September 16, 2012

実は、このところヤンキースの試合を見ていなかった。
理由は、ヤンキースの「負け方のワンパターンさ」が性に合わないからだ。


7月末から見始めたヤンキース戦が面白くなくなってきた理由は、もちろんイチローがスタメン出場してない試合があるから、という、わかりやすい理由があるのもたしかだが、それ以上に大きいのは、今シーズンのヤンキースのゲームの中身が「勝つにしても負けるにしても、あまりにワンパターン」だからだ。

もちろん、ヤンキースはもともと大味な勝ち方をするチームではある。

だが、かつての強いヤンキース打線は、ホームランだけの打線ではなくて、案外四球とシングルヒットで繋げていく攻撃もできる「しつこい打線」でもあった。9月9日のボルチモア戦4回表にヒットと四球で延々と満塁をキープして4点をとったが、ああいう野球は、かつてのヤンキースの「おハコ」のひとつでもあった。
また、「ひたすら打ち勝っていくワイルドな野球」と、「ホームランは打つが、ワンパターンな負けばかりが増え続けていく弱い野球」とでは、まるで意味が違う。
策を尽くして負けるのはしょうがない。だが、負けがこむ理由というのは、たいていの場合「欠点に修正を加えるのが遅れること」からくる。何試合も同じパターンで負け続けるのは、弱いヤンキースだ。相手をきちんと研究しないで負け続ける「頭を使わない、雑な野球」を見させられ続けると、正直、飽きてくる。



もしいま、ヤンキースの負けパターンと勝ちパターンを短い言葉で表すなら、「3対6で負け、3対2で勝つ」、ということになる。(もちろん、なにも実際に3対6で負けてばかり、3対1で勝ってばかりなわけではない。あくまで、だいたい2対5とか、3対6で負けるとか、3対1、4対2で勝っているとか、そういう「たとえ話」だ)

ポイントのひとつは、長打を打ちまくって勝ってきたと「思われがち」なヤンキースの得点が、実は「常に3点どまり程度の攻撃力しかない」ということだ。
爆発的な得点力という「イメージ」をもたれやすいヤンキースだが、その得点力は「イメージ」よりもずっと低い。印象だけで語ってはいけない。得点力が思ったほど無いために、ヤンキースはいつのまにか「ゲームの勝ち負けは、投手、特にブルペン投手次第で決まる」という、なんともふぬけた消極的なチームになっている
今のヤンキースは、たまにホームランは打てるものの、逆に言えば、ただそれだけのことであり、投打の根本的なチカラに欠け、なおかつチグハグな、消極的チームだ。
ホームランなんてものは、思っているよりずっと出現率が低い。まして打率2割ちょっとの「低打率偽物スラッガー」を並べて、たまにホームランを打つのを待っているような消極的な野球ばかりしていたら、2位とのゲーム差が何十ゲームあろうと、追いつかれるに決まっている。
(いまのヤンキースと同じように、ホームランか四球かという単調で消極的なバッティングを推奨して得点力が著しく低いタンパベイが地区上位にぶら下がっていられたのは、単に投手陣が優秀だったからという、ただそれだけの理由)


ヤンキースの「負けパターン」

失点面

先発ピッチャーは、それがサバシアであれ、黒田であれ、6回または7回を「4失点」で終わる。
その後に出てくるコディ・エプリーがソロ・ホームランを打たれて、さらに1失点。次のイニングでジョバ・チェンバレンがさらに1失点して、ヤンキースの失点は、合計6になる。

黒田というピッチャーに、高評価を与える人は多い。
たぶん彼の防御率の低さを見て判断しているのだろうが、ブログ主は彼の防御率を信用してない。
黒田は長いイニングを投げられる、いわゆる「イニング・イーター」だから、防御率だけを見ると、実態より低めの数字が出やすい。
だが、「7回4失点」では、ヤンキースは現実のゲームで勝てないのだ。特にクロスゲームで、疲れの出てくる試合中盤に、不用意な失投による3点目、4点目の失点が痛すぎる。

