June 09, 2012
注意してほしいのは、以下に示す話が、アンパイアの判定がいかにいい加減でブレるか、というサンプルを残す目的で書くのではないことだ。肩を壊して球速の落ちたメッツ出身のジェイソン・バルガスもそうだが、様々な理由によって球威が失われたピッチャーにとって、「バッターのインコースを突く」こと、そしてコントロールが、いかに生命線であるかを示しておきたいだけのことだ。
サブウェイシリーズは、もちろん今でこそインターリーグのヤンキース対メッツ戦をさすわけだが、歴史的にみるなら、かつてニューヨークに本拠地を置いていたチームといえば、1958年に西海岸に移転したドジャース、またはジャイアンツなわけで、細かいことを言わせてもらえば、本来のニューヨーク対決は、ドジャースかジャイアンツがかつての故郷ニューヨークに戻ってきてヤンキースとゲームをやることのほうが、よほど由緒がある、という部分がなくもない。(現実には、黒田とラッセル・マーティンの元ドジャースコンビが、ヤンキース側のバッテリーだったりした)
特に、20世紀初頭にヤンキースとの間で本拠地ポロ・グラウンズの使用をめぐるイザコザのあったジャイアンツが、ニューヨークに戻ってきてゲームをやるのは、なにか1世紀にもわたる因縁試合じみていて面白い(笑)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年3月21日、1958年ドジャース、ジャイアンツ西海岸移転に始まる「ボールパーク・ドミノ」 (1)エベッツ・フィールド、ポロ・グラウンズの閉場
まぁ、そんな話はともかく。
シティ・フィールドでの前の登板でノーヒット・ノーランを達成し、サブウェイシリーズに臨んだメッツ先発ヨハン・サンタナは、2回にロビンソン・カノーに2ランを浴びてリードを許したものの、3回には立ち直って先頭打者カーティス・グランダーソンをインコースのストレートで見逃し三振、次のマーク・テシェイラも同じくインコースの球で内野ゴロにしとめ、3人目のアレックス・ロドリゲスを1-2と追い込んで、またもやインコース一杯に90マイルのストレートを投げて、自信があったのだろう、ダグアウトに帰りかけた。
New York Mets at New York Yankees - June 8, 2012 | MLB.com Classic
だが球審Chris Guccione(クリス・グッチョーネ。同名のオーストラリア人のテニスプレーヤーとは別人)の判定は、「ボール」。
MLBの右バッターの典型的なストライクゾーンは、インコース、アウトコースともに、ルールブック上のゾーンからボール1個分くらい広いわけだが、毎度おなじみBrooks Baseballのデータでみると、たしかにこの球、ほんのわずかだが、内側に外れている。
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool
だが、上の図で、赤い円をつけて示した部分を見てもらうと、緑色の▲(サンタナの投球のうち、見逃された球で「ボール」判定の球)がゾーン内、あるいはゾーンぎりぎりに点在していることでわかるように、今日の球審Chris Guccioneのストライクゾーンは、ストライクゾーン一杯の球はほとんとストライクコールしなかった。(同様に、ヤンキース先発黒田の左バッターのアウトコース一杯のストライクとも思えるギリギリ球も、ほとんど「ボール判定」されていた)
4球目のギリギリの球をボール判定され、カウントが2-2になって、サンタナはどうしたか。
4シームをもう少しインコースに寄せて、ゾーン内に決まるストライクを投げたのである。
結果、Aロッドはシングルヒット。
サンタナはその後、
カノーに2本目の2ランを打たれて崩れた。
ニック・スウィッシャー、ソロホームラン。
アンドリュー・ジョーンズ、ソロホームラン。
たった1球。されど1球。
怖いものだ。
特に、スウィッシャーに打たれたホームランは、インコースの「ルールブック上のストライクゾーン一杯」に4シームを投げて打たれたホームランだけに、悲哀がある。
だが、たとえ、インコース一杯に自信をもって投げた球を、ストライクゾーンの狭い球審にボール判定されてしまったからといって、怪我で球速が失われているヴェテラン投手としては、バッターをかわすために、勇気を振り絞ってインコースに投げこまないわけにはいかないのである。
いわば「インコースへの義務感」である。
ノーヒット・ノーランなどの大記録の後の登板は、えてして打たれまくるとか、そんなくだらない通俗的な話はどうでもいい。
きわどいところをとってくれない球審に当たったジェイソン・バルガスが打たれまくるときと、まったく同じ現象を見るようで、繰り返しホームランを打たれては、息を大きく吐いて自分を落ち着かせようとするサンタナを見るのはなかなかに辛いわけだが、これも今のサンタナの置かれた現状としてはしょうがないのである。ここでアウトコースに逃げるようでは、この先の彼のキャリアは先細ってしまう。
