March 31, 2012

有力スポーツメディアとして君臨してきたスポーツ・イラストレイテッドから、去年CBSに移籍したJon Heymanに続いて、またひとり、有力ライターが去ることになったようだ。
セイバーメトリクス系ライターのJoe Posnanskiが、USA TODAYとMLBが新たに作るスポーツメディアに移籍するらしい。

I've written this before -- my dream, from the time I was just starting out in this business, was to write for Sports Illustrated.
以前書いたこともあるが、僕の夢、この仕事を始めたときからの僕の夢はね、スポーツ・イラストレイテッドに記事を書くこと、だったんだ。

Joe Posnanski is Leaving Sports Illustrated | The Big Lead

移籍に関するPosnanski自身のブログ記事
Joe Blogs: Old News

USA TODAYの新スポーツメディア: PR Newswire: USA TODAY Sports Media Group, MLB Advanced Media to Partner on Product Development Venture


1961年生まれのJon Heymanは、ニューヨークのNewsday紙でヤンキースのビートライターとして出発し、2006年の7月から2011年12月までSports Illustratedのライターを務め、その後CBSに移籍して現在に至っている。
1967年生まれのJoe Posnanskiは、1996年10月から2009年8月までKansas City Starで働き、2007にCASEY Awardを受賞。その後Sports Illustratedのライターになった。
Heymanが、Inside Baseball、FoxのKen Rosenthalのような、いわゆる野球の内幕に通じた「情報通タイプ」であるのに対して、Posnanskiは、セイバーメトリクス系のライターで数字に強く、Fielding Bible Awardsの選考委員もやっているし、また、長編の読み物も書くジャーナリスティックな能力もある「作家タイプ」だ。

Posnanskiは、「彼のようなプレーヤーを、他に見たことがない」と高く評価する記事を書いたことがあるイチロー・ファン。
Seattle Mariners' Ichiro Suzuki is one-of-a-kind player - Joe Posnanski - SI.com
セイバーメトリクス関係者でも、イチローに対する評価は人それぞれに違うが、Posnanskiは良き理解者のひとりといっていい。フランクリン・グティエレスがライトのポジションでFielding Bible賞を初受賞した2008年でも、Posnanskiの評価はイチロー2位、グティエレス3位と、イチローをグティエレスより高く評価している。

Fielding Bible Awards投票における
Joe Posnanskiのイチローの守備評価と受賞結果

2006年 1位(ライト) Fielding Bible受賞
2007年 7位(センター)
2008年 2位(ライト)
2009年 1位(ライト) Fielding Bible受賞
2010年 1位(ライト) Fielding Bible受賞
2011年 圏外(ライト)

スポーツ・イラストレイテッドは、スポーツ記事を書く者にとって、夢の「メジャーリーグ」であり、また、スポーツ選手にとっても、自分の写真がスポーツ・イラストレイテッドの表紙を飾ることは、夢であり、成功の証だ。ライターとしてのメジャーリーグを卒業できる位置にまで上り詰めたJoe Posnanskiの今後の活躍に期待したい。
Joe Posnanskiがスポーツ・イラストレイテッドのライターになれた理由は、彼のライターとしての能力以外に、Rob Neyerもそうだが、近年セイバーメトリクスという分析手法が野球の世界でポピュラーになるとともに、セイバー手法をもとに書けるライターが、モノ書きの世界で占める地位が大きく向上した、という背景がある。


OPS批判シリーズ記事で書いたことだが、例えば、OPSなどという指標は、それが開発された当時は斬新で、信奉者が急増したかもしれないが、今となって良く点検してみれば、長打信仰から生まれた単なる「デタラメ」でしかなく、野球という現実にまるでフィットしていない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:指標のデタラメさ(OPS、SLG、パークファクターなど)
映画『マネーボール』が扱った世界というのは、現実の野球においてはとっくに賞味期限の切れた、カビくさいネタであり、この映画がまったくアカデミー賞で相手にされず、おそらく日本でも興行として「大コケ」しただろうと推測されることは、ブログ主に言わせれば当然の話だ。

かつて野球で、誰もが数字に弱く、勘や感性が重視されていた時代に、たとえ雑な数字であっても、大威張りに野球を語れて、それが元で出世できた時代など、もうとっくの昔に終わっている。 
今は誰でも数字くらい扱える。数字のウソも見抜ける。
もともとジャーナリスティックな能力に恵まれているPosnanskiは別として、セイバーメトリクスがらみで記事を書けるからといって、これからの時代も、その書き手がより良いポジションに行けるとか、他人から一目置いてもらえるとか、ブログ主はまったく思わない



このブログでのJoe Posnanski関連記事

2009
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年3月30日、スポーツ・イラストレイテッドのJoe Posnanskiが、「非自責点」について語ったのを読んで、「日米の自責点の考え方の差異」についても勉強してみる。

2010
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年3月26日、The Fielding Bible Awards選考委員で、2007年CASEY Awardを受賞しているスポーツ・イラストレイテッドのJoe Posnanskiがイチローを絶賛した記事の翻訳を読んでみる。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年3月26日、スポーツ・イラストレイテッドの表紙を4度飾ったイチローの扱いの変遷から、「イチローがにもたらしたMLB新世紀」を読む。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月16日、ちょっと忘れっぽくなっているらしいピート・ローズ氏が、かつてスポーツ・イラストレイテッドの Joe Posnanskiに語ったことの覚え書き。

2011
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年2月18日、「目」をダメにする「数字というメガネ」。


イチローが表紙に登場する
スポーツ・イラストレイテッド(4回)


スポーツ・イラストレイテッド2001年5月28日号表紙
スポーツ・イラストレイテッド2002年7月8日号表紙
スポーツ・イラストレイテッド2003年5月5日号表紙
スポーツ・イラストレイテッド2004年10月4日号表紙


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