April 23, 2012
アウトコース高めに注目。ボールの3球目より、ストライクの5球目のほうが外にある。(以下、画像をクリックすると、別窓で拡大画像)
Chicago White Sox at Seattle Mariners - April 22, 2012 | MLB.com Gameday
ホワイトソックス3連戦の最終戦で球審を務めたMarvin Hudsonは、2010年6月2日に当時デトロイトの先発投手だった右腕アーマンド・ガララーガの完全試合が、1塁塁審ジム・ジョイスの明らかな誤審によってフイにされたあのゲームで球審を務めていたアンパイアだ。
アーマンド・ガララーガの幻の完全試合 - Wikipedia
9回裏1死1塁でイチローに対する5球目をMarvin Hudsonはストライク判定したが、そのいい加減さに呆れかえっている。そして、ロクにデータを見る習慣も無いクセに、イチローの三振について、あーだこーだと批判するアホウにも、つける薬がない。
ちなみに、この打席でのピッチャーの投球は、
1球目 4シーム ボール
2球目 2シーム ファウル
3球目 4シーム ボール
4球目 4シーム ファウル
5球目 2シーム ストライク 見逃し三振
この判定は、以下の3つの観点から、
「その判定はおかしい」と断言する。
何度も書いてきたように、そのことの是非はともかくとして、MLBの球審の判定は「ルールブック上のストライクゾーン」に従ってなど、いない。
むしろ、アンパイアごとに、当たり前のように、そのアンパイア固有のストライクゾーンがあり、彼らはゲームをある意味で「作って」もいる。そして、アンパイア間の個人差は、かなり酷いレベルにある。
MLBでプレーするバッターは、ゲームに出る以上、良くも悪くも、ルールブック上のストライクゾーンに従ってのみプレーするのではなくて、「その球審の判定傾向に沿ってプレーすること」を強いられることも、常に頭に入れておかなければならないし、MLBのストライクゾーンにはアンパイアごとの非常に大きな個人差が存在することを、誰でも知っておかなければならない。
ブログ主は、球審は絶対にルールブックに沿って判定すべきなどとは思わないが、むしろ球審が「自分のストライクゾーン、あるいは、今日のストライクゾーンが、どういう形か」という判定ルールをゲームの流れの中で暗黙のうちに示さなかったり、また、「自分が一度示していたルールを、ゲームの特定場面のみに関して恣意的に変更する」ことは許されない、と考えている。
これは、単純に「人間だから判定を間違うこともあるさ」なんていう、ジジイのカビくさい説教で説明できる話ではないし、また、「3球目は変化しない4シーム、5球目は変化する2シームだから、3球目がボールで、よりアウトコースに行った5球目がストライクなのはしょうがない」という程度の常套句で説明できる誤差でもない。
1)過去のMarvin Hudsonは、むしろ
「アウトコースの非常に狭い球審」
赤色の線は、「ルールブック上のストライクゾーン」、
青色の線が、Marvin Hudsonの過去の判定傾向だ。
(資料:Hardball Times: A zone of their own 2007年)
Marvin Hudsonは本来、左バッターのアウトコースのストライクゾーンが非常に広いMLBにあって、真逆の「左バッターのアウトコースのゾーンが非常に狭い特殊なアンパイア」であり、9回裏の問題判定は、この球審の「過去の判定傾向」に、まったくそぐわない。
2)この日だけに限ったMarvin Hudsonの判定傾向は、
「低めが狭く、あとはルールブックどおり」であり、
しかも、一貫している
以下の2つの図は、2012年4月22日のシアトル対ホワイトソックス戦だけに限った球審Marvin Hudsonの判定傾向だ。(上の図が左バッター、下が右バッター) 特徴は、2つある。
4月22日限定の左バッターへの判定
アウトコースの高めはほとんどとっていない。
4月22日限定の右バッターへの判定
インコース、アウトコースのきわどい球を全くとっていない。
総じていえば、この日のMarvin Hudsonの判定は、低めのゾーンが狭いことを除けば、標準的なMLBのゾーンではなく、「ほぼルールブックどおりのゾーン」がルールになっている。
MLBのアンパイアの標準的ストライクゾーンといえば、もちろん「左バッターはアウトコースだけがボール2個分くらい広く、右バッターはインコース・アウトコースともに1個分くらいずつ広い」わけで、このルールブックより広い標準的ストライクゾーンで判定するアンパイアは少なからずいるわけだが、この日のMarvin Hudsonのゾーンは、そのMLB標準ゾーンよりもずっと全体的に狭い。
