March 24, 2011

工夫のない人ばかりが集まって、もめてばかりいる日本のプロ野球セ・リーグ開幕時期の問題について、もうちょっと書きたい気持ちがあって、いろいろと情報を追っていたのだが、馬鹿馬鹿しい主張ばかり聞かされて疲れきってしまった。

好きな野球のことなら、いくら考えても疲れない。むしろ、データを集めるにしてもなんにしても、むしろ楽しいくらいだが、こういう理屈の言い合いは別だ。
原因は、わかっている。お役所の大臣たち、球団オーナー、選手会、それぞれの発言は、細かくみていくと、それぞれがミスを犯しているからだ。
野球というビジネスの経済原理にそぐわないことを自粛という大義名分で平然と押し付けようとする大臣、本来は自分たちも被害者なのに世論を味方につけるのに失敗したまま自己主張しようとして二重に失敗しているオーナー、ガキくさい感傷的なことを平気で言い、水も電気もない真夏の厳しさを想定もせずダブルヘッダーも辞さないとかいってカッコつける選手会。
もうちょっとしたらまとめてはみるが、それぞれが、それぞれに自分の発言の落ち度を反省しなくてはいけない。

こういう出来の悪い屁理屈のコレクションから一度離れて、好きな野球の話に戻りたくなった。ちょっとダルビッシュの投球フォームのことでも書いて、気ばらししてみよう。

ダルビッシュ 体のヒネリ「ガニ股」豪腕
ダルビッシュ

これは最近のダルビッシュの投球フォーム。なんとまぁ、素晴らしく力強いフォームだろう。惚れ惚れする。
特徴的なのは、「左足」をホームプレート方向に踏み出しているのにもかかわらず、「上半身」が、「左足の向きとはまさに正反対」なこと。つまり、ダルビッシュは「プレートに背中を向けた状態を保ったまま、左足をホームプレート方向に踏み出せる」のである。
おそらく体を「故意に、強烈に、よじっている」のだ。


「左足の角度」だが、左膝の向きから察するに、ダルビッシュの左足のつま先はすでにプレート方向に向いて、両足の向きは多少「ガニ股っぽく」なっている。これは、一度、クリフ・リーと松坂投手の比較をしたとき引用したノーラン・ライアンに近い。

ノーラン・ライアンの投球フォームノーラン・ライアンの左足の角度
「ガニ股」な踏み出しで、
プレート方向を向いている

ボールを持った手は既にかなり高い位置にある

ホームプレートに踏み出すときノーラン・ライアンは、股関節を大きく開いて、はっきり「ガニ股」で踏み出していく。そのため、右足はサードを向いたままなのに、左足だけはホームプレートを向く。だから、左足と右足のつくる角度は、ちょうどアルファベットのTの字のように、90度の角度にかなり早い段階で開く。これは想像でしかないが、ノーラン・ライアンにとってのホームプレートは、普通の投手よりもずっと「自分の正面方向にプレートをイメージできる感じ」になっているはずだ。


ボストン松坂大輔投手のフォーム松坂投手の左足の角度
「内股」な踏み出しで、
三塁方向を向いている

ボールを持った手は、腰より下で「タメ」ている

一方、松坂投手は、写真のとおり、むしろ多少「内股な感じ」で踏み出していく。右足と左足がつくる角度は、カタカナのハの字程度というか、平行に近い。ボールへの体重の乗せ方は、ダルビッシュやノーラン・ライアンのように「ひねる」というより、蟹のように自分の体の横方向に向かって行う体重移動から発生する。横に向かって踏み出していくイメージだから、「やじろべえ」の原理よろしく、ボールを握った右手をあらかじめかなり低い位置に垂らして「タメ」をつくっておく必要があり、その下げた右肩を上げていきながら体重移動しつつ、ボールを握った手を上げていき、ボールに遠心力をつける。結局、松坂投手にとってのホームプレートは、ノーラン・ライアンと違って、「自分の左横方向にプレートがあるイメージ」になる、と思う。



こうしたダルビッシュ特有のフォームについては、こんな風に評論なさっている方がおられた。

「ダルビッシュのフォームには一つだけ欠点が有る。それはグラブ腕がフォロースルーで背中側に引かれる事だ。藤川球児のようにグラブ腕は最後まで胸の前に残らなければならない。グラブ腕が背中側に引かれるのは、投球腕を振る反作用がかかっているためで、言い換えれば、その反作用に抗しきれていない事を意味する。根本的な原因は脚の上げ方にあるのかも知れない。ダルビッシュの脚の上げ型は藤川球児より松坂に近い。」
トップハンド・トルク:ピッチング・守備