サバシアも含めて、「7回4失点」の大投手に大金を払ってペイロールを窮屈にしたことで、結果的にブルペンや下位打線に予算をかけられず、質が下がるのは、今の「得点力がない上に、ブルペン投手陣が崩壊している、弱いヤンキース」には向かない選手構成だ。
これでは、ボルチモアのような新興チームに勝てない。
彼らのような若いチームは、若くて給料の安い先発投手たちが「5回3失点」くらいで短く登板を終えたとしても、打線の元気さとブルペンピッチャーの優秀さのために、ゲームには余裕で勝ててしまうからだ。

ヤンキースでは、7月から8月にかけて登板すれば必ず失点していた無能なブルペン投手、エプリーが9月半ばにようやくモップ(=敗戦処理)に回されたことで、9月の「ゲーム終盤に失点して、負けゲームを演出するピッチャー」はロバートソンに代わった。
負けは、サバシアや黒田など、先発投手につくこともあるが、ブルペン投手につくこともある。だから、いかにヤンキースのブルペンが崩壊しているかは、7月以降の負け投手を見てもわかる。
7月末にはエプリーが何度も負け投手になっていた。(7月20日オークランド戦、7月22日オークランド戦)それが、9月はロバートソンになっている。(9月3日タンパベイ戦、9月6日ボルチモア戦、9月11日ボストン戦
彼らが負け投手になったのは、どれもこれも地区優勝にかかわる重要なゲームばかりだ。

この2人のブルペン投手が「相手チームに狙い打ちされている理由」は、ハッキリしている。「球種の少なさ」だ。
エプリーは、「アウトコースにスライダーを投げるだけ」という、なんともワンパターンなピッチャーで、よくこの程度のピッチャーを優勝争いをしているシーズン終盤に使うもんだとしか思えないレベルの投手だ。打てないほうが、むしろどうかしている。
ロバートソンは、いい投手ではある。だが、残念なことに彼にはカットボールしか球種がない。ラッセル・マーティンと組めば、一定のコースにカットボールばかりが行くのだから、打たれないわけがない。
ヤンキースが悠然と走っていた首位の座を明け渡しかねない事態に陥った理由のひとつは、打てない上に単調で無策なバッティングと、ラッセル・マーティンの単調なリード以外にも、球種の少ない単調なブルペン投手に頼りきっていた投手起用のミスにも原因がある。


得点面

ヤンキースが、1試合で最低限期待できる基礎点」は、「2点」だ。子供でもわかる。(これがわからないでゲームを観ているやつは、単なる暇なアホだ)
ゲーム中盤に、グランダーソン(または他の誰か)のソロ・ホームラン。そしてジーターの放つタイムリー(またはソロ・ホームラン)。
毎試合期待できるのは、たったこれだけだ。あとは、グランディのソロ・ホームランが、四球のランナーのいる2ランになったりするだけの違いでしかない。

あと1点は、ゴニョゴニョっと生まれてくる。「その日かぎりの1点」だ。たいていの場合は、下位打線のヒット(または四球)、ジーターのシングルヒットで作ったチャンスを、2番か3番打者が、犠牲フライ or 内野ゴロ or ダブルプレーの間の得点か何かでランナーを帰す。(そうでなければグランダーソン以外の誰かのマグレっぽいソロ・ホームラン)
なんやかんやで、都合、3点。わかりやすい。

あまりニューヨークのメディアはハッキリ言わないように思うが、基本的に、今のヤンキースにおいては、「ホームランが打てること」と、「得点力の高さ」が混同されている、と思う。

いくらホームランが打てて、チームOPSが高いからといっても、チームは勝てるわけでもなければ、強いチームになれるわけでもない
いくらソロホームランを2本ばかり打とうが、負けるものは負ける。そして、負けたら、この大味なチームには意味がなくなる。言うまでもなく、9月に大事なことは「勝つこと」であって、勝てなければ、いくらソロ・ホームランを1本や2本打とうが、何の意味もない。
Damejima's HARDBALL:指標のデタラメさ(OPS、SLG、パークファクターなど)

