December 03, 2011

もともとシーズンオフのトレード騒ぎや噂話には、ほとんど興味がない。
春になってシーズンが始まったら、そのときにいる人間が誰かをチェックすれば、そのほうがよほど手っ取り早い。実現しもしない馬鹿なライターの飛ばし記事や、決まるかどうかもわからない噂話を毎日追っかけて貴重な時間をムダにするくらいなら、書きたいことは他に山ほどある。


ちょうど全く別の記事を準備していたところなのだが、ボルチモアの編成責任者(日本のスポーツ紙などはGMと呼称しているが、実際の肩書はExecutive Vice-President of Baseball Operationsで、GMではない。だが、実権の内容からGMとして扱われる、というのは、MLBではよくある。日本の記者もそういうことには慣れているので、めんどくさいからGMと呼んでいるわけだ)に就任した元ボストンGMのダン・デュケットによるテキサスの若いキャッチャー、テイラー・ティーガーデン獲得のニュースを聞いた。(テキサスGMジョン・ダニエルズのトレード後のコメントでは、ティーガーデンには数チームが関心を寄せていた、とのこと)
どうやら、ティーガーデンはマット・ウィータースのバックアップをつとめることになるらしい。まさかこの2人がチームメイトになるとはねぇ。さすがにこれはメモを残さねば。

ちょっと興味深いニュースだ。ブログの性格上、キャッチャーに関する話題を多く扱ってきたこともあるし、この2人、所属地区は違うが、デビュー以来ずっと出世を競いあってきた同世代のキャッチャーでもある。
Rangers send catcher Taylor Teagarden to Orioles for right-hander | Texas Rangers | Texas Ran...


この2人がデビューした2008年〜2009年頃は、まだシアトルが「城島問題」の渦中にあった時代だったから、この2人のキャッチャーのことも何度か触れた記憶がある。
テキサス大学出身で、2005カレッジ・ワールドシリーズ優勝経験をもつテイラー・ティーガーデンは、同世代に有名キャッチャーの揃った1983年生まれで、出身地テキサスの地元プレーヤーとして2008年7月デビューした。
大西洋岸のジャスティン・スモークと同じ高校の出身で、ACCで主に打撃面で有名だったマット・ウィータースは、1986年生まれで、2009年5月デビュー。
ティーガーデンはウィータースより3つ年上だが、デビューは1年しか違わない。ティーガーデンは、例の「1983年世代」に属している。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:「1983年世代」、MLBキャッチャー世代論
1982年生まれ
ヤディア・モリーナ

1983年生まれ
ジョー・マウアーカートスズキラッセル・マーティンジェフ・マシステイラー・ティーガーデンロブ・ジョンソンミゲル・モンテーロクリス・アイアネッタ

1984年生まれ
ブライアン・マッキャン


この2人の若いキャッチャーは、かつてのジェフ・クレメントと同じように、少なくとも地元ファンからはずっと次世代のメインキャッチャーと期待され、チームに大事に育てられてきた。
2008年当時のテキサス地元記事:Baseball Time in Arlington: A Texas Rangers Blog - Home - The BBTiA Top 25 Prospect Rankings: Fall '08 Edition
(それにしても、2008年のテキサスのプロスペクトは壮観のひとこと。当時のプロスペクトのうち、今もテキサスに残っているのは、デレク・ホランドネフタリ・フェリースエルビス・アンドラスミッチ・モアランドなど。そしてトレードで出したのは、トミー・ハンター、ジャスティン・スモーク、ブレイク・ビーバンなど。
テキサスがこの数年でチームに残した若手のその後の活躍ぶりとワールドシリーズ進出、そして、トレードで外に出した若手の「その後」を比較すれば、テキサスが、将来に期待できる若手はけしてトレードせず、チームに残してゲームで使いつつ手塩にかけて育ててきた育成方針の確かさと、難のある選手を思い切りよく切ってきたトレード巧者ぶりは一目瞭然。ジョン・ダニエルズと、無能なジャック・ズレンシックでは、役者が違いすぎる)

両者のデビュー当時の評価は、最初から大差があったわけではない。むしろ、カレッジ・ワールドシリーズ優勝経験をもつだけに、ティーガーデンのほうが高評価だった気がする。(これにはティーガーデンのメジャー初ヒットがホームランで、多少華々しかったせいもある。2008年7月20日ミネソタのスコット・ベイカーから)
一方のウィータースは、かつて日本のMLBファンから「多少打てるけれども、守るほうはまるでたいしたことない。トータルにみれば非常に平凡なキャッチャー」と、もっぱら思われてきた。
同世代のキャッチャーには、ジョー・マウアーやヤディア・モリーナ、ブライアン・マッキャンがいて、彼らは既にオールスターにファン投票で選出されるほどのスターであり、MLBを代表するキャッチャーになっているわけだが、彼らに比べると、ウィータースとティーガーデンの2人は「出世の遅れたキャッチャー」だったわけだ。
実際、デビュー後1年か2年が経つ頃には、両者とも「たいして打てないし、守りもたいしたことはない」という低評価しか与えられなくなっていた。

