October 22, 2010

今日のフィラデルフィアとサンフランシスコのゲームは、なんともテンポが悪い、重いゲーム。正直、とてもとてもリンスカムロイ・ハラデイという好投手同士の小気味のいい投げ合い、という感じではなかった。
もちろん、チームが「勝利」を期待する投手だし、投高打低のポストシーズンなだけに、2人とも本当に大変な疲労感があるに違いない。2人には、心からお疲れ様といいたい。
Philadelphia Phillies at San Francisco Giants - October 21, 2010 | MLB.com Gameday


特に、気になったのは、ロイ・ハラデイだ。
なにかこう、ダルそうな、腕の振れてない感じのピッチングフォーム
が心配になった。

もともとスリー・クオーターというより、下手をすると、スリー・クオーターとサイドスローの中間くらいな感じでスローするピッチャーではあるが、それにしたって今日は、いくらなんでもちょっと肘が下がってしまっているように思えてならなかった。
もちろんレギュラーシーズン21勝して、今年のサイ・ヤング賞間違いなしの大投手とはいえ、10敗した中には打ち込まれたゲームも何ゲームもあり、そういう調子の悪いの登板の大半は見てないからなんとも言えないが、それでも、これほどダルそうな感覚で投げて、しかも8回どころか、6回で降板していく疲れたハラデイを見ると、いつも8回くらい平気で投げぬくタフな人だけに、肘でも痛いのかと、ちょっと心配になる。
(ハラデイ、1977年5月生まれの30代のオジサン。かたやリンスカム、1984年6月生まれ。7歳違うんだから、しかたがないといえば、しかたがないか 苦笑 ちなみに1977年生まれは、他に、野手ではアンドリュー・ジョーンズカルロス・ベルトランブランドン・インジアレックス・ゴンザレス、投手ではフィリーズの同僚のロイ・オズワルトAJバーネットヴィンセント・ペディーヤなどなど 1977 Major League Baseball Born this Year - Baseball-Reference.com

今シーズンのロイ・ハラデイのゲームログ
Roy Halladay Game Log | phillies.com: Stats



それと、もうひとつ気になるのは、
ハラデイの低めのカットボールに対する
アンパイアのコールの辛さ


NLCS(=ナ・リーグのチャンピオンシップ・シリーズ)になってからのハラデイは、打者を追い込んでから投げる「ベース上、低めいっぱいに決まる決め球のカットボール」を、かなりの数、「ボール」判定されて苦しんでいる。
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool
どうもゲーム中盤、しかもサンフランシスコのクリンアップの打席になると、決まって判定が辛くなるような気がするのは、気のせいなんだろうか。


実は、この6回の球審Jeff Nelsonの判定の辛さについては
かなりややこしい背景がある。



10月16日 Game 1
6回表のカットボール(3球目)の「ボール」判定


San Francisco Giants at Philadelphia Phillies - October 16, 2010 | MLB.com Gameday
球審は、サンフランシスコ・ジャイアンツのバリー・ボンズが755本目のホームランを打ったときに球審をしていたDerryl Cousins(→NYデイリー・ニューズで検索したDerryl Cousinsのこれまでの記事はこちら Derryl Cousins)。10月21日の球審をつとめるJeff Nelson(2001年にシアトルに在籍していたブルペン投手ジェフ・ネルソンとは別人)は、このゲームではレフトの線審。

6回表2アウト1塁。バッターは5番パット・バレル。0-2と追い込んでからの3球目、決めにいった低めいっぱいのカットボールが、「ボール」判定。ロイ・ハラデイはこのあと2本のタイムリーを浴びた。
「試合の流れを決めた判定」だけに、MLBの公式サイトの動画にも、わざわざHalladay has a close call on a 0-2 pitch(「ハラデイ、カウント2ナッシングからきわどい判定に泣く」)というタイトルまでつけられた動画がアップロードされているくらいだ。実際、きわどい。
そもそも中立的な立場のMLBの公式サイトの動画で、アンパイアの判定の微妙さが動画になって残ること自体、そう滅多にあることじゃないと思う。
この件について、ハラデイ自身は記者の質問に、こんなコメントを残した。
Halladay had thrown an 0-2 fastball with two outs that looked like it could be strike three to slugger Pat Burrell, until umpire Derryl Cousins deemed it low. Did Halladay figure the inning-ending strikeout was his?
"Yeah, I did," he said. "But that's part of it. There are obviously calls that (the Giants) wanted too. That's part of the game. (後略)"
出典: Roy Halladay, Jimmy Rollins Among Phillies to Show Cracks in Game 1 -- MLB FanHouse

問題の場面の動画
Baseball Video Highlights & Clips | NLCS Gm 1: Halladay has a close call on a 0-2 pitch - Video | MLB.com: Multimedia

2010年10月16日NLCS第1戦6回表バレル3球目 投手ハラデイ2010年10月16日
NLCS Game 1
6回表 2アウト1塁
カウント0-2
ジャイアンツ5番打者
パット・バレルへの
非常にきわどい3球目


