October 18, 2010

阪神対巨人のクライマックスシリーズ第2戦、キャッチャー城島は、8回表の打者6人全員に「ストレート、フォーク、フォーク、フォークという配球」、9回表の打者6人全員に「フォークで入って、ストレートで決める配球」をして、結果的に大逆転負けして、チームをポストシーズン敗退に導いた

前記事の(1)で結論は書いたから、この(2)では、もうちょっと詳細な部分を書いてみる。

資料:Yahoo!プロ野球 - 2010年10月17日 阪神vs.巨人 一球速報


8回表、9回表のデータを見る上で、最初に知っておかなければならない「ゲーム全体の流れ」がある。ゲーム当初からの巨人の打者の狙い、阪神バッテリーの狙い、である。このくらいのことは頭に入れてから見ないと、まるで面白くもなんともない。

巨人側・打者の狙い球
1)1番坂本、7番長野の2人は、基本的に「変化球狙い
2)小笠原ラミレス高橋由阿部の主軸4人は
  基本的に「ストレート狙い(特に高橋由)」
  ただ「フォークも振ってくるが、空振りが多い。
  ストレートしかバットに当たらいない(ラミレス)」
  ことも多少ある

阪神バッテリー側・配球上の狙い
1)先発・久保の段階から「フォーク」は決め球に使っていた
2)2番亀井は、阪神バッテリーが
  「ここで打線のつながりを断ち切る」と決めているバッター
  他のバッターとは攻め方を変えている
3)3番・小笠原には「インコース攻め」を徹底
4)6番・阿部に対する決め球は「フォーク」


攻守両チームの狙いを突きあわせるとわかると思うが、両チームの「狙い」は、いくつかの部分で「最初から勝ち負けが決してしまって」いて、さらに戦略勝負では基本的に最初から巨人側が勝っている。
なぜなら巨人打線においては、主軸バッターは「ストレート狙い」、下位の長野から1番・坂本までの打者は「変化球狙い」と、メリハリをつけていることについて、阪神バッテリーはゲームが終わってしまうまで、ほとんど気づいていないか、十分な対策をしていないからだ。
たとえば、ストレートの狙いの高橋由の2ランだが、打った球はデータ上は「スライダー」と記録されているが、コースからみて、たぶん実際には投手・久保田のスライダーが高めに抜けた球だろう。だから、打った高橋由にしてみれば「棒球のストレートを打った」という感覚だろうと思う。つまり、スライダーを狙い打ったというより、「ストレート狙いのタイミングが効を奏した」というほうが正しい。
また、試合序盤にインコースをファウルか空振りばかりして、簡単にストライクをとらせてくれた小笠原に対する「インコース攻め配球」を、ピッチャーが久保田、藤川に変わったとたん、城島は「アウトコース低めの変化球で決める配球」に変えてしまって、アウトコースを痛打されまくっている。
この2つの例などはダメ捕手城島が、打者の狙いを感じとって配球をその場で発想、変更するのではなくて、「あらかじめ考えてあった安易な配球パターンを、相手の出方も見ずに、ただただ実行しているだけ」という動かぬ証拠である。

両軍の「狙い」の細かい勝ち負け勘定
1)坂本の「変化球狙い」は、坂本の勝ち
2)亀井を徹底して抑えて打線を分断する狙いは、
  阪神側の狙い通り。
  ところが8回の四球だけは、亀井の勝ち
  出塁への執念が、2点タイムリーを呼び込んだ。
3)小笠原へのインコース攻めは序盤だけは効を奏した。
  だが投手交代後に
  変化球でアウトローをつく配球に変えてしまい、
  そのアウトローを打ちまくられた

4)ラミレスに、3球続けてフォークを投げたことで、
  適応力の高い打者であるラミレスの目が慣れて
  逆転の2点タイムリーを浴びた

5)一貫してストレート狙いの高橋由の2ランは、
  おそらく阪神・久保田のスライダーが抜けた失投
6)阿部へのフォーク攻めは、一貫して阪神側の勝ち


さて、前提が出揃ったところで、各イニングを詳しく見てみる。
(以下、画像はクリックすると別窓で拡大)

まずは、8回表


先頭打者 脇谷
4球目フォークをピッチャーゴロ

2010年10月17日 阪神vs.巨人 8回表 先頭打者脇谷ストレート2球のあと、フォーク、フォークで凡退。初球・高めのストレートはファウルしたが、3球目・真ん中の甘いフォークは見逃している。おそらく、8回から打席に入った交代選手なだけに、打撃の照準をピタリと合わせるまでに至らなかったのだろう。


