September 29, 2012

かつて、デレク・ジーターが3000安打を達成する前の時代の話だが、次に「3000安打」を達成するプレーヤーは誰か?、という予測について、達成するのがあらかじめわかっていたジーター以外に、ジョニー・デーモンの名前が筆頭に挙がる、などという、ある意味で「とても悠長な」時代があった。

だが今年、40歳のイヴァン・ロドリゲスが2844本で引退し、同じく40歳のチッパー・ジョーンズが3000本を達成しないまま2700本台で引退することが確実になり、さらに、かつて3000本達成に最も近い打者と思われていたジョニー・デーモンやウラジミール・ゲレーロの所属球団がなかなか決まらずプレータイムが減少する事態が起きたことで、これからの時代の「3000安打予想図」は、非常に大きく塗り替えられた。


当り前のことだが、「通算安打数が3000本に近づく」ということは、「その選手のキャリアが終盤にさしかかる」という意味だ。この大記録の達成は、キャリア終盤から引退までの厳しい道のりの過程でのみ、達成される

例外はない。

今から思えば、2000年代中期に行われていた3000安打達成者の予測は、プレーヤーの記録達成を決定的に阻む要素が数多く存在することを忘れているものが多く、予測としての現実味に乏しかったものが多かった。
というのも、「年齢」、「評価の低下によるプレータイム減少」、「大きな怪我による長期休養」など、3000安打達成を阻害する要素を、あまり考慮に入れて語ってなかったからだ。

これらの阻害要因は、特に30代後半のプレーヤーには、選手の不摂生による怪我を除けば、どれも逃げようにも逃れられない要素ばかりだ。


このブログでかつて、「38歳という年齢」が、「年齢による衰えの始まるキーポイント」と書いたことがある。
これまでのさまざまな名選手のスタッツを見るかぎり、たとえ30代後半まで活躍できた名選手であっても、38歳以降に37歳以前の成績が維持できた選手は少ないし、逆にいうと、3000安打が本当に達成できるかどうか、そして3000本を越えて、どこまでの高みに達することができるかは、実は「38歳以降の、衰えが目立ちだした時期に、どれだけヒットを打てたか」によって決まるのである。
球聖タイ・カッブも、ピート・ローズも、最晩年になってもかなりの数のヒットを打っている。また、今年38歳になるジーターが200安打を達成したことは、彼が不世出の才能の持ち主であることを証明している。

5人のホール・オブ・フェイマーが
「37歳以降」に打ったヒット数

キャリア通算ヒット数の多い選手ほど、「キャリア晩年のヒット数」も多い傾向がある。
5人のホール・オブ・フェイマーが37歳以降に打ったヒット数


近年、メディアの3000安打達成予測では、以下の最近の記事例でわかるとおり、イチローの37歳シーズンでの失速をふまえて、イチローを飛び越えて、予測の照準を、より年齢の若いアルバート・プーホールズミゲル・カブレラに修正しはじめている。
もしそれらの予測が正しいと、(ステロイダーのアレックス・ロドリゲスの3000本をあえて無視することにして)、次の3000安打達成者は、なんと2010年代後半にならないと出現しないことになる。

NY Times 2011年6月予測
After Jeter Reaches 3,000 Hits, Who's Likely Next? - NYTimes.com

Hardballtalk 2011年7月予測
Who will be next to reach 3,000 hits? | HardballTalk

SB Nation 2012年2月予測
Which Players Will Join The 3,000-Hit Club? - Baseball Nation



このブログでも、3000安打達成の可能性がある現役選手を予測してみることにした。

まず、「現在の年齢」や「これまでのキャリアにおける、1シーズンあたりのヒット本数」などを考慮して、候補者リストを作ってみる。
本来なら、「38歳以降に顕著になることが多い、年齢からくる衰え」と、それによる「プレータイムの減少」をあらかじめ考慮して候補者を選ぶべきだろうが、それでは候補者がいきなり少なくなり過ぎてつまらない(笑)
だから、最初はあえて「38歳以降も、それまでのシーズン平均ヒット数くらいは打てる」との甘い想定から候補選手を選んだ。(それでも大多数の選手は候補リストから脱落する)


3000安打達成 候補選手名
(カッコ内は 年数/年齢/通算安打数/年平均安打数)

Derek Jeter (18年 38歳 3296本 180本/年)達成済
----------------------------------------------
Alex Rodriguez  (19 36 2894 186)ステロイダー
Omar Vizquel   (24 45 2876 157)出場機会減
Ivan Rodriguez (21 40 2844 181)引退
Johnny Damon  (18, 38) 2769 154 出場機会減
Chipper Jones  (19, 40) 2724 142 引退予定
Ichiro Suzuki   (12 38 2597 213)
Albert Pujols   (12 32 2241 183)
Michael Young  (13 35 2224 168)年齢に問題
Adrian Beltre   (15 33 2218 145)
Paul Konerko   (16 36 2177 165)年齢に問題
Juan Pierre    (13 34 2140 176)
Carlos Beltran  (15 35 2058 136)ペース遅い
Jimmy Rollins   (13 33 2020 152)ペース遅い
Miguel Cabrera  (10 29 1773 175)
Carl Crawford  (11 30 1642 149)トミージョン手術
Mark Teixeira   (10 32 1579 157) ケガがち


