September 13, 2010

テキサスに移籍してからのクリフ・リーがなぜ打たれまくったのか。それを考えるにあたって、記事を既に2つ書いた。それぞれの主旨は、以下の通りだ。


1)クリフ・リーの最近の配球パターンが変わった。
2008年までの「ストレートとカーブの緩急で打者を仕留めるパターン」から、2010年は「ストレートとのスピード差の少ないカットボールを多用するパターン」に変化した。そして、カットボールを多用した配球に慣れているア・リーグ東地区のチームを中心に打ち崩されるようになった。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年8月29日、移籍後のクリフ・リーが打たれる原因を考えてみる。(1)2010年の「ア・リーグ東地区風カットボール多用配球スタイル」が東地区チームとの対戦に災いしているのか?

2)クリフ・リーの配球には、そもそも「特定カウントで投げる球種が決まっているという、配球のクセ」がハッキリとあり、打者からみてカウントで投げる球種がある程度読めてしまう部分があった。
具体的には、初球はストレートで入り、その後、打者を追い込むことができた場合はカットボールで決める。そうでなく、ボールが先行すればストレートでカウントを改善する。ストレートとカットボールのスピード差は、あまり無い。チェンジアップは2つ目のストライクをとって打者を追い込むための球で、決め球ではない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月5日、移籍後のクリフ・リーが打たれる原因を考えてみる。(2)クリフ・リーには「カウントによって、投げる球種に特定パターン」がある


実際のゲームではどうなのだろう。
ちょうど今日2010年9月12日のヤンキース戦に先発してひさびさに快勝し、11勝目を挙げたところだから、短期のレンジで、テキサスに移籍後に打たれた試合と抑えた試合とを比較できる。
まずは打たれた2010年8月26日ミネソタ戦をみてみる。(たいへん読むのに骨が折れると思うが、我慢して読み込んでもらえるとありがたい。別窓にGamedayを開いてイニングごとに追いかけるとわかりやすくなると思う。)


打たれたゲーム
2010年8月26日 ミネソタ戦 5回5失点
Minnesota Twins at Texas Rangers - August 26, 2010 | MLB.com Gameday

1回表
三者凡退。3人とも「初球ストレート」。まさに「クリフ・リー パターン」そのもの。

2回表
打者7人、3失点。7人全員に「初球ストレート」を投げた。典型的な「クリフ・リー パターン」
ヒットされたのは、1人目、2人目、4人目。3人とも、「クリフ・リー パターン」である。
1人目のジョナサン・クベルには、フルカウントから「決めにいったカットボール」を打たれ、2人目のマイケル・カダイアーには、「初球ストレート」をヒットされた。
3失点は、4人目のデルモン・ヤングの3ランで、初球ストレートでストライクをとり、チェンジアップで打者を追い込みにかかったところで、ボールが高めに浮いてホームランを浴びた。

3回表
打者6人で2失点。6人中、4人はパターンどおりの「初球ストレート」、残り2人は初球カットボール。決め球は「追い込んでからカットボール」という「クリフ・リー パターン」を使った。
決定的な2失点は、5人目カダイアーに「初球ストレート」を投げてから、2球目にインコースへのカットボールを投げて追い込みにかかったところを狙い打ちされたもの。

4回表
三者凡退。このイニングだけは、初球にチェンジアップ、決め球にカーブという例外パターンを多く使い、あっさりミネソタ打線を抑えた。

5回表
打者4人、無失点。全員が「初球ストレート」で、「決め球はカットボールか、ストレート」という基本パターン。前の回にパターンを変えて本来の調子をとり戻したように見えたにもかかわらず、またもや「クリフ・リー パターン 一辺倒」に戻ってしまった。この回で降板。



抑えたゲーム
2010年9月12日 ヤンキース戦 8回1失点
New York Yankees at Texas Rangers - September 12, 2010 | MLB.com Gameday

1回表
三者凡退。3人への初球はそれぞれ、ストレート、カットボール、ストレート。珍しくスライダーも使った。

2回表
三者凡退。3人への初球はそれぞれ、カットボール、ストレート、カットボール。ちょうど1回と真逆のパターンになる。打者は早いカウントから打ちにきて凡退。(カウントによって投げる球種が決まる配球癖のあるクリフ・リー攻略は、狙い球を決めて、早いカウントから打ちにいくのが正解なわけだが、この日のクリフ・リーは打者の狙いをかわしにかかって、それが成功した)

3回表
三者凡退。3人への初球はそれぞれ、カットボール、ストレート、ストレート。1回とも2回ともまた違うパターン。ストレート、カーブ、カットボールを様々なバリエーションで投げて打者を攻略した。

4回表
三者凡退。3人への初球はそれぞれ、ストレート、カットボール、ストレート。

5回表
三者凡退。3人への初球はそれぞれ、カットボール、ストレート、ストレート。決め球は主にストレート。

6回表
打者6人1失点。先頭打者に「初球ストレート、2球目ストレート、3球目カットボール」の典型的な「クリフ・リー パターン」。2人目、「初球ストレート」から入って、5球目をヒットされる。3人目「ストレート、チェンジアップ、カットボール」の、これも典型的な「クリフ・リー パターン」。4人目、デレク・ジーターに「初球ストレート」の典型的な「クリフ・リー パターン」を二塁打され、失点。5人目、6人目も「初球ストレート」だが、なんとか1失点に抑える。

