January 21, 2012

かつて2008年に、ダメ捕手城島を「ア・リーグ年間ワーストプレーヤー」に選ぶことで「ダメ出し(笑)」してくれたESPNのシニアライター、ジェイソン・スターク, Jason Stark は、全米スポーツメディアでも一目置かれるポジションにあるライターだが、マイケル・ピネダヘスス・モンテーロのトレードについて、ピネダのような若い主戦投手をトレードしてしまうことへの他チーム関係者の疑問符、ズレンシックの市場原理に基づかない狭量なトレード手法に関する他チームGMの不快感などを紹介した、彼ならではの記事を書いてくれた。
(この記事の本題は、十字靭帯を痛めたビクター・マルチネスには代わりになる選手などいない、それほど優れた選手だよ、という話なわけだが、中段にマイケル・ピネダ放出について書かれた部分があり、ピネダとモンテーロ、2人のプレーヤーとしての今後の課題にも触れている。ちなみに、2011シーズン終盤に突如としてという感じでピネダの球速が落ちたことは、ブログ主も当時すぐに気付いた。ピネダには他にも、球種の少なさやスタミナなど、課題は多いことはわかりきっているが、これらの課題の存在は、日米のMLBファンはじめ、ブログ主にも既にわかっている話ばかりであり、ジェイソン・スタークが取り上げたからといって、とりたてて重い意味はない)

この記事でちょっと驚くのは、シアトルGMズレンシックが、ちょっと前にブログ主がTwitterで紹介したばかりの、マイアミのあの攻守に優れた若い強打者マイク・スタントンを獲りにいっていたことだ。
damejimadamejima
でも、どういうプレー結果か、なんとなくわかりきってるヴェテランより、今のマーリンズで最も興味深いのは、マイク・スタントン。高校卒業時にNFLシアトルシーホークスの現ヘッドコーチ、ピート・キャロルがUSCのコーチ時代にスカウトしようとしたほど、あらゆるスポーツができた逸材中の逸材。

もしピネダの交換相手がマイク・スタントンだったら、いくらズレンシック嫌いのブログ主だって、そりゃさすがに脱帽ものだが、そんなことはまったく起こりえないことなので、心配ない(笑)
それこそ、マイアミの将来を背負って立つマイク・スタントンをトレードの駒にしたりすれば、かえって他チームのGMたちが「よく、まぁ、あのクラスの選手を放出したもんだ」と、ひっくり返って驚く。

下記の記事でピネダ放出というズレンシックの判断が他チーム関係者に疑問符をつけられたり、冷笑されるのは、ピネダの価値が「マイアミがスタントンを放出するレベルのありえなさ」かどうかは別にして、ピネダのような主力投手を放出する行為が、他チームのGMにしてみれば「ありえない行動」だからだ。(ましてシアトルはイチローと投手力しか長所がない。かたやヤンキースには、モンテーロを放出しても痛くも痒くもないだけの豊富なチーム力と人材があり、無能なプロスペクトマニアから見れば有望なはずのモンテーロを、実はヤンキース自身は煙たがっていた理由もハッキリあったことは、下記の記事に書かれているとおり)
メジャー1000打席で56ホームランの強打者にして強肩外野手でもあるマイク・スタントンは、メジャーでまだ100打席も打っておらず、守備能力のない慢心が噂されるDHモンテーロとは、モノがまるで違う。(というか、以下の記事で、ヘスス・モンテーロが完全にDH扱いされていることも、よく目を凝らして読むべきことのひとつ)スタントンとモンテーロを比べること自体、まったく意味がない。


この記事によって、ピネダ放出が他チームのGMや幹部、スカウトに冷笑されているのが、哀れな無能GMズレンシックの実態だということに、ひとつ確証が得られた。
ジャック・ズレンシックの小心で、市場原理に基づかない無意味なトレードぶりは、実はMLBの内部で好感されていない。他球団からすればズレンシックが「いかに、おいしい選手を安売りしてくれる、ありがたい、見る目の無いジェネラル・マネージャーであるか」が、この記事からよくわかる。


このブログにおける過去のJason Starkに関する記事
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008年7月12日、城島はESPNのMLB専門記者Jason Starkの選ぶ上半期ワーストプレーヤーに選ばれた。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008年9月28日、ESPNのJason Starkは城島をア・リーグ年間ワーストプレーヤー、「LVP」に選んだ。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月3日、かつて2008年に城島が選ばれた「ESPN上半期LVP」と「年間LVP」をほぼ同時受賞したといえるショーン・フィギンズ。そして、「シーズン最悪の非貢献者」と名指しされたも同然のズレンシック。

