June 17, 2011

一度書いたことなのだが、「盗塁」の歴史は、MLBの発展史という観点からみると、「ホームラン」の増加と相反する関係にある。

盗塁の栄枯盛衰には、何人かの名選手がかかわっている。
1900年代は、球聖タイ・カッブが活躍した「盗塁の黄金時代であるMLB創世記」。1920年代は、ベーブ・ルースがヤンキースに移籍し、旧ヤンキースタジアム建設された「ホームラン賞賛によるMLB発展期」。
盗塁数が激減した1940年代以降の「盗塁受難時代」を、「盗塁の復権」へと導いたのが、ベネズエラの英雄ルイス・アパリシオや、ルー・ブロック。1980年代の「第二の盗塁黄金期」を築いたのは、リッキー・ヘンダーソンティム・レインズビンス・コールマン

盗塁という美学の歴史に深くかかわった彼らは、いってみれば、彼らの持って生まれた「天性のスピード」でMLB史を動かしたプレーヤー、でもある。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月9
日、盗塁とホームランの「相反する歴史」。そしてイチローのメジャーデビューの歴史的意義。


盗塁とホームランのMLB史とイチロー400盗塁


イチローが属している現在のMLBが「盗塁をするプレーヤー」にとって、どういう時代か、ちょっと考えてみたい。

結論を先にいえば今のMLBは、盗塁キングを志す快足プレーヤーたちにとって、けして黄金期とはいえない。このことは、イチローの盗塁記録を見る上でも、もっときちんと意識されていいことだと思う。

数字上でみても、1990年代の「ステロイドによるホームラン狂想曲」が終わったとはいえ、2000年代の盗塁数は急増してはいないし、グラフとあわせて、盗塁数ランキングの上位の現役選手たちの「年齢」を考慮してみれば、もっとわかりやすい。

通算盗塁数 現役ベストテン
1 Juan Pierre (33)   537 L 52
2 Carl Crawford (29) 417 L 52
3 イチロー (37)     401 L 39
  Omar Vizquel (44)  401 B 23
5 Johnny Damon (37) 392 L 27
6 Bobby Abreu (37)  382 L 28
7 Jimmy Rollins (32)  357 B 37
8 Jose Reyes (28)   353 B 58
9 Chone Figgins (33) 330 B 46
  Derek Jeter (37)   330 R 23

(2011年6月16日現在。名前の後のカッコ内が年齢。盗塁数の後、Lが左打者、Rが右打者、BはBoth、つまりスイッチヒッター。最後の数字は、キャリア1年あたりの盗塁数。)
資料:Active Leaders & Records for Stolen Bases - Baseball-Reference.com

通算盗塁数ランキング現役ベスト50人
2011年6月16日現在 盗塁数ランキング現役ベスト50人盗塁数、という記録は、長年積み重ねてきても下がる可能性のある「打率」とは違い、数字を積み上げていく記録なわけだから、ランキング上位を30代のオジサン・プレーヤーが占めているのは、あたりまえといえば、あたりまえだ。

では、今の20代の足の速い選手たちが熱心に盗塁し続けていけば、やがては、ランキング上位にいる30代のオジサン選手たちすべてを追い越して、自然と盗塁ランキングが大きく塗り替えられていくのだろうか?


ここで、ちょっと数字を操作して、ランキングの上位選手の盗塁数を、いまのイチローと同じ「37歳時点」に揃えてみることを思いついた。
方法は単純だ。それぞれの選手の通算盗塁数をメジャー経験年数で割った「1年あたりの盗塁数」を、それぞれの選手が37歳になるまでの年数分だけ加算してみただけ。
その仮の「37歳時 盗塁ランキング」は、こんな感じになる。

Jose Reyes    353+(58×9)=875
Carl Crawford  417+(52×8)=833
Juan Pierre    537+(52×4)=745
イチロー (37)  MLB401+日本200=日米601盗塁
Jimmy Rollins   357+(37×5)=542
Chone Figgins  330+(46×4)=514
イチロー (37)  MLB401盗塁
Omar Vizquel (44)  401
Johnny Damon (37) 392
Bobby Abreu (37)  382
Derek Jeter (37)   330

まずいえることは、イチローが、イチローよりも長いメジャー経験をもつ同年代のプレーヤー全員を追い越して、既に同世代のMLB盗塁王であることだ。(たとえばジョニー・デーモンデレク・ジーターは、2人とも1995年デビューでメジャー16年目)

だが、メッツのホセ・レイエスと、ボストンに移籍したカール・クロフォードが、これまでの「20代の盗塁ペース」を、「30代でも走力をずっと保ち続けて」、「盗塁し続けるための出塁を保障する打力を、37歳まである程度キープする」ことができると仮定すれば、彼らが37歳になったときには、2人して、イチローの現在のの「MLB 401盗塁」を遥かに上回るどころか、800盗塁だって達成できてしまう。
盗塁の記録にはいろいろな種類があるが、通算盗塁数でいうと、600というのがひとつの目安数字になる。MLB通算600盗塁を達成した選手は16人しかいないが、800盗塁となると、わずか5人しか達成していない。
あと10年で、いま20代のホセ・レイエスと、カール・クロフォードの2人が、このわずか5人しかいない「800盗塁クラブ」に加わるかもしれない、ということだ。
List of Major League Baseball stolen base records - Wikipedia, the free encyclopedia


イチローがメジャーデビューしてからここまでの「1年あたりの盗塁数」は平均で「 39 」。今年2011年の盗塁数が、既に「 18 」。今年はまだシーズンの半分も終わっていないだけに、今年は40盗塁を達成する可能性はかなり高い。

ここまで書いてくると、もうおわかりだろう。
37歳で、40盗塁というのは、ちょっとありえないほどの心身の健康さなのだ。

盗塁のシングルシーズン記録には、100を超える記録も数多くあるわけだが、そこだけをみていると、なにか「40盗塁」という数字が少ないように勘違いする人がいる。
そもそもシーズン100盗塁という記録は、19世紀末とリッキー・ヘンダーソンの記録がほとんどで、近年の選手レベルでいうと、40という盗塁数はけして少なくない。まして、最初に説明したとおり、ステロイド時代以降の野球においては、盗塁数そのものが激増するどころか、むしろ減少しかねない時代になってきているのが、今の時代だ。

「40盗塁を、しかも30代後半で連続的に達成できる選手」など、現実にはまだ30代前半だがホアン・ピエールくらいしか出現しないかもしれないのが、いまの盗塁という美的行為をめぐる現実だ。


たとえば、いま34歳のカルロス・ベルトランは、通算盗塁成功率88.1%という、とてつもないメジャー記録をもつ素晴らしい快速ランナーだったが、2005年8月に守備でマイク・キャメロンと激突して骨折した影響などで17盗塁に終わり、その後、膝の故障を抱えるようになってからは、盗塁数が激減した。
List of Major League Baseball stolen base records - Wikipedia, the free encyclopedia
このベルトランに代わるメッツの盗塁キングはもちろんホセ・レイエスだが、彼も2009年は故障の影響で11盗塁に終わっている。カール・クロフォードも故障持ちだ。


現役選手の盗塁ランキング上位選手の中で、いまだに盗塁という美的プレーに「伸びしろ」と「ゆとり」を失わない選手。
それが37歳のイチローだ。






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