June 30, 2012

ワシントン州スポケーンは、セーフコ(A)を起点にすると、高速道路I-90を東へ280マイル、約4時間半の道のりにある街だ。(ブログ注:スポケーンと長年の交流がある姉妹都市、兵庫県西宮市では、主に「スポーケン」と、少し違う表記が採用されている)


View Larger Map


野球界でスポケーンといえば、ストットルマイヤー親子が有名だ。

父親メル・ストットルマイヤー(=メル・シニア)は、ヤンキースで164勝を挙げ、オールスターに5回出場している名右腕。その後ヤンキースで投手コーチをつとめ(1996-2005)、のちに、2008年ジョン・マクレーン監督時代のシアトル・マリナーズで1年だけ投手コーチをつとめた。(メル・シニアは1977年にマリナーズのroving instructor、つまり巡回コーチ職にあり、2008年が最初のシアトルでのコーチ就任ではない)

Mel StottlemyreTodd Stottlemyre(左)父親メル
(右)息子トッド

オヤジと息子の写真を比べる。連続写真かと思うほど、あまりにもたたずまいが似ている(笑)

トッド・ストットルマイヤーは、1965年ドラフト1位(全体3位)でトロントに入団し、138勝を挙げ、ルー・ゲーリッグ賞なども受賞した。(引退後、あのメリル・リンチで証券アナリストをやったという異色の経歴の持ち主でもある)
この親子2人の勝利数は302勝で、これはMLB記録。また、親子でワールドシリーズに出ていることも、Jim BagbyとJim Bagby Jr.に続くMLBで2例目という珍しい記録。

Baseball: Fathers and Sons - Fun Facts, Questions, Answers, Information

Todd Stottlemyre Statistics and History - Baseball-Reference.com



スポケーンで、ストットルマイヤー親子以上に有名な「親子」といえば、「父の日」の発案者として知られているソノラ・スマート・ドット(Sonora Smart Dodd)と、その父だろう。

Sonora Smart Dodd
ソノラは、母親の死後、彼女を男手1つで自分を育ててくれた父親に感謝するため、教会の牧師にお願いして父の誕生月である6月に礼拝をしてもらった。式典は翌年1910年6月19日に行われたが、このことがきっかけで、いわゆる「父の日」が生まれ、以来、世界中に「父の日」を祝う習慣が広まった、といわれている。
(世界の数多くの国では、「父の日」は6月の第3日曜だが、違う月、違う日に「父の日」を制定している国もたくさんある 父の日 - Wikipedia



日本野球界で最も有名な「親子」、といえば、星一徹・星飛雄馬親子だろう(笑)(梶原一騎原作 川崎のぼる作画)

星一徹氏は、巨人での現役時代、右投げの三塁手で、背番号は18という設定。第二次大戦での肩の負傷により送球能力を喪失し、失意のドン底に落ちるが、妻・春江さんの励ましで再起を果たし、巨人復帰。肩の故障からくる送球の遅さを補うため、一塁へ走る打者走者の目前を横切ってから急激に曲がって一塁手のミットにおさまる、「魔送球」なる奇手を編み出した、と資料にある。
現役引退後は酒浸りの荒れた日々を送ることなるが、それでも野球への未練を断ち切れず、星一徹氏は、妻・春江さんの死を経て、その「行き場を失った野球への情熱」を、息子・飛雄馬にぶつけるようになり、異常なまでのスパルタ教育で息子に野球をたたきこむ。

星一徹・星飛雄馬親子

矢吹ジョー

巨人の星』(1966-1971)の原作者梶原一騎氏が、同時期に、ボクシング漫画の名作『あしたのジョー』(1967-1973)の原作も書いていたことは非常に有名な話だが、違うスポーツの、それも、これほど対照的な設定の2人の主人公のストーリーを、ひとりの同じ原作者が書いていたのだから、これはもう梶原一騎氏の類まれな才能のなせる技としか言いようがない。


ちなみに、
星飛雄馬と、矢吹ジョー
この2人の人物の「最も違う点」は、なんだろう?

梶原一騎作品の主人公とそのライバルは、たいていの場合、片方の親を亡くしているか、両親ともいない、あるいは捨てられた、という設定が多く、孤児の場合は師匠が親代わりになるという設定がお約束、とは、よくいわれる逸話ではあるが、星飛雄馬と矢吹ジョー、この2人の比較に関しては「決定的な違い」がある。

父親の存在」である。

もし、星飛雄馬に父親・星一徹氏がいなかったら、ストーリーはまるで違うものになっていただろうし、また『あしたのジョー』の矢吹ジョーの父親が生きていて作中に登場していたりしたら、これまた、まるでニュアンスの違うストーリーになってしまっただろう。


かつてこのブログで、アカデミー賞やエミー賞を受賞している映像作家ケン・バーンズのMLBに関するドキュメンタリー作品 ”Baseball”について、こんなことを書いた。

(MLBの野球は)
両親から子供に大切に伝えられてきた
「家族の文化」である


ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月10日、"The Tenth Inning"後編の語る「イチロー」。あるいは「アラスカのキング・サーモンはなぜ野球中継を見ないのか?」という考察。

Baseball: A Film by Ken Burns (Includes The Tenth Inning)Baseball: A Film by Ken Burns (Includes The Tenth Inning)


梶原一騎氏が、2人の主人公の置かれた境遇の違いについて、「父親のいる星飛雄馬」と、「両親ともいない矢吹ジョー」と設定したことについては、それが意図的なものか、それとも無意識にそうしただけなのか、そこまではわからない。
だが、スポ根マンガ特有の暑苦しさ(笑)や、見た目の絵柄の好き嫌いはともかく、「野球というスポーツにとっての『父親の存在』の大きさ」を考えると、ボクシングマンガにおいては父親の存在を描かなかった梶原氏が、こと野球マンガに関しては「父親と息子」というコンセプトを貫いていることは、野球というスポーツの本質のひとつを突いた慧眼だったのは間違いない。


プレーするにしても、あるいは観戦するにしても、野球というスポーツを楽しむ上で「父親という存在」がどんな決定的な位置を占めるのか? を考えると、
いまの時代のMLBで、アフリカ系アメリカ人プレーヤーが減少している理由のひとつを考える上で、重要なヒントがもたらされる

この次は、この10年で増加してきたアフリカ系アメリカ人の「父親の不在」と、MLBにおけるアフリカ系の減少の関係について書いてみる。


Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です

Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
Categories
ブログ内検索 by Google
ブログ内検索 by livedoor
記事検索
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month