January 05, 2011

とあるところ、というか、いつもの某巨大掲示板だが(笑)、そこで元日にNHK BS1で放映されたケン・バーンズ"The 10th Inning"(以下 NHK版と呼ぶことにする)について、「オリジナルに手を加えて放送しているのではないか?」という書き込みを見て、多少気にかかったので検証してみようという気になった。

やっとNHK版が手に入ったので、英語版DVDを使って比較してみることにした。

比較方法は、以下のとおり。
1 2つのソースを同時に流す
2 ソース同士の相違点が見つかりしだい、両方を止める
3 ソースAのもつ相違点の映像が、他方のソースBにあるかないかを探す
4 原因がわかり次第、1~3を再開

なんとも原始的な方法だ(笑)あまりにも原始的すぎて、ものすごく手間がかかる(苦笑)途中でめんどくさくなったので、NHK版の第1回、第4回だけを検証することにした。根気がなくて申し訳ない(笑)
検証したNHK版の第1回、第4回は、オリジナルでいうと、2010年秋の第1夜放送の前半部と、第2夜放送の後半部ということになる。


結論からいうと、

1 NHK版は、オリジナル版とまったく同じものではない
2 NHK版は、オリジナル版のあちこちをカットすることで出来上がっている
3 ブログ主の検証するかぎり、NHK版に「オリジナル版には存在しないカットの追加」あるいは「映像の意味を大きく変えるような、影響力の大きいカットのいれかえ」は見られない



NHK版が「オリジナル版からカットしたシーン」の主なパターンは、主に以下の5つのパターンからなる。

1 ステロイド問題だけに限らない様々なテーマに関するコメンテーターのコメント(コメントの一部だけをカットするケースはみられなかった。カットする場合は、コメント全体がカットされている)
2 ステロイド問題に関するMLB選手のスーツ姿の証言シーンの大半
3 マニー・ラミレスの50日間出場停止に関係するシーン
4 コルクバット問題に関連するコメントの一部
5 チャプター開始部分によくあるイメージ的なイントロダクションの一部



NHK版は、オリジナル版をカットすることで出来上がっている。
最も多くカットしている箇所は、具体的には、上の5つのパターンのうち、1番目の「コメンテーターのコメント部分」である。
NHK版は、2日間にわけて放映されたオリジナル版と違って、4パートに分かれているが、オリジナル版を見ていない人は、「NHK版は、ひとつのパートあたり、4つから5つくらいのコメント部分がカットされている」と考えておく必要がある。

ステロイド問題についての変更だが、オリジナル版では、たぶん議会の公聴会かなにか公式の場所での映像だろうと思うが、スーツ・ネクタイ姿のサミー・ソーサ、あるいはマーク・マグワイヤが、鋭い質問に答えさせられている生々しいシーンが結構あるが、これはNHK版には、ない。
また、オリジナルには、MLBコミッショナーバド・セリグ氏がステロイド問題について語ったコメント箇所があるが、NHK版ではカットされている。

さらに、オリジナル版には、マニー・ラミレスの50日間出場停止を伝える新聞を大きく映し出したカットが存在しているのだが、これがNHK版ではきれいさっぱりカットされている。



評価などというものは、見た人それぞれの考え方、価値観に大きく左右される。それだけに、オリジナル版とNHK版の違いをどう考えるかについてのコメントは、あえて避けておきたいと思う。
たとえば、NHK版を見るだけでは、"The 10th Inning"においてケン・バーンズは、ステロイド問題をバリー・ボンズを、ひとり「悪者」にして語っているかのような勘違いした印象をもつ人も出てくるような気もしないでもないが、ケン・バーンズはステロイド問題がバリー・ボンズ個人の問題だという形で描こうなどとしてはいない。



ひさしぶりに"The 10th Inning"を見返してみて、MLB全体のストでファン離れを起こした時期に、カル・リプケンが深夜までファンの相手をし、サインをし続けた行為の尊さをあらためて思い知らされた。(もちろんリプケンだけでなく、当時のプレーヤー、現場の関係者の多くが、ファン離れを食い止め阻ようと、それぞれに地道な努力をしたことだろうと思う)
連続試合出場のような種類の記録が意味を持つには、やはり記録そのもの以外に、その選手がファンから与えてもらって積み重ね続けてきたリスペクトの厚みが加わってこそ、記録として輝く。

だが、残念なことに、そうした「地道だが偉大な行為」があった同時期に、ステロイドによる不自然な筋力アップがあった。また、ステロイドだけではなく、飛ぶボールの採用やストライクゾーンの姑息な操作などもあり、90年代の「不自然なホームラン時代」は、大掛かりに「演出」されていった。
バリー・ボンズの不自然な記録には、ファンの敬意の存在しない荒野がふさわしい。


だが、だからといって、「だからMLBはダメなんだ」とか、「MLBは間違っている」とか、理性のない子供のような短絡をしてもらっては困る。
"The 10th Inning"を見ればわかることだが、当時のスポーツメディアの大半がステロイド問題の指摘をスルーまたは黙認する一方で、スタジアムには、ステロイドの卑劣さ、卑怯さを非難する数多くのファンがいた。
卑劣な行為が公然と行われることもないわけではないのがアメリカだが、それを非難して正そうとする人が多数存在するのもアメリカだ。そういう、立場の違う人が混在して右往左往するアメリカ社会の、泥臭くて、エネルギッシュで、そして、ややこしい部分が、去年で終了した人気テレビドラマの"24”ではないが、"The 10th Inning"の描く「野球
」が面白い理由のひとつだ。
オリジナルの"The 10th Inning"は、けして「野球は神聖だ。だからステロイドで汚すな」と、いい子ちゃんが道徳を主張するために映像をつなぎあわせているわけではない。「酒に溺れたバリー・ボンズの父親」も描くし、「ステロイドに溺れたバリー・ボンズ」も描く。ステロイドの存在はともかく、人間そのものを完全否定してはいないのである。
ドキュメンタリーは裁判所ではない。だから一見すると、「"The 10th Inning"はMLBのさまざまな過ちに曖昧な態度を取り続けている」ように見えるが、そうではない。


ブログ主が少なくともいいたいのは、スポーツでも映像メディアでも、「不自然な演出」は、結局はファンとプレーヤーの夢をないがしろにする、ということ。いつぞやのダメ捕手城島の不自然すぎる3年契約もそうだ。あんな馬鹿げた行為、どうすると押し通せるというのだ。

野球の現場はあくまで「ファンとプレーヤーが出会う場所」であって、オーナーの自己満足のための場所でも、出来そこないの自称スポーツライターの「結論ありきの作為」がありありとわかる未熟な技術を人にみせびらかすための場所でもない。

不自然な演出」は、結局のところ、気分の悪い結果しかもたらさない。それはハッキリしている。







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