December 22, 2011

前記事
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年12月20日、率と期待値を足し算している「OPSのデタラメさ」 (1)「OPSのデタラメさ」の基本を理解する


前記事で書いたことは、あまりにたくさんの内容を含むので、さすがにすぐには整理しきれない。要点も非常にたくさんある。
とりわけ「長打率」と間違ったネーミングをされた指標であるSLGは、どうせ馬鹿馬鹿しい間違いと思い込みを生むだけなのがわかっているから、この「率と期待値を足し算しているOPSのデタラメさ」というシリーズ記事の中では、今後は、必要がないかぎり、「長打率」とは表記せず、「塁打期待値(いわゆる「長打率」)」、もしくは単に「塁打期待値」と表記する。

OPS=出塁率(OBP)+塁打期待値(SLG)


この、「率」と「期待値」、2つの性質の違う、しかも、相互に相関を持つ数字を単純に足し算してしまう出来そこないの馬鹿馬鹿しい足し算(笑)がカバーする領域は、実は、限られたものであること、つまり、OPSが現実の野球に沿わない部分は非常に多いことは、前記事で指摘した。
まぁ、いってみれば、日本全国カバーすると口先では豪語しながら、実際には山奥しかカバーできてない携帯電話(笑)みたいなものだ。
例えば、出塁率.300、塁打期待値.500の打者は現実の野球に頻繁に出現するが、出塁率.400、塁打期待値.400の打者は、ほぼ特異点として出現することはあるものの、ほぼ非現実の存在しない打者である。

こうしたことが起きる原因のひとつは、前記事でも指摘したように、現実の打者においては、「出塁率≦塁打期待値」となることがほとんどだ、という事実を、OPSが考慮せずに、というか、意図的に無視しているからなのだが、このことをもう少し簡単な計算で示してみたい。

こんなに「OPS神話の仕組み」をわかりやすく解説するのは、たぶん、このブログが世界初だ。


OPS=OBP+SLG
OBP≦SLG

この式を変形していくと、こんな不等号の式が出来上がる。

OBP×2 ≦ OPS ≦ SLG×2

これ、なかなか面白い。
というのも、いかにOPSが「野球という現実のスポーツを、ある特定の、恣意的視点から見た、デタラメなシロモノか」がわかるからだ。上の不等号式を言葉に直してみるとわかる。こうなる。
OPSの下限はOBPで決まり、上限はSLGで決まる。

前記事で、「出塁率と長打率の数値がほぼ同じ、なんて打者は、ほぼ出現しない」ように、「OPSは最初からできている」と書いたが、まさにその通りの意味になっている。それを以下に説明しておこう。

以下の内容は本来は、ここまでの説明で子供でもわかるはずで、いちいち書くのもめんどくさいが、ここは大事だから、誤解のないように手間を惜しまず、たとえを交えながら明記しておく。


1)現実の野球で、多くのケースにおいて「出塁率≦塁打期待値」なのは、単に「出塁率」ではじき出されてくる数値のレンジが、「塁打期待値」のレンジより小さい、ただそれだけの意味でしかない。大きい数字だからといって塁打期待値SLGのほうが「エラい」わけでもなんでもない。

うまいたとえがみつからないが、たとえば年末ジャンポ宝くじの「当選確率」は、1よりもずっと小さく、小数点以下の数字になるのが当たり前だ。しかも、おそらく小数点以下にハンパない数のゼロが並ぶはずだ。
だが、宝くじ1枚あたりの「当選金期待値」は、まったく違う。「当選確率」の数字レンジよりおそらく大きい(実際に計算したことがあるわけではない 笑)。
だが、たとえ宝くじ1枚の当選金期待値がたった1円であろうと、その数字レンジは「当選確率」よりも、はるかに「数字としては」大きい
。当たり前の話だ。


2)ところが、現実の野球においてほぼ大半のケースで「出塁率」≦「塁打期待値」となることが多いにも関わらず、デタラメなOPS計算においては、「率」である「出塁率」と、「期待値」である「塁打期待値」を、単純に「足し算」してしまう。

もちろん、そこに何の合理性もありえない。
なぜなら、これは、年末ジャンポ宝くじのたとえ話でいうなら、「当選確率」と「当選金期待値」を足し算するという無茶苦茶な計算をやったことになるからだ。
そもそも小数点以下の数字である「当選確率」と、より数字として大きな「当選金期待値」の無意味な足し算なのだから、そこには何の合理性も、現実の野球に対する妥当性も生まれるはずがない。
(たまたまOPSで説明可能なエリアが、OPSのトップクラスにあるのは、「OPSが、最初からそういう有名スラッガーをほめちぎるための指標としてつくられていたから」、ただそれだけだ。だから近年のOPS関連の数値では、すっかりバレてきたOPSにおけるSLGの過大評価ぶりを修正するために「SLGを、割り算で小さくする」という、わけのわからない子供じみた修正方法(例:NOI, New Offensive Index)を導入しているのだ(笑)。もちろん、そんな小手先程度の対症療法で、OPSがもって生まれた先天的な誤謬が修正できるわけもない。まったくもって馬鹿らしい)