3球目の低めのカットボールを「ボール」と判定され、次の4球目、タイムリー・ツーベースを打たれ、3点目を失う。



10月21日 Game 5
6回裏のカットボール(6球目、7球目)の
「2球連続ボール」判定


Philadelphia Phillies at San Francisco Giants - October 21, 2010 | MLB.com Gameday
今日のゲームの球審は10月16日のGame 1では線審だったJeff Nelson。10月16日Game 1で球審をつとめていたDerryl Cousinsは、このゲームではセカンド塁審。

Jeff Nelsonは、Hardballtimesによれば
ルールブックに沿ったゾーン、理論的なストライクゾーンと最もかけはなれた、自分勝手なストライクゾーンを主張するMLBアンパイア」の代表格。
Jeff Nelsonのストライクゾーンは「2000年代以降にストライクゾーンが、ルールブックどおりに近い現在のゾーンに修正される前までの、ステロイダーによるホームラン量産時代の典型的ゾーン」に近く、「異常にアウトコースのストライクゾーンが広い」。
Hardballtimesは、この「古いストライクゾーン」をいまだに使っているJeff Nelsonのコールを、the classic “Glavine” call、つまり、「トム・グラビン的ストライクゾーンによる古典的なコール」と呼んでいる。特にJeff Nelsonの「右打者から見て外角のストライクゾーン」が異常に広いことは、データ的に明らか、らしい。

Jeff Nelsonは、今年2010年8月10日のボルチモアとテキサスのゲームでは、ボルチモアに不利な判定をし続けた上に、これまでメジャーのキャリアで一度も退場になったことのないニック・マーケイキスの打席で、わけのわからない判定で三振させて、温厚なマーケイキスがさすがにキレたのを、マーケイキスにとってキャリア初となる退場処分にし、さらに9回には、名監督バック・ショーウォルターまで、このゲーム2人目となる退場処分にした、いわくつきのアンパイア
この「マーケイキス退場事件」が起きたのも、やはり10月16日、10月21日の両事件と同じ、「6回」。

Jeff Nelsonによって
退場になるニック・マーケイキス(動画)

Baseball Video Highlights & Clips | TEX@BAL: Markakis is ejected arguing the strike zone - Video | orioles.com: Multimedia
Jeff Nelsonによって
退場になるバック・ショーウォルター(動画と記事)

Baltimore frustrated, ejected against Wilson | orioles.com: News
2010年8月10日のデータサンプル:明らかに「ボール」
cascreamindude: Ejections: Jeff Nelson (3, 4) 
NYデイリー・ニューズで検索したJeff Nelsonのこれまでの記事:Jeff Nelson (Umpire)

HardballtimesのJeff Nelsonに関する批評
タイトルがA zone of their own(「身勝手なストライクゾーン」)という、辛辣な記事。「メジャーで、最も実際の理論的なストライクゾーンとかけはなれた、自分勝手なストライクゾーンを主張するアンパイアは誰なのか?」を、豊富なデータから解き明かす優れた記事。
Jeff Nelsonの短評は、north and south、つまり高低は正確だが、内外については古典的グラビン・コールをするアンパイア」
Jeff Nelson: The most pitcher-friendly umpire in 2007. He calls the vertical strike zone much closer to the rulebook definition. He also is willing to give the outside corner against right-handed hitters, the classic “Glavine” call a couple inches off the plate.
A zone of their own



さて今日のゲームの話に戻ろう。

6回の先頭打者として、このポスト・シーズンの活躍で一気に名を上げた感じの4番バスター・ポージーが打席に入った。
ハラデイはポージーをカウント2-2と追い込んで、6球目、7球目に「低めいっぱいのカットボール」を投げたが、いずれも「ボール」と判定され、結局、四球。ノーアウトのランナーになった。
ハラデイは、なんとかこの後、2死1、2塁を無失点に抑えるが、このイニングで降板。いつものように長いイニングを投げることはできなかった。

マーケイキスも物静かな男だが、ロイ・ハラデイも負けず劣らず冷静な男だ。だが、さすがに今日は、テレビ画面からもロイ・ハラデイの憤怒が伝わってくるほど、彼の表情は険しくなり、感情を露わにしていた。

この6回の「疑惑の2球連続ボール」判定の伏線には、初回に起きた「5番バレル怒鳴り散らし事件」がある。

2010年10月21日NLCS第5戦6回裏ポージー6・7球目 投手ハラデイ2010年10月21日
NLCS Game 5
6回裏 ノーアウト
ジャイアンツ先頭打者
4番バスター・ポージーへの
6球目、7球目




10月21日 Game 5
初回の「ストライク判定」にまつわる
サンフランシスコ5番打者バレルの「怒鳴り散らし事件」


あまり書いていて気持ちのいい話ではないのだが、6回の「2球連続ボール判定」の前に、実は、既にこのゲームの初回、例の10月16日に「ボール」判定が問題になった件の当事者であるパット・バレルが、大きな問題をひき起こしている。

