November 06, 2011

このブログは、いつも球審の判定に文句ばかりつけているブログではあるわけだが(笑)、今年のプロ野球パ・リーグのクライマックスシリーズ第3戦の10回裏に実質決勝タイムリーとなる二塁打を打った長谷川という選手の打席での「4球目の判定」について、なにやら世間が騒いでいたようなので、ネットで拾ったキャプチャー画像を少しばかりいじってみた。

場面は、先攻の西武が1点リードで迎えた10回裏のソフトバンクの攻撃。2死2塁で、カウント1-2からの4球目の判定は「ボール」。この「4球目」をストライクと感じた人が少なからずいたようだ。
もしこれがストライクなら、ゲームセットで西武の勝ちになり、シリーズの決着は翌日以降に持ち越されていたわけで、この判定がどの程度きわどい判定だったかは別にして、試合結果に大きく影響した判定ということにはなる。

2011年11月5日 ソフトバンク対西武 第3戦 10回裏 打者;長谷川


2011年11月5日 パ・リーグCS第3戦 10回裏長谷川 4球目判定


上の画像はクリックすると別窓で開いて、出てきた画像をさらにクリックすると、かなり大きな画像として見ることができる。気をつけるべきポイントが、以下のとおり、たくさんある。

)元画像自体が本当に100%信用できると言えるとは限らない
この意味は、いちおう「元画像自体が拾いものである以上、誰かが悪意で画像処理ソフトなどで作った『こしらえモノ』である可能性は絶対にゼロだ、とは言い切れない」という意味もあるが、それだけではない。
カメラ越しにとらえられた画像というものは、「必ずしも現実をフラットに見せているわけではない」という点にも留意しなくてはならない、という意味でもある。
例えば、普段メガネをかけているとか、カメラ好きの人なら、わかると思うが、「カメラのレンズ越しに見る世界」は、魚眼レンズほど極端に歪まないにしても、実際よりもずっと近く見えたり、歪んで見えたり、多少なりともレンズの影響があることが多いものだ。カメラのレンズ越しの視野を、プレートの真後ろで判定している球審の視野とまったく同じ、と、考えてはいけないのである。

)画像の中のA〜Dって?
上の画像のアルファベットのA、B、C、Dで示した4本のラインは、元の画像にはなく、全てブログ側が新たに書き込んだものだ。(もちろん元画像そのものはいじっていない。また1番目〜3番目の画像に、A、B、C、Dのラインをつけ加えるにあたっては、まったく同じ画像を、同じ位置になるようにペーストしてある)
この4本のラインを新たに書き入れてみた目的は、パースペクティブを検証するためだ。
4本とも、左右のバッターボックス前と後ろのライン、つまり縦方向のラインを、プレートからマウンドに向かって延長してみただけのものであり、厳密なものではないし、まして、ストライクゾーンの両端を示す線ではない。

)無視すべきラインD
A、B、C、D、4本のラインは厳密なものではないとは言ったが、相互比較すれば、右バッターの後ろの「ラインD」だけが、他の3本のラインA〜Cと、まったくパースペクティブが異なっていることは、容易にわかる。
ラインDが歪んでいる原因はおそらく、カメラのレンズの「収差」(=カメラやメガネのレンズそれぞれがもつ固有の歪み)が原因ではなく、ゲーム途中にラインを引き直す時に、方向も何も考えずに適当に引き直したのが原因と思われる。
ラインDは「4球目の判定」の検証に、何の役にも立たない。それどころか画像を見る人の印象をいたずらに歪める可能性すらあり、「4球目の判定」を考える上では、意識からラインDの存在を消去して考える必要がある。(ラインDがどうしてこうなっているのかについては、「4球目の判定」の検証には関係ないので、議論を省く)

