May 15, 2011

この記事は、下のリンクの続きだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月13日、「打者を追い込むところまで」で終わりの投球術と、「打者を最終的にうちとる」投球術の落差  (1)打者を追い込んだ後のヘルナンデスの不可思議な「逆追い込まれ現象」



ちょうど一ヶ月前。
カムデンヤーズへの遠征で、フェリックス・ヘルナンデスは、典型的な早打ちボルチモア打線につかまり、早いカウントのストレートを狙い打たれる形で、被安打7、四球3、自責点4。5回でマウンドを降りた。
ゲーム序盤の3失点くらいなら、ほとんどの場合、そのまま7回120球くらいまで平気で投げるヘルナンデスが「5回で降板させられた」のだから、いかに5月12日のカムデンヤーズでのピッチング内容が悪かったかがわかる。
Seattle Mariners at Baltimore Orioles - May 11, 2011 | MLB.com Classic

あのとき、こんなことを書いた。
ヘルナンデスには「投球術」が欠けている。
だからもう、ヘルナンデスのことを、「キング」と呼ぶのは、やめることにした。


あれから一ヶ月たって、6月18日。
ホームのフィリーズ戦で、ジミー・ロリンズシェイン・ビクトリーノに好きなように打たれまくるヘルナンデスを見ながら、5月のときの「感想」は、変わるどころか、より確信に近いものに変わった。
キングス・コート」とかいうチケット販売戦略は、まぁ、観客動員のためのギミックだから、それはそれでいい。好きなようにビール飲んで、仮装大会やって、お祭り騒ぎは好きに楽しめばいい。だが、ブログ主は、ヘルナンデスのことを「キング」と呼ぶつもりはない。


5月頃、日本のファンはヘルナンデスについて、「いつも5月がよくないから、しかたがない」だの、わかったようで実は何の根拠もないことをしきりに言っていたものだ。月別データを見ると、そういうテキトーすぎる意見が「二重の意味で」現実をわかっていない意見であることがわかる。

今年のヘルナンデスは、月別データだけでいうと、「いつも5月がよくないから、しかたがない」どころか、これでも5月が一番「マシ」なのだ。
   被打率 防御率
4月 .240   3.32
5月 .202   3.07
6月 .263   3.77

まぁ、こんなデータを見ると「5月は例年悪いわけだけど、今年に限っては、実は良かったんだな・・・。ヘルナンデス、さすが」(笑)などと、自分が二重に馬鹿なことを言っていることさえ気づかないで、早とちりしたことを言うアホウが必ず出てくるだろう。数字だけ見て、実際のゲームはほとんど見ずにモノを言っていても、恥をかかずに済むと思っているのだろうか。

ヘルナンデスの5月の全登板を見た人なら、データ上の良し悪しはともかく、「2011年5月のヘルナンデス」がかなりグダグダなピッチングぶりだったことをよく知っている。だからこそ、5月にボルチモアでメッタ打ちにあったのである。

そして「6月のヘルナンデス」は、5月の「数字では絶対にわからないグダグダ」が表面化してきて、被打率.263などという、とんでもないことになってきている。



Fangraphには、カウント別に、投手がどんな球種を投げたかが、おおまかにわかるデータが用意されている。
これと、Baseball Referenceのカウント別被打率とあわせて、今年のヘルナンデスが「どういうカウントで、どういう風に打者を攻め、そして打たれているか」、ちょっと簡単にシミュレーションしてみよう。
Felix Hernandez ≫ Splits ≫ 2011 ≫ Pitching | FanGraphs Baseball
Felix Hernandez 2011 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
注意してほしいのは、Fangraphの球種分類が「おおまか」であること。たとえば、最近のヘルナンデスは「シンカー」を多投するが、この「シンカー」という球種はFangraphの分類項目に無い。たぶん、どれか違う変化球のパーセンテージに含められて計算されてしまっている。だから以下の話で、変化球についてあまり厳密に書くことは、そもそもできない)



Baseball Referenceによれば、今年のヘルナンデスがもっとも打たれたカウントが、First Pitch、初球だ。まず、ここが問題の出発点である。
相当打たれている。被打率は.381。被長打率.540、被IOPS.930。数字の上だけでみても、かなり酷い。

他にも、ヘルナンデスが被打率3割以上打たれているカウントは、初球、1-0、2-0、0-1、1-1と、合計5つもある。要は「3球目までに打たれると、かなりの確率でヒットを打たれてしまっている」ということになる。

Fangraphで、「被打率3割以上の5つのカウント」で投げた球種を調べてみると、面白いことがわかる。

ヘルナンデスが打たれているカウントで投げている球種をみてみる。
初球 速球(確率71%)被打率.381
1-0 速球(70%)被打率.308
2-0 速球(94%)被打率.385
0-1 速球(33%)、カーブ(31%)被打率.324
1-1 速球(38%)、カーブ(25%)、チェンジアップ(24%)被打率.361
Felix Hernandez 2011 Pitching Splits - Baseball-Reference.com


もうおわかりだろう。簡単だ。
早いカウントではストレートを打たれ、遅いカウントになると、変化球を打たれる
これらの単純なデータ群からでさえ、ヘルナンデスが投球の3球以内で打たれるパターンが、簡単に分類できることがわかる。