どんな辛いときでも、仕事に出かけていく。
それが「父ちゃん」というものだ。
次回の登板でも、そしらぬ顔をしてバッターのインコースをガンガン突きまくるヨハン・サンタナを見たい。
サブウェイシリーズは、もちろん今でこそインターリーグのヤンキース対メッツ戦をさすわけだが、歴史的にみるなら、かつてニューヨークに本拠地を置いていたチームといえば、1958年に西海岸に移転したドジャース、またはジャイアンツなわけで、細かいことを言わせてもらえば、本来のニューヨーク対決は、ドジャースかジャイアンツがかつての故郷ニューヨークに戻ってきてヤンキースとゲームをやることのほうが、よほど由緒がある、という部分がなくもない。(現実には、黒田とラッセル・マーティンの元ドジャースコンビが、ヤンキース側のバッテリーだったりした)
特に、20世紀初頭にヤンキースとの間で本拠地ポロ・グラウンズの使用をめぐるイザコザのあったジャイアンツが、ニューヨークに戻ってきてゲームをやるのは、なにか1世紀にもわたる因縁試合じみていて面白い(笑)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年3月21日、1958年ドジャース、ジャイアンツ西海岸移転に始まる「ボールパーク・ドミノ」 (1)エベッツ・フィールド、ポロ・グラウンズの閉場
まぁ、そんな話はともかく。
シティ・フィールドでの前の登板でノーヒット・ノーランを達成し、サブウェイシリーズに臨んだメッツ先発ヨハン・サンタナは、2回にロビンソン・カノーに2ランを浴びてリードを許したものの、3回には立ち直って先頭打者カーティス・グランダーソンをインコースのストレートで見逃し三振、次のマーク・テシェイラも同じくインコースの球で内野ゴロにしとめ、3人目のアレックス・ロドリゲスを1-2と追い込んで、またもやインコース一杯に90マイルのストレートを投げて、自信があったのだろう、ダグアウトに帰りかけた。
New York Mets at New York Yankees - June 8, 2012 | MLB.com Classic
だが球審Chris Guccione(クリス・グッチョーネ。同名のオーストラリア人のテニスプレーヤーとは別人)の判定は、「ボール」。
MLBの右バッターの典型的なストライクゾーンは、インコース、アウトコースともに、ルールブック上のゾーンからボール1個分くらい広いわけだが、毎度おなじみBrooks Baseballのデータでみると、たしかにこの球、ほんのわずかだが、内側に外れている。
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool
だが、上の図で、赤い円をつけて示した部分を見てもらうと、緑色の▲(サンタナの投球のうち、見逃された球で「ボール」判定の球)がゾーン内、あるいはゾーンぎりぎりに点在していることでわかるように、今日の球審Chris Guccioneのストライクゾーンは、ストライクゾーン一杯の球はほとんとストライクコールしなかった。(同様に、ヤンキース先発黒田の左バッターのアウトコース一杯のストライクとも思えるギリギリ球も、ほとんど「ボール判定」されていた)
4球目のギリギリの球をボール判定され、カウントが2-2になって、サンタナはどうしたか。
4シームをもう少しインコースに寄せて、ゾーン内に決まるストライクを投げたのである。
結果、Aロッドはシングルヒット。
サンタナはその後、
カノーに2本目の2ランを打たれて崩れた。
ニック・スウィッシャー、ソロホームラン。
アンドリュー・ジョーンズ、ソロホームラン。
たった1球。されど1球。
怖いものだ。
特に、スウィッシャーに打たれたホームランは、インコースの「ルールブック上のストライクゾーン一杯」に4シームを投げて打たれたホームランだけに、悲哀がある。
だが、たとえ、インコース一杯に自信をもって投げた球を、ストライクゾーンの狭い球審にボール判定されてしまったからといって、怪我で球速が失われているヴェテラン投手としては、バッターをかわすために、勇気を振り絞ってインコースに投げこまないわけにはいかないのである。
いわば「インコースへの義務感」である。
ノーヒット・ノーランなどの大記録の後の登板は、えてして打たれまくるとか、そんなくだらない通俗的な話はどうでもいい。
きわどいところをとってくれない球審に当たったジェイソン・バルガスが打たれまくるときと、まったく同じ現象を見るようで、繰り返しホームランを打たれては、息を大きく吐いて自分を落ち着かせようとするサンタナを見るのはなかなかに辛いわけだが、これも今のサンタナの置かれた現状としてはしょうがないのである。ここでアウトコースに逃げるようでは、この先の彼のキャリアは先細ってしまう。
どんな辛いときでも、仕事に出かけていく。
それが「父ちゃん」というものだ。
次回の登板でも、そしらぬ顔をしてバッターのインコースをガンガン突きまくるヨハン・サンタナを見たい。