7回表
三者凡退。3人への初球はそれぞれ、ストレート、カットボール、ストレート。初球の球種を1人ずつ変えて、打者の狙いをはずした。

8回表
三者凡退。
1人目をストレート連投で0-2と追い込んだ。基本パターンどおりなら、3球目は「カットボール」または「カーブ」だが、ここでは「パターンにないストレート3連投」で三球三振
2人目、先頭打者と同じようにストレートを2球続けたが、こんどの3球目は1人目のような3球連続ストレート勝負ではなく、「「クリフ・リー パターン」どおりのカットボール」を投げて、セカンドゴロに抑えた。例外(1人目)と、典型的パターン(2人目)をうまく使い分けた。
3人目は「初球ストレート」を狙い打たれたが、たまたまセカンドポップフライで、お役御免。



別に、このブログの判断に従う必要はない。
打たれた2010年8月26日ミネソタ戦、抑えた2010年9月12日のヤンキース戦を、自分なりの価値観で比較してみるといいと思う。たぶん、両方のゲームでのクリフ・リーが、かなり違った組み立てをしていることに気づくとは思う。ミネソタ戦のクリフ・リーは非常に単調なのだ。

2つのゲームの違いと共通点
1)ミネソタ戦はいわゆる「クリフ・リー パターン」どおり
2)ヤンキース戦では、かなりの数の打者に対して「初球にカットボールを投げた。場合によっては、「初球と2球目、続けてカットボール」と、クリフ・リーにしては珍しい組み立ても見せつつ、その一方では、いわゆる「典型的なクリフ・リー パターン」も混ぜて、打者に的を絞られない工夫をした。
3)それでも、両方のゲームでの失点パターンは共通している。打たれたのは「初球ストレート」、または、「初球にストレートでストライクをとっておいて、2球目に打者を追い込みにかかったチェンジアップなどの変化球」を打たれて失点につながっている。これは、まさに「典型的なクリフ・リー パターン」だ。
4)ミネソタ戦と、ヤンキース戦は、キャッチャーが違う。ミネソタ戦はベンジー・モリーナ。ヤンキース戦は、マット・トレナー
ちょっと直感的な話なのだが、クリフ・リーとベンジー・モリーナはまったく噛み合ってないと、ブログ主は思っている。


クリフ・リーに必要なタイプのキャッチャーとは
クリフ・リーの持ち球は、もともと種類は少ない。
だが、(体調が万全で、十分なコントロール、球のキレがあるときなら)その持ち球は、どれもこれもストライクをとれて、三振もとれる球ばかりだ。ストレートでもストライクも三振もとれるし、カットボールでも、カーブでも同じだ。

だが、それにしたって、以前も言ったことだが、クリフ・リーのピッチングはよく言えばシンプルで、悪く言えばワン・パターンだ。持ち球の種類は限られているし、ストレートの速さもない。下手をすれば「球種パターンを打者に読まれることで、滅多打ちを食らう可能性」が、もともとあった、と考えられる。
まして、昔のようなストレートとカーブの緩急をつけるのではなく、「ストレートとカットボールという、わざとスピードに差をつけない配球パターン」に移行するとなると、緩急がない分、球種の少ないクリフ・リーは、よけい打者に読まれやすくなる可能性はあった。(たとえば、バカスカ打たれまくるときのアトランタの川上投手のように)


そういうリスクを避ける意味で、クリフ・リーという「シンプルさが生命線」の投手にとっては、彼の限られた配球パターンに迷彩をほどこす、というか、バリエーションをつけ続ける作業のできる「引き出しの多いキャッチャー」が必要不可欠だ、と思うのである。
(だからといって、自分の基本スタイルが確立しているピッチャーだからこそ、キャッチャーからクリフ・リーのポリシーに反する提案や、彼が必要としている以上の提案をしたとしても、「投げるのはオレだ。余計なことをして、オレの邪魔をするな」という話になるのではないか、とも思う。そこがなかなか難しい。)

そういう意味で、彼のような投手にはゲーム前に対戦相手の打者を全て調べあげてくる律儀さがあるが、投手との間での余計な対立は絶対に避けるロブ・ジョンソンのような「データ上の根拠がある提案は積極的にするが、投手に押し付けたりしない控え目さももっているキャッチャー」が必要不可欠(または合っている捕手のタイプのひとつ)なんだろうと考える。
これはあくまで憶測だが、もしベンジー・モリーナが「相手チームのスカウンティングデータは適当にナナメ読みするだけで、むしろ、相手チームがどこであろうと、結局は自分の長年の経験だけに頼ってサインを出して、それを投手に押し付けようとするマンネリなベテラン・キャッチャー」だとしたら、キャッチャーの仕事に対する強いこだわりのあるクリフ・リーのような投手のパートナーには絶対になれないと思う。そういうマンネリタイプの捕手を、クリフ・リーは必要としていない
(エンゼルス戦のランナーズ・オンのシチュエーションで、打者を打ち取れると思って、かえって松井の好きなインコースにストライクを置きにいくサインを出してしまうジョシュ・バードなども同じ)

もちろん、ダメ捕手城島がどちらのタイプだったかは、言うまでもない。







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