October 23, 2011

前の記事で、こんなことを書いた。

「残念なことに、野球ファンは、いくら最高の感動の場面でも、その出来事をあらゆる角度から眺めることはできない。このことは、誰もが経験からよくわかっている。
しかし、パソコンやインターネットのある時代だからこそ、誰かの知恵と他人の目線を借りつつ、お互いの情報を補完しあうことで、自分ひとりだけの経験では特定の角度からしか見えないゲームの全体像を、俯瞰的に再構築して、もっともっと全体像を楽しめたら、と望んでいる」



野球ファンがスタジアムで存在していられる場所は、人生と同じで、シートはたったひとつしか与えられない。だからかつては、自分に体験できることは「自分のいる位置での体験だけ」だと、「思われて」いた。

だが、今は違う。

例えば、別の場所で見ていたファンが撮った動画や写真、音声などのソースから、公式サイトの動画や新聞などのマス・メディアの写真とはまた違った、「現場の興奮ぶりのリアリティ」を追体験することができる。
また、出来上がりに時間がかかり、内容も試合結果中心の新聞系メディアの記事を翌日に眺めるだけでなく、チャットやツイッター、掲示板などを通じて、「その劇的な場面が誕生するのを見ることができた興奮」や「その劇的な場面が誕生できた理由についての意見」を、リアルタイムあるいはゲーム直後に検討したり、論議したりもできる。
さらに、ブログ記事などで、そうした「視線の共有」「意見の共有」の場所に「自分なりの視線」をアピールすることもできる。

こうした行為によって野球ファンは、ひとつの劇的な場面について何をしているのかというと、「さまざまな角度からの視線を、共有しあっている」わけだ。


以下に、野球を楽しむ「視線共有」の例として、2009年9月18日のイチローのサヨナラ・ホームランについて、Youtubeに寄せられたファン目線の動画を集めてみた。


これらの動画にはそれぞれ、カメラのブレやフレームアウト、画質の粗さ、音割れなどが多数ある。だが、そんなささいなことは、まったく気にならない。むしろ、臨場感があって、非常にいいくらいだ(笑)

例えば「イチローコール」。
声の大きさや質が、スタジアムのポジションによってまるで違っていることが、よくわかる。女性の感極まったような高い声。英語訛りの男性の低い声。旅行者とおぼしき日本人。かわいい声でコールする子供。いろいろな人の声がする。
外野にいると内野よりもゲームを楽しめないわけじゃないのはもちろんだが、シート料金が安いポジションで声を張り上げてイチローコールしてくれている人が、そこよりも明らかに料金の高い場所で試合を見ている、いかにもIT企業などに勤めてそうな男どもより試合を楽しめてない、なんて、全く言えないことは、ひと目でわかる。
日本人の遠慮がちなイチローコールも、若い男性の英語訛りの「イチロゥ、イッチロゥ」という呟きも、耳をつんざく凄まじい女性の金切り声も、ホームランの瞬間、ごっちゃごちゃにひとつになる(笑)

結局、なんだというと、野球というスポーツは、スタジアムのどこで見ようと、「それぞれの場所に、それぞれの楽しみ」があることが、これらの動画から、本当によく伝わってくる、と、言いたいのである。
あらゆるシートに野球の楽しみがある。人生と同じだ。大事なのは精一杯楽しむ気持ちだ。

せっかく動画の時代がやってきたのだ。あなたがこんどスタジアムに行くときは、ぜひ、ビデオカメラを携行してもらいたい
関連記事も読みつつ、さまざまな角度の動画を見ることで、「視線を共有する」意味や楽しさを感じてもらえれば、と思う。

MLB公式サイトの動画:

Baseball Video Highlights & Clips | NYY@SEA: Ichiro's walk-off homer wins it in the ninth - Video | MLB.com: Multimedia

マリナーズ公式サイトの記事:
Ichiro's walk-off shot stuns Mariano, Yanks | Mariners.com: News

ブログ関連記事:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年1月16日、2009年9月にイチローが打った超劇的サヨナラ2ランで、ヘルナンデスが16勝目を挙げたNYY戦を、「カウント論」から振り返る。

ブログ関連記事:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月28日、アダム・ケネディのサヨナラタイムリーを生んだマリアーノ・リベラ特有の「リベラ・左打者パターン」配球を読み解きつつ、イチローが初球サヨナラホームランできた理由に至る。



1)三塁側 内野のかなり高い位置の席から。
子供たちが一生懸命にイチローコールをしている声で始まる動画。こういう高い位置の席を敬遠している人もいると思うが、ライトへのホームランの軌道が非常によくわかりやすい。また、イチローがホームに投げるレーザービームはじめ、あらゆる連係プレーが非常によくわかる。
シアトルファンの強い「イチローコール」、それが瞬時に叫び声に変わる一瞬が凄くリアルだ(笑) こういう瞬間のために野球がある。


2)ライトスタンドから。
自分たちに向かってサヨナラ・ホームランが飛んでくるんだから、そりゃ興奮しないわけがない(笑) これぞ外野スタンドの特権。
セーフコのライトスタンドは、言うまでもなく、イチローの守備を眺める楽しみ、また、イチローの盗塁を横から眺める楽しみもある。また有名な「イチメーター」の方に記念写真をお願いすることもできる。日本での開幕戦は、たぶんライトスタンドが争奪戦だろう。


3)三塁側 内野席の低い位置から。
興奮した男どもの突き上げる拳(こぶし)の列に、スタジアムでしか味わえない臨場感がある(笑)


4)一塁側 内野席の低い位置から。
Get out of here! と、打った瞬間叫ぶ声が印象的。左打者のライナー性のホームランの美しい軌道をすべて見るには、まさに絶好の位置。
よく見ると、打球がとっくにスタンドに飛び込んでいるのにもかかわらず、かなり遅れてヤンキースのライトがスパイダー・キャッチを試みている(11秒から12秒あたり)のが小さく映っており、このときの打球がいかに速かったかを物語っている。


5)一塁側 内野席のライン寄りから。
たぶん日本人ファンのカメラだと思うが、あまりにもイチローにズームしすぎて撮り始めているところに、突然のホームランで慌ててしまい、何も映ってない動画が、かえって臨場感がある(笑)


6)一塁側 内野席の比較的後ろ側。
通路をうつむき加減にあわてて帰っていくヤンキースファンがクッキリ映っている(32秒から33秒のあたり)のが、かえってファンの撮った現場映像らしくて、リアリティがある(笑)





ハワイ移民150周年
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