もうちょっと詳しく書いてみる。

A)初球が打たれるケース(1通り)
A−1 初球のストレートを狙い打たれ、長打される

B)2球目が打たれるケース(2通り)
B−1 初球のストレートがボール判定。2球目にストレートを連投してストライクをとりにいって打たれる
B−2 初球のストレートがストライク判定。2球目にストレートか、カーブを投げ、打たれる

C)3球目が打たれるケース
C−1 初球、2球目でストレートを投げて、どちらもボール判定。3球目もストレートで、そこで打たれる
C−2 初球のストレートでストライク、2球目がストレートかカーブで、ボール。1-1となって、次の球(ストレート、カーブ、チェンジアップのどれか)を打たれる。
C−3 初球のストレートがボール、2球目もストレートで押して、こんどはストライク。1-1となって、次の球(たぶんアウトコースの変化球、それもシンカーかチェンジアップと推測)を打たれる。


同じことを、こんどは「バッター目線」から整理してみよう。
打者はどのカウントで、どの球種を打てばいいか?

初球の狙いかた
1)何も考えず、初球ストレートを思い切り強振。長打狙い。
2球目の狙いかた
2)初球ストレートがボール判定だった場合、2球目も高確率でストレートが来るので、ここは必ずヒッティングすべき。
3)初球、2球目が、続けてストレートのボール判定のカウント2-0。次は間違いなくストレート。狙い打ちしていい。(もし四球が必要な場面で、コントロールが荒れているケースなら、振らなくてもいい)
4)初球ストレートを強振して、空振りか、ファウルだったカウント0-1の場合。2球目がストレートである確率はかなり下がり、球種がバラつくため、ここは様子見。
5)初球ストレートがきわどいので見逃したカウント0-1の場合、もしその球がストライクだったら、2球目は球種が予測しづらい。ちょっと様子見。
3球目の狙いかた
6)初球ボールで、2球目をファウルしたら、3球目は、変化球かストレートか、狙う球種さえしっかり絞りきれれば、甘い球を狙い打てる。
7)初球ストレートがストライク、2球目がボールのカウント1-1なら、3球目は基本的に様子見だが、打ちたいなら、変化球かストレートか絞りきって、甘い球だけを打つ。
8)初球、2球目で、カウント2-0に追い込まれた場合。3球目のアウトコースの変化球は、ほぼ「釣り球」。見逃すべき。4球目も、ほぼ同じ。これでカウントを2-2まで戻せる。

ちょっと読みづらい書き方で申し訳なかったが、上に書いたことをもっと簡単に言うと、どういうことが起こっているのか。

早いカウントで投げたがる「ストレート」、遅いカウントになると投げたがる「変化球」、ヘルナンデスはその両方を打たれているのである。


初期症状で、ストレートへの自信と信頼が失われていき、さらに症状が進んだ後期症状では、せっかく打者を追い込んでも、その後はアウトコースのボールになる釣り球の変化球一辺倒になって、打者にピッチングの組み立て自体を見切られていく。その結果、球数はやたらとかかるようになり、2-2や、フルカウントがやたらと増えていく、というのが結論だ。


実際、今年のヘルナンデスのPitch Type Values(球種ごとの有効度)は、こうなっている。(カッコ内は2010年の数値)
ストレート    -1.8(2010年 25.5)
スライダー系  -0.7(6.1)
カーブ      3.2(2.4)
チェンジアップ 13.9(18.7)

早いカウントのストレートが打たれすぎたことで、配球システムの根本が崩れて、いざとなったらストレートに頼るピッチングが不可能になってきた」のである。
これがヘルナンデスのピッチングの根幹が崩壊してきた去年から既にあった「第一の問題点、初期症状」だ。


そして、ストレートを早いカウントで打たれすぎて、ピッチングの逃げ道がなくなってしまった彼が何に頼ったか。
外のシンカーやチェンジアップである。


最初の2球でなりふいかまわず打者を追い込んで、カウント0-2としたら、後は、外のシンカーやチェンジアップ。
ここからが「第二の問題点、後期症状」だ。
どうにかして打者を追い込んだにしても、あとに残されたのは、チェンジアップやシンカーくらいしかない。そういう球種をアウトコースのボールゾーンに釣り球として投げるのは、「打者への攻め」ではなくて、「単なる消去法」だ。ほかに選択肢がないから、それに決定しているだけである。
(本当はないこともないのだが、たとえキャッチャーがそれを要求しても、ヘルナンデスは首を横に振る。だから、カウントが煮詰まると、非常に高い頻度でバッテリーのサインがあわなくなって、テンポが遅くなる。そうするとビクター・マルチネスのような観察眼のある打者は「ヘルナンデスが首を振ったな。ああ、これは変化球、特にシンカーが来るな」と、わかるようになってくる)

だが、打者も馬鹿ではない。

ストレートを投げることに「ある種の恐怖心」を抱くようになってきているヘルナンデスの「弱腰ぶり」は、打者はもう十分すぎるほどわかっている。
ヘルナンデスのカウント0-2、あるいは、カウント1-2からは、たてつづけに「外の、ボールになる変化球が来ること」はわかっている。ならば、ボールなら黙って見逃せばいいし、ストライクなら、タイミングをあわせて狙い打つだけのことだ。

こうして、カウント2-2やフルカウントが多発するようになっていく。


こういうのを、
日本語では「見切られる」という。
先発投手は見切られたらオシマイだ。






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