May 19, 2011
まさにジェイソン・バルガスの強いハートと投球術が炸裂したゲームだ。
素晴らしい115球である。
ストライク75球で、ストライク率は65.2%。まさに「ストライク2 ボール1」。教科書どおりだ。
Long Beach Stateのロゴ
ジェイソン・バルガスが、Long Beach State(カリフォルニア州立大学ロングビーチ校)での大学時代の元チームメイト、ジェレッド・ウィーバーとの投げ合いに勝った。しかも、エンゼルス打線を散発4安打にかわし、7回無失点の快投。これで3勝目。
ジェレッド・ウィーバーとバルガスの元チームメイト対決の結果は、ESPNの看板番組「スポーツセンター」でも取り上げられた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月16日、トロイ・トゥロウィツキー、ジェイソン・バルガス、ジェレッド・ウィーバー、ターメル・スレッジの母校、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の「ダートバッグ野球」。アメリカのカレッジベースボールとMLBの深い繋がり。
チームメイト対決に関するロサンゼルス・タイムズの記事
Cal State Long Beach teammates Jered Weaver and Jason Vargas oppose each other tonight | The Fabulous Forum | Los Angeles Times
Angels' Weaver hopes to right ship in Seattle - latimes.com
試合前のジェレッド・ウィーバーのコメント
"I'm looking forward to facing Jason. We were part of a great team at Long Beach State. He used to throw 94, 95 [mph] in college. He's definitely become more of a pitcher, and it's cool to see," Weaver said. "I think this is the closest start I've ever been part of. Usually it's like a five-game separation in the title race, but everybody is in it now. That's kind of exciting."
Los Angeles Angels at Seattle Mariners - May 18, 2011 | MLB.com Preview
過去のバルガスとウィーバーの対戦
バルガスがシアトルに来て以降、2009年9月9日に一度だけ同じゲームで投げたことがあるが、このときウィーバーは先発だが、シアトル先発はイアン・スネルで、バルガスは先発ではなくブルペン投手としてリリーフ登板だった。
だからバルガスとウィーバーが同時に先発して、真っ向から投げ合ったのは、どうやら今日が初対決らしい。
バルガスはエンゼルス戦通算2勝2敗。防御率2.45。被打率.215、被OPS.626。バルガスが最も多く三振数を奪った対戦相手が、エンゼルス。
September 9, 2009 Seattle Mariners at Los Angeles Angels of Anaheim Box Score and Play by Play - Baseball-Reference.com
バルガスは、ついこのあいだ、ボルチモアの好投手ザック・ブリットン(彼は今日はヤンキース相手に投げていた)と投げあって、9回無失点に抑えきったばかりで、8回1失点に抑えた5月8日テキサス戦も含めれば、これで3試合続けてほぼパーフェクトなピッチング内容だ。
打線も既に6勝を挙げて今期好調のジェレッド・ウィーバーをものともせず、なんとか3点をもぎとり、たぶん負けるだろうなどとファンの間で思われていたいエンゼルス戦を完封勝ち。
Los Angeles Angels at Seattle Mariners - May 18, 2011 | MLB.com Classic
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月13日、「打者を追い込むところまで」で終わりの投球術と、「打者を最終的にうちとる」投球術の落差 (1)打者を追い込んだ後のヘルナンデスの不可思議な「逆追い込まれ現象」
今日のバルガスは、イニングの締めなど、要所要所で三振をとれたのが大きいが、その原動力になったのが、4シーム、チェンジアップ、カットボールの使い分け。
新しいGamedayのデータで見るとわかるが、今日のバルガスはこの3つの球種を、ほぼ3分の1ずつ使って、打者に的を絞らせなかった。
(例えば、5回のボージャスの三振は、全球チェンジアップ。7回のアブレイユの三振は、三振前の1球を除いて全部ストレート)
配球面で特に気にいったのは、
3回のトリー・ハンターの三球三振の場面。
初球。
アウトコースいっぱい、ハーフハイトのカットボール。見事なコントロールだ。