2人目の打者 坂本
狙いのはずのフォークで三振

2010年10月17日 阪神vs.巨人 8回表 2人目打者 坂本脇谷と違って、最初の打席から一貫して変化球に対応している。第1打席、第2打席の連続ヒットは、いずれもフォーク。
それだけに、8回に阪神の投手が、持ち球の種類が少なくフォークのある藤川に代わったことで、坂本の「フォーク狙い」がピタリとハマるはずだった。
だが、フォーク狙いがはまったことが、かえって災いして、外のボールになるフォークを我慢できずに、三振した。やはり野球は簡単ではない。


3人目の打者 亀井
粘り勝ちの四球

2010年10月17日 阪神vs.巨人 8回表 3人目打者 亀井阿部と並んで、このゲーム、最大の安全牌のはずの打者。
だが、よく調べるとわかるのだが、この日の亀井がここまでことごとく凡退しているのは、どの打席でも「他の打者には使わない配球ばかり」されているからだ。
例えばこのイニングでも、「初球からフォークという配球をされたのは、亀井だけ」。1番・好調の坂本と中軸打者の繋がりを切断することで大量失点を防ぎたい阪神バッテリーにしてみると、この2番亀井だけは「どうしても打たせるわけにいかなかった」はず。
実際、もしこのゲームの序盤で亀井が打線を繋いでさえいれば、間違いなく14安打5四球の巨人のワンサイドゲームになっていた。
その「阪神側が絶対に凡退させなければならない、安全牌のはずの亀井」が「2アウトから選んだ四球」だからこそ、この四球には非常に大きな価値があった


4人目の打者 小笠原
初球ストレートを二塁打

2010年10月17日 阪神vs.巨人 8回表 4人目打者 小笠原「甲子園球場では打てない」と言われ続けてきた打者だけに、小笠原のバット復活は、巨人がクライマックス・シリーズ最初の関門を突破できた大きな要因に挙げていいだろう。
それでも、このゲームの序盤、小笠原は阪神バッテリーの執拗なインコース攻めに苦しんでいた
バットを長く使い、長い竿を力まかせに振り回して唸らせるように「ブンッ!」と振り回す特殊なスイングのプルヒッターなだけに、バッテリーがインコースを執拗に攻めたくなること自体は、よくわかる。(小笠原がインコースを打つのが下手だ、という意味ではない)
インコースを打つ場合、ベース際に立って、腕を小さく折りたたんでバットヘッドを自分の腹の内側に抜くように打つ打者も多いが、小笠原はベースから離れて立って、踏み込んで、なりふり構わずフルスイングしてくる。
逆にいうと、バットヘッドが遠回りしてくるような感じのスイングなだけに、フルスイングでスイングスピードを上げないと、インコースの速球には振り遅れが発生しやすくなりそうだ。
だからこそ、個性的なスイングスタイルをもつ小笠原は、インコースを窮屈なフルスイングで振り抜くよりも、腕を長く使って大きく振り回せるアウトコースのほうが、かえって打球をライトに引っ張りやすい気がする。
ゲーム序盤に「しつこいインコース攻め」で小笠原を凡退させ続けていた阪神バッテリーだったが、ゲーム中盤以降はその「インコース攻め」をパタリとやめてしまった。これは、投手が藤川に代わった8回に配球を変え、「ストレートを1球だけ見せておき、その後は、ひたすらアウトコース低めにフォークを連投し続ける」という、アウトコース主体の配球に固定されたためだろうと確信する。(もちろん「ランナーが出ると城島は必ずアウトローを突いてくる」という典型的パターンでもある)
安易に配球戦略を変えたために、小笠原にアウトコース低めをライトに引っ張られてしまい、阪神バッテリーは二塁打を許した。


5人目の打者 ラミレス
合っていなかったフォークを、逆転の2点タイムリー

2010年10月17日 阪神vs.巨人 8回表 5人目打者 ラミレス2点タイムリーはアウトコース低めのボールっぽいフォークだが、2打席目を見ると、そのフォークで三振してもいる。
だから、明らかにストレート狙いに徹していたように見える高橋由などと違って、ラミレスはストレートだけを狙っているというより、単に、試合序盤、久保のフォークに合わせきれてなかっただけだろう、と考える。
試合後のラミレスは8回の打席について「ホームランはいらない。なんとかヒットを打とうと思った」と発言している。これなど聞いても、彼はシチュエーションに対応できる柔軟性の高いバッターであり、ストレートだけを狙うとは思えない。
他のインタビューでは「もし(打った藤川のフォークが)ワンバウンドだったら空振りしていただろう。だけど、そうではなかったから、ついていけた」なんてことを、正直に言っている。だからどうみてもラミレスには「フォークが来るのはわかっているのだが、ついていけてない」という感覚があったことになる。
もし、阪神バッテリーが3球も続けてフォークを投げたことで、ラミレスの目が「アウトコース低めのフォークの軌道に慣れて」いなければ、この逆転タイムリーは生まれていない、ということだ。