(以下Jason Starkの記事と粗訳。
 太字はブログ側による。)

Detroit Tigers challenged with replacing Victor Martinez - ESPN

• Here's a question several teams asked this week: "How come we never knew that Michael Pineda was available?" Interesting issue.
今週、いくつかのチームからこんな質問を受けた。「マイケル・ピネダがトレード可能だってことが、なんで我々にはちっともわかんなかったんだ?」 興味深い話だ。

"I bet I've had a dozen conversations with [the Mariners] this winter," said an official of one club. "Never brought him up. I guess we didn't have what they were looking for."
「この冬(マリナーズ関係者とは)非常に頻繁に話したんだけどもね」と、あるクラブの関係者。「ピネダのトレードを議論の俎上にのせることはできなかったな。まぁ、たぶん、彼らの求めていたものを我々が持っていなかったからだろうけど。」

And that, it appears, is exactly what went on here. Mariners GM Jack Zduriencik clearly targeted a very select group of young, controllable, impact bats -- Jesus Montero, Mike Stanton, Logan Morrison, etc.-- and dangled Pineda only to those teams, for those hitters. Eventually, it turned out to be the Yankees who said yes.
たしかにその話はどうも当たっているようだ。マリナーズGMのジャック・ズレンシックは、ヘスス・モンテーロ、マイク・スタントン、ローガン・モリソンなど、若く、バットコントロールもいい強打者にはっきりターゲットを絞っていて、それらのチームやバッターに対してのみ、ピネダとのトレードをちらつかせていたらしい。話に応じたのが、結局ヤンキースだった、というわけだ。

But what if Zduriencik had made it more widely known that he'd talk about Pineda, the way the A's did with Gio Gonzalez and Trevor Cahill, the way the Padres did with Mat Latos? Would he, or could he, have gotten more than Montero and Hector Noesi?
しかし、アスレチックスがジオ・ゴンザレスやトレバー・ケイヒルに、もしくは、パドレスがマット・ラトスについてそうしたように、もしズレンシックが、ピネダがトレード可能であることを、もっとオープンにしていたらどうだっただろう? モンテーロやヘクター・ノエシ以上の獲物をゲットできただろうか?
=ブログ注:市場価値が高いとわかっている選手のトレードで最大限の収穫が得られるように、アスレチックスやパドレスが主戦クラスのローテ投手のトレードをオープンにしたように、ズレンシックがピネダのトレード話をオープンにしていれば、シアトルは、DHモンテーロなどではなくて、もっと大きな収穫を得られた可能性があったかもしれない、という意味

"We were blown away when this deal went down," said one GM. "I can't believe they would trade that kind of player. I'm not sure how you do that and not contact everybody. I'm sure Jack likes the deal he made. But even if you don't match up, you never know what you might be able to get if you open it up to start exploring three-team deals."
「我々はこのトレードの話を聞いて、ぶっ飛ぶんださ。」と、あるGM。
「私は、彼らがあのクラスのプレーヤーをトレードしたことにビックリしたんだ。なんでそうするのかわからないけど、他の全チームに接触することなくトレードしたんだからね。よくわからない話さ。たぶんジャックは、ああいうやり方が好きなんだろうな。
でも、たとえお互い求めてるものが一致してなくても、情報がオープンにされてれば、複数チーム間のトレードで欲しい選手が得られるかどうか模索できるわけだけど、情報がオープンじゃないんだから、欲しい選手が得られるかどうかなんて、あれじゃわかりっこないよ。」
=ブログ注:ピネダクラスの投手ならウチだって欲しいんだから、言ってさえくれれてれば、もし自分のチームにシアトルの欲しい選手がいなかったにしても、第3のチームを巻き込んで、シアトルがモンテーロ以上に欲しい選手を提示することができたかもしれないが、情報がオープンじゃないなら何もできっこない、という話

• After any trade like this, a swap of two young players who appear bound for stardom, people start reading all sorts of ulterior motives into it. So let's get to conspiracy theory No. 1 -- that something is up with Pineda.
こういう、これからスターダムに乗ってきそうな2人の若いプレーヤーのトレードの後では、そこに隠されたトレードの裏話が探られるものだ。ピネダに関する謎解きは、こうだ。

