July 06, 2011

2011年7月5日 イチローのスライディングで決勝エラー誘発

動画:Seattle Mariners at Oakland Athletics - July 5, 2011 | MLB.com Video

Gameday: Seattle Mariners at Oakland Athletics - July 5, 2011 | MLB.com Classic


1点リードで9回裏を迎えながら、クローザーブランドン・リーグが2本のヒットを浴びて、リードを失った。2本目のヒットはレフトのカルロス・ペゲーロがほぼ捕れたポップフライ。記録はシングルヒットだが、ほぼエラー。

同点で、試合は延長へ。

10回表。
まるで当たっていないグティエレスがようやくシングルで出塁し、無死1塁のチャンス。だが、次のホールマンがバント失敗した挙句に、三振。いやな空気が流れた。
次は、トップにまわって、この日すでに2安打のイチロー。タイムリーの期待が高まったが、打席途中でグティエレスが盗塁。
こうなると、当然、敬遠。現在のオークランドの監督は、クビになったボブ・ゲレンの後を引き継いだ元マリナーズ監督のボブ・メルビンだ。彼はイチローのことを知り尽くしている。1死1、2塁で、バッターはブレンダン・ライアン
ライアンはこのところイチローがランナーにいるとほとんど打てない。この日は3回表にも、1死1塁でイチローを塁上に置いて併殺打を打っている。ここでも例によってセカンドゴロ。

ライアンのこの日2回目の併殺打で万事休す、と、思われたが、イチローがオークランドの若いショート、クリフ・ペニントンに強烈なダブルプレー阻止のスライディングをかましたところ、ペニントンの悪送球を誘って、セカンドランナーのグティエレスが一気に生還。これが決勝点となった。


ゲームの経緯というものは、たいていこうやって書き並べて、経緯をきちんと追わないとわからないものだ。
きちんと経緯を見てもらえばわかるが、この「イチローのスライディング」は、味方のミスを最低4つは一気に取り返している。ざっと数え上げただけで、最低4人の大きなミスをカバーしているのである。
たかがスライディング、ではない。

9回表のブランドン・リーグの失点
9回表のカルロス・ペゲーロの守備ミス
10回表のグレッグ・ホールマンのバントミスと三振
10回表のブレンダン・ライアンの併殺打


今日のイチローはDHで、ライトを守ったのは、最近ペゲーロと交代でレフトに入り、たまにはグティエレスの代わりにセンターも守ったりするホールマンだ。
シアトルは「マイナー番長」であることが明らかになった外野手のリザーブのマイク・カープをマイナーに送り返したため、今日のように、ホールマンとペゲーロ、2人を同時にスタメンで使うと、ベンチには外野手の控え選手がいなくなる
もし、どうしても緊急に外野を守らせるとしたら、かつてLAA時代に外野手だったショーン・フィギンズくらいしかいない。
1点リードした9回裏に、1死3塁、あわやサヨナラ負けというピンチを迎えたが、守備が下手なのがわかっているレフトのペゲーロに守備固めができなかったのは、今シーズンの「野手の手薄さ」が背景にある。


なぜ、シアトルはこんなに「野手が手薄」なのか。
というか、スタメンを毎日入れ替え続けられるほど、野手がロスターにあふれかえっているのに、なぜ「野手が手薄」なのか。

理由はハッキリしている。
GMズレンシックの不手際だ。


ズレンシックが去年もくろんだ「超守備的選手構成」は、既に取り返しがつかないほど破綻して、ペイロール、つまりチームの予算は今は身動きがとれない
だが、その収拾策としてズレンシックが開幕以降やったことといえば、去年の無駄な選手を整理することもせず、放置したまま、マイナーから「打てそうだが、守りのできない給料の安い若手選手」を大量に連れてきて、「若手育成シーズン」とか称してスタメンに名前を連ねさせることだった。

その結果、生まれたのが、ウェッジが毎日やっているとっかえひっかえの「二重スタメン」だ。

だからいまズレンシックとウェッジがやっていることは、「若手の育成」という名目の、実質「自分の失敗してできた莫大な借金の穴埋め」だ。
去年の借金の整理もできないズレンシックは、しかたなく若手育成という名目のもとにマイナーから若い選手を次々に上げてきて、床に開いたデカい穴を、若手という「値段の安いパテ」で塗り固めてふさいで、誤魔化そうとしているのである。