これは、この元来「アウトコースは狭いが、低めはほぼルールーブックどおり、高めはかなり広くとるアンパイア」にしては、非常に珍しい判定傾向だ。
そして問題なのは、この日、Marvin Hudsonの「ホワイトソックス投手がシアトルの左バッターに投げた球に関する判定」において、ストライク判定された見逃しストライクは、9回裏のイチローへの5球目、この、たった1球だけしか記録されていないことだ。
この1球の判定だけが、明らかに、「この日限定の判定傾向」の流れに沿っていない。
出典:Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool
3)9回裏イチローの打席は、3球目の4シームをこの日の判定傾向どおりボール判定しておいて、3球目より外に行ったの5球目の2シームをストライク判定する「トラップ判定」
以上の話を、ひとつの図にまとめてみた。
赤い線が、ルールブック上のストライクゾーン。
青い線が、過去のMarvin Hudsonのストライクゾーン。
緑の線が、22日のMarvin Hudsonのストライクゾーン。
アルファベットのAで示した緑色の三角形が、9回裏イチロー3球目の4シーム。アルファベットのBで示した赤色の三角形が、同じく5球目の2シームである。
上の図のアルファベットのAとB(=9回裏のイチローへの3球目と5球目)を、BrooksBaseball.netのStrikezone Maps上にマッピングし、ズームしてみると、以下のようになる。(黒い太線が、ルールブック上のストライクゾーン、黒い破線が、左バッターに対するMLBの標準的なストライクゾーン)
上で一度書いたように、球審Marvin Hudsonの「ホワイトソックス投手の左バッターに対する判定」において、ストライク判定されているアウトコースの見逃しストライクは、9回裏のイチローへの5球目、このたった1球だけしか記録されていない。
そして、さらにタチが悪いのは、
3球目のアウトコース高めの4シームを、「この日の判定傾向」どおりにボール判定して、「やっぱりアウトコース高めはとらない」と思わせておいて、5球目のほぼ同じコースの2シームを、彼の「過去の判定傾向」とも、また、「この日の判定傾向」とも無関係に、ストライク判定していることだ。
まさに 「トラップ」だ。ありえない。
こんなあくどい判定に対応できるわけがない。
もし、このゲームでの球審の左バッターに対する判定が、ごく標準的なMLBのストライクゾーン、つまり、左バッターのアウトコースについてボール2個分くらいは広い標準的ゾーンに基づいてコールされていたら、ブログ主も5球目の判定に文句をつけるつもりにはならない。
なぜこの判定が「異常だ」と断言するかといえば、この判定が、「Marvin Hudsonの過去の判定傾向」とも、「この日の判定傾向」ともまるで異なるうえ、さらに悪質なことに、3球目をあらかじめボール判定しておいて、あたかも「今日のオレ様の判定は、外をとらないんだぜ」と思わせておいて、5球目をストライク判定してみせた「トラップ判定」だから、である。
バッターは9回ともなれば、自分のそれまでの打席から得た経験と、他のバッターやスコアラーから得た情報などから、その日の球審の判定傾向を頭に入れてバッターボックスに立っているものだ。
もしアウトコースのストライクゾーンが可変、つまり「コロコロ変わる」というのなら、それはそれで構わないのであって、「この球審のアウトコースのストライクゾーンは、けっこう変わる」とあらかじめ頭にいれて打席に入ればいいだけのことで、イチロークラスの技術のあるバッターなら、アウトコースのくさい球をカットしに行く心の準備ができる。
だが、
「もともとアウトコースの狭いアンパイア」が、その日の傾向として「ほぼルールブックに沿った、標準ゾーンより狭いストライクコール」をしていて、「左バッターのアウトコース高めには、辛い判定をしている」とわかっているゲームで、しかも、3球目の「左バッターのアウトコースがかなり広い標準的ストライクソーンからすればストライクと判定するはずの球を、ボール判定した」その直後に、3球目よりもさらにアウトコースに来た球をストライク判定するなどと、誰も思うわけがない。
イチローは選球眼がいいから、よけいに、見極めができてしまう。3球目がボールなら、2シーム程度の曲がりなら、この日の判定傾向のアウトコース高めのゾーンの狭さからして5球目はボールと判断するのは当然だ。
こんな経緯の球をカットに行けるわけがない。
だから、こんな判定は「異常」と断言できるのである。
Chicago White Sox at Seattle Mariners - April 22, 2012 | MLB.com Gameday