"I saw him in September, and he was throwing 87-91 [mph]," said one exec. "I'm sorry. You just don't trade [young, controllable] premium top-of-the-rotation starters unless something ain't right. I just find it strange [to] trade a front-line starter for a DH."
「僕は9月に彼を見てる。87マイルから91マイルを投げていたね。」と、あるチームの幹部。
「申し訳ない言い方になるけど、なにかよほどの問題があるのでもない限り、プレミアムのついた(つまり、若くて、コントロールもいい)主戦クラスのローテーションピッチャーをトレードするなんて、ありえない。まして、ローテの軸になる投手をDHとトレードだなんて、おかしなことをするもんだとしか言いようがないよ。」

Now the common wisdom on Pineda is that he just slammed into a wall after hitting his innings limit. And no one else we surveyed was alarmed by his fading velocity down the stretch. But it's something to watch, because the facts back this up. For the record, here are Pineda's four-seam fastball velocities through the season, according to Pitch F/X:
ピネダについては、彼がいわゆる「イニングの壁」にぶちあたって打たれる、ということが共通認識になっているが、我々が調べた範囲の関係者では、2011シーズン最後になって彼の球速が落ちたことに警鐘を鳴らす人は、誰ひとりいなかった。だが(ピネダの球速低下を)裏付ける事実もあるので、それは一応見ておくべきだろう。Pitch F/Xの記録によれば、ピネダの4シームの球速は、シーズン通して以下のようになっている。

April 5 (first start of the year): 94-98
June 1: 94-97
Aug. 9: 95-97
Sept. 21 (last start of the year): 91-93


• Now here's conspiracy theory No. 2 -- that there were below-the-surface issues with Montero that caused the Yankees to dangle him in several major deals over the last year and a half.
次に、2つめの謎解き。モンテーロにまつわる水面下の問題だ。それは、ヤンキースが1年半以上もの長きにわたって、いくつかの大きなトレード話にモンテーロ放出をちらつかせる原因になった。

The Yankees obviously insist otherwise. They're deep in catchers. And they just scored the second-most runs in baseball. So their take is simply that they dealt from strength, and the Mariners were doing exactly the same thing.
ヤンキース自身はきっと違う主張をするだろうが、彼らはキャッチャーを多数抱え込んでいる一方で、彼らはMLBで二番目に多い得点をできるチームでもある。だから彼らが望むのは、シンプルに彼らの(選手層の)強みを生かしたトレードであり、また(投手に強みをもつ)マリナーズもまた全く同じことをしようとした。
=ブログ注:つまり、スタークが言いたいのは、ヤンキースにはキャッチャーならいくらでもいて、得点力にも問題がないのだから、モンテーロくらい、いなくなっても別に痛くないんだよ、ということ

But we've written in Rumblings before that there are teams out there that have been wary of Montero despite his undeniable talents. And what turned them off was their perception that he showed signs of "big league-itis" before he ever reached the big leagues.
しかし我々は、以前、モンテーロには否定しようのない才能がある反面で、いくつかの不満からモンテーロ獲得に及び腰になるチームがあることを記事にした。それらのチームのモンテーロ獲得意欲を萎えさせたのは、モンテーロがメジャーに上がる前にみせた『大リーグ病』の兆候だ。

"I'm just not sure about his makeup," said one scout who covers the Yankees' system. "I don't like that he looked bored, at 21, playing professional baseball in Triple-A. Yeah, he'd had some success. But he acted like he'd won five batting titles in the big leagues. … I will say, though, that I saw signs of growth in the last year. I thought Jorge Posada had an effect on him last year in spring training. So hopefully, he got the message. And hopefully, it was just immaturity."
「彼の気質について、確かなことを言えるわけじゃないけど」と、ヤンキースの育成システムに精通する、あるスカウトは言う。
「まだ21歳の彼が、プロとしてトリプルAでプレーすることに飽き飽きしてるように見えたことが、気に入らないね。
たしかに、彼はちょっとばかり成功を納めたさ。でも、まるでメジャーの5つのバッティングタイトルを獲得したかのように振舞うって、ちょっとどうかと思うよ。言わせてもらえば、去年で今後の成長についての前兆を見た、とでもいうかさ・・・。
去年のスプリング・トレーニングではホルヘ・ポサダの存在が、彼に影響を与えてたと思う。だから、モンテーロがそこから何かメッセージを受け取っていることを願うばかりだね。単にまだ未熟だからだけなら、いいんだけどもね。」
=ブログ注:去年のスプリング・トレーニングでは、大先輩で、お目付け役でもあるホルヘ・ポサダの存在があって、モンテーロのわがままを抑制することもできたが、ポサダのような存在がなくなったら、どうなるかわからないよ? という意味



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  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
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  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
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