結果
6対3で、ヤンキースの負け。



なぜヤンキースの負けゲームが、こうもワンパターンにになるのか。ヤンキースの「3対6 負けパターン」の理由を、以下に挙げてみた。

失点面

失点面の主原因は、ヤンキース・バッテリーが、「相手バッターの弱点を、ピッチャーの配球にほとんど反映していないこと」にある。
特にラッセル・マーティンは、相手バッターの得意・不得意にまるで関係なく、どんなバッターであっても、同じパターンの配球を投手に要求している。(特にランナーのいる場面の弱気さは酷い)
簡単にいえば、これは「頭を使わない野球」である。失点が防げるわけがない。

得点面

1試合に2本でるかどうかという、一部のバッターのホームランだけに頼り切った打線。いくらチームの総ホームラン数が多くても、今のヤンキースの得点力は、実は、かなり低い。


マーティンがキャッチャーのときの配球のワンパターンさについては、既に何度も書いている。
マーティンの配球は、明らかに「アウトコースに片寄り過ぎている」。特に、ランナーが出た後は、まず間違いなく、「アウトコースのスライダーの連投」に走る。これだけ打たれているのに、マーティンは自分の配球パターンの修正ができていない。(このところスチュアートの出番が増えてきているが、それはもちろん「いいこと」だ)

スカウティングの非常に発達しているMLBにおいては、ヤンキースがこんな単純な配球ばかりしていることに気がつかないチームは無い。今のヤンキースのピッチャーは、相手チームにとって「いいカモ」であり、「良いお客さん」だ。

ドジャース時代のイメージがあるせいか、マーティンは、正直もっと上手いキャッチャーだとばかり思いこんでいた。
だが、ヤンキース野球を1ヶ月ちょっとの間、ベッタリ見させてもらって、その先入観が完全に間違っていたことがわかった。「ラッセル・マーティンの考える配球パターンは、かつてのダメ捕手城島と同レベル」と公言して、さしつかえない。(おまけに、マーティンの出すダメ・サインに、ヤンキースの若くて自信の無いブルペンピッチャーたちは、ほとんど首を振らないときている。9月9日ボルチモア戦でチェンバレンが一度首を振って、打者のインコース攻めに転じて快投を見せたが、すぐ元のアウトコース連投パターンに戻してしまった。本当にもったいない)

たとえラッセル・マーティンのヤンキースバッテリーが、バッターをカウントで追い込んだとしても、カウント1-2から投げるコースも、球種も、だいたい事前に「アウトコースの釣り球の、ボールになるスライダーが来る」ことは、子供でもわかる。だから、バッターに余裕をもって釣り球を見逃される
いくら打者を追い込んでも、ストライクを投げず、ボールになる釣り球ばかり連投するから、バッターに見逃されれば、当然カウントは苦しくなる。
苦しくなれば、ストライクゾーン内に投げざるをえなくなって、おそるおそる球を置きにいったアウトコースのストレートやスライダーを狙い打ちされる。

ワンパターンも、いいところだ。

こんな配球じゃ、ピッチャーの球数がいたずらに増えるばかりで、まったく意味が無いし、ブルペンピッチャーに自信もつかない。

たとえ次にどんなボールが来るのか、ある程度わかっていたとしても、弱いチームの若いバッターなら打ち損じてくれることも少なくない。だが、強いチームの経験を積んだ主軸打者には、そうはいかない。相手チームの主軸バッターの打撃傾向をまったく把握せず配球しているとしか思えないゲームが多すぎる。

スカウティングに基づかない
ヤンキースの配球戦略の失敗例

・アウトコースばかり待っているのがわかりきっているホワイトソックス打線に対して、ケビン・ユーキリスアダム・ダンに、アウトコースの球ばかり投げて痛打される
Damejima's HARDBALL:2012年8月20日、アウトコースの球で逃げようとする癖がついてしまっているヤンキースバッテリー。不器用な打者が「腕を伸ばしたままフルスイングできるアウトコース」だけ待っているホワイトソックス。
・待球型チームの多いア・リーグ東地区で、唯一、早いカウントから打ってくることが通例のボルチモア打線に、早いカウントで勝負を仕掛ける(これも黒田投手の例で恐縮だが、彼は負けたボルチモア戦の試合後、「球数が少なかったのは良かった」などと間違った発言をしている。だがボルチモア戦に限っては、「球数が少ないことが良いこととは限らない」。認識が根本的に間違っている)
・得意コース、得意球種だけを狙って長打を打つが低打率のボルチモアのマーク・レイノルズに、得意の「インハイ」「ストレート」を連投
・チームが崩壊して、打てるバッターのいなくなったボストン戦で、唯一打たれそうなジャコビー・エルズベリーに勝負を挑んで、サヨナラ負け


