October 31, 2010

前の記事で、2001年以降、MLBのストライクゾーンが、ステロイド時代の「横長の」ストライクゾーンから、「ルールブック通りの、縦長のストライクゾーン」に、あくまで「タテマエ的」にだが、改められることになり、アンパイアがメジャーのキャンプ地を巡回して説明に歩いた、という話をした。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月29日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (1)「ステロイド時代のストライクゾーン」と、「イチロー時代のストライクゾーン」の違い。

では、
2001年以降、本当に「ストライクゾーンは変わった」
のだろうか?



次に挙げるのは、2007年に書かれたHardball Timesの記事に添付された秀逸すぎるグラフである。
元記事:Hardball Times:The eye of the umpire

この非常に優れた記事とグラフは、膨大な数の実戦でのアンパイアの判定結果をグラフ上にマッピングすることで、「ルールブックのストライクゾーンと、アンパイアが実際のゲームでコールしている現実のストライクゾーンとの違い」を、誰にも有無を言わせない形でハッキリ明示している。

こういう素晴らしい記事を作れるHardball Timesに敬意を払わずにはいられないし、こんなブログ程度では彼らの足元にすらたどり着けないが、前置きはそのくらいにして、この記事が主張する結論と、それについてのブログからの注釈から先に言っておくことにする。


この記事の主張する結論
2007年のこの記事の調査範囲においては、MLBのアンパイアのストライクゾーンは、あいかわらず「2001年以前の横長の古いストライクゾーンのまま」である。MLBが2001年以降ストライクゾーンをルールブック通りにする、と言った割には、現実にはそうなっていない。
ブログからの注釈
この記事の調査は、必ずしも2001年以降、記事が書かれた2007年までの全ての投球、全てのアンパイアの判定を調査したものではない。
だから、この記事だけから即座に「MLBのストライクゾーンは、2001年以降もステロイド時代の古いストライクゾーンのまま、まるで変わっていない」と、単純に結論づけることはできない。
実際に、他の調査などでは、アンパイアごとの判定の個人差が大きいことがわかっている。(これについては次回の記事で書く)
だから、現在のMLBのストライクゾーンをめぐる状況について、当ブログでは次のように考える。
1)MLB全体としてのゾーン修正傾向
MLBのストライクゾーンは2001年に、それ以前のステロイド時代の「横長の」ストライクゾーンと決別して、「ルールブックに近い判定」をすることを宣言したが、何事でもそうだが、何もかもが即時に修正されるわけではない。いまだに「古いストライクゾーン」に決別できていないアンパイアも多いのは確かだが、今後の経過を見守る必要がある。

2)個人差
新旧のストライクゾーンが混在する現状があり、2001年以降のストライクゾーンの修正に沿って、ルールブックに近い「縦長のストライクゾーン」で判定を下しているアンパイアもいれば、2001年以前の古いステロイド時代の「横長の」ストライクゾーンに固執し続けているアンパイアもいることがわかっている。
現在ではアンパイアごとの個人差が顕著、と考えておくのが無難



グラフの見方
このグラフはアンパイア(キャッチャー)視線で見たもの。
だから、向かって
左がレフト側
右がライト側

赤い線が、ルールブック上の「ストライクゾーン」
緑の線が、実際の判定結果のマッピングから計測された「ストライクゾーン」

横並びの2つのグラフのうち
左にあるのが、RHB(右打者)のグラフ
右にあるのが、LHB(左打者)

ルールブックのストライクゾーンと実際に計測されたゾーンの差
(グラフはクリックすると拡大できます)

グラフからわかること

(1)左打者・右打者共通の特徴
ルールブック上のストライクゾーンは「縦長」だが、
実際のストライクゾーンは「横長」だ。高低はルールブックより狭く、内外はルールブックより広い。