ホワイトソックス3連戦の最終戦で球審を務めたMarvin Hudsonは、2010年6月2日に当時デトロイトの先発投手だった右腕アーマンド・ガララーガの完全試合が、1塁塁審ジム・ジョイスの明らかな誤審によってフイにされたあのゲームで球審を務めていたアンパイアだ。
アーマンド・ガララーガの幻の完全試合 - Wikipedia
9回裏1死1塁でイチローに対する5球目をMarvin Hudsonはストライク判定したが、そのいい加減さに呆れかえっている。そして、ロクにデータを見る習慣も無いクセに、イチローの三振について、あーだこーだと批判するアホウにも、つける薬がない。
ちなみに、この打席でのピッチャーの投球は、
1球目 4シーム ボール
2球目 2シーム ファウル
3球目 4シーム ボール
4球目 4シーム ファウル
5球目 2シーム ストライク 見逃し三振
この判定は、以下の3つの観点から、
「その判定はおかしい」と断言する。
何度も書いてきたように、そのことの是非はともかくとして、MLBの球審の判定は「ルールブック上のストライクゾーン」に従ってなど、いない。
むしろ、アンパイアごとに、当たり前のように、そのアンパイア固有のストライクゾーンがあり、彼らはゲームをある意味で「作って」もいる。そして、アンパイア間の個人差は、かなり酷いレベルにある。
MLBでプレーするバッターは、ゲームに出る以上、良くも悪くも、ルールブック上のストライクゾーンに従ってのみプレーするのではなくて、「その球審の判定傾向に沿ってプレーすること」を強いられることも、常に頭に入れておかなければならないし、MLBのストライクゾーンにはアンパイアごとの非常に大きな個人差が存在することを、誰でも知っておかなければならない。
ブログ主は、球審は絶対にルールブックに沿って判定すべきなどとは思わないが、むしろ球審が「自分のストライクゾーン、あるいは、今日のストライクゾーンが、どういう形か」という判定ルールをゲームの流れの中で暗黙のうちに示さなかったり、また、「自分が一度示していたルールを、ゲームの特定場面のみに関して恣意的に変更する」ことは許されない、と考えている。
これは、単純に「人間だから判定を間違うこともあるさ」なんていう、ジジイのカビくさい説教で説明できる話ではないし、また、「3球目は変化しない4シーム、5球目は変化する2シームだから、3球目がボールで、よりアウトコースに行った5球目がストライクなのはしょうがない」という程度の常套句で説明できる誤差でもない。
1)過去のMarvin Hudsonは、むしろ
「アウトコースの非常に狭い球審」
赤色の線は、「ルールブック上のストライクゾーン」、
青色の線が、Marvin Hudsonの過去の判定傾向だ。
(資料:Hardball Times: A zone of their own 2007年)
過去のMarvin Hudsonの判定傾向はこうなる。
1)3塁側(左バッターでいうアウトコース)が狭い
2)高めが広い
Marvin Hudsonは本来、左バッターのアウトコースのストライクゾーンが非常に広いMLBにあって、真逆の「左バッターのアウトコースのゾーンが非常に狭い特殊なアンパイア」であり、9回裏の問題判定は、この球審の「過去の判定傾向」に、まったくそぐわない。
2)この日だけに限ったMarvin Hudsonの判定傾向は、
「低めが狭く、あとはルールブックどおり」であり、
しかも、一貫している
以下の2つの図は、2012年4月22日のシアトル対ホワイトソックス戦だけに限った球審Marvin Hudsonの判定傾向だ。(上の図が左バッター、下が右バッター) 特徴は、2つある。
1)右バッターは、アウトコースもインコースも、標準的なMLBのゾーンより、かなり狭い
2)左バッターは、インコースは狭く、アウトコースはやや狭め
3)左バッターのアウトコースは、高めに関してはとらない
4)左右共通して、低めが狭く、ほとんどとらない
4月22日限定の左バッターへの判定
アウトコースの高めはほとんどとっていない。
4月22日限定の右バッターへの判定
インコース、アウトコースのきわどい球を全くとっていない。
総じていえば、この日のMarvin Hudsonの判定は、低めのゾーンが狭いことを除けば、標準的なMLBのゾーンではなく、「ほぼルールブックどおりのゾーン」がルールになっている。
MLBのアンパイアの標準的ストライクゾーンといえば、もちろん「左バッターはアウトコースだけがボール2個分くらい広く、右バッターはインコース・アウトコースともに1個分くらいずつ広い」わけで、このルールブックより広い標準的ストライクゾーンで判定するアンパイアは少なからずいるわけだが、この日のMarvin Hudsonのゾーンは、そのMLB標準ゾーンよりもずっと全体的に狭い。
