April 14, 2012

セーフコ開幕戦の球審は、アンパイアとしては若いTim Timmons (1967年生まれ 44歳)。

今日の彼の判定は、左バッターのアウトコースのゾーンがかなり広いイメージで、好機に見逃し三振をくらってヘルメットを投げたマイケル・ソーンダースなど、判定に不服そうな左バッターが続出した。たしかに、テレビ画面で見るとかなりアウトコースの判定が広い印象を受けるかもしれない。
Oakland Athletics at Seattle Mariners - April 13, 2012 | MLB.com Classic


球審Tim Timmonsの過去の判定傾向は以下の図の通り(2007 by Jonathan Hale: the Hardball Times)。メジャーで「高めをまったくとらないアンパイア」として3本指に入るアンパイアだ。(赤い線がルールブックのストライクゾーン。青い線が、Tim Timmonsのゾーン  。ただ、今日の判定は高さはごく普通の判定だった)

Tim Timmonsのストライクゾーン


高めのゾーンの狭いアンパイア ベスト10

Chuck Meriwether -8.53
Ed Rapuano -7.05
Tim Timmons -7.02
Jerry Layne -6.79
Larry Vanover -6.35
Brian Runge -5.68
Marty Foster -5.21
Chad Fairchild -5.04
Ed Montague -4.53
Mark Carlson -4.52
資料:The Hardball Times: A zone of their own



さて、今日のTim Timmonsの実際の判定ぶりは、データ上ではどうだったのだろう。いつものように、優れたアンパイアの判定データを提供しているBrooksBaseball.netStrikezone Mapを見てみる。
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool: 2012_04_13_oak_sea

2012年4月13日 シアトル対オークランド戦 Tim Timmonsの判定


2つあるグラフのうち、上が左バッターに対する判定。下が右バッターに対する判定。黒い実線は「ルールブック上のストライクゾーン」、破線は「実際のMLBのアンパイアが判定するストライクゾーン」で、何度も書いてきたように、実際のMLBの球審の判定においては、左バッターと右バッターでは、まったくストライクゾーンが異なることに注意してもらいたい。
簡単にいうと、左バッターについては、インコースはルールブックどおりだが、アウトコースはボール2個くらいは平気で外に広い。右バッターについては、外も内も、ボール1個分くらい広い。(球審によって、もっと広い人、狭い人がいる)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月29日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (2)2007年の調査における「ルールブックのストライクゾーン」と、「現実の判定から逆測定したストライクゾーン」の大きな落差。


かつてはBrooksBaseball.netStrikezone Mapも、この左右のバッターでのストライクゾーンの違いを、きちんと反映はしていたが、図中には書き込んではいなかった時代があったが、去年からだったか、グラフの中に左バッターと右バッターのゾーンをハッキリ書くように仕様が変わった。


今日のオークランド先発バートロ・コロンの持ち球は、若い頃はカーブを投げた時代もあったが、今ではまったく投げないし、またチェンジアップ系の割合もそれほど若い頃から増えてはいない。
彼の持ち球の特徴は、他のヴェテラン投手のように緩急にあまり頼ることがない点で、近年ではむしろ2シームを多投することで、ストレート系への依存率がかえって高まっている気さえする。
今日の彼の配球は、内・外への2シームが基本で、スライダーと、ときおり投げるチェンジアップがスパイスになっていた。
Bartolo Colon » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball

コロンの持ち球といえば、アメリカのスカウティングサイトなどでも日本でも語られるのは、左バッターに対するfrontdoor 2-seam、つまり左バッターのインコースで、ボールゾーンからシュートしながらストライクになる2シームが特徴のひとつだったわけだが、今日のコロンは、球審のアウトコースのゾーンが広いことに早々と気がついて、左バッターのインコースではなく、「アウトコースで、ストライクゾーンから入ってボールゾーンに抜けて逃げていく2シーム」を多投して、左打者しかヒットを打てないシアトル打線を牛耳った。
こういう抜け目のなさ、対応の早さが、ヴェテランの味だ。
資料:60ft6in – Pitcher Scouting Reports - Is This Really Happening?: Bartolo Colon


この「左バッターのアウトコースにシュートしてストライクになる、右投手の2シーム」は、実際にバッターボックスに立っているプロのバッターですら判定に迷うくらいだから、テレビを見ている観客に、それがストライクかボールかを判定するのは難しい。

(ちなみに「backdoor, バックドア」の変化球は、「アウトコースの球で、ボールゾーンである外側から曲がってきて、最終的にストライクになる球」のこと。
MLBの投手がよく使う「バックドアの変化球」としてよく知られている変化球には、例えばbackdoor sliderがある。右投手が左バッターのアウトコースに(下の図のA)、あるいは、左投手が右バッターのアウトコースに(下の図のB)投げる。
この試合で右腕バートロ・コロンが左バッターのアウトコースに投げた2シームは、さらにひとつ下の図のCで、バックドアではない。)
front door と back door

左バッターのアウトコースをかすめる2シームの軌道



Tim Timmonsはもともとアウトコースのストライクゾーンの広い球審なだけに、左バッターに対するコロンの外の2シームをストライクと判定しやすい試合環境だった。
だが、データ上からみると、たしかに明らかなボールをストライクコールした例もいくつかはあったが、大半の見逃しについては、MLBの左打者に対するアウトコースの広さで説明のつくストライクだった。


左バッターのアウトコースに投げる、ストライク判定される2シーム」は、いま、右投手の左バッター対策として、非常に効果を挙げつつある。実際、どの試合を見ても、必ずといっていいほど多投されている感がある。

問題は、シアトルが、この「2シーム時代」にきちんとアップデートできているか? ということだ。

主に4シームしか投げられないようなブルペンピッチャー、2シームを打ち崩すバッティングを研究してないバッター、投手の投げる2シームを受け損なって失点につなげてしまうキャッチャー、2シームの判定に迷うバッター。

様々な意味で、現状のシアトルは「2シーム時代」についていけてないことが、今日ハッキリした。



だが、逆にいえば、チームとしての課題がこれほどハッキリ見えるゲームなんて、そうそうあるものじゃない。日々進歩することが今のシアトルの仕事だとしたら、ある意味、克服すべき課題、進歩すべき方向がこれだけハッキリ見えたことは、むしろラッキーとさえいえる。

そして、これだけはハッキリしている。
こういう「いい経験」をしても、進歩できない選手がいれば、その選手は変化する能力のない負け犬だし、チームが選手の技術の修正を指導できなければ、そのチームは、かたくななだけの負け犬になる。















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