October 20, 2010

2002年から元クリーブランドの監督をしていたEric Wedgeが、ワカマツに代わるシアトルの新監督に決まったらしいが、あまり関心はない。監督が誰になろうと、シアトルのチーム体質の弱さを決めている要因は「全く野球と関係ないところ」に存在しているからだ。


それにしても、
Eric Wedgeが「どういう人物か」を安易に話題にしたがる人に限って、やれ彼がかつてミルトン・ブラッドリーと揉めたことがあるだの、なんだの、そういう、どうでもいいことばかり気にしている。ほんと、ブラッドリーとの関係など、どうでもいい。


そんな、どうでもいいことより、むしろブログ主が非常に気になっているのは、2002年からクリーブランドの監督になって、最優秀監督賞まで貰ったことのある、このEric Wedgeの「本当の手腕」はどの程度のものなのか?ということと、Eric Wedgeと、2007年5月にクリーブランドのフロントに入ったアナリストのKeith Woolnerとの関係である。


その話をするためには、ちょっと最初に
クリーブランドの歴史を振り返ってみないといけない。

中地区5連覇、ワールドシリーズ進出2回に輝いた90年代のクリーブランド黄金時代の監督は、元シアトル監督でもあったマイク・ハーグローブだが、この90年代のクリーブランド黄金期は、このチームの順位を順にさかのぼるだけでわかることだが、2000年にハーグローブの後を引き継いだ「赤鬼」チャーリー・マニエルが監督を辞めた2002年に、まるで巨大なマーリン(カジキマグロ)が針にかかって張りつめていた釣り糸が、突如ブチ切られるように、まったく突然に終わっている。ここがまず問題だ。


Eric Wedgeがクリーブランドの監督に就任したのは、マニエルの後の2002年10月だが、チームはしばらく低迷が続いた。低迷の理由はしばしば「かつての主軸打者マニー・ラミレスや、ジム・トーミが移籍していなくなったから」と説明されている。
こういう、日本の出来損ないのウィキみたいな説明ぶりでクリーブランドの低迷を説明するやり方が、どうにも納得がいかない。
主軸の強打者が3人いれば馬鹿みたいに勝てるが、彼らが抜けると、昨日までの強さが嘘のように、突然弱くなるのが当たりまえ」みたいなアホらしいモノ言いが、非常に気にいらない。


じゃあ、何か。

クリーブランドは、アル中のアルバート・ベルジム・トーミマニー・ラミレスの「バットだけで勝てた」、とでもいうのか。

90年代から2001年にかけてのクリーブランドには、彼らのような強打のクリンアップ以外に、常に複数のゴールドグラバーがいて、チームを支えていた。そのことを忘れてもらっては困る。
ベネズエラ出身メジャーリーガーの英雄といえば、ルイス・アパリシオだ。アパリシオはフェリックス・ヘルナンデスが受賞したルイス・アパリシオ賞の元になったベネズエラ伝説のショートストップである。(資料:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年11月18日、フェリックス・ヘルナンデス、ルイス・アパリシオ賞受賞。
そのアパリシオが絶賛し、アパリシオがもっていたいくつかの記録を塗り替えたのが、かつてクリーブランドの黄金時代を支えたベネズエラのもうひとりの名遊撃手オマール・ビスケール(クリーブランド在籍1994-2004)。そして、ビスケールの相棒が、名二塁手ロベルト・アロマー(1999-2001)。さらに、90年代に5年連続盗塁王になったケニー・ロフトン(1992-96、98-2001)がクリーブランドにいた。
彼らゴールドグラバーの堅い守備もあったからこそのクリーブランド黄金時代であることも、忘れてもらっては困る。
守備は強いチームの野球の、非常に大事な要素である。
(ちなみに、最初シアトルの選手だったビスケールは、グリフィー・ジュニアと同じゲームでメジャーデビューしている。だがシアトルが、ドラフトで全米1位だったアレックス・ロドリゲス(当時はもちろん三塁手ではなくショート)を指名したことで、ビスケールはクリーブランドに移籍することになった)


