August 26, 2010

8月のヤンキースとの3連戦で1試合2本のホームランを打ったイチローが、ヤンキースタジアムについて軽くコメントしていたが、セーフコ・フィールドとヤンキースタジアムの違いが気になって、ちょっと画像をこしらえてみた。
元データ:Clem's Baseball ~ Stadiums by Class

ただ、以下の2つの理由から、どの画像も「お遊びレベル」だ、ということを忘れて欲しくない。この画像だけを元にあれこれモノを言ってもらっても責任は持てない。
理由の1つ目は、元データの平面図(Clem's Baseball ~ Stadiums by Class)が「どの程度の正確さで作成されているか」、それがわからない、ということ。
2つ目の理由は、「球場の大きさは、必ずしも公称どおりの大きさ、公式に発表されている数値どおり作られているとは、限らない」ということがある。かつて観客席の数が公称の数字と実際の席数が異なる、なんてこともよくあったわけだが、残念な話である。

そういう制約があることを心得た上で、まぁ暇つぶしにでも眺めてもらいたい。


右打者天国のカムデンヤーズ
セーフコよりさらに左打者天国のヤンキースタジアム


カムデンヤーズ、セーフコ、新ヤンキースタジアム、この3つの球場はいずれも、1992年以降に大流行したネオ・クラシカル(新古典主義)のボールパークに分類されている。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年8月21日、ボルチモアのカムデンヤーズは、セーフコのお手本になった「新古典主義建築のボールパーク」。80年代のクッキーカッター・スタジアムさながらの問題を抱える「日本のスタジアム」。

セーフコ、カムデンヤーズ、ヤンキースタジアムの比較セーフコ、カムデンヤーズ、ヤンキースタジアムの比較図(オリジナル Copyright © damejima. All Rights Reserved.)
赤:セーフコ
緑:カムデンヤーズ
青:ヤンキースタジアム

こうして3つの球場を同じ平面に並べてみると、いくつかわかることがある。

セーフコとカムデンヤーズは、外野フェンスの形状が基本的に非常によく似ている。直線的で硬質なフォルムで、凸凹の位置も全体として似ている。それに比べ新ヤンキースタジアムは新古典主義に特徴的な左右非対称の球場ではあるが、外野フェンスは弧を描いた曲線的フォルムで、直線的な部分がない。
新古典主義のボールパークにもいろいろあって、ほとんどはセーフコやカムデンヤーズのような「直線的なフォルム」の球場が多いが、中には、新ヤンキースタジアム、ブッシュ・スタジアム、グレート・アメリカン・ボールパークのように「曲線的フォルム」をもつ球場も少数だがあるのである。

カムデンヤーズ、セーフコ、新ヤンキースタジアム、のうち、左中間がもっとも広いのはヤンキースタジアム。右中間がもっとも広いのはカムデンヤーズ。セーフコはそれぞれの中間である。シアトルからボルチモアに移籍した右打者のアダム・ジョーンズは、右打者地獄のセーフコよりも、右打者天国のカムデンヤーズのほうが幸せかもしれない。

カムデンヤーズを紹介した前記事(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年8月21日、ボルチモアのカムデンヤーズは、セーフコのお手本になった「新古典主義建築のボールパーク」。80年代のクッキーカッター・スタジアムさながらの問題を抱える「日本のスタジアム」。)で、「右打者に有利なカムデンヤーズと、左打者に有利なセーフコは、好対照な球場」と紹介したのだが、ヤンキースタジアムは、その左打者有利のセーフコより「さらに左打者に有利にできている」といえそうだ。


ヤンキースタジアムの
「狭いポール際のホームランの伝統」


セーフコとヤンキースタジアムの2つだけを比べてみると、面白いことがわかる。

セーフコ、ヤンキースタジアムの比較セーフコ、ヤンキースタジアムの比較図(オリジナル Copyright ���2010 damejima. All Rights Reserved.)

赤:セーフコ
青:ヤンキースタジアム

新ヤンキースタジアムは左中間が広く、セーフコは右中間が広いという特徴があるのだが、そんなことより注目してもらいたいのは「新ヤンキースタジアムのポール際が急激に丸まった形になっていて、その結果、両翼がたいへん狭いこと」だ。

たしかに新ヤンキースタジアムの左中間は広い。382フィートから最深部では399フィート、約121.6mもある(ことになっている)。
だが、なぜかレフトのポール際だけは318フィートしかなく、331フィートあるセーフコのレフトに比ると、新ヤンキースタジアムのほうが13フィート(約3.96メートル)も短い。
こうした現象はライトポール際ではもっとひどくて、セーフコ326フィートに対して新ヤンキースタジアムは314フィート(約95.7m)しかなく、新ヤンキースタジアムのほうが14フィート(約4.27m)も短い。

両翼95mの球場、というと、日本のプロ野球セ・リーグでいうなら「両翼が約90mしかない神宮球場よりはさすがに広いが、甲子園とほぼ変わらない程度の狭さ」ということになる。日本でもドーム球場のほとんどが国際試合の規格にあわせて両翼100メートルある今の時代(セーフコも両翼100メートル前後)に、両翼95メートルでは狭すぎる。

両翼の広さがほぼ同じ新ヤンキースタジアムと甲子園の形状の違い(Copyright ���2010 damejima. All Rights Reserved.)
ヤンキースタジアムと甲子園の比較赤い太線が甲子園球場。両翼の大きさはほぼ同じ2つの球場の形状を重ねてみた。新ヤンキースタジアムはセンターが非常に深く、左中間、右中間が狭い。特に右中間がつぶれた形をしている。甲子園は逆にセンターが浅く、左中間、右中間が深い。
だが2つの球場がどちらもポール際のフェンスが急激に丸くなっている。そのため、両翼が非常に狭いという点では、2つの球場はそっくりだ。

この「ポール際が急激に丸くなっていて、両翼が狭い新ヤンキースタジアム」は、ある意味「1920年代のベーブルース時代以来続いている、ヤンキースの伝統的な球場の構造」でもある。

ロビンソン・カノーのホームラン・チャート
ロビンソン・カノーのホームラン・チャート
(新ヤンキースタジアム、通算)
レフトポール際に注目。Robinson Cano Hitting Chart | yankees.com: Stats

新ヤンキースタジアムのポール際の狭さには、ヤンキースの歴史が詰まっている。

ベーブルースがレッドソックスからヤンキースに移籍してきた1920年に使っていたのは、当時ニューヨークに本拠地があった時代のジャイアンツ(現在のサンフランシスコ・ジャイアンツ)が使っていたポロ・グラウンズ
この球場は長方形だったため、センターがなんと483フィート、約147.2mもある(日本の主要な球場のセンターは116〜117m)のに対して、左右両ポールまでは、センターの半分程度の広さしかない(左279フィート 約85.0m、右257.67フィート 約78.5m)という異様な形の球場で、本当かどうかは確認してないが、なんでもポール際ならポップフライでも本塁打になったらしい。

ヤンキース移籍後のベーブ・ルースはこの「ポロ・グラウンズのポール際の異様な狭さ」の恩恵を受けたといわれていて、移籍してきた1920年シーズンに54本ものホームランを打った(前年は29本)。史上初のホームランバッターの登場ともいえるルースの人気沸騰で、ヤンキースもメジャー史上初の年間観客動員100万人を突破した。
だが、人気を奪われたポロ・グラウンズの主であるジャイアンツ側はこれを心よく思わず、ヤンキースに「1921年以降のポロ・グラウンズの使用差し止め」を言い渡したところ、ヤンキースはポロ・グラウンズからハーレム・リバーを渡ってちょうど反対側に、ライト側が異様に狭く、またポロ・グラウンズと同じようにライトポールまでの距離が極端に短い旧ヤンキースタジアムを建設した。

つまり、1923年開場の旧ヤンキースタジアムは、単にライト側がレフトに比べて異様に狭いというだけではなくて、「両翼のポール際が異様に狭いというポロ・グラウンズの非常に特殊なフィールド形状」を踏襲して、「ベーブルースのホームランのためにライト、およびライトポール際が異様に狭くしていある」球場というわけだ。旧ヤンキースタジアムのライトポールは296フィート、約90.2mしかなく、現在の神宮球場くらい狭い。
だからこそ「新ヤンキースタジアムでポール際が急に狭くなっていてホームランが入りやすいのも、ポロ・グラウンズとベーブ・ルースの1920年代に始まって、旧ヤンキースタジアムでもしっかりと継承された、ヤンキースの古くからある伝統的な球場のつくり」というわけなのだ。

Polo Groundsポロ・グラウンズ

Clem's Baseball ~ Polo Grounds

旧ヤンキースタジアム旧ヤンキースタジアム

Clem's Baseball ~ Yankee Stadium

セーフコと球場のつくりが似ているカムデンヤーズと、新ヤンキースタジアムを比べてみると、基本的な部分ではやはり、左中間は新ヤンキースタジアムが広く、右中間はカムデンヤーズのほうが広いが、ポール際に関してだけは、やはり両翼ともに新ヤンキースタジアムのほうが狭くなっていることがわかる。
なにも、新ヤンキースタジアムと形状が特別違う球場を探し出してきて、新ヤンキースタジアムをけなしたり、おとしめたりしているわけではないのだ(笑)

カムデンヤーズ、ヤンキースタジアムの比較カムデンヤーズ、ヤンキースタジアムの比較(オリジナル Copyright © damejima. All Rights Reserved.)

緑:カムデンヤーズ
青:ヤンキースタジアム







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