August 19, 2011

とある日本のセイバー系サイトで、ちょっと面白いコラムをみかけた。
投手を4タイプに分け、それぞれにチームの守備力との相関を計算したところ、「フライボール・ピッチャーの防御率は、チームの守備力とは、ほとんど何の関係ない」というのだ。
もしこれが本当だとすると、例年フライボールピッチャーばかり集めてきたチームのクセに、守備に大金をかけてきた無能GMズレンシックのチーム編成戦略は「実は、そもそも無意味だった」ということになる(爆笑)
セイバーメトリクス 野球データ分析コラム|SMRベースボールLab


ただ、残念なことにこの仮説、実は
すぐに妥当といいきれるものでもない。

まずは、この著者が導き出した仮説から引用。
DERから導かれた結論
三振型の投手は守備力の影響を受けにくい
フライ型の投手は守備力が低いと成績が悪くなりやすい
ゴロ型の投手は守備力が高い場合成績が良くなりやすい
投手の成績と守備力の関連について〜DERを用いて - セイバーメトリクス 野球データ分析コラム|SMRベースボールLab

UZRから導かれた結論
三振型の投手は外野の守備力が高いほど防御率が低い
フライ型の投手は守備力との関係は認められなかった
ゴロ型の投手は内野の守備力が高いほど防御率が低い
投手の成績と守備力の関連について−UZRを用いてPart1 - セイバーメトリクス 野球データ分析コラム|SMRベースボールLab


読めばすぐにわかるように、著者は、DER(Defense Efficiency Ratio)とUZR(Ultimate Zone Rating)、2種類の守備系指標から2種類の考察を行い、2つの多少異なった仮説を導きだしていている。
たとえばフライボール・ピッチャーの防御率については、DERからの考察では「守備力が低い場合、成績が悪くなりやすい」と相関を肯定しているのに対して、UZRからの考察では「チームの守備力と関係はない」と相関を否定し、2つの違う仮説を導き出している。
そして、困ったことに、著者はDERとUZRで、なぜ結論が変わってくるのか?という点について、十分な説明をしていない。


DERUZRで違う仮説が導きだされる原因は何だろう?
計算間違いとか、仮説の構造にもともと無理があるとか、そういう単純ミスでもない限り、普通は、DERとUZR、2つの指標の本性というか、2つの指標の性質の違いに原因があると考えるのが自然だが、著者は、DERとUZRが高い相関関係にあるとは書いているものの、「DERとUZRの違い、相関性と、投手の防御率に与える影響の差」について十分説明を尽くしているとはいえない。

著者の挙げた数値を見る限り、「DERとUZRの相関度の計算において、DERと内野のUZRの係数と、DERと外野のUZRの係数で大きく違いがあるので、「DERとの相関がより強いのは、内野のUZRである」ようにも見えるのだが、どういうものか、著者はその点について特に何も強調はしてない。

もし「DERとの共通性が強いと言えるのは、主に内野のUZRである」と仮定していいのなら、「投手の防御率と、チームの守備力とのかかわり」については、「内野守備については、DER、UZR、どちらの指標を使ってもほぼ同じ結論が出せる」ことになる。
そして「外野守備については、DERとUZRでは指標の個性の違いが際立ってしまう」のだと仮定すると、「投手の防御率と、チームの外野守備力の相関については、使う指標によって導かれる仮説が異なってしまう」のは当然のことになるわけだが、そのことについて、著者は残念ながら特に言及していない。


しかしまぁ、始まったばかりの議論にそんな細かいことを言っていても始まらない。DERでもUZRでも同じ方向性の仮説にたどりついている部分だけをつまみ食いしてみる。

グラウンドボール・ピッチャーの防御率について筆者は、DERからの考察では「守備力が高い場合、成績が良くなりやすい」、UZRからの考察では「内野の守備力が高いほど、防御率が低い」と、似たような結論が導かれている。
別の言い方をすると、グラウンドボール・ピッチャーの防御率は、DERからみても、内野のUZRからみても、チームの守備力と強い相関関係にある、ということらしい。ちなみに著者は、内野のうち、守備で最も投手の防御率に関係するのは、サードとショートであるとしている。

三振型のピッチャーの防御率については、DERでみると相関は見られないが、UZRおよび外野のUZRの2つとは強い相関関係がある、としている。つまり、「三振をたくさんとれる投手にとって大事なのは、外野のゾーン的な守備力である」ということらしい。まぁ「長打になりそうなボールを捕球してアウトにするとか、三塁打を二塁打に、二塁打を単打にできる、守備チカラの高い外野手が必要」とでもいう意味にとっておくことにする。

最後にフライボール・ピッチャーの防御率は、DER、UZRの両方と、ほとんど相関関係がないらしい。つまり、ここから「フライボールピッチャーの防御率は、チームの守備力とは、実は、ほとんど相関関係がない」という話につながっていくわけで、ズレンシックの守備に大金をかける戦略の無意味さの証明になるわけだ(笑)
もちろん、上で既に書いたように、DERとUZRの指標の個性と投手の防御率の関係にほとんど言及が無い以上、この仮説はまだ十分に議論が尽くされているとは言えないと思うが、なかなか興味深い話だ。
投手の成績と守備力の関連について−UZRを用いてPart1 - セイバーメトリクス 野球データ分析コラム|SMRベースボールLab


まぁ、細かいことを抜きにまとめておこう。
こういうことになる。
●三振を数多くとれるピッチャーには
 良質の外野手が必要。
●グラウンドボール・ピッチャーには
 良い内野手、特に、優れたサードとショートが必要。
●フライボール・ピッチャーは守備とあまり関係がなく
 必ずしも守備に大金をかける必要はない。

残念すぎる守備マニア、ズレンシック(爆笑)







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