これは、この元来「アウトコースは狭いが、低めはほぼルールーブックどおり、高めはかなり広くとるアンパイア」にしては、非常に珍しい判定傾向だ。
そして問題なのは、この日、Marvin Hudsonの「ホワイトソックス投手がシアトルの左バッターに投げた球に関する判定」において、ストライク判定された見逃しストライクは、9回裏のイチローへの5球目、この、たった1球だけしか記録されていないことだ。
この1球の判定だけが、明らかに、「この日限定の判定傾向」の流れに沿っていない。
出典:Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool
3)9回裏イチローの打席は、3球目の4シームをこの日の判定傾向どおりボール判定しておいて、3球目より外に行ったの5球目の2シームをストライク判定する「トラップ判定」
以上の話を、ひとつの図にまとめてみた。
赤い線が、ルールブック上のストライクゾーン。
青い線が、過去のMarvin Hudsonのストライクゾーン。
緑の線が、22日のMarvin Hudsonのストライクゾーン。
アルファベットのAで示した緑色の三角形が、9回裏イチロー3球目の4シーム。アルファベットのBで示した赤色の三角形が、同じく5球目の2シームである。
上の図のアルファベットのAとB(=9回裏のイチローへの3球目と5球目)を、BrooksBaseball.netのStrikezone Maps上にマッピングし、ズームしてみると、以下のようになる。(黒い太線が、ルールブック上のストライクゾーン、黒い破線が、左バッターに対するMLBの標準的なストライクゾーン)
上で一度書いたように、球審Marvin Hudsonの「ホワイトソックス投手の左バッターに対する判定」において、ストライク判定されているアウトコースの見逃しストライクは、9回裏のイチローへの5球目、このたった1球だけしか記録されていない。
そして、さらにタチが悪いのは、
3球目のアウトコース高めの4シームを、「この日の判定傾向」どおりにボール判定して、「やっぱりアウトコース高めはとらない」と思わせておいて、5球目のほぼ同じコースの2シームを、彼の「過去の判定傾向」とも、また、「この日の判定傾向」とも無関係に、ストライク判定していることだ。
まさに 「トラップ」だ。ありえない。
こんなあくどい判定に対応できるわけがない。
もし、このゲームでの球審の左バッターに対する判定が、ごく標準的なMLBのストライクゾーン、つまり、左バッターのアウトコースについてボール2個分くらいは広い標準的ゾーンに基づいてコールされていたら、ブログ主も5球目の判定に文句をつけるつもりにはならない。
なぜこの判定が「異常だ」と断言するかといえば、この判定が、「Marvin Hudsonの過去の判定傾向」とも、「この日の判定傾向」ともまるで異なるうえ、さらに悪質なことに、3球目をあらかじめボール判定しておいて、あたかも「今日のオレ様の判定は、外をとらないんだぜ」と思わせておいて、5球目をストライク判定してみせた「トラップ判定」だから、である。
バッターは9回ともなれば、自分のそれまでの打席から得た経験と、他のバッターやスコアラーから得た情報などから、その日の球審の判定傾向を頭に入れてバッターボックスに立っているものだ。
もしアウトコースのストライクゾーンが可変、つまり「コロコロ変わる」というのなら、それはそれで構わないのであって、「この球審のアウトコースのストライクゾーンは、けっこう変わる」とあらかじめ頭にいれて打席に入ればいいだけのことで、イチロークラスの技術のあるバッターなら、アウトコースのくさい球をカットしに行く心の準備ができる。
だが、
「もともとアウトコースの狭いアンパイア」が、その日の傾向として「ほぼルールブックに沿った、標準ゾーンより狭いストライクコール」をしていて、「左バッターのアウトコース高めには、辛い判定をしている」とわかっているゲームで、しかも、3球目の「左バッターのアウトコースがかなり広い標準的ストライクソーンからすればストライクと判定するはずの球を、ボール判定した」その直後に、3球目よりもさらにアウトコースに来た球をストライク判定するなどと、誰も思うわけがない。
イチローは選球眼がいいから、よけいに、見極めができてしまう。3球目がボールなら、2シーム程度の曲がりなら、この日の判定傾向のアウトコース高めのゾーンの狭さからして5球目はボールと判断するのは当然だ。
こんな経緯の球をカットに行けるわけがない。
だから、こんな判定は「異常」と断言できるのである。