ところが、ここからOPSというデタラメ数式において、奇妙な神話が誕生することになる(笑)

3)上で書いたように、数式をいじると「OBPとSLGだけから計算されるOPSは、下限はOBPで決まり、上限はSLGで決まる」。
そりゃそうだ。何度も言うように、OPSはもともと、数字として小さい「率」と、数字として大きい「期待値」を足し算して作られたデタラメな指標だから、そうなって当然だ。

4)だが、そこから奇妙な逆立ちしたヘリクツが、数式から導き出されるのである。「OPSは得点期待値を決めるのだから、他の何よりも偉い神だ。そしてOPSという数字の神の「天井」をより高くしてくれる「長打率」(=実際には塁打期待値)は、他のどんなものよりも偉いんだ。ピキピキ」。
奇妙な「OPS信仰」の始まりだ(笑)たぶん彼らはいまでも焚火の周りで、腰に毛皮を巻いてみんなで奇声を発しながら踊っているんだろう(笑)

こんなワケのわからないことが起こる原因は、もちろん、OPSそのものが「デタラメな計算で作られた」からだ。
年末ジャンポ宝くじの「当選確率」に「当選金期待値」を足し算するという無茶苦茶な計算で出来た数字なのだが、そりゃ、アタマの悪いヒトには数字レンジとして大きい「当選金期待値SLG」のほうが、数字として小さい「当選確率OBP」よりも、「エラく」見えてくる(笑)
こうして、このデタラメ数字がどういう風に出来たかを覚えてない馬鹿な人々がずっとOPSを有難がり続けたために、いつのまにか、「野球では、長打が偉いんだ」「打率なんてクソくらえ」くらいの話にエスカレートする始末(笑)

ところが、話はここで終わらない。

5)実際の野球に当てはめてみると簡単にわかることだが、スラッガーといわれる打者でも、ホームラン数(あるいは長打)などというものは、そう簡単に数を増やすことはできない。それが「現実の野球」、「現実のプレーヤー」というものだからだ。
いや、それどころか、ホームラン数こそ、才能によって、それぞれの打者の上限はほぼ決まっているのが普通だ。20本打ったから、といって、その打者が40本打てるようには「ほぼならない」のが、「現実の野球」というものだ。(このことは次回このシリーズ3番目の記事で具体例を挙げて書く)中堅スラッガーたちがドーピングでホームラン数を増やそうとする事件が跡を絶たないのも、逆にいえば、いかにホームランを打つ能力に上限があり、天井があるか、という反証である。

最初に書いたOPS信仰の神話式の変形である「OPSの下限はOBPで決まり、上限はSLGで決まる」という式に、この「打てるホームラン数の上限は、ほぼ決まってしまっている」ということをあてはめてみると、どうなるか。
実は、「OPSの数字の上限を決めている塁打期待値(SLG)は、実は、そうそう簡単に引き上げることができない」のである。

そりゃそうだ。年末ジャンポ宝くじの「当選確率」と「当選金期待値」を足し算するという無茶苦茶な計算で、自分の都合のいい数字を作っただけでもデタラメな話だが、それに加えてさらに、「当選金期待値」が簡単に上げられるくらいなら、誰も苦労しない。みんな年末ジャンポ宝くじを買って生活できるようになる(笑)
焚火の周りで踊っていたOPS信仰者は、困り抜いてここでハタと踊るのをやめ、みんな、しかめっつらで考えこんだのである(笑)

6)だが、ここで、考え込んでいた一人のOPS信仰者が、ピンとひらめいて叫んだ。
天井が上がらないなら、床を上げてやればいいじゃないか!!!
長打神話に続く、四球神話の誕生である(笑)(なぜ、貧打のオークランドにダリック・バートンみたいな1シーズンかぎりの奇妙な四球専用打者が誕生するか、ジョン・マドンのタンパベイの打者がホームランと四球だけでOPSを稼ごうとする理由、これですべて説明がつく)

彼らの考えはこうだ。
OPSの下限はOBPで決まり、上限はSLGで決まる、だが、SLGが簡単には上げられないなら、四球を増やしてOBPを意図的に上昇させれば、チームとしてのOPSの数字レンジを上昇させて、チームの得点を意図的に上昇させることが可能になるんじゃないか?