ちょっと興奮して話が脱線した(笑)
問題は大きくは、3つある。


第一の問題;
Eric Wedgeが、才能ある若手選手に恵まれて優勝した、ラッキーなだけの監督」である可能性


最初に問題にしたいのは、Eric Wedgeが2002年10月にクリーブランドの監督に就任して、しばらくは低迷が続いて、何年かしてからようやく実現した「一時的なクリーブランドの復興(2005年の中地区2位、2007年の中地区優勝)が、本当にEric Wedgeの手腕のおかげだったのかどうか?」だ

2000年代前半のクリーブランドには、投手に、CCサバシアクリフ・リーファウスト・カーモナ、野手にグレイディ・サイズモアトラヴィス・ハフナービクター・マルチネスと、有望選手が揃っていて、彼らはみな「開花寸前の名花」だった。
まだあまり調べてないのだが、サバシアやクリフ・リーがまだ若手だったあの当時Eric Wedgeは「主軸打者の抜けてしまったクリーブランドで、若手育成を成功させ、チームを復興させた名監督」とでも絶賛されていたのかもしれないが、彼らの多くが結果的にメジャーの看板選手として大成した現在から振り返れるなら、意味は変わってくる、と思う。
Eric Wedgeは単に、「ありあまるほどの才能をもった多数の若手選手に恵まれただけの、ラッキーなだけの監督」だった可能性も、十分すぎるくらいある

むしろ、当時これだけの有望選手がズラリと揃っていたのに、たった1回しかポストシーズンに進出できなかった、1回しか地区優勝できなかった、そういう監督だ、という言い方だって、できなくはない。例えば2008年なども、サイ・ヤング賞投手とシルバースラッガー賞の打者がいるというのに、チームは81勝81敗の地区3位に甘んじているのである。
どうも「ラッキーな監督」という話で説明できてしまいそうな気がしてならないのが、ちょっと怖い。なんせ、来シーズンはこの人がイチローのいるチームの指揮をとるのである。


第二の問題;
「サイバーメトリストによる現実の野球チームにおける『野球実験』」の諸問題


Keith Woolnerは、VORP(Value Over Replacement Player)の考案者であり、知っている人も多いだろう。MIT(マサチューセッツ工科大学)出身で、2007年5月に野球のシンクタンクBP(Baseball Prospectus)からクリーブランドのフロント入りして、以降、得意分野である分析や予測を担当しているらしい。
Eric Wedge - Wikipedia, the free encyclopedia

で、ここから、
いろいろと考えなければならないことがある。

まずKeith Woolnerがフロントに加わったことが、「2008年クリーブランドの迷走」にどの程度影響しているのか、あるいは、してないのか。それが知りたい。

クリーブランドは、クリフ・リーがモノになってきた2007年に、2001年以来の中地区優勝を果たした。
だが翌2008年には、クリフ・リーがついにサイ・ヤング賞投手になり、グレイディ・サイズモアがシルバー・スラッガー賞とゴールドグラブを同時受賞しているにもかかわらず、周囲から「謎の不振」といわれる、原因のよくわからない低迷、というか、チーム運営の大失敗を犯して、81勝81敗の3位に低迷している。その結果が、クリフ・リー、ビクター・マルティネス放出に繋がった。
それ以降も、クリーブランドの低迷は、近年の中地区でのミネソタ独走状態を見てもわかるように、けして修正されているわけではない。
List of Cleveland Indians seasons - Wikipedia, the free encyclopedia

この自滅現象、最近どこかで見たような気にならないだろうか?