もしこのボールがアウトコース低めコーナーいっぱいだと、3球目の変化球で三振がとれるかどうかがわからなくなる。なんでもかんでも、コーナーいっぱいに決めればいいというものではない。ハーフハイトだからこそ、3球目を振ってくれる。
2球目。
もしロイ・ハラデイならここで、インコースいっぱいのハーフハイトの4シームでも投げそうな気がするが、バルガスは、インハイいっぱいの4シームを投げて、トリー・ハンターを一気に追い詰めた。これも素晴らしいコントロール。
3球目。
ここでストライクからボールになるバルガス得意のチェンジアップがアウトコースに炸裂。ハンターはなすすべもなく三球三振。
だが、もし仮にハンターがこの素晴らしいチェンジアップを振らずに我慢できていたとしても、おそらくハンターはハーフスイングしていたに違いないと思う。
だから、たとえ4球目を投げることになったとしても、バッターが圧倒的不利な状況にはかわりないことは、誰でもわかるだろう。組み立てがハッキリしているから、次の4球目に投げるべき球のイメージも、すでにバルガスの頭の中にイメージできていたはずだ。
常に次がイメージできる、それが投球術というもの。
常にバッターの半歩先を歩けるコントロールと、キレ、配球イメージが、バルガスにはある。
参考:大投手ロイ・ハラデイの芸術的三球三振
2009年9月30日 投手ハラデイ 打者デビッド・オルティス
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』 序論:2009年9月30日、大投手ハラデイの「配球芸術」を鑑賞しながら考える日米の配球の違い
初球 アウトコースいっぱい ハーフハイトのチェンジアップ
2球目 インコースいっぱい ハーフハイトのカットボール
3球目 インコース ストライクからボールになるカーブ
最後に蛇足ながら、まるでハートが弱くてストライクが投げられないセットアッパー、ジャーメイ・ライトを必死にリードして、2死満塁からLAAの新人ハンク・コンガーのインコースいっぱいに投げさせ、価値ある三振を奪った好リードのキャッチャー、ミゲル・オリーボにも大きな拍手。
ちなみに、今日CFフランクリン・グティエレスがスタメン復帰したが、ジェイソン・バルガスがシアトルに来たのは、2008年12月11日、シアトル、クリーブランド、ニューヨーク・メッツのからむ三角トレードのときで、このときシアトルは、ショーン・グリーン、JJプッツ、ジェレミー・リードなどを放出し、バルガス、グティエレス、マイク・カープ、アンディ・チャベスなどを獲得した。バルガス獲得時のGMはズレンシック。
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素晴らしい115球である。
ストライク75球で、ストライク率は65.2%。まさに「ストライク2 ボール1」。教科書どおりだ。
Long Beach Stateのロゴ
ジェイソン・バルガスが、Long Beach State(カリフォルニア州立大学ロングビーチ校)での大学時代の元チームメイト、ジェレッド・ウィーバーとの投げ合いに勝った。しかも、エンゼルス打線を散発4安打にかわし、7回無失点の快投。これで3勝目。
ジェレッド・ウィーバーとバルガスの元チームメイト対決の結果は、ESPNの看板番組「スポーツセンター」でも取り上げられた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月16日、トロイ・トゥロウィツキー、ジェイソン・バルガス、ジェレッド・ウィーバー、ターメル・スレッジの母校、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の「ダートバッグ野球」。アメリカのカレッジベースボールとMLBの深い繋がり。
チームメイト対決に関するロサンゼルス・タイムズの記事
Cal State Long Beach teammates Jered Weaver and Jason Vargas oppose each other tonight | The Fabulous Forum | Los Angeles Times
Angels' Weaver hopes to right ship in Seattle - latimes.com
試合前のジェレッド・ウィーバーのコメント
"I'm looking forward to facing Jason. We were part of a great team at Long Beach State. He used to throw 94, 95 [mph] in college. He's definitely become more of a pitcher, and it's cool to see," Weaver said. "I think this is the closest start I've ever been part of. Usually it's like a five-game separation in the title race, but everybody is in it now. That's kind of exciting."