マーク・レイノルズの例を挙げてみる。

彼が得意なのは、コースでは「高め」。球種ではなんといっても「ストレート」と「カーブ」だ。カーブのようなブレーキングボールを打つ技術は、ボルチモアで最も上手い。逆に苦手なのは、「低め」と、スライダー、チェンジアップといった、いわゆる「オフ・スピード」の球だ。
これらの条件を頭に入れて、ヤンキースのピッチャーがホームランを打たれ続けた配球が、いかに馬鹿馬鹿しいものだったか、データを追いかけて見てみるといいと思う。ここに挙げたのはほんの一例に過ぎない。
マーク・レイノルズにホームランを打たれ続けていた間、ヤンキースバッテリーがどういう配球をしていたか、レイノルズの得意コースや得意球種と照らし合わせれるだけでも、なぜあれほどホームランを打たれ続けたか、わかるはずだ。

2012マーク・レイノルズのホットゾーン
Mark Reynolds Hot Zone | Baltimore Orioles | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN

ラッセル・マーティンは、普段あれほどワンパターンに「アウトコースの低めのスライダー連投」をやり続けているクセに、ホームラン連発されているマーク・レイノルズに限っては、彼の大得意な「インハイ ストレート」を投げ続けていたのだから、意味がわからない。

ホームラン時のレイノルズへの「インハイ
9月2日 5回表(投手:ヒューズ)
ホームラン時のレイノルズ(2012年9月2日5回表)
Baltimore Orioles at New York Yankees - September 2, 2012 | MLB.com Gameday

ホームラン時のレイノルズへの「インハイ ストレート連投
9月6日 6回裏 (投手:チェンバレン)
ホームラン時のレイノルズ(2012年9月6日6回裏)
New York Yankees at Baltimore Orioles - September 6, 2012 | MLB.com Classic

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凡退時のレイノルズへの「スライダー連投
9月9日4回裏(投手:チェンバレン)
凡退時のレイノルズ(2012年9月9日4回裏)
New York Yankees at Baltimore Orioles - September 9, 2012 | MLB.com Gameday


おまけ:バントについて

下位打線の誰かが、数少ないノーアウトのランナーとして出塁すると、9月に入って「上位打線にはビッグボール、下位打線にはスモールボール」という「風変わりな実験」をしている監督ジョー・ジラルディは、たとえイニングがゲーム序盤の3回であっても、「初球バント」をやらせたがる。

だが、ビッグボール推奨チームのバッターには、メンタルと技術面の両方で「準備」がされてない。だからたいていのバントは失敗する。
そこでジラルディはどうするかというと、常套手段として、「初球バント失敗の次の球は、ほぼ必ず、ヒッティングに切り替える」のだ。

だが、このバントパターンも、相手チームのバッテリーはとっくにスカウティング済みなのだ。

だから、相手チームの投手は、バント失敗の次の2球目には、ほぼ必ずといっていいほど、「大きく曲がるアウトコースの変化球」を投げてくる。
バントを失敗したバッターは、力んでしまって空振り。そして、追い込まれて凡退。

高校野球ではないのだから、1球ごとにサインを変えたりするような大雑把なことをしても、それが実行できるチームと、できないチームがある。ビッグボールのヤンキースは明らかに後者である。それは例えばイチローの技術うんぬんの問題ではない。チームがそもそも、そういうことをやる雰囲気にないイニングと雰囲気の中で、突然バントを実行させても、うまくいくわけがない。

1球ごとにサインを変えるのが、「細かい野球」、「スモールボール」なのではない。むしろ、突然そんなことをやり出すのは、単に窮地に追い込まれた焦りを、相手チームに悟られるだけでしかない。

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