6人目の打者 阿部
2球目フォークをセカンドゴロ

2010年10月17日 阪神vs.巨人 8回表 6人目打者 阿部ブログ主が「ダメ捕手城島がこのイニングの配球をイニング開始前から決めていた」と確信する大きな根拠のひとつは、この日は合っていなかったフォークを執念で打ち崩したラミレスの2点タイムリーより、むしろ、このゴロアウトになった阿部の打席だ。
負ければ終わりのこの大事なゲーム、たとえ逆転の2点タイムリーを浴びた直後とはいえ、いくらなんでも、まだ1点差だ。普通、ラミレスと阿部、まるっきり同じ配球はしないだろう、と、誰しも考える
ところが、だ。
阿部に対して、初球ストレート、2球目フォークで、セカンドゴロ。藤川球児はストレートが早いだけに、球速で「投げようとした球種」がわかる。ストレートなのか、それとも、フォークのすっぽ抜けなのか、間違えようがない。明らかに阿部への配球は、ラミレスへの配球をそのまま踏襲している。
だからこそ。2人さかのぼって、小笠原が二塁打をかました「初球のストレート」も、明らかに「2球目以降(あるは決め球として)アウトコース低めにフォークを連投していく配球をするための伏線」と、言い切ることができるのである。




9回表

だいぶ書いていて疲れてきた。画像を処理するのがめんどくさくなってきたので、記号だけで済まさせていただく。下記は、9回の打者と、それぞれに使われた球種。Fがフォーク、Sがストレート
ダメ捕手城島の9回表の配球が、8回表同様に、いかに単純で馬鹿馬鹿しいものだったかを知るには、これを見るだけで十分だ。
このイニングでは初球、2球目にフォーク、3球目以降がストレートと、8回と全く逆の配球を使っている

高橋由  フライアウト FFS
長野   四球 SFSSSSS
(送りバント)
脇谷   四球 FFSS
坂本   四球 FFSSS
亀井   フライアウト SSS

前回の記事の記述で、「もし亀井が打線を繋いでいたら、このゲームは巨人のワンサイドゲームになっていた。阪神バッテリーは、亀井に、先頭の坂本と主軸打者を繋ぐ役割をさせないために、亀井に対してだけ特別な配球をして、それを防いだ」と書いた。

8回表の阪神バッテリーは「初球にストレートをみせておいて、その後はアウトコース低めのフォークを連投する」という配球をみせていたが、亀井に対してだけは「初球にフォーク」を投げた
9回表の阪神バッテリーは「フォークを2球みせておいて、その後はストレート連投」と、8回の配球とまったく逆の配球を見せて巨人打線をかわそうとしたが、この9回も、亀井に対してだけ「初球からストレートで押して」うちとって、2死満塁という大量失点のピンチを防いだ。


上のほうで書いたように、
8回表に、阪神バッテリーが主として対戦したのは「ストレート狙いをしてくる主軸打者」だったわけだが、ダメ捕手城島が「初球にストレートをみせておいて、その後はアウトコース低めのフォークをひたすら連投する」という配球を「8回のすべての打者に続ける」という馬鹿すぎるリードをしたせいで、ゲーム序盤のインコース攻めに手こずっていた小笠原の2塁打を生み、必ずしもフォークにあっていなかったラミレスの目をフォークに慣れさせる結果になって、逆転の2点タイムリーに繋がった。

次に、9回表、阪神バッテリーが対戦したのは、「変化球狙い」の長野、坂本など、下位から先頭にかけての打者たちだったわけだが、このイニングの阪神バッテリーは「フォークを2球ほどみせておいて、その後はストレート連投」と、8回とはまったく逆の配球をみせた
この回の藤川球児は既に投げ過ぎの状態にあるだけでなく、8回のフォークの投げ過ぎで、おそらく握力もなくなってきていたことだろう。巨人打線の徹底した待球によって満塁のピンチを招いた。







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