ズレンシックは、去年自分の肝いりでスタメンに名前を連ねさせたミルトン・ブラッドリー、ショーン・フィギンズ、ジャック・ウェイルソン、フランクリン・グティエレスに、気前よく契約をくれてやった。だが、すぐに彼らは基本的に打撃(あるいは打撃と守備の両方)に問題があることが既にわかった。

そのため、いまシアトルのロスターは、働かないのに給料の高い選手と、働けるが給料の安い選手、2種類の選手が、ダブついて存在している。そしてズレンシックは、一部の選手が新しいスターであるかのように意識的にファンを誘導して、スタジアムを満杯にしようとやっきになっている。
普通に活躍し続けていれば自然と抜きん出ていくのがスターというものなのに、不自然、かつ、迷惑きわまりない。

A群 「打てない。守備のみ。複数年契約のベテラン」
2Bジャック・ウィルソン、CFグティエレス、3Bフィギンズ、そしてかつてのLFミルトン・ブラッドリーなど。言うまでもなく、「去年のロスターの残骸」だ。無能なズレンシックの与えた無謀な複数年契約で、能力に見合わない給料を稼いでいる。彼らの能力不足を埋めているのは、給料の安いケネディ、アックリー、ライアンなど。ケネディは、アックリーのリザーブまでこなしている。

B群 「打てそうな期待感。守備はイマイチ。若手」
1Bスモーク、LFペゲーロ、LFカープなどの新人。メジャーに呼んだ当初は多少打てた。だが、時間が経つにつれ、守備が下手なことが判明しつつあり、打撃も湿ってきた。彼らの控え選手はホールマンくらいしかいないが、とても能力不足解消とは言いがたい。彼らの出場じたいが、控え選手をスタメンに出しているようなものだから、もし彼らが怪我でもすると、控え選手はすぐに不足する。ジメネスの怪我がいい例だ。


ジャック・ウィルソンは、すっかりブレンダン・ライアンとダスティン・アックリーの陰にかくれたコストの馬鹿高い控え選手で、ペイロールの硬直化を招いている。複数年契約をもらって以降のグティエレスは、アウトコースの変化球に弱いくせに引っ張りたがる「サードゴロ マシーン」で、肩も弱い。年900万ドルも稼ぐフィギンズは、とっくに攻守とも壊れ果てた。ここに、アウトコースの変化球が打てないことが相手チームにバレつつあるオリーボが加わりつつある。
ペゲーロは打てる球種とコースをスカウティングされて、さっぱり打てなくなり、さらに守備が上手くない。低めのワンバウンドするような釣り球のチェンジアップで簡単に三振することは、いまや誰でも知っている。スモークは低めの縦に動く変化球に釣られやすく、強い当たりのファーストゴロが苦手なことも判明しつつある。カープは今回のコールアップでも全く時間の無駄に終わり、マイナーに返品された。


シアトル・マリナーズの4番以降9番までの6人は、シンプルにいえば攻撃しかできない給料の安い若手6人と、守備しかできない給料の高いベテラン6人、合計12人でやっている「おそろしく非効率な会社」のようなものだ。

この「会社の本来の仕事」は、本来は6人分だ。6つの攻撃と、6つの守備だ。本来はこれを6人でこなして、6人分の給料を払う。
だがシアトルでは、いわば12人の野手で、この6人分の仕事をさせている。12人分の給料を払い、常に12人分の出場枠を順繰りに確保してやって、調子をキープし続ける。


となると、そこで始まるのが、毎試合のように繰り返される「スタメン組み替えごっこ」だ。

「相手の先発投手が左だから」とか名目をつけて、「新人のA、B、C。ベテランのa、b、c」を使ったかと思えば、その翌日は「相手の先発が右だから」と名目をつけて、「新人のD、E、F。ベテランのd、e、f」と、まったく違う6人を使う。



先発投手が左? だから何?
そんなの、どこにも合理性はない。







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