June 02, 2012
メッツのヨハン・サンタナが、セントルイス相手にノーヒット・ノーラン達成。これは1962年のメッツ創設以来、半世紀を経て、初の快挙 (8020試合での達成)。
これまでメッツでは、1975年にメッツ在籍時のトム・シーバーがノーヒットを維持したまま9回まで行ったことはあったらしいが、そのときは達成できなかった。 (その後トム・シーバーは1978年に、メッツでなくシンシナティでノーヒット・ノーラン達成。奇しくも、サンタナと同じセントルイス戦)
動画(MLB公式):St. Louis Cardinals at New York Mets - June 1, 2012 | MLB.com Video
St. Louis Cardinals at New York Mets - June 1, 2012 | MLB.com Wrap
サンタナの快挙は、長い長い怪我での休養から復帰して、4シームが88マイルしか出ない中、4シームとパラシュート・チェンジアップを駆使して134球もの球数を投げる中での偉業であり、心からおめでとうと言いたい。
この歴史的なゲームを見ていた人はわかったと思うが、この快挙は、ゲーム終盤、右バッターのインコースを果敢に攻めまくった結果だ。
やはり、バッターから逃げていては、快挙は達成できない。
ESPNのジェイソン・スタークによれば、134球でのノーヒット・ノーラン達成は、2010年6月25日タンパベイ戦で達成したアリゾナのエドウィン・ジャクソンの149球に次いで、史上2番目の球数の多さらしい。
June 25, 2010 Arizona Diamondbacks at Tampa Bay Rays Play by Play and Box Score - Baseball-Reference.com
Johan's 134 pitches tied for 2nd most in a no-hitter in last 20 years. Edwin Jackson's 149 still the reigning pitch-count champ.
— Jayson Starkさん (@jaysonst) 6月 2, 2012
この「134球を投げてのノーヒット・ノーラン達成」という球数の多さが、いかにヨハン・サンタナが故障に苦しんできたかという証でもあるだけに、かえって「誇らしい数字」と、彼の偉業をたたえたくなる。
サンタナは、もともとジャスティン・バーランダーのような100マイルを投げられる速球派ではなく、4シームとチェンジアップの緩急でかわしていくタイプだが、それでも、サイ・ヤング賞を2度獲ったミネソタ時代には93マイル程度のスピードボールは投げていた。
だが、メッツ移籍以降は、膝、肘、肩と、絶え間ない故障に悩まされて、2011年などは一度も投げられず、このゲームでも、4シームのスピードは88マイルしかなかった。
それだけに、今回の快挙には涙が出る。
ニューヨーク・メッツ創設は、1962年。
既に書いたように、例の「1958年のドジャースとジャイアンツ西海岸移転」で、ニューヨークに存在する球団がヤンキースだけになってしまったとき、急遽つくられた球団だ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:「1958年の西海岸」 特別な年、特別な場所。
メッツ創設に尽力したのは、弁護士ウィリアム・A・シェイで、1964年に本拠地ができたときには、シェイ・スタジアムと、彼の名前がつけられた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年3月21日、1958年ドジャース、ジャイアンツ西海岸移転に始まる「ボールパーク・ドミノ」 (3)キャンドルスティック・パーク、ドジャー・スタジアム、シェイ・スタジアムの開場
メッツのチームカラーのうち、青はドジャース、黒とオレンジはジャイアンツのチームカラーから取った、という有名なエピソードも、要するに、「ニューヨークから去ったドジャースとジャイアンツのファンを、新球団メッツのファン層として取り込みたいというマーケティング的な思惑」からきたものだ。
1962年の創設以降、しばらくお荷物球団と言われたメッツだが、ミラクルメッツと呼ばれるようになったのは、1967年に入団し1977年まで在籍、メッツでサイ・ヤング賞を3回も受賞した殿堂入り右腕トム・シーバーや、シーバーと同じ67年に入団し78年まで在籍した左腕ジェリー・クーズマンの活躍による。
トム・シーバーは、1978年6月16日に、ヨハン・サンタナと同じセントルイス戦でキャリア唯一のノーヒットノーランを達成しているが、このときシーバーは1977年に移籍していたシンシナティの所属選手で、メッツでの達成ではない。
(ちなみに、トム・シーバーがノーヒッター達成した時のシンシナティのラインナップは、1番ピート・ローズ、2番ケン・グリフィー・シニア、3番ジョー・モーガン、など、錚々たる顔ぶれ)
June 16, 1978 St. Louis Cardinals at Cincinnati Reds Play by Play and Box Score - Baseball-Reference.com
怪我を乗り越え、88マイルしか出ないスピードボールとチェンジアップだけで達成したノーヒット・ノーラン。
ヨハン・サンタナに心からの拍手を贈りたい。