)重要なラインB、ラインC
最も「4球目の判定」に関係するはずなのが、ラインBとラインCだと思う。
たぶん中継カメラは、センターバックスクリーン周辺からプレート周辺をズームアップして撮っているはずだから、画像上でラインBとラインCがまったく平行になっているようだと、この画像は後から手を加えられている可能性がある。絵画の遠近法でもそうだが、ラインBとラインCの幅は、「バックネット方向に接近していくにつれて、だんだん狭くなる」のでないと、理屈にあわない。
幸いなことに、画像を見てもらうとわかるが、元画像上のラインBとラインCは、マウンドからプレートに向かって少しずつ幅が狭くなっていっており、画僧自体の信頼性には問題がないように思える。

)左バッターのアウトコースのゾーンの広さは
  右バッターとは違う
このブログで何度も書いてきたことだが、MLBのアンパイアの場合、左バッターと右バッターとでは、アウトコースのストライクゾーンの広さがまるっきり違う。また、アンパイアごとの個人差も、非常に激しい。人によっては、ゾーンがほぼルールブック上のストライクゾーンどおりにであることさえある一方で、人によってはボール2個分を遥かに越える広いゾーンで判定している人すらいる。
日本のプロ野球の場合の球審の判定については、MLBのように十分なサンプル数をふまえた集計データが存在しているのかどうかがわからないため、プロ野球の球審の場合のアウトコースのゾーンの広さが、右バッターと左バッターとではどのくらい違うのかが、さっぱりわからない。だから確かなことは言えない。
だが、少なくとも問題の「4球目の判定」が「左バッターのアウトコース」である以上、アウトコースの判定を「ゾーンの広さは、右バッターとまったく同じ」と最初から断定して考察することはできないことくらいは、念頭に置いておくべきだろうと思う。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月29日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (2)2007年の調査における「ルールブックのストライクゾーン」と、「現実の判定から逆測定したストライクゾーン」の大きな落差。

)ボールから地面に向かって引いた垂直線の
  下端の終点は「簡単には決められない」
各画像で、ボールから地面に向かって垂直に引かれた線は、ブログ側で後から書き込んでいる。目的はもちろん、その瞬間に「ボールがマウンドからプレートまでの、どの位置にあるか?」を推測するため。
この「垂直線の下端の終点が、必ずしもラインCの上になるとは限らない」。この点は非常に重要だ。
なぜなら、もし検討を始める前から「垂直線の下端が、常にラインCにある」と思い込んでしまうと、「4球目は、常にラインCの上空だけを通過した後、キャッチャーミットに収まった」と、先入観で決めつけることになってしまう。
もちろんそれは、この投球を最初から「ボール」と決めつけてかかることを意味するわけで、それはおかしい。

)垂直線の下端を決めるファクターは無いのか
前項で説明した「垂直線の下端がどこなのか?」を決められる材料は、非常に乏しい。だが、唯一の確実な要素といえるのは、たぶん、ボールがキャッチャーのミットに収まる寸前と思われる3番目の画像での、「キャッチャーの足のつま先の位置」だろう。3番目の画像で、
  a)ボールの位置から、地面に下した垂直線
  b)キャッチャーの左右のつま先を結んだ線
  c)ラインC
この3つの資料から考えると、3番目の画像に限っては、他の画像と違ってボールから地面に下した垂直線の終点が、おおまかになら決められる。
おおまかにいって、キャッチャーのミットに収まる寸前、ボールは「最低でも、右バッターボックスの最内ラインである「ラインC」の上、もしくは、ラインC上よりもさらにアウトコース側」にあるように見える。

)打者の視線の方向は、それなりに重要
あくまで補助的なものだが、「打者の目の位置とボールとを結んだライン」も、元画像に書き入れてみた。
もし打者の顔の向き、つまり視線の方向と、後から書き込んだこの「打者の目とボールを結んだライン」があまりにもかけ離れているとすれば、この「打者の目とボールを結んだライン」はまったく役立たずなわけだが、画像から判断するかぎり、そこそこ矛盾の無い範囲にあるように見える。
この「打者の目とボールを結んだライン」は、「ボールから伸ばした垂直線の下端を、どれくらいの長さと推定すればいいか?」という問題について、不完全ではあるものの、少しは判断材料にできる。(だが、「打者の視線方向」を、鵜呑みにすることはできない。下で説明するが、ボールがミットに収まろうとしている瞬間にも、打者の視線は遅れて、自分の真ん前あたりを見つめていたりする。100数十キロの速度で移動する物体を目で追いかけているのだから、遅れて当然だ)