だが、結果的に言うと、2011シーズンに年の若いウィータースのほうが急速な変身を遂げ、年上のティーガーデンを大きく抜き去った。
2011シーズンは139ゲームに出場し、ホームラン22本、打率.278で、一時は打率が3割に迫っていた。最近ジョー・マウアーが故障だらけになったこともあって、オールスターにも初選出。また、従来たいしたことがないと思われていた守備面でも、2011年にFielding Bible賞とゴールドグラブを同時初受賞した。
特に、Fielding Bible賞受賞は、MLB全体でたったひとりしか選ばれない賞であることと、例年この賞の常連になっている典型的な守備型キャッチャーで、ワールドシリーズ優勝のヤディア・モリーナを抑えての初受賞だから非常に価値が高いし、ゴールドグラブとの同時受賞にも意味がある。


MLBでのウィータースの評価が非常に高まったことは、いくら彼を評価してこなかったボンクラな日本のファンでも理解できるようになったことだろうが(笑)、むしろそんなどうでもいいことより、気になるのは、元ボストンGMで、2000年代の強いボストンを実質的に用意した、あの慧眼のダン・デュケットが、ボルチモアでの初仕事として、攻守に成長著しいウィータースのバックアップに、トレード巧者のテキサスが見限ったテイラー・ティーガーデンを選んだことの「意味」だ。
ダン・デュケット(あるいは、元テキサス監督で、ティーガーデンをデビュー時からよく知るショーウォルター)にいわせると、「ティーガーデンにはまだまだ伸びしろがある」ということなのか? もしくは、守備の評価は良くなかったマット・ウィータースの開花に成功したボルチモアには、よほど有能なキャッチャー育成スタッフが揃っているのか。 この点が非常に気になる。

バーズに詳しいボルチモアのローカルサイトも、ボルチモアのキャッチャーの陣容は常に「若いウィータースに、ベテランのバックアップをつけるというパターン」だったのが、今回、若いティーガーデンを控えにしたということに驚いている。ボルチモアのファンにしても、ちょっと意外なトレードだったらしい。
O's trade for Teagarden


ボルチモアというチームが面白いなと思うのは、明らかにセイバー的な手法に染まりきっている今のボストンやタンパベイといった同地区のチームと一線を引いているように見えるところだ。
例えば打線は、まるっきり待球せず、初球からガンガン打ってくる。これは待球を奨励して、やたらと四球を増やしたがるボストン、タンパベイにはない非常に大きな特徴で、ボルチモアはヴェテラン監督ショーウォルター就任後も、これを変えようとしていない。

ボルチモアの監督が、「ちょっと前」のヤンキースやテキサスの監督だったバック・ショーウォルター、そしてGMが、「ちょっと前」のボストンのGMだったダン・デュケットと、「ちょっと前の野球」を築いたコンビになったところをみても、ボルチモアにはどこか「ウチは、近年のボストンやタンパベイとは、『ちょっと違う野球』をやりたい」という強い意思を感じるのが、非常に面白いのである。

バーズには是非、セイバー的な手法に染まりきったチームとはまったく別の方向性の野球を目指してもらいたい。



それにしても、ア・リーグ西地区の来シーズンのキャッチャーは面白い。テキサスだけが着々とチームに手を入れ続けて、戦力アップをはかっている(笑)
テキサスは、とうとう若いティーガーデンに見切りをつけ(トレードの見返りは投手)、元LAAのマイク・ナポリと、元シアトル・元コロラドのヨービット・トレアルバの、2人のワールドシリーズ経験者。たぶんノーラン・ライアンは、来シーズンもポストシーズン進出は固いと思っているのだろう。
ジェフ・マシスに賭けて失敗したエンゼルスのマイク・ソーシアは、来シーズンどうするつもりなのだろうか。
シアトルは、先日タンバベイが放り出した若いジョン・ジェイソを獲得したが、無能なロジャー・ハンセンに育てられるわけはない。そのタンパベイは、というと、さっそくトロントからFAになっていたベテランのホセ・モリーナを獲得した。たぶんタンパベイはまったく予定通りの行動だったのだろう。いつもどおり無能なズレンシックは、ここでもタンパベイの廃品回収を行う無能ぶりを発揮した(笑)
オークランドは、カート・スズキで変わりなし。なんの変化も見えない。


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