June 22, 2012

このバカでかい画像は、何かというと、2012年のMLB各チームのドラフト収支だ(6月21日現在)。
「上手な買い物によって、予算枠以下でドラフト指名選手と契約できているチーム」ほど、上にチーム名が書かれている。まぁ、いってみれば、買い物上手ランキングみたいなものだと思えばいい。

この表の項目の見方は、次のような感じ。
Bonus Pool 「予算枠」 新労使協定下でチームが使うことを許されるドラフト予算総額の上限注1
Pool Spending 「確定された支出」 既に契約の終わった選手に支払う支出額。
Signed in Top 10 最も予算がかかる10巡目までの上位指名選手のうち、契約済みの人数
Signed Total 契約の終わった選手の総数
--------------------------------------------
+/− 「予算枠収支」。今シーズンのドラフト予算枠から、「既に契約した選手へ払う確定した支出」と、「まだ未契約の選手に予定している契約ボーナスなど、今後予定している支出」の、2つをまとめて引いた、そのチームの収支。

注1:新労使協定下では、10巡目までの指名選手に支払う「契約ボーナス」の金額の上限額が、それぞれの指名順位に応じて「推奨される契約金額」として非常に細かく決められている(スロット額)。
それら全ての「指名順位で決まるスロット額」を総合計した金額は、その球団が、その年のドラフトで使うことのできる予算総額の上限、すなわちBonus Poolとなる。
もし球団が実際に使った金の総額が、ドラフト予算の上限であるBonus Poolを超過(overage)すれば、超過額のBonus Poolに対する%によって、MLB機構から「課徴金」や「翌年以降の指名権剥奪」など、重いペナルティが課せられる

このリストで、上のほうに書かれているチーム=「黒字」=予算枠より実際の契約を安くあげることに成功した黒字チーム、下のほうに書かれているチーム=「赤字」=推奨される契約ボーナス額より割高な契約を行ったことによって、予算枠に超過が発生している赤字チーム、これが基本的な表の見方である。

未契約の指名選手がそれぞれのチームに少しずつ残っているから、ランキングはこれからも少しくらいの変動はありうるが、ドラフト指名選手との契約が大筋では終わりに近づきつつあることから、6月21日現在、この表の下のほうにチーム名のある球団、つまり、「あらかじめわかっていた予算枠を、割高な契約を連発したせいで既に使い果たしてしまって、超過が発生し、ペナルティ発生が予想される球団」は、ほぼ確定しつつある

Baseball Americaによる2012ドラフト収支ランキング(6月21日現在)
出典BaseballAmerica.com: Draft: Draft Database


試しに、Seattle Marinersという項目を探してみる。
すると、一番下にある。

もう一度言おうか?
一番下
つまり割高な買い物によって、与えられた予算枠を既に使い果たしているMLB最大の赤字チームだ。わかりやすくていいだろう?(笑)
MLB全30球団のうち、こうした予算枠以上にドラフトで金を散財している超過チーム自体、たった「4チーム」しかない。(サンフランシスコ、セントルイス、ボストン、シアトル)
そして、
割高な買い物をして100万ドル以上もの予算枠超過を背負いこんでいる「ドラフト下手なチーム」は、MLB全30球団で、シアトル・マリナーズ、たった1チームだけ、しかない


チーム名をクリックすると、チーム別の契約の明細が出てくる。シアトル・マリナーズのドラフト収支は、6月21日現在、以下のようになっている。

 予算枠      $8,223,400
 既に使った支出 $3,820,200
--------------------------
 差し引き     $4,403,200


なんだよ! まだ予算枠440万ドルも残ってるじゃないか!
Baseball America、嘘つきやがって。

などと思っては、バカにされるだけだ(笑)
以下の表をじっくり見たまえ。大事な部分が抜けているのが、わかるはずだ。

マリナーズ2012ドラフト収支(Baseball America 6月21日現在)