)ピッチャーの球種がもし「シュート」だったら
Yahooでみかけた投球データによると、西武・涌井投手は、この「4球目」に「ストレートを投げた」ことになっている。
だが、画像だけを見て判断するかぎり、右投手である涌井投手が投げようとしたのは、ストレートではなく、「シュート」であるように思えるのだが、どうなのだろう。
というのも、画像を見るかぎり、投球後に涌井投手の左足位置が、「ラインB」よりかなりファースト側に踏み出していることから、涌井投手はプレート左端を踏み、かなりアウトステップして投球していると思われるからだ。おそらく左バッターのアウトコース一杯を、逃げるようにスライスしながらギリギリに通過するシュートを投げようとしたのではないか。
カウント1-2からの「4球目」の意図は、左バッターのアウトコースをまっすぐ通過して完全にボールになる「見せ球」(あるいは空振りを誘う釣り球)のストレートではなく、見逃し三振をとろうとした「勝負球」で、この球はかなり意図的に角度をつけられている。
そうなると、ボールはアウトコースに多少スライドしながら、キャッチャーのミットに収まったことになるわけで、意図したシュートか、シュート回転のストレートかは別にして(ステップの方向からして意図的なシュートだろうとは思うが)、「多少なりともボールがスライドしている」と仮定すると、球審の位置から見るのでもかぎり、この3枚の画像だけでボールがプレートのどの位置を通過したのかを正確に判定することは、残念ながら、かなり難しくなる。

10)1番目と2番目の画像で、
   ボールからの垂直線の下端が「やや短め」にしてある理由
実は、1番目と2番目の画像で、ボールからの「垂直線」は、ラインCに届かない程度に、わざと短めにしてある。これは、涌井投手の投球が「多少なりともシュートしている」ことを、いちおう考慮に入れた結果だ。
もしこれがプレート右端を踏み、まっすぐステップして投げたアウトコースの「見せ球」なら、この投球の判定が「ボール」であることに疑いの余地は無いし、これほど野球ファンがとやかく言うことでもない。

11)球審がストライクゾーンを広げたり、狭くする
   「特定のカウント」がある
この件とは直接関係ないのだが、MLBの球審は、特定カウントでゾーンを故意に広くしたり、狭くしたりする傾向がある。このことは、以前一度記事として取り上げた。
具体的にいうと、カウント0-2と、打者が一方的に追い込まれると「ゾーンは狭く」なり、また、カウント3-0と、投手が四球を出しそうになると「ゾーンは広く」なって、結果的に「球審が判定の厳しさを恣意的に変えることで、三振と四球を避け、バッターとピッチャーの対決を長く観客に見せようと仕向ける傾向がある」ことを、データの集積から発見した人が、メジャーにはいるのだ。
今回の「4球目の判定」は、カウント1-2での出来事だから、これらのケースには該当していない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月11日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (5)カウント3-0ではゾーンを広げて四球を避け、カウント0-2ではゾーンを狭めて三振を避ける。あらためて明らかになったアンパイアの「故意にゲームをつくる行為」。


前置きばかり長くなったが(笑)、画像それぞれを見てみよう。

1番目の画像
何もいじっていない元の画像だけ見ると、「ボールがバッターの手元近くに来た瞬間の画像」と見えなくもない。
だが、「ボールから引かれた垂直線」「ラインC」「打者の視線」など、線を引いておいてから判断しなおすと、印象がまったく違ってくる。どうやらボールはまだ「グラウンドの芝が、土に切り替わるあたりまでしか来ていない」のである。
問題は、このときボールがどのくらいアウトコース側を通過したのかを見極められるかどうかだが、それを知るためにボールから引かれた垂直線の下端の位置を特定できるかどうかについて考えてみたが、特定のための材料に乏しく、ちょっと特定は難しいと思う。