Los Angeles Angels at Seattle Mariners - May 18, 2011 | MLB.com Preview
過去のバルガスとウィーバーの対戦
バルガスがシアトルに来て以降、2009年9月9日に一度だけ同じゲームで投げたことがあるが、このときウィーバーは先発だが、シアトル先発はイアン・スネルで、バルガスは先発ではなくブルペン投手としてリリーフ登板だった。
だからバルガスとウィーバーが同時に先発して、真っ向から投げ合ったのは、どうやら今日が初対決らしい。
バルガスはエンゼルス戦通算2勝2敗。防御率2.45。被打率.215、被OPS.626。バルガスが最も多く三振数を奪った対戦相手が、エンゼルス。
September 9, 2009 Seattle Mariners at Los Angeles Angels of Anaheim Box Score and Play by Play - Baseball-Reference.com
バルガスは、ついこのあいだ、ボルチモアの好投手ザック・ブリットン(彼は今日はヤンキース相手に投げていた)と投げあって、9回無失点に抑えきったばかりで、8回1失点に抑えた5月8日テキサス戦も含めれば、これで3試合続けてほぼパーフェクトなピッチング内容だ。
打線も既に6勝を挙げて今期好調のジェレッド・ウィーバーをものともせず、なんとか3点をもぎとり、たぶん負けるだろうなどとファンの間で思われていたいエンゼルス戦を完封勝ち。
Los Angeles Angels at Seattle Mariners - May 18, 2011 | MLB.com Classic
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月13日、「打者を追い込むところまで」で終わりの投球術と、「打者を最終的にうちとる」投球術の落差 (1)打者を追い込んだ後のヘルナンデスの不可思議な「逆追い込まれ現象」
今日のバルガスは、イニングの締めなど、要所要所で三振をとれたのが大きいが、その原動力になったのが、4シーム、チェンジアップ、カットボールの使い分け。
新しいGamedayのデータで見るとわかるが、今日のバルガスはこの3つの球種を、ほぼ3分の1ずつ使って、打者に的を絞らせなかった。
(例えば、5回のボージャスの三振は、全球チェンジアップ。7回のアブレイユの三振は、三振前の1球を除いて全部ストレート)
配球面で特に気にいったのは、
3回のトリー・ハンターの三球三振の場面。
初球。
アウトコースいっぱい、ハーフハイトのカットボール。見事なコントロールだ。
もしこのボールがアウトコース低めコーナーいっぱいだと、3球目の変化球で三振がとれるかどうかがわからなくなる。なんでもかんでも、コーナーいっぱいに決めればいいというものではない。ハーフハイトだからこそ、3球目を振ってくれる。
2球目。
もしロイ・ハラデイならここで、インコースいっぱいのハーフハイトの4シームでも投げそうな気がするが、バルガスは、インハイいっぱいの4シームを投げて、トリー・ハンターを一気に追い詰めた。これも素晴らしいコントロール。
3球目。
ここでストライクからボールになるバルガス得意のチェンジアップがアウトコースに炸裂。ハンターはなすすべもなく三球三振。
だが、もし仮にハンターがこの素晴らしいチェンジアップを振らずに我慢できていたとしても、おそらくハンターはハーフスイングしていたに違いないと思う。
だから、たとえ4球目を投げることになったとしても、バッターが圧倒的不利な状況にはかわりないことは、誰でもわかるだろう。組み立てがハッキリしているから、次の4球目に投げるべき球のイメージも、すでにバルガスの頭の中にイメージできていたはずだ。
常に次がイメージできる、それが投球術というもの。
常にバッターの半歩先を歩けるコントロールと、キレ、配球イメージが、バルガスにはある。
参考:大投手ロイ・ハラデイの芸術的三球三振
2009年9月30日 投手ハラデイ 打者デビッド・オルティス
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』 序論:2009年9月30日、大投手ハラデイの「配球芸術」を鑑賞しながら考える日米の配球の違い
初球 アウトコースいっぱい ハーフハイトのチェンジアップ
2球目 インコースいっぱい ハーフハイトのカットボール
3球目 インコース ストライクからボールになるカーブ
最後に蛇足ながら、まるでハートが弱くてストライクが投げられないセットアッパー、ジャーメイ・ライトを必死にリードして、2死満塁からLAAの新人ハンク・コンガーのインコースいっぱいに投げさせ、価値ある三振を奪った好リードのキャッチャー、ミゲル・オリーボにも大きな拍手。
ちなみに、今日CFフランクリン・グティエレスがスタメン復帰したが、ジェイソン・バルガスがシアトルに来たのは、2008年12月11日、シアトル、クリーブランド、ニューヨーク・メッツのからむ三角トレードのときで、このときシアトルは、ショーン・グリーン、JJプッツ、ジェレミー・リードなどを放出し、バルガス、グティエレス、マイク・カープ、アンディ・チャベスなどを獲得した。バルガス獲得時のGMはズレンシック。
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