次に、上の候補者リストから、出場機会の少なさと年齢による衰えから3000本達成が困難そうな選手(ジョニー・デーモン、オマル・ビスケール)、達成ペースが明らかに遅くて引退までに達成できなさそうな選手(カルロス・ベルトラン、ジミー・ロリンズ)、怪我の多すぎる選手(カール・クロフォード、マーク・テシェイラ)、達成時の年齢が高すぎる選手(マイケル・ヤング、ポール・コネルコ)など、年齢を厳しめに考慮して、候補から外していく。
(マイケル・ヤングは、明らかに3000安打に値する才能のある選手で、大好きな選手でもあるだけに、非常に迷った。だが、候補から外した。彼はもしかすると近い将来、移籍してプレータイムを確保することが必要になる時代が来るかもしれない。もしそうなったら、テキサスをこよなく愛する選手だけに、進路に非常に迷うことだろう。今から彼のことをとても心配している)


次に、候補リストから、最終的に3000安打達成の可能性がかなり高いと思える選手のみを抜き出して、達成予想年度順に並べてみる。
日本人イチロー。ドミニカ人であるプーホールズ、ベルトレ。ベネズエラ人のミゲル・カブレラ。アメリカ以外の選手ばかりなことが、最近のMLBにおけるアメリカ人プレーヤー、特に白人プレーヤーの地位低下を如実に表わしている。
ピエールはアラバマ州出身のアフリカ系アメリカ人。彼の達成予測年齢は「39歳」と高いわけだが、アベレージヒッタータイプなだけに3000安打達成の可能性は残る、とみた。ベルトレの達成時の年齢もちょっと高すぎるとは思うが、「アーリントンのような打者有利球場でプレーし続ける」なら、なんとか達成にこぎつけることができるかもしれない、と考えた。

次の3000安打達成者予測
(カッコ内は達成時の年齢)

2013
2014
2015 イチロー(41歳)
2016
2017 プーホールズ(37歳)、ピエール(39歳)他
2018 ベルトレ(38歳)
2019 ミゲル・カブレラ(36歳)


こうして並べてみると、2010年代中期に3000安打を達成できそうな打者は、イチロー、ただひとりしかいない

そしてもうひとつ、わかることがある。それは
実は、今の若いバッターで、3000安打という大記録に手が届ききそうな選手は、アルバート・プーホールズやミゲル・カブレラのような天才バッターを除くと、他には全くといっていいほど見当たらない
ということだ。

つまり、若ければ3000安打を達成できる、というものでもない、ということ。


前にも書いたことだが、3000安打という記録を「不世出の大記録」のひとつだと断言できるのは、この記録が、メジャーデビュー直後から引退の間際まで、ずっとハイペースでヒットを打ち続けらなければ達成できない大記録だからだ。しかも、大きな怪我による長期休養は許されない。
Damejima's HARDBALL:2011年9月26日、3000安打を達成する方法(1) 4打数1安打ではなぜ達成不可能なのか。達成可能な選手は、実はキャリア序盤に既に振り分けが終わってしまうのが、3000安打という偉業。

Damejima's HARDBALL:2011年9月28日、3000安打を達成する方法(2) 3000安打達成者の「3つのタイプ」

いまの20代後半のバッターには、そうした「デビュー直後から天才バッターであり、なおかつ、怪我による長期休養の非常に少ない健康なバッター」は、ほとんど見あたらない。
たとえ今年の新人王がほぼ間違いないLAAのマイク・トラウトが将来3000安打を達成するとしても、それは、今シーズンの驚異的な打撃成績を、大きな怪我なしに、あと17シーズン連続で達成しなければならない。それでも彼の3000本達成は、2020年以降どころか、2030年以降と、はるか遠い将来の話になってしまう。


しつこいようだが、こんな大記録は、ほんの一部の、限られた天才にしか達成できないのだ。
したがって、「天才が出現しない時代」には、当然ながら3000安打達成者も出現しないのである。勘違いしている人が多いが、3000安打という大記録の達成者は、毎年のように必ず出現するわけではない。これだけの大天才が一堂に会して野球をやっている時代が、いつでもあったわけではないのだ。

今後の3000安打達成予報としては、2010年代後半にプーホールズ、ベルトレ、カブレラなどが達成したとして、それ以降は、3000安打達成者がまったく出現しない時代が長く続く可能性は、非常に高いと思っている。


だからこそ、MLBプレーヤーの長期的な質的変化傾向からみて、2010年代中期に向けて、大記録達成のニュースが枯渇していくと予測されるMLBにおいて、そのときのイチロー所属球団がどこになるかわからない今の時点で言わせてもらうなら、ヤンキース移籍による復活によって、2015年頃の達成が予測される「イチローの3000安打」と、それに向かってヒット数を伸ばしていく今後数シーズンのイチローの達成プロセスは、彼の所属球団にとって「非常においしい価値がある」と断言できる。
イチローのヤンキース移籍による復活劇は、MLBに関わるたくさんの人にとってはもちろん、このところ様々な軋轢でなにかと疲弊しがちな日本人にとっても、非常にポジティブな意味を持っている。


3000安打達成者の「打数と安打数の関係」の
タイプ分類

3000安打達成者の打数と安打数の関係 3タイプ分類(修正)

3000安打達成者の打席数と安打数の関係
3000安打達成者の打席数と安打数


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