June 04, 2011

ちょっと書いていて気が重くなるような記事を書いたばかりなので、ちょっと気ばらしに、昨日のタンパベイの先発、James Shieldsのことでも書いてみる(笑)

ボルチモアのジェレミー・ガスリーが、好投手なのに、やたらホームランを打たれるタイプの投手なことを書いたばかり(http://blog.livedoor.jp/damejima/archives/1599392.html)だが、タンパベイのJames Shieldsも、防御率2.77で、ア・リーグ防御率ランキング8位、WHIIPも1.04でランキング10位というのに、その一方ではガスリーと並んで、ア・リーグで最もホームランを打たれている投手3人のひとりでもある。(ほかの2人は、カンザスシティのルーク・ホッチェバー、テキサスのコルビー・ルイス
Major League Baseball Stats: Sortable Statistics | MLB.com: Stats

また、今年29歳の彼は、20代の現役投手の中で最もホームランを打たれている投手3人のうちのひとりでもある。(他の2人は、ナショナルズのマイナーにいる元メッツのオリバー・ペレス、LAAのアーヴィン・サンタナ。ペレスも元・奪三振王)
現役投手の被ホームラン・ランキング
Active Leaders & Records for Home Runs - Baseball-Reference.com

James Shieldsのこうした「三振か、ホームランか」という傾向はなにも今年だけのものではなくて、過去何年か見ても、彼は、被ホームラン・ランキングは「自分の庭」とばかりに(笑)毎年のように顔を出している「被ホームラン・キング」なのだ。

2007 AL 28 (3rd)
2009 AL 29 (2nd)
2010 AL 34 (1st)
2011 AL 12 (3rd) 2011年6月2日現在
James Shields Statistics and History - Baseball-Reference.com

ちなみに、こっちは「被ホームラン・ランキングのもうひとりの王様」ジェレミー・ガスリーのランキング。2009年の王様がガスリー、2010年はJames Shields、というわけ。
2009 AL 35 (1st)
2010 AL 25 (7th)
2011 AL 10 (7th)  2011年6月2日現在
Jeremy Guthrie Statistics and History - Baseball-Reference.com


James Shieldsは2010年被ホームラン・キングでもあると同時に、奪三振187、9イニングあたりの奪三振率8.277と、奪三振ランキングの上位でもある。どうしてまたこういうことになるのか?
それはたぶん、「打者の打撃傾向をほとんど考えずに、自分の投げたい球を、自分のピッチングスタイルに沿って投げている」という点にあるのだろう、と思う。

昨日のゲームでShieldsが浴びたホームランは4本だが、そのうち2本を打ったのはカーロス・ペゲーロセーフコのカーロス・コールにならって、あえてカルロスとは書かない 笑)。
ペゲーロは、シアトルのゲームをよく見ている日本のファンなら誰でも知っているが、典型的なローボールヒッターだ。
ペゲーロが特に好むのは、真ん中低めの、それもストライクからボールになるチェンジアップのような球だ。
ある種、どんな悪球でもヒットにしてしまうボルチモアの悪球王ウラジミール・ゲレーロのようなタイプだが、まだまだ名前だけ似ているだけでゲレーロよりずっと格は落ちる。ペゲーロは高めのストレートがウイークポイントで、間違いなく空振りしてしまい、ほとんど打てない。(要は、高めストレートの得意なジャック・カストと真逆のタイプ)

なのに、Shieldsは、2回裏にそのペゲーロ(ゲレーロではない。ややこしいな 笑)に、彼の一番の大好物の「真ん中低めのチェンジアップ」を、それもご丁寧に、初球と3球目、2球も投げてくれて、3ランを打たれてしまう。
そして、3ランだけでプレゼントは足りず、4回裏ペゲーロの次の打席でも、低めのカーブを初球、2球目、4球目と投げてくれて、この日2本目のホームランまでプレゼントしてくれる。
これはまさに文字通り、献上だ(笑)。ビッグなプレゼントくれるのはありがたいけど、ホームランを打たれた次の打席の初球に、また「低めの変化球」を投げてきたときには、かえってビックリした。「まだホームランを打たれ足りないのか?」と、即座に思ったら、思った通りの結果になったわけだ(笑)


Shieldsはどうも、「打者のスカウティングを、まったく気にせず投げている」ように見える。

と、いうのも、2回裏にジャック・カストにソロ・ホームランを打たれた場面でも、カストの大好きな「やや高めのストレート」を3連投、4回裏にジャスティン・スモークにソロ・ホームランを打たれたときも、彼の大好きな低めに落ちていく変化球を2球投げているからだ。
そもそもカストは、体を寝かせながら打つ独特のアッパーカットのフルスイングで高めの速い球を打ち上げるのが得意な打者で、逆に、低めの変化球は苦手だ。
またスモークも、高めの速いストレートにはいつも振り遅れるなど、得意な球だけを打てる打者で、苦手な球はほとんど打てない。

ペゲーロ含め、3人が3人とも、得意不得意が非常にハッキリしている打者なのに、Shieldsは彼らの得意な球ばかりを投げているのだ。
先日マイナーに落ちてしまったマイケル・ソーンダースも、高めには滅法強いが、インコース低めに落ちていく変化球が苦手だったが、Shieldsのピッチングは、いわば「ソーンダースに高めのストレートを連投するピッチングをしているようなもの」だ。

さらに言えば、彼は「このイニングは、低めのチェンジアップでいく」と決めたら、そのイニングの最初の3人のバッターに、低めの好きな打者がいようと、チェンジアップが好きな打者がいようと、おかまいなしに低めのチェンジアップを投げるし、それで低めのチェンジアップが打たれてしまった後はというと、「チェンジアップはダメか。よし、こんどはアウトコースいっぱいを攻めるゾ!」と方針を変え、こんどは誰彼かまわず「アウトコースばかり」攻めるような、一本調子なピッチングを実際にやっている。

うちとれているうちはいいが、ほんのちょっとでもツボにはまれば、間違いなくスタンドに放り込まれてしまう、Shieldsはそういう「こわれやすいガラスのエース」である。


だが、まぁそうは言っても、Shieldsの「三振か、ホームランか」という、「イチかバチか感のピッチング」は、たぶん毎日見ていれば、日頃投球術がどうのこうのと、11三振とるようなフェリックス・ヘルナンデスにもうるさく言っている投球術フェチ(笑)のブログ主も、おそらくファンになってしまうような、「アブない魅力」を兼ね備えているのも事実だ(笑)

タンパベイの監督ジョー・マドンは、マイク・ソーシアのベンチコーチをつとめられるような頭のいい人なのだから、「打者のことも、ちょっとは頭に入れて投げろ」とアドバイスするくらいのことは考えたはずだが、たぶんJames Shieldsの荒削りの魅力が削がれるくらいなら、欠点を直すのはあえて止めておこう、と、思ったのかもしれない。
MLBに入ったばかりの頃のベーブ・ルースだって、グリップが上下逆だった。だから、20本や30本のホームランくらい許してやるから、三振を200くらい獲ってこい!、というのが、粋、というものかもしれない。







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