出典BaseballAmerica.com: Draft: Draft Database


そう。
1巡目指名のマイク・ズニーノの名前が太字になっていない。
つまり、最も金のかかる1巡目指名選手と、まだ契約できていない、のである。肝心の1巡目指名選手と契約できてもいないうちに、このチームは、既に予算枠820万ドルのうち、約半分にもあたる380万ドル以上の予算枠を使いこんでしまったのである。

仮にマイク・ズニーノとの契約を、スロット額どおり、520万ドルで終えるとして、さきほどの計算を、再度やり直そう。

 予算枠              $8,223,400
 既に使った支出         $3,820,200
 ズニーノ契約に必要な支出 $5,200,000
-----------------------------------------
 差し引き        マイナス $796,800


仮にマイク・ズニーノとの契約を、推奨額の520万ドルで終えるとしても、約80万ドルの超過が発生することがわかる。(もちろん、ズニーノとの契約にもっと金がかかれば、それだけシアトル・マリナーズの超過額は増える)

だが、もちろん、必要な費用は、ズニーノとの520万ドルの巨額契約ボーナス以外にも、こまごまと存在している。10位以下の指名選手に10万ドル以上払うかもしれない。
だから、もろもろの支出を加味した上で、Baseball Americaは、現在のシアトル・マリナーズのドラフト予算の収支を、「マイナス 1,422,300ドル」、つまり、140万ドル以上のBonus Pool超過が発生している、と踏んでいるわけだ。

この大赤字ドラフトの原因は、どうやら、
1位指名を除く、契約の決まった10位まであたりの指名選手に対して支払う契約ボーナスが、選手ひとりあたり「数10万ドル」、日本円にして数千万単位と、指名順位に応じて細かく決まる推奨契約金額(スロット額)からして、あまりにも over slot、つまり、推奨契約金額よりあまりにも高い金額で契約し過ぎていること にある。
つまり、
最も重要で金のかかる買い物である1巡目指名選手との契約をまだできてもいないのに、2巡目から10巡目あたりの選手で割高な買い物ばかりしていたら、いつのまにか財布に既に金が無くなって、それどころか、予算枠をかなりオーバーして大赤字になっていた わけだ。

シアトル・マリナーズ、ペナルティ必至の情勢である(笑)
予算枠820万ドルに対する142万ドルの超過というのは、なんと17%以上もの超過にあたるから、このままズニーノと500万ドル超の契約をするだけでも、シアトル・マリナーズは最高レベルのペナルティを与えられ、課徴金100%に加え、2013年と2014年の2年間の1巡目指名権を連続して剥奪されることになる

また、当然の話だが、
Bonus Pool超過の重いペナルティを避けるために、マイク・ズニーノに安すぎる契約金を提示したことで、ズニーノとの契約が御破算になれば、ズレンシックが、新労使協定を知らないかのようなバカ馬鹿しい割高契約を連発したおかげで、今年の貴重な1巡目指名権をゴミ箱に捨てることになる

逆に、
もし、なにかにつけて自分のミスを認めたがらないズレンシックが、Bonus Pool超過の重いペナルティを覚悟した上で、マイク・ズニーノに520万ドル以上の契約を提示して無理矢理契約すると、チームには課徴金100%が来るのに加えて、来年、再来年、2つの1巡目指名権をゴミ箱に捨てることになる

新労使協定下でのドラフトのペナルティ

5%以内の超過 超過額の75%の課徴金
5-10% 課徴金75%、翌年の1巡目指名権剥奪
10-15% 課徴金100%、翌年の1巡目+2巡目指名権剥奪
15%以上 課徴金100%、翌2年の1巡目指名権剥奪

0-5% 75% tax on overage
5-10% 75% tax on overage and loss of 1st round pick
10-15% 100% tax on overage and loss of 1st and 2nd round picks
15%+ 100% tax on overage and loss of 1st round picks in next two drafts
MLB, MLBPA reach new five-year labor agreement | MLB.com: News


やり手のGMがシアトルにいるって?
は? だれのこと? (笑)
再建?(笑)


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