September 06, 2010

前の記事ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年8月29日、移籍後のクリフ・リーが打たれる原因を考えてみる。(1)2010年の「ア・リーグ東地区風カットボール多用配球スタイル」が東地区チームとの対戦に災いしているのか?

前回は、今年あたりから急速にカットボールを多用した組み立てで投げるようになったクリフ・リーが、シアトル時代には好投できたのに、テキサス移籍後に、なぜかア・リーグ東地区のチームを中心に打者につかまるようになった、という話をした。
今回は、クリフ・リーの使う球種には「カウントによって特定パターンがある」ことを示してみようと思う。

だが、「クリフ・リー・パターン」を見る前に、単純な誤解を避ける意味で、彼のピッチングの前提になっている「メジャー流の配球の基本の形」を確認しておく必要があると思う。


まず、大づかみに彼の特徴をみてみる。
データを見れば誰でもわかるように、クリフ・リーの投げる球種には次のような「カウント別の大きな流れ、大きな原則」がある。これはメジャーの投手に共通
原則1)打者を追い込むと「決め球の変化球」を投げる(=変化球の割合が急に高くなる。ストレートがゼロになるわけではない)
原則2)カウントが悪くなると「ストレート」を投げる
2010年のカウント別球種
Cliff Lee » Splits » 2010 » Pitching | FanGraphs Baseball (Pitch Typesという項目参照)
2008年のカウント別球種
Cliff Lee » Splits » 2008 » Pitching | FanGraphs Baseball

勘違いしてもらっても困るのだが、これはあくまで「メジャーの投手によくあるパターン」だ。だから、この特徴だけをとって「クリフ・リーはカウントによって使う球種があまりにもワンパターンだ。だから打たれるのだ」と早合点するのは、完全に間違っている。
元メジャーリーガーの阪神ブラゼルが「来日したばかりの頃、日米の配球の違いに驚いた。日本では3-0からでも変化球を投げる。慣れるのに時間がかかった」とコメントした話をかつて紹介したが、「メジャーの投手が3-0、2-0という投手不利カウントになったらストレートを投げるのは、お約束」であり、また、例えば「ホームベースの真ん中あたりでストライクゾーンからボールに落ちていく変化球」に代表されるように、「決め球は基本的には変化球である」のも、よくある話だ。(と、いうことは何度もこのブログで書いてきた。つうか、もういい加減、書くのも飽きてきた)

ストレートのスピードがそれほどでもないクリフ・リーだが、カウントが悪くなれば、(「メジャーの他の投手たちと同じように」という意味で)ストレートでストライクをとりにいくし、打者を追い込んだ場合に投げる決め球は変化球で、他の投手たちとなにも変わらない。
2008年までなら決め球は「カーブ」、今年などは「カットボール」だ。もちろん追い込んでからストレートを投げる割合がゼロになるわけではない。変化球を投げる割合がかなり増える、という意味だ。

普段、打者を見下ろしている間はストレートばかり投げこんでくるボストンのクローザー、パペルボンも、自慢のストレートが狙われてランナーを貯めて焦ったら「スプリット」を投げるし、あれほどストレートばかり投げたがるアーズマだって、ストレートを痛打されると、ようやくキャッチャーの変化球のサインに同意して変化球を投げて、なんとかピンチをかわそうとする。
ストレートの速度だけで打者をかわせるほどメジャーは甘くないことは、ストレート自慢のピッチャーたちだって誰だって、何度も痛い目を見てわかっている。


