April 16, 2011

ジェイソン・バルガスは、今シーズン2度目の登板だった4月8日のホームゲームで、シアトルがもともと苦手にしてきたクリーブランドにボコボコにされてしまったわけだが、まぁ、あのゲームは、ジャック・ウィルソンがあんな馬鹿な事件を起こした直後でもあったからしかたがない。
次の登板では6回2/3を1失点と、きっちり立て直してきた。


4月8日のゲームでまずかったのは、シアトルバッテリーが球審Sam Holbrookの特徴をよく理解していなかったことだろう。
このゲームの球審Sam Holbrookのストライクゾーンは非常に特徴があって、ゾーンが非常に狭くて、さらに、極端に高めのストライクをとる傾向がある。
このゲームでバルガスは最初低めのコーナーをついて打者をうちとろうとしていたが、このアンパイアを相手にそれはそもそも無理なピッチングコンセプトだった。


MLB関連の有名サイトであるHardball Timesは、2007年11月に「ルールブック上のストライクゾーンとあまりにも異なるストライクゾーンでコールするアンパイア」について記事を書いているが、Sam Holbrookの名前は、この記事の数々のランキングに名前が登場している。
Hardball Times:A zone of their own
最もストライクゾーンが小さい 6位
最も低目をとらない 3位
最も高めをとる  5位


データで見るSam Holbrookのストライクゾーンは非常に特殊だ。
以前何度か記事にしたように、(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年11月8日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (4)特徴ある4人のアンパイアのストライクゾーンをグラフ化してみる(付録テンプレつき))MLBのアンパイアにはいくつかのタイプがあって、びっくりするくらいストライクゾーンが違うものだが、それにしたってSam Holbrookほどストライクゾーンが高めにシフトしているアンパイアは、ほとんど他に例をみない。

サム・ホルブルックの非常に風変わりなストライクゾーン
赤色の線がルールブック上のストライクゾーン。
青色の線が、Sam Holbrook。左がレフト側、右がライト側。


最近、下記の記事で、最近のダルビッシュのフォームが、だんだんノーラン・ライアンというか、MLB的な「前ステップする投球フォーム」になってきていること、そして比較対象として、松坂のフォームが日本的な「横ステップする投球フォーム」であること、を書いた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年3月24日、「やじろべえ」の面白さにハマる。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年3月23日、昔のダルビッシュと、今のダルビッシュ、どこが、どういう意味で違うのか。ノーラン・ライアン、松坂と比べながら、考える。


MLB的な「前ステップ」。そして日本的な「横ステップ」。

ジェイソン・バルガスのピッチングフォームはどちらだろう。
言うまでもないことだが、バルガスは典型的なMLB的「前ステップのフォーム」の投手だ。バルガスは身体の重心バランスを示す「やじろべえ」の形がまっすぐに立っている。だから、ややもすると球威が不足するが低目をつくコントロールに安定感がある。

前ステップする投手は、「上半身のヒネリ」をしっかり使うことで球威不足を補うことは既に書いた(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年3月25日、ノーラン・ライアンを思わせる「前ステップ」をみせる大阪ガスの松永昂大投手。高校からプロになった投手と、大学を経由した投手とのフォームの違い。
バルガスは、「下半身がホームプレートをまっすぐ向いて」いても、「上半身はまだ後ろ向きに残って」いて、全体として身体全体に強いヒネリが加わっている。この「ヒネリ」が球威不足を補う。ダルビッシュについて書いたことと同じだ。

ジェイソン・バルガスのピッチング・フォーム


体の「ヒネリ」という点について、もう少し書く。

松坂投手が先日登板したゲームのフォームを写真で見たが、ちょっと気になったことがあって、名投手サンディ・コーファクスと比べてみた。
グラブの位置に注目して見てみてもらいたい。

2011年版の松坂投手のフォーム松坂のグラブの位置は、腰の位置

サンディ・コーファクスサンディ・コーファクスのグラブ位置は、体の前方。

Sandy Koufaxのピッチングフォーム

松坂とサンディ・コーファクスを、ほぼ同じ位置でボールを持った写真で比較してみる。ちょっと興味深い。

松坂は、ボールをリリースするかなり前の、ホームプレートに踏み出す時点で、すでにグラブの左手は腰の位置にまで降りて来てしてしまっていて、ホームプレート側の左肩、左半身も、この段階でプレート方向に大きく開いて、打者から松阪投手の胸のチームロゴが見えてしまっている。
対して、サンディ・コーファクスは、グラブがプレート方向に突き出された状態でキープされ続けていることによって、右肩、右半身がファースト側を向いたままの状態が長く保たれ、開いていない。この特徴的な「グラブの突き出し」は、クリフ・リーにも全く同じことがいえる。


あくまでこれは想像でしかないが、松阪投手はこの開幕を前に「上半身にヒネリをきかすフォームに改造して、球威を増したい」と考えたのではないだろうか。
写真からして、胸を大きく張り、上半身にヒネリをきかせることで、なんとか球威を取り戻そうという意図が、なんとなく伝わってくるからだ。この試み自体は面白いとは思う。


だが、その意図は残念ながら成功していない。
なぜなら、根本的な部分のフォーム変更、つまり「横ステップ」から「前ステップ」への変更が着手されていないからだ。

松阪投手は見た目には、いかにも上半身をヒネって投げている、という風に見える。
だが実際には、サンディ・コーファクスとグラブ位置が大きく違うことからわかるように、ボールのリリースにいくタイミングのだいぶ前に、上半身からヒネリの効果が消えてなくなってしまっている。なんと表現すればいいかよくわからないが、「ヒネリ」がフォームの早い段階で消費され尽くしてしまい、上半身に貯金がほとんど残ってない。
そのため、いくら胸を張って投げたとしても、立ち投げ系のフォームのパワーの供給源である「上半身のヒネリ」がまったく効いてこない。

対して、サンディ・コーファクスは、上半身ができるだけホームプレート方向に向かないように、上半身がプレート方向に回転していくのを故意に遅らせている。だから、右足がプレート側にステップして、下半身がプレート側に向いた段階でも、上半身は長い時間ファースト側を向いている。
そのことで、「ホームプレートに向いた下半身」と、「ファースト側に向いた上半身」との方向に「差」ができる。この「差」、つまり「上半身のヒネリ」が長い時間維持されることで、ボールにウェイトがのり、また、打者からはボールが非常に遅れてリリースされてくるように見える。
こうしたサンディ・コーファクスの特徴は、MLBの同じタイプ、つまり「やじろべえが立ったまま投げるタイプ」の投手に共通して見られる特徴だ。


松阪投手の努力そのものには大きな敬意を表したい。この改造はまだ発展途上だから、しばらくは結果が出ないと思うが、MLB的な投球フォームに改造していく試みが成功することを祈りたい。








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