクリフ・リーがふさわしいと思う。
2010 American League Pitching Leaders - Baseball-Reference.com

特に、ちょっと今シーズンのクリフ・リーの四球の異常な少なさは、ちょっと尋常でない。

SO/BB(Strikeouts / Base On Balls、三振数÷四球数)
SO/BBは、サイ・ヤング賞の名前の元になった約100年前の名投手サイ・ヤングが、1893年から1906年までの14シーズンで11回もメジャー最高を記録している記録で、サイ・ヤングの名投手ぶりを示す数値のひとつだ。
これまでの歴史的なシングル・シーズン記録は、1980年代に2度のサイ・ヤング賞に輝き、カンザスシティ・ロイヤルズをワールドチャンピオンに導いた名投手ブレット・セイバーヘイゲンが16年前、1994年に110年ぶりだかに打ち立てた11.0000だが、今年のクリフ・リーは、なんと14.7000
記録を破るにしても、その記録更新の幅がハンパなく大きすぎる。なんというか、ケタが違う。
セイバーヘイゲンの前の記録は、1884年にJim Whitneyが打ち立てた10.0000で、これは、イチローが84年ぶりに更新したジョージ・シスラーのシーズン最多安打記録と同じように、その後100年以上も誰も破れなかった歴史的大記録なのだが、ブレット・セイバーヘイゲンの11.0000は、その記録を110年ぶりにうち破った。
そのセイバーヘイゲンの快挙を、クリフ・リーはさらに誰も想像すらできないとんでもない数値14.7000で抜き去ろうとしている。
Progressive Leaders & Records for Strikeouts / Base On Balls - Baseball-Reference.com


BB/9(9イニングあたりの四球数)
メジャーの長い記録の中でも、単年でBB/9が1.0000を切ることができた投手は(今年のクリフ・リーを除いて)わずか114人しかいない。
そしてのその大半は1880年代から1900年代初頭にかけての古い記録であって、20世紀半ばから現在にかけてだけをみると、達成できたのは(2010年クリフ・リーを除いて)以下のわずかのべ9人しかいない。しかも、複数回達成した投手が大投手グレッグ・マダックスなど3人いることから、達成者の実数はたった6人しかいない。

カルロス・シルバ (26)  0.4301 2005
クリフ・リー (31)   0.5325 2010 左投手
Bob Tewksbury (31) 0.7725 1992
Greg Maddux (31)  0.7736 1997
Bob Tewksbury (32) 0.8424 1993
David Wells (40)  0.8451 2003 左投手
LaMarr Hoyt (30)  0.8558 1985
Jon Lieber (34)   0.9170 2004
David Wells (41)  0.9199 2004 左投手
Greg Maddux (29)  0.9873 1995
Single-Season Leaders & Records for Bases On Balls per 9 IP - Baseball-Reference.com

今年のクリフ・リーの0.5325は、いまのところ1800年代を含めていえば歴代15位くらいにあたるのだが、2010年クリフ・リーより上の数値を記録している14人は「全員が右投手」であって、今年のクリフ・リーがこのままいけば、左投手として歴代最高のBB/9を記録することになる。
近年の左投手がBB/9において1.0000を切った記録は、2000年にトロントで20勝をあげ完全試合もやっているデービッド・ウェルズの2003年の0.8451、2004年の0.9199くらいしか記録がなく、クリフ・リーの0.5325は、左投手として化け物クラスの数値である。
Progressive Leaders & Records for Bases On Balls per 9 IP - Baseball-Reference.com


WHIP(Walks & Hits per IP)
四球が異常に少ないのだから、WHIP(イニングあたりのヒットと四球でランナーを出す率)がいいのは当たり前といえば、当たり前かもしれない。クリフ・リーの0.947は、いまのところア・リーグトップ。

1. クリフ・リー .947
2. Cahill (OAK) .981
3. Weaver (LAA) 1.095
4. Pavano (MIN) 1.107
5. Lester (BOS) 1.130
6. Hernandez (SEA) 1.138
7. Danks (CHW) 1.146
8. Lewis (TEX) 1.153
9. Braden (OAK) 1.154
10. Marcum (TOR) 1.160
Progressive Leaders & Records for Walks & Hits per IP - Baseball-Reference.com

ただ、WHIPの数値の良さについては、四球を出す率が異常に少ないわけだから、その分ヒットを打たれてこの数字になっている、ともいえるわけで、それを考慮すると手放しで喜ぶべき数値ではない、ともいえる。
現に、シアトルから移籍して以降、クリフ・リーの被打率は、かなり急上昇している。
5月 .248
6月 .222
7月 .211
8月 .277
Cliff Lee Stats, News, Photos - Texas Rangers - ESPN

やはりクリフ・リーが今年の歴史的な記録塗り替え作業に成功するとしたら、ベースになった好成績期間は明らかにロブ・ジョンソンとバッテリーを組んだシアトル在籍中の成績である。

2010シーズン ERA+(=Adjusted ERA+)
シアトル在籍時 172 (ほぼキャリア・ハイ)
テキサス 126
2チーム在籍トータル 150

2010シーズン ERA(=いわゆる防御率)
シアトル在籍時 2.34 (キャリア・ハイ)
テキサス 3.44
トータル 2.77
Cliff Lee Statistics and History - Baseball-Reference.com







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