March 20, 2011

当初から今回の地震で亡くなった方の数は、たぶん最終的に2万人を越えてしまうだろうとみていた。
その理由はもちろん、「誰が避難できていて、誰が行方不明なのか。どこで、誰が、救助を求めているのか」という確認作業が、かなりの部分で滞ったままだったからで、どうみても、死亡者数も行方不明者数も、日ごと増えていくのは目に見えていた。

短くいえば、
「どこに、誰がいるか、わからない」上に、
「誰がいなくなったのかが、そもそも、わからない」
2つの問題が、同時に起きているのである。



阪神淡路大震災のような都市直下型地震における「緊急の人命救助」は、主に「家の倒壊で、その場所の、目の前のガレキの下敷きになっている人を助けること」がコンセプトであり、そうした「定位置」での救助を行うための装置が、あの災害を教訓に日本ではさまざまな形で開発されたと思われ、その装置群が日本の災害救助システムを世界的のトップランクの評価に押し上げているのだろうと思う。

だが、今回のような「広域の津波被害」、「放射能汚染の危機」においては、「初期の救助のコンセプト」が違ってくる。

地震直後の津波では、高いビルの最上階に取り残された人もいれば、船や漂流物につかまったまま沖に流される人、倒壊した家屋の下で動けない人、車の中にいる人、様々な人が広い「不特定の場所に分散」する。そして広域を襲う津波では、海水が人とモノを広い地域に押し流す。そのため、緊急救助(あるいは災害後の救援)を待つ被災者が不特定エリアに分散して存在することが、救助活動を大きく妨げる。

被災者が「不特定位置」に分散している大規模津波災害の初期は、車両による地上からの救助には頼れない。
そのため「ヘリコプターでの空中からの救助」が、初期の唯一の救助手段であることが今回わかったが、残念ながらすぐに稼動できるヘリコプターの数は無限ではないし、そもそもヘリコプターは一度に救助できる人数に制約がある。

ヘリコプターに限らず、災害救助の救命率アップや救助作業の効率化には、「緊急の救助を求めている人が、いま、どこにいるのか?」を確認することが第一歩だろうと思うが、もちろん津波災害で救助する側には「この、だだっ広い地域の、どこに被災者がいるのか、最初はまるでわからない」のが当たり前だ。

こうしたことから、津波に限らず、災害の緊急救助の弱点は、使う器具の使いやすさや重機の規模、救助技術の洗練など「救助する側」ではなくて、むしろ、単純に「救助を求める側から、救助する側に対して連絡する手段が失われること」なのではないか? と思うようになった。

「救助を求めている側」は、往々にして、自分の位置すら、どこにも連絡できない。
連絡がない以上、救助する側は、例えばヘリコプターで被災地を飛び回りながら、空中から被災者を発見する必要に迫られる。それ自体はもちろん意味のある作業だが、反面で、けして効率のいい作業とはいえない。こうした限られた条件下で、「運の良かった人」から順に救助されている現実がないとはいえない。


携帯電話および携帯メールそのものの便利さは、もちろん日常生活になくてはならないものだ。
だが携帯電話は、東北の被災地周辺ですぐに機能が止まったのはもちろん、物理的な被害のほとんどなかった東京周辺で「帰宅難民」が出たときも機能していない。たとえば「メールは、送信できても、受信できない」というような状態が長く続くことで、都市住民も、いざというときには携帯は使えない、ということを思い知った。
資料:東日本大震災 もろかった通信 携帯基地局が機能停止 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース
「地震と津波で、携帯電話大手3社の東北や関東地方の基地局は最大で▽NTTドコモ6720カ所▽ソフトバンクモバイル3900カ所▽au3680カ所−−が機能を停止。固定電話もNTT東日本の中継局が被害を受け、約136万回線が不通になった。」

また、被災後すぐに必要になる安否確認においても、「救助を求めている側が、どこにも連絡できない」状況が、救援活動の遅れ、地域格差を生み、人々の不安感、不信感、パニックを増幅させ、救援する側にも救援される側にも、ひどくストレスを生む原因になる。


救助する側の方は言いづらいことだろうが、津波で亡くなった方全員が救助できる可能性があったわけではない。救助する側の技術や経験がいくら日夜研鑽されているとしても、大規模な津波で救助できるのは、とてつもない大波の内部に飲まれたしまった人ではなく、どこかの構造物の上か内部、または漂流物の上で、助けを待つ限られた人だけだ。
その「限られた救助の可能性をもっている人たち」ですら、「自分の存在を誰かに連絡できる手段が何もない」ことが、救助を阻む大きな要因になっている。


ごく当たり前ではあるが、
自分の生存と居場所を発信するための方法論がなにか整備されれば、救われる命をもっと増やし、また災害後の救援の遅れ、救援のバラつきなどをもっと減らすことができる。


具体的には、救助を待つ人が救助をする人に自分の場所を教えるために、どんな方策、どんな機器が可能だろう?
よくはわからない。

携帯電話に、通常の通話とは別に、緊急救助要請信号のみを自動的に長時間発信できる特殊な機能を装備するのか。
あるいは、市販品として、救助要請信号を発するGPSチップでも発売し、災害時には居場所が一斉にマッピングされるようにでもするのか。
そういうモノを発明するのにはたぶん時間も金もかかるだろうが、期待はしたい。

マス・メディアを、ニュースを垂れ流すだけの「発信場所」として使うのは、メディアの古いの活用スタイルだ。
そうではなく、もっと「被災した側」の情報を「受信するためだけの場所」「アンテナ」として機能すべきだと考えはじめて、それを実際に実行しはじめている局も、番組もある。それはいろいろ限界をもつにせよ、ものすごく価値のある試みだ。

なんにせよ、
生死にかかわる災害時の一方通行のコミュニケーションの問題を解決するため、新しい技術を開発し、またメディアの活用コンセプトを変えてほしいと、切に願う。

もういい加減に一方通行の時代は終わってほしい。







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