5番バレルは、初回に5人目の打者として登場したが、Gamedayのグリッドで見るかぎり、明らかにストライクの「インローいっぱいに決まるカットボール」でロイ・ハラデイに三振させられた。
だがバレルは、その際、たぶん「ストライク判定」が不服だったのだろう、例のマーケイキスとショーウォルターを退場させた球審Jeff Nelsonに、大声を出して文句をつけている。
だがバレルは、球審の判定に声を張り上げて文句を言うだけで(それだけで、既に退場ものだが)済まさずに、ベンチに引き上げていくロイ・ハラデイに対して、何か大声で怒鳴り散らした
ブログ主は、ひとの唇の動きを読めるような達人ではない。だが、動画によれば、なんとなくフォー・レター・ワーズを使っているようにも見える。もしこのとき、いわゆる「フォー・レター・ワーズ」を使っているとしたら、球審は、なんらかの処分、というより、バレルを即時退場にすべきだ。
だが、球審Jeff Nelsonは、8月にマーケイキスは退場処分にしたクセに、このときは、動画を見ればわかるように、ただバレルの行動をいさめただけで、退場にしなかった

球審に文句をつけるパット・バレルの動画
YouTube - 100_0088[1].MP4

2010年10月21日NLCS第5戦1回裏バレル4球目 投手ハラデイ2010年10月21日
NLCS Game 5
1回裏 2アウト1、2塁
ジャイアンツ5番
パット・バレルへの4球目

低めいっぱいのカットボール。Gamedayのグリッドで見るかぎり、あきらかに「ストライク」。それなのにバット・バレルは球審とロイ・ハラデイに怒鳴り散らした。
球審Jeff Nelsonはバレルを即刻退場にすべきだった。

この初回の「バレル怒鳴り散らし事件」については、このゲームを取材していた沢山のメディアも気がついており、ニューヨーク・デイリーニューズ電子版などは、通常の野球記事のように、この日のゲーム内容を記事にするだけでなく、「バレル怒鳴り散らし事件」を含めて記事にしている。
ニューヨーク・デイリーニューズは、ロイ・ハラデイ自身に、ベンチに引き上げていくときの事情について質問さえしていて、さらにはハラデイからの回答も記事にしている。記事によればロイ・ハラデイは、
There are a lot of emotions at this point in the season.
「この件はシーズン中からいろいろと紆余曲折があるんだ。」
と、数々のいきさつや感情が複雑に折り重なった、やっかいな問題が存在することを認めつつ、
I thought it was a pretty good pitch.
「僕が投げたボール(初回バレルに投げたカットボール)は非常にいい球だったと思っているよ。」
と、「投球が明らかにストライクだった」と確信していることを、明確に示した。
Roy Halladay pulls groin but bests Giants 4-2, as Phillies send NLCS back to Philadelphia down 3-2

このGame 5の初回と6回の出来事をならべるとわかることだが、これは言いたくもないが、6回のポージーの打席で「低めいっぱいに入っているカットボール」を、それも「2球連続してボール判定」したのは、球審Jeff Nelsonが「初回のバレルの打席のストライク判定と帳尻をあわせた」可能性があるのである。
だが、ここが肝心な点だが、ボール自体は、動画やGamedayのグリッドで見るかぎり、10月16日Game 1の6回表バレルの打席で「ボール」判定されたカットボールも、Game 5の1回裏にバレルが三振した「ストライク」判定のカットボールも、6回ポージーへの2-2からの「2球連続ボール判定」されたカットボールも、どれもこれも「ストライク」といってさしつかえないと、ブログ主は判断している。

球審がストライクコールをしているのに、球審にも、相手投手にも汚い言葉で怒鳴るなど、もってのほかだ。そして球審は、そういう選手をこそ退場にしないで、誰を退場にするというのだ。
10月16日の「ボール」判定では、ロイ・ハラデイだってよほど腹がたったかもしれないが、彼は判定に不服などつけたりはしなかった。
それに、そもそも10月16日の「ボール」判定においては、パット・バレル側は「得」をしている側であり、ゲームにも勝っているわけであって、この初回の「ストライク」を「ストライク」と判定したことに、顔を真っ赤にして、青筋たてて怒る筋合いは全くない


もし仮に、プレーヤーに恫喝されて、球審が判定を後で「帳尻させている」と邪推されかねない行為があるとすれば、そのアンパイアには非常に問題がある。責任をとって、このポストシーズンのアンパイアを自主的に辞退したほうがいいと思う。

そもそも、この「バレルとロイ・ハラデイの間の遺恨」が発生してしまった原因は、ここまで書いてきたことでわかるように、10月16日のバレルでの打席で「ストライク」のカットボールを「ボールと判定ミスしたこと」にあることを忘れてはならない。
あきらかな「ボール」を「ストライク」とコールされて怒ったマーケイキスは退場にさせたクセに、あきらかな「ストライク」を「ストライク」とコールされただけなのに、逆ギレして怒鳴り散らしたパット・バレルは退場にしない。また、どれもこれも「ストライク」である「低めいっぱいのカットボール」を、「ボール」といってみたり、「ストライク」といってみたり、挙句の果てに「2球連続ボール」とコールしてみたり。この審判団は判定に一貫性がなく、グラグラと揺らいでばかりいる。だから、こういう不愉快な事件が続発することになる。







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