ブログ主はこの「2008年クリーブランドの迷走」に、Keith Woolnerがどう関わっているのかが妙に気になる

この2010シーズンのシアトルにおいて、GMズレンシックが犯した歴史的大失敗は、「超守備的野球チーム編成という『野球実験』の大失敗」であり、また「机上理論そのままに、野球チームを編成してみる、という『チーム編成実験』の大失敗例」でもある。
この「2010年ズレンシックの『野球実験』の歴史的大失敗」を見てもわかることだが、例えばプロの球団がアナリスト(それがサイバーメトリストであれ、シンクタンクであれ、何であれ)の知恵を借りるとして、「アナリストの考え方や助言を、野球の現場の運営や判断に役立てること」と、「アナリストの考え方そのものでできたチームを作ってみること」あるいは「アナリスト自身がチーム運営にあたること」とは、大きく意味が異なる

だから、もしかすると突然起こった「2008年クリーブランドの迷走」においても、「2010年ズレンシックの野球実験の歴史的大失敗」と同じような背景や事件があったりはしなかったのか?と、疑念を多少抱くわけだ。

もし仮にだが、「2008年クリーブランドの迷走」の裏で、なにか2010年シアトルの野球実験の歴史的大失敗と似た「なにかしらのアナリスト主導の野球実験」が行われていた、もしくは、「ベースボールの現場指導者と、現場に机上の理論を持ち込もうとするアナリストの激しい衝突」が存在していたとしたら、あれほど有望選手を抱えていたクリーブランドが2008年に突然歯車が狂いはじめた理由が、すこしは説明できそうな気がしてくるのである。

こうした仮説が該当する事実の片鱗でも見えてくれば、2007年春にクリーブランドのフロントに加わったアナリストKeith Woolnerの影響がわかってくるのだが、今のところはまだ、ただの仮説でしかない。
(「2010シアトルの野球実験」の失敗の教訓は、本来、関係者が十分わきまえて来年に向かわなければならないわけだが、ズレンシックと球団首脳は自分たちの失敗を、まるで認めていない。むしろ「俺たちは正しい」くらいに思っているように見える)


第三の問題;
Eric Wedgeは、理論的に野球をすることや、野球実験の意味を認めているのか?拒絶感はないのか?」という問題


2002年から監督をやっているEric Wedgeと、2007年にフロントに入ったKeith Woolnerの関係については、まだよく調べていない。可能性は無限にあって、2人の関係は非常にうまくいっていたかもしれないし、うまくいってなかったかもしれない。
いまのところ、例としては、こんな記事がある。
Statman Begins: Keith Woolner and the Indians | '64 and Counting: Scene's Sports Blog
だいぶ長いし、どうにも読みづらい記事だが、ひとことで言って、監督のEric WedgeとフロントのKeith Woolnerがうまく折り合っていたとは到底思えない記事だとは思う。
もちろん、人間関係というものは、記事ひとつで全て推測できるほど簡単なものではないので、記事ひとつみつけたくらいで結論は出さない。

いまのところ気になるのは、チームの専属アナリストKeith Woolnerとの軋轢やストレス(ストレスはうまくいっている人間同士の間にもあるものだ。珍しくない)の中で「Eric Wedgeが、「分析重視の野球をやる」というチーム運営方針に、どういう感想を抱くに至ったか、それにどのくらい賛意をもっているか」という点だ。

もし仮にだが、Eric Wedgeが「アナリストの野球には、もうウンザリだ。あいつらの言うことなんか聞きたくない。アナリストは野球のボールにも触ったことがないクセに」とでも思っているとしたら、今後も野球実験をするつもりでいるように見えるズレンシック、そしてシアトルのフロントオフィスの監督選びは、そもそも、出発点からして根本的に間違った人選をしていることになるのであるが、来シーズン、いったいどうなるか。


もし来シーズンが、歴史的大失敗の今シーズン以上の破滅的シーズンになるとしたら、いくらアナリストの分析や理論を押し付けようとしても、この「かなり個性的で、熱血な監督」のコントロールはきかなくなる。
当然の話だ。







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