November 15, 2011

武将・落合は、屈んで刀を脇に構え、
絶妙な間合いで抜刀しては、つど、鞘に収める。

イチローが投手との立合においてバットを一度立てる「正眼」の使い手であるのに対し、落合は脇構えからの「居合」の使い手である。いつ抜くか、わからせない。剣の長さも見せない。
どちらもまったくもって日本。侍の振舞いである。見事であるというほかない。


面白いものだ。
中日ドラゴンズ落合博満監督の評価が、ポストシーズンの試合を1試合1試合経過するたび、日増しに高まっていく。それも、とりわけ落合中日に負けた他球団ファンの間で。中日ドラゴンズの社長さんと一般の野球ファンとの間で、これだけ180度違う評価がついたのだから、なんとも愉快だ(笑)

ブログ主も、この秋、武将・落合がやってきた「戦」(いくさ)には圧倒的な感銘を受けた。特に、その刀の扱い方。



勝ちを求める人は多い。
それはそうだ。
勝てば、褒美がついてくる。

だが、「勝ち方」を愚直に求める人はどうだ。多いか。
いや。多くない。
スティーブ・ジョブズを見てもわかる。自分にしかない道を歩く定めを自分に課して生きる人は、ほんの一握りしかいない。

自分なりの勝ち方を、時間をかけ、手間をかけ、追求し続けることに、どれほどの価値があるのか、誰も確信が持てない。もしかすると無駄に終わるかもしれないことを、誰もがやりたがらない。
勝ち方より、勝ちそのもののほうが価値が高い、高く売れると思い、誰もが日々を暮らしている。


言葉の少ない落合博満だが、滲み出るオーラはむしろ雄弁だ。彼の戦ぶりは饒舌に彼の信念を物語っている。
「勝ちと勝ち方は似ているが、まったく違う。勝ちを追い求めるより先に、勝ち方を身につけろ」
武将・落合の兵の身体にはなにやら、8年かけてしみついた、勝ちに向かう習性が常に匂う。勝つかどうかは結果でしかないが、彼らの心の内には常に仁王立ちした戦装束が見える。


アイデンティティという便利な言葉がある。中高生でも知っているくらいの便利な言葉なわけだが、たいてい誤解されて理解されている。「アイデンティティは、誰にでも、最低ひとつは備わっているだろう」という、安易な理解からくる誤解だ。

ブログ主はアイデンティティや自分のスタイルというものは誰にでも備わっていると思ったことが、一度もない。むしろ、アイデンティティの無いままオトナになり、無いままに年老いて、無いまま死んでいく人が大半だ、という理解のもとに世界をずっと眺めてきた。

自分、というものを持つに至る人が、世の中にはほんの少ししかいない、ということを、ヒトはなかなか気づけない。また、言われても、それを信じることができない。中日ドラゴンズの社長さんなども、おそらく自分というものが無いままオトナになった哀れな人間のひとりだが、こういう人にいくら説明してもわからない。それはそれで、しかたがない。黒船が来たとき初めて、「あぁ、これで江戸の時代は終わるのか」と呟くのが、こういう人の役回りだ。そしてもうその頃には、船は舵を切っている。


武将・落合の戦には物語がある。物語を持てる武将は少ない。大半は時間の波間に消えていく。
人は中日の地を這うごとくの進撃にようやく、勝ちの味ではなく、勝ち方というものの真髄を知って目が離せないのだろう、と思っている。野球ファンは、落合中日の何によって負けたのかを、8年たってようやく知るのである。

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