そして、悪質なことに、四球数の増加は、「たとえ長打を1本も増やさなくても」、OPSを「みせかけだけの意味で」上昇させる

なぜなら、四球数が増加すると、当然OBPが加算される。これ自体は当然だ。

だが、問題なのは、このOBP増加に平行して打者の「打数減少」が発生するために、「OBPへの加算と平行して、こっそりSLGにも加算が行われる」ことだ。これは明らかに、「四球増加によるOPSの加算」を、見えないところで「二重加算」していることになる。
「塁打期待値SLG」は「総塁打数を、『打数』を分母とする割り算によって算出する数値」だ。だから、なんと、四球数が増えれば、打数減少によってSLG算出のための割り算の分母が減少する結果、「OBPと平行して、SLGにも同時に加算されていく」というデタラメな「二重加算」現象が起きるのだ。
しかも悪質なことに、この「四球数増加によるOPS二重加算」は、あらゆるバッターに均等に二重加算されるのではなくて、むしろ、バッターが長打を打つタイプであるほど加算率が大きく加算されるという意味不明の「不均等加算」のである。(詳しく言うと、「ホームランバッター」や「打数の少ない打者」ほど、この「四球数増加による打数減少で起きるSLG加算」の恩恵を受けるのだが、このデタラメな仕組みについては次の記事で書く)

つまりデタラメ指標OPSには、もともと、「四球増大におけるOBP・SLG同時平行加算によって、四球数増加の影響ををOBPとSLGに二重加算するカラクリ」があるだけでなく、さらには、「ホームランバッターや打数の少ない打者ほど高くOPSを二重加算する「不均等加算するカラクリ」すら備わっているのである。

こんな馬鹿げたことが起きるのも、その原因はもちろん、相互に相関があり、また、数値レンジに差のあるOBPとSLG、2つの指標を、単純に足し算するという馬鹿げた計算方法をとる「OPSのデタラメさ」そのものに根本原因がある。
OPSというデタラメな指標においては、四球数増加の効果は、OBPにだけではなく、SLGにもこっそり二重に加算されている。そればかりか、この「四球増加による二重加算」は、ホームランバッターになればなるほど「加算率が高くなるように」設計されている。
その結果、「四球増加によるOPSの増大があった場合、あたかもホームランバッターが長打を生産したことによって発生するSLG増大がいかにもOPSを押し上げる主要因であるかのようにみせかけるOPS上昇カラクリ」を、OPSというデタラメ指標は常に隠蔽してきたのである。

いってみれば、この「四球増加で、みせかけだけSLGを伸ばすテクニック」は、まさに「数字によるドーピング」といっていい。
こんなまやかしが可能になるのは、OPSという指標が「ほんのちょっと床を上げると、自動的に天井が大きく上がるように出来た、まやかしだらけの家」だからだ。


(笑)

だが残念でした(笑)
既にこのブログで一度書いたように、実は現実の野球における「チーム出塁率」は、「四球」にはほとんど依存しない。現実の野球における「チーム出塁率」を大きく左右しているのは、「四球」ではなく、むしろOPS信仰が排除しようとやっきになってきた「打率」にほとんどを依存しているのである。
だからチーム打率が上昇してこないかぎり、通常、チームの出塁率は上がってこないし、「四球増加によるSLG上昇とOPS上昇のような、みせかけとまやかし」でない本当の意味の打撃の底上げはありえない
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年9月3日、チームというマクロ的視点から見たとき、「出塁率」を決定している唯一のファクターは「打率」であり、四球率は無関係、という仮説。

この不可能とも思われた「チームの四球を無理矢理に増加させる道」を選んだのは、2011シーズンのタンパベイのジョン・マドンだ。彼は確かに、四球数増加とそこそこのホームラン数を同時に実現することを、ほとんどのチームの中軸打者たちに強要したことで、地区2位のボストンを逆転し、ポストシーズン進出をモノにしたが、その結果としてチーム打率は崩壊し、チーム打率の低迷の結果、OBPの上昇はたいしたものならず、またポストシーズンでは惨敗した。当然の結果だ。数字で選手個人の能力と野球そのものを「狭い型に閉じ込めた」のだ。
この記事の最後の部分は、シアトルのズレンシックもウェッジもまったく理解してない。彼らは、主軸にホームラン20本程度打てて選球もできる打者をズラリと揃えているタンパベイと同じ野球ができると、ありもしない夢ばかり見ている。

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(続く)

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