この「グラブ腕がフォロースルーで背中側に引かれる」という点について、ブログ主は、こんな風に考えてみた。

右投手が左足をプレートに向かってまっすぐスッと踏み下ろす、単にそれだけでは、ボールにまるでパワーが乗らず、球威が足りない。だから、ダルビッシュやノーラン・ライアンのように、「プレートにまっすぐ踏み出すが、それでも球威がある」という相反する事象を成立させるためには、「体をひねる」ことでボールにパワーを注入する必要がある
ノーラン・ライアンのフォームに「ひねる」という言葉をあてはめるならば、ダルビッシュのそれには「よじる」という言葉がふさわしい。
ダルビッシュがプレート方向に左足を踏み出した後も、打者側からはたぶんダルビッシュの背中が、かなりの長時間見えているのではないだろうか。それほど、彼のフォームには「強いひねり」が加わっている。
だから、その「ひねり」の結果として、「グラブを持ったほうの腕が、フォロースルーで背中側に強く引かれている」のだと思うのだ。

これはこれで、しかたがない、彼の個性だ。つまりあらかじめ上半身を強くねじっておき、投球動作の中で上体を強くひねり戻すプロセスで、グラブ側の腕が強く引かれることは、ダルビッシュの球威を生むメカニズムのひとつ、と、ブログ主は考える。
よほど体幹が強く、体が柔らかいのだろう。感心する。簡単に真似できることではない。


ダルビッシュが昔から、こういう「上半身にひねりを加えながら、まっすぐ踏み出す」フォームだったかというと、どうもそうではないようだ。その証拠を、とあるブログから拝借させていただいた。

ダルビッシュ分解写真(改)野球サイトPA日記:「Stop the World」 連続写真更新(と、コマの切り方)より引用

上の5コマと、下の5コマは、別々の日のダルビッシュ(たぶん下のほうが、より昔のフォーム)で、フォームが違う。違いは、上の画像で赤い線で囲った左から2コマ目の上下の画像(A)(B)にある。
上の左から2コマ目、(A)では、「上げた左足は、スッと下に降ろされている」のに対して、下の左から2コマ目(B)では、「上げた足は、一度後ろ(セカンド方向)に蹴りだしてから、前に伸びてくる」のである。
つまり昔のダルビッシュ(B)には「上げた足を、後ろに蹴り出す動作」が存在した

この昔のダルビッシュの「上げた足を、一度後ろに蹴り出してから、前に伸びてくる、昔のフォームの特徴」は、、これは、まさしく下記の記事で一度書いた松坂投手のフォームそのものである。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月26日、クリフ・リーの投球フォームが打ちづらい理由。「構えてから投げるまでが早くできている」メジャーの投球フォーム。メジャー移籍後のイチローが日本とはバッティングフォームを変えた理由。

松坂投手のフォーム(足をショート側に向ける瞬間)松坂投手は、左足を、ホームプレート方向に踏み出す前に、一度、自分の斜め後ろにあたる三遊間方向に向かって伸ばしている(左写真)
クリフ・リーにはこの「蹴り出し動作」が全くない。


前述のブログ(トップハンド・トルク:ピッチング・守備)の方も、
「ダルビッシュの脚の上げかたは、藤川球児より、松坂に近い。」
と、明確に指摘されておられる。
この記事の書かれたのは2009年3月だから、たぶんこの記事で指摘なさったのは、上の分解写真でいうところの「下の5コマ」、つまり「ちょっと前のダルビッシュ」だろう。
ならば、「松坂に近い足の動作をしていた、昔のダルビッシュ」、分解写真の指摘するダルビッシュのフォームの変化、このブログで松坂投手をクリフ・リーと比べた記事、すべてがツジツマがあう。


そんなわけで、ダルビッシュのフォームの変遷をちょっとまとめてみる。

かつてのダルビッシュの「上げた足の下ろし方」は、かつては、松坂投手そっくりの「後方蹴り出し型」だった。
それを近年「上げた足を、プレート方向にガニ股風にスッと下ろすノーラン・ライアン風」に修正し、その一方で、ダルビッシュ特有の「強くよじっておいて、打者にずっと背中を向けたままリリース動作に入るようなトルネード風のねじる上半身」がより強化され、球威を加えていった。


イチローのバッティングフォームが年々変わっていくことは有名だが、やはりプロの野球選手はたゆまぬ研鑽と変化がないと、一流でいつづけることは難しいのだ。

イチローのフォームの変遷MLBデビュー以降イチローのフォームの変遷
画像内に「今年」とあるのは、たぶん「2009年」の意味。画像はかつて某巨大掲示板でかつて流通していたものを拝借。


やっぱり野球のことを語るほうが、屁理屈こねるより、ぜんぜん楽しい(笑)いくら書いても疲れない。

いい加減、プロ野球を取り巻くおかしな屁理屈の山がマトモになって、盛大な開幕を迎えてほしいものだ。


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