既に何度も書いたように、この「カウントによって使う球種が、日米で非常に大きく違うこと」は、日米の野球文化の根本的な差異の非常に大きな項目のひとつであって、「城島問題」の本質のひとつでもある。
配球教科書的にいうと、、ダメ捕手城島のように「シルバのようなシンカー系の投手(ただ、彼は実際にはもっと色々な球種を投げられる)であれ、アーズマのような高目のリスクの高いストレートしか投げられないがそれを決め球にしたい投手であれ、また、バルガスのようなチェンジアップによる緩急が持ち味の投手、ベダードウオッシュバーンのようなカーブを決め球にもつ投手、ロウモローのようなストレートはバカ早いがそれだけでは勝負にならず変化球の目くらましを必要とする若手投手であれ、あらゆるタイプの投手に、決め球として、アウトコースの低めいっぱいにピンポイントで決まるストレート(あるいはスライダー)を要求するような馬鹿リード」が、投手の被ホームランを増やし、与四球を増やし、防御率をはじめ、あらゆる投手成績を低下させて、最後は投手陣全員に嫌われるのは当たり前。
組み立ては投手の持ち球やタイプによって変わるのが自然であって、キャッチャーが画一的に決められるものではないのに、それを無理にキャッチャーが決めてしまうような無意味なことをすれば、シアトルのどの投手がマウンドに上がろうが、相手チームは「城島の配球パターンは、他のどのキャッチャーよりワンパターンで、スカウンティングしやすいわけだが、そのワンパターン・リードさえ解析できてしてしまえば、シアトルの投手全員を打ちまくることができる」、そういう特殊な事態が起こる。(というか、実際にそういう状態が何年か続いた)
メジャーに来て、日本とはまるで違うメジャーの野球の「を学びもしないで自分流を投手全員に押し付けようとして大失敗し、チームに大打撃を与えたクセに大金せしめて日本に逃げ帰ったのが、「城島」というダメ捕手である。投手全員が一斉に崩れる現象は、投手のコントロールが悪いせいではなく、投手の個性を無視した画一的なリードが悪いのである。
関連記事:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(3)「低め」とかいう迷信 あるいは 決め球にまつわる文化的差異


こんどはクリフ・リーの球種ごとの特徴をみてみる。

特徴1)ストレートは速くない
90マイル程度のスピードしか出ていない日もある。だから、もともとストレートにはスピードはあまりないクリフ・リーの場合、ストレートとカットボールにほとんどスピード差が少ない。そのため、カットボールを多投する組み立てをするには、もともとピッチングの緩急に不安があることに注意すべきだろう。
クリフ・リーのストレートが遅いことはシアトルファンは誰でも知っていることで、ゲームを毎日見ていればわかることだが、まぁ、一応データも挙げておく。
資料:Cliff Lee ≫ PitchFx ≫ Velocity Graphs ≫ FA | FanGraphs Baseball
だが、ここでも勘違いしてはいけないのは、92マイルの速度のショーン・ホワイトのシンカーのほうが、クリフ・リーのストレートより多少早いからといって、「投手としてショーン・ホワイトのほうがクリフ・リーより優れている」とは言えない、ということだ。
投手の能力はストレートの速さだけで決まったりはしない。

特徴2)持ち球の種類は限られている
クリフ・リーは基本的な球種のみしか使わない。基本的にストレート多めの投手。決め球に使うのは、ほぼカットボール、第二の選択肢としてはカーブだ。チェンジアップもあるが、これは組み立てに使う程度。
資料:Cliff Lee ≫ Statistics ≫ Pitching | FanGraphs Baseball

特徴3)決め球はカーブからカットボールに
サイ・ヤング賞投手になった2008年頃、決め球は「カーブ」だった。これは「2008年当時は、緩急を使いながら抑える投手だった」ことを意味する。だが、最近になって、理由はわからないが「カットボール」を多用するピッチングに変わってきた。
関連記事:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月23日、クリフ・リー「鳥肌モノ」の115球、4試合連続無四球で6勝目。「ストレートのかわりにカットボールでカウントを作って、変化球で仕留める」クリフ・リーの「東地区っぽいピッチング・スタイル」は、実は、2010年シアトルモデル。


以上の2つの原則と3つの特徴から、クリフ・リーの打者への配球には、ひとつの典型的な「クリフ・リー・パターン」が「できてしまう」ことは、たぶん説明しなくても誰でもわかると思う。
試しに作ってみると、こんな風になる。メジャーのスターターらしいパターンで、よく言えばシンプルだし、悪く言えばバリエーションがない。


