November 09, 2011

2002年に新しいオーナーの決めた新しいGMとして、弱冠20代のテオ・エプスタインがやってくる前に、1994年から2002年までボストンGMだったダン・デュケットが、ボルチモアの編成責任者として3年契約したらしい。
なんで今ごろこんな映画をやるのか、まるで意味がわからない「マネーボール」とやら(笑)が日本で封切りになることでもあるし、色褪せつつあるビル・ジェームスやボストンのこの10年間の足跡の「過大評価」を、もうちょっとマトモに、というか、大きく下方修正する良い機会だろう。


テオ・エプスタインは最近ボストンのGMから、5年契約でシカゴ・カブスのGMに就任したばかりだが、彼のwikiには、誰が書いたのか知らないが(笑)、こんなことが書かれている。
レッドソックスは客観的データに基づく統計学であるセイバーメトリクスを重視する方針を打ち出し、セイバーメトリクスの産みの親であるビル・ジェームスをアドバイザーとして招聘する。この結果、2003年にはメジャーチーム最高得点を叩き出し、チーム長打率4割8分9厘はブロンクス・ボンバーズと恐れられた1927年のヤンキース打線を上回る結果となった。
2004年のシーズン中にはチームの人気者であったノマー・ガルシアパーラ遊撃手を放出してまで守備力、走塁力の強化に力を入れ、周囲から大変な非難を浴びた。しかし、結果的にはこのトレードで獲得したオルランド・カブレラ遊撃手、ダグ・ミントケイビッチ一塁手、デイブ・ロバーツ外野手はチーム86年ぶりのワールドシリーズ制覇に大きく貢献した。この成果からボストンでは一躍人気者となった。


これだけを読むと、あたかも「テオ・エプスタインとビル・ジェームスが敏腕だったために、素晴らしい選手が集結し、それで2004年ワールドシリーズを制覇できた」と言わんばかりの持ち上げぶりだが(笑)、いやはや、馬鹿馬鹿しい(笑)


そもそも、上の引用文中で名前を挙げられているカブレラ以下の3選手は、ワールドシリーズ制覇した2004年シーズンに50ゲーム前後しか出場してないわけで、控え選手の彼らのおかげで優勝できた、などという記述は、明らかに妄言。言い過ぎ。ウソ八百。守備要員として彼らを獲得したのかなにか知らないが、出塁率にやたらとうるさいセイバー球団にしては、この3選手、出塁率もまるでたいしたことがない。
だいたい、そもそもこれらの控え選手を獲得できたのは、ボストン側に交換ピースとして、ダン・デュケットがボストンGMに就任した94年のドラフトで1位指名したノマー・ガルシアパーラがいたからにすぎない。

同じような話は他にもある。
ボストンがフロリダ・マーリンズから、現在も主力先発投手のひとりであるジョシュ・ベケットと、サードの名手マイク・ローウェルを獲得できたのも、ダン・デュケット時代の2000年に国際FAで獲得したハンリー・ラミレスという交換ピースが手元にあったからだ。
ハンリー・ラミレス獲得については当時、相場に合わない高額すぎる契約としてデュケット批判を招き、デュケットをクビにする理由のひとつにされてしまうわけだが、あらためて振り返れば、結果的にハンリー・ラミレスと交換にベケットとローウェルを手に入れ、2000年代の10年を戦っていく骨組みを作るコストだったと思えば、ムダ金使いやがってという当時の批判は、今となっては的はずれだ。


まぁ、言いたいのはつまり、2004年のワールドシリーズ制覇はじめ、2000年代のボストンで「最も太い基本骨格として投打に機能した選手たち」の大半は「ダン・デュケット時代に獲得した選手」であること、そして、その「太い基本骨格」の肉付けとなった控え選手でさえ、デュケット時代の有名プレーヤーを交換ピースに獲得して成立したチームなのだから、「テオ・エプスタインの手腕など、2004年のワールドシリーズ制覇とほとんど関係ない」ということだ。
2004 Boston Red Sox Batting, Pitching, & Fielding Statistics - Baseball-Reference.com
「太い骨格」となった主力選手は、投手で言えば、ペドロ・マルチネス(97年モントリオールから獲得)、ティム・ウェイクフィールド(95年ピッツバーグから獲得)、デレク・ロウ(97年シアトルから獲得)。(エースのカート・シリング獲得にしても、交換ピースになったのはケイシー・フォッサムホルヘ・デラロサといったデュケット時代に獲得していた投手たちである)
野手でいえば、ジェイソン・バリテック(97年シアトルから獲得)、マニー・ラミレス(2001年FAで獲得)、ジョニー・デーモン(2001年FAで獲得)、ケビン・ユーキリス(2001年ドラフト)。(他にも、デュケット時代の獲得野手は、アダム・エベレット、デビッド・エクスタインなどがいる)
こうして名前を並べていけば、2007年に松坂大輔投手がボストンに入団したあたりで、日本で広く知られるようになり人気も出たボストンの投打のヒーローたちの大半は、ダン・デュケット時代末期の2000年代初期には既にピースとして出そろっていて、そこに後からドラフト組のペドロイアエルズベリーバックホルツなどが加わっただけだという、ボストンの近年の「選手構造」が一目瞭然にわかるはず。
テオ・エプスタインとビル・ジェームスはダン・デュケット時代に蓄えられていた遺産を継承し食い潰しただけ、と整理したほうが、よほど脳内がスッキリする。


2011年シーズン終盤のポストシーズン進出失敗の歴史的大失態があって、テオ・エプスタインとテリー・フランコーナがボストンを去ったのをいい機会に、この2人、特にエプスタインの業績については、シカゴ・カブスがエプスタインの何をどう評価して5年もの長期契約を与えたのか知らないが、評価を大きく下方修正するのが妥当というものだ。
エプスタインになってからのトレードといえば、ミッチェル報告でステロイダーとして名指しされたのがわかっていたはずのエリック・ガニエ獲得のために、デビッド・マーフィーなどをテキサスに手放したことなどは十分すぎる汚点といってよく、デビッド・オルティーズの薬物使用に関する処分の甘さ軽さといい、どうもボストンはステロイドに寛容すぎるきらいがあるのがどうも好きになれない。
他に、エドガー・レンテリア、フリオ・ルーゴ、松坂、J.D. ドリュー、マイク・キャメロン、ジョン・ラッキー(2011オフにTJ手術予定)、カール・クロフォード。エプスタインがGMとして獲得してきたFA選手は地雷だらけ(笑)


マネーボール」という映画にしても、既に知られているように、この映画の企画が最初に持ち上がってから紆余曲折がありすぎたことが原因で、とっくに旬が過ぎている。映画として封切られるまでに「マネーボール」という話題そのものの賞味期限が終わってしまっているのは明らかだ。
ブラッド・ピット自体は大好きな俳優のひとりで、「ファイトクラブ」なんてのはマジにお気に入りの1本だが、こと野球に関しては安易に譲るわけにはいかない。野球をほとんど知らないとか、興味がないとか公言する映画監督と主演俳優が、旬の過ぎた題材を映画にしたとしても、ブログ主はまったく関心が湧かない。

知らんがな。古臭い。
とだけ、言わせてもらおう。


むしろ今の今、ボストンとマネーボール(さらにオークランドのビリー・ビーンも含めて)に関して、最もリアルでコンテンポラリーなアプローチと言えるのは、「セイバーの再評価」だろう。今のヨーロッパの財政危機における国債の格付けの変動になぞらえていうなら、セイバーの評価の「格下げ」、「ダウングレード」だ。




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