高めのストライクゾーン」は、2001年以降「ルールブックに沿ったストライクゾーンにすることになった」「はず」だが
実際のゲームでの「アンパイアのストライクゾーン」では、高めのゾーンはけして広くない。

低めのストライクゾーン」も、1996年の改正で、「膝頭の上まで」だったのが、「膝頭の下まで」に変更されたことで、「ボール1個分くらい」低くなったはず」だし、また、2001年以降の修正で「ルールブック通りに判定する」ように修正された「はず」である。
1996 - The Strike Zone is expanded on the lower end, moving from the top of the knees to the bottom of the knees.
Umpires: Strike Zone | MLB.com: Official info

だが、実際には、低めのストライクゾーンを十分に拡張していないアンパイアがたくさんいる。

「現実のアンパイアの判定では、低めのストライクゾーンがルールブックより狭いことが、多々ある」ことがわかると、たとえば、NLCSのロイ・ハラデイの登板ゲームで球審をつとめた、例のJeff Nelsonの判定の偏りの意味がわかってくる。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月21日、ちょっと心配になるロイ・ハラデイの「ひじ」と、「アンパイアのコール」。今日の球審は、今年8月、これまで一度も退場になったことのないニック・マーケイキスと、監督バック・ショーウォルターを退場にしたJeff Nelson。

Jeff Nelsonは日本のサイトなどで「投手有利な判定をするアンパイア」であるかのような説明がなされているが、彼はメジャーでは「アウトコースのストライクゾーンが異様に広いことで有名なアンパイア(資料:Hardball Times A zone of their own)」であり、あのゲームでJeff Nelsonはロイ・ハラデイの低めいっぱいのストライクを、ピンチの場面ではことごとく「ボール」判定している。
これはつまり、Jeff Nelsonが「古い『横長の』ストライクゾーンで判定を行う典型的なアンパイア」であるために起きる、ただそれだけの現象といえる。
彼のような「古い横長ゾーン」のアンパイアは、「アウトコースのストライクはとりたがるが、高め、低めのストライクをとりたがらない傾向」がある。そのため、ロイ・ハラデイのような「コントロールが非常に良く、2001年以降のストライクゾーンの修正に沿って、ルールブック通りのストライクゾーンの、低めいっぱいに変化球を決めてきた投手」にしてみれば、イザとなると低めのストライクをとらなくなる「古い横長のストライクゾーンで判定するJeff Nelspn」は、「投手有利な判定をするアンパイア」とはまったく言えないことになるのである。


(2)左打者だけにあてはまるストライクゾーンの特徴
ルールブックに比べて、実際のストライクゾーンは、
アウトコース側が「極端に」広い。
インコースは、ルールブック通り。

このことからメジャーの左打者は、非常に広いアウトコースのストライクゾーンに対応するためには、どうしても「打席のできるだけ内側、プレート寄りギリギリの位置」にスタンスをとらざるをえない。(もちろん、イチローの打席での立ち位置を見てもわかるように、全員が打席ギリギリに立つわけではない)


(3)右打者のストライクゾーンの特徴
ルールブックに比べて、実際のストライクゾーンは、インコース、アウトコースともに、広い
ただ、左打者のアウトコースのような「極端に広いストライクゾーン」ではない。


ちなみにこれはメジャーでの話ではないのだが、とある日本のブログで、2010年9月18日ロッテvs楽天戦におけるロッテ先発・成瀬投手のピッチングについて、こんな記述があるのを確認できた。
左打者には外角中心の配球、右打者にはストライクゾーンの内角と外角、両サイドに満遍なく投げ分けていたのが記録上からも確認できる。」
日本のプロ野球のアンパイアの判定が、どの程度メジャーのストライクゾーンに準じたものになっているか不明なのだが、もし成瀬投手が、左打者と右打者で、それぞれに対して使うストライクゾーンを分けているとすれば、それは「左打者と右打者のストライクゾーンの違い」を重視した非常にクレバーな投球術、ということになる。







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