2番目の画像
これも元画像だけを見ると、「ボールが打者のヒッティングポイントを通過した瞬間」にも見える。
だが1番目の画像と同じように、「ボールから引かれた垂直線」「ラインC」「打者の視線」などから印象を修正してみると、ボールがまだ「バッターボックスの、投手寄りの最先端部分あたり」にあることがわかる。打者のヒッティングポイントよりは、ほんのわずかではあるが、まだ投手側にある感じなのだ。
ここでも、ボールから引かれた垂直線の下端の位置を特定するのは難しいのだが、ボールとバッターボックスの位置関係が多少は見えてきていることを考慮すると、「ボールが、バッターボックスの最前部に来たときには、プレートの右端と、ラインCの中間あたりを通過している」といえるようには思う。

3番目の画像
これなども、他の画像同様で、元画像だけ見ると「ボールが、打者のまさに真ん前を通過した瞬間」に見えなくもない。
だが1番目、2番目の画像と同じように、「ボールから引かれた垂直線」「ラインC」「打者の視線」などをもとに印象を修正していくと、ボールは「すでに打者の前を通過し、バッターボックスの後端あたり、すでにキャッチャーミットに収まる寸前まで来ている」はずだ。
このとき打者の視線は「プレート上あたりを見ている」わけだが、3番目の画像においてが、他の画像と違って、打者の視線とボールの位置は「少しズレている」のである。
ここでは、最初の2枚の画像と違って、キャッチャーの位置、バッターボックスとの位置関係などから、ボールの位置を多少なりとも推定できる。
「ボールから引かれた垂直線」、「キャッチャーが左腕をめいっぱい伸ばしていること」、「キャッチャーの左右のつま先を結んだ線」、「ラインC」等々の要素からして、「ミットに収まる寸前のボールは、どう少なく見ても、ラインC上よりアウトコース寄り(=三塁側)に位置している」ように見える。
2番目の画像の時点ではボールはプレートとラインCの中間にあったと思われるから、3番目の画像でボールは「アウトコース側にスライドした」ことを意味する。


やたらと長くなったが、ストライクボールの判定は、上に書いたさまざまな理由から確実なことは言えないわけであって、実際にゲームを見ていた人それぞれの判断にまかせたい。
(まぁ、こっそり小声で(笑)いうなら、この球は最低でもボール2個、実際には2個半くらいは、はずれていただろうとは思う。ただ、左バッターのアウトコースのゾーンが右バッターより広いこと、投手が意図的に角度をつけていると思われる投球であることを考慮すると、実際にどう判定するかについては、アンパイアの個人差にも左右される。もしブログ主が球審なら、たとえプレートの左端を踏んで投げ、しかもシュートしているにしても、プレート付近に到達するまでの途中段階で、「ボールの軌道が外に寄りすぎている」という根拠で、躊躇なく「ボール」と判定する)

まぁ、そんなことより、わざわざこんな長文を書いたのは、スタジアムのバックスクリーンから見た映像は、テレビの画面で投手と打者の勝負を観戦するには大変わかりやすい角度だが、同時に、かなりパースペクティブがついたアングルからの映像でもあるために、球審の判定については、見た目の印象と判定結果が異なるというやっかいな現象が起こりうるアングルであることを、自分でも一度確認しておきたかったからだ。それさえわかれば、この件は十分だ。こういうことも、野球の楽しさの一部だ。

この球がストライクに見えた人がたくさんいたこと自体は、とてもよくわかる。だが、たとえ静止画であっても動画であっても、画像や動画と、自分が自分の目で見た印象が、かけ離れていることは、十分ありうるのだ。


資料:元画像
いちおうウイルススキャン済みですが、
開くかどうかは自己責任でどうぞ(笑)

2011年11月5日 元画像




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