March 04, 2013

第3回WBC 1st Round
日本対ブラジル戦
球審Chris Guccioneのストライクゾーン
Chris Guccioneのストライクゾーン

第3回WBC 1st Round
日本対中国戦
球審Gerry Davisのストライクゾーン
Gerry Davisのストライクゾーン

(上の図で、赤い線は「ルールブック上のストライクゾーン」。青い線が「そのアンパイアのゾーン」だ。あくまで、それぞれのアンパイアの過去の判定結果を集計したデータからみたストライクゾーンの判定傾向である。実際の個々のゲームでは、「過去に低めを広くとる傾向にあったアンパイア」が、その日に限っては低めが辛い、なんてことも、よくある)


2人のMLBアンパイアに共通していえることは、「ストライクゾーンが狭いこと」だ。
(なお、この2人は「信頼性が非常に高いアンパイア」でもある。信頼性の高さとゾーンの狭さは、直接関係ない。ゾーンの狭いアンパイアほど信頼性が高いわけではない)


1974年生まれと若いChris Guccioneだが、少し前の彼のゾーンデータは「全体として、やや狭め。ただし、高めだけは少しだけ広い」ということになっている。
これは、正確無比な判定で知られ、ポストシーズンなど重要ゲームを任されることも多いMLBのアンパイアの重鎮のひとり、Jeff Kelloggのゾーンと、もう瓜二つといっていいくらい、似ている。また近年評価が高まっていて、2011年にはアンパイア界の重鎮のひとりであるGerry Davisのクルーに加わったAngel Hernandezも、似たタイプのゾーンを持っている。

ひとくちに「ゾーン全体が狭めなアンパイア」といえども、いくつかのタイプがあり、アンパイアごとに個人差もある。
高めの判定の違いだけに注目して比較すれば、「全体が狭いが、高めだけは多少広い」、Kellogg、Guccione、Hernandez、Cousinsなどのタイプと、「全体に狭いし、高めもとらない」、Davis、Chad Fairchild、Tim McClelland、Paul Schrieberのようなタイプに分かれる。
ブラジル戦の球審Chris Guccioneは前者で、「全体に狭めだが、高めだけは広め」。中国戦の球審Gerry Davisは後者であり、「全体に狭く、高めもとらないが、低めだけは例外的に広め」、ということになる。

こうした事前データから、これらの球審がさばく2つのゲームで、投手と打者が意識しておくべきポイントは、次のような点だった。

「ゾーンが全体として狭めだ」という意識が必要。

四球が出やすい。特に投手がきわどいところを突こうとし過ぎると、四球連発で大量失点に繋がることが多々ある。

ゾーンの左右は狭い。よって、打者が内外の難しい球に無理に手を出す必要は、ほとんど無い。
(特に右バッターのアウトコース)

打者が「高め」「低め」に手を出すべきかどうかは、球審とイニングしだいで判断。


ブラジル戦の球審Chris Guccione
日本の投打との関係


さて、上に書いたまとめから、以下のブラジル戦に関するツイートの意味は、詳しく説明するまでもなく、ハッキリするはずだ。

打つほうでいうと、早いカウントで、内外のきわどい球を無理に打つ必要は全くなく、ボールを見極めてさえいけば、割と簡単に四球が獲得できる可能性が、どの打者にも、常にあった。特に、右バッターがアウトローのコーナーに逃げていくスライダーに無理に手を出す必要は、全く無かったはず。(例えば坂本や長野の凡打)
投げるほうは、打者とは逆で、(日本のキャッチャーに非常にありがちなリードだが)アウトローのコーナーいっぱいを突くきわどい球でストライクをとろうとばかりすると、球審にボール判定を連発されて、投手のリズムも配球プランも両方崩れて、四球連発で試合を壊してをしまうことになりかねない。(例えば杉内の2イニング目)
実際、ブラジルのバッターの何人かは、外のスライダーをあえて見逃し、低めがストライクにならないことに日本側の投手がイライラし、焦れて高めに浮かせてくる球をヒットにしていた。




ブラジルは、遅い球の無い田中将の主力武器である「ストレート」、杉内の決め球「スライダー」と、その投手が多投してくるのがわかりきっている球種に、最初から狙いを定めてバッティングして、功を奏していた。
もちろん、それができたのは、ブラジルチームに日本野球経験者が多く、日本の投手の情報が十分に活用されてもいたからだ。

ツイートで、日本のキャッチャーについて「阿部がふさわしい」と言ったのは、ブラジル戦で7回までマスクをかぶっていた相川捕手は、「その投手の最もいい球を投げさせる」「低めに集める」という原則にとらわれすぎている、と思うからだ。
相川捕手は、自軍投手とのコミュニケーションにばかり気をとられて、対戦しているブラジル側打者が「日本の投手それぞれの最もいい球に狙いを絞って打席に入っている」こと、そして「早いカウントから、その狙い球をスイングしてきていること」に、球審が低めをとらないタイプであることに、ほとんど気がつかないでいた、と思う。

逆に、8回からマスクをかぶった阿部捕手は、球審にストライクをとってもらいやすい高めの球を上手に使えていた。例えば、能見投手のフォークだが、これも、よくある「低めにはずれて、空振りさせるフォーク」ではなくて、このゲームで投げたのは「見逃しストライクになるフォーク」だった。
もし、よくある「低めの、ワンバウンドするような、振らせるフォーク」だったなら、もし打者に見逃された場合、この球審は低めをとらないタイプだから、間違いなく「ボール」判定されていた。もちろん、外国の打者は早いカウントでストレート系を狙うことが多い、ということもある。
それにしても、よくまぁ、好打者の初球に、真ん中のフォークを投げさせるものだ。能見投手の技術の確かさ、阿