配球パターンの原則1)
「初球は90マイルちょっとのストレートから入る」
「3球目(または4球目)87マイルくらいのカットボール(または78マイルくらいのカーブ)で決める」


もちろん、逆パターンもある。初球にストレートではなく、チェンジアップやカットボールといった変化球を使い、最後をストレートで決めにくるのが逆パターンだ。
この逆パターンは、だいたいの場合、相手打者が1巡か2巡してから使うバリエーションであって、2打席目、3打席目に打者がクリフ・リーの初球ストレートを狙ってくるのをかわすために使われるだけの話。メインの投球パターンではない。
基本的に「クリフ・リーの初球はストレート」だと思う。打者が慣れていない試合序盤ではなおさら、初球にストレートを投げる確率はかなり高いと思っていい。
ここで覚えておかなくてはいけないのは、ストレートの遅いクリフ・リーの場合、2008年のように決め球にカーブを使うならストレートがいくら遅くても緩急がつけられるが、最近のように「カットボールを決め球にすると、ストレートとの緩急がつけられない」ことだ。

配球パターンの原則2)
カウント次第で3球目(または4球目)に投げる球種が決まる

打者を追い込んだ場合(カウント0-2、1-2)
カットボール(またはカーブ)で決めに行く
カウントを悪くした場合(カウント2-0、3-0)
ストレートでストライクをとりにいく
ストレートそのものにパーフェクトな威力があるわけではないクリフ・リーの場合、カウントを悪くしてからカウントをとりにいった甘いストレートを痛打される事態はできるだけ避けたいだろう。
となると、最初の2球で、できれば打者を追い込んでしまいたい。だから初球、2球目にボール球を投げて打者に余裕を与えるわけにはいかない。ストライクをどんどん取りに行くのである。これも覚えておく必要があるだろう。


さて、ここまで勝手に決め付けてきたが、実際にこんな風に投げているのか?
気になるだろうから、典型的な「クリフ・リー・パターン」の例を挙げてみようと思う。

これは打者をキレイにうちとったほうの例。
2010年6月7日シアトル在籍時代の、テキサスとのゲーム、初球と2球目ストレートで打者を追い込んだら、そこで間髪を入れずに決め球のカーブを投げて、三球三振させている。
この「ストレート、ストレート、カーブ」、これこそが、まさに「クリフ・リー・パターン」だし、本来の彼のピッチング、彼の真骨頂だと、ブログ主は思っている。
決め球に「カットボール」でなく、「カーブ」を使っている
ところが、2008年サイ・ヤング賞当時の配球であり、また、2010年シアトル在籍時の基本パターンのひとつというイメージがある。もしテキサス移籍以降なら、カーブではなく、カットボールを使っている場面だろう。
2010年6月7日テキサス戦7回表 クリフ・リーの配球2010年6月7日
テキサス戦7回表

初球  ストレート
2球目 ストレート
3球目 カーブ(三振)
初球のストレートでストライクがとれていれば、3球目か4球目にカーブでうちとるのをあらかじめイメージしつつ、2球目も、もちろんストライクをとりにいくわけだが、もし「初球がボール」だったら話は結構変わってくる。カウントを悪くしたときに限って、ストレート4連投、なんていう単調な攻めになることがある。なぜなら、カウントをとりにいくのもストレートなら、悪いカウントになって投げるのもストレートだから、ストレートの連投になってしまうのだ。
だからこそクリフ・リーは「初球のストライク」を大事にする。初球がストライクのストレートだからこそ、決め球の変化球が生きてくるからだ。


次に、テキサス移籍後の打たれた例もみてみよう。
2010年8月26日、5回を投げて5失点したミネソタ戦だ。
Minnesota Twins at Texas Rangers - August 26, 2010 | MLB.com Gameday

この打たれるパターンがどうなのか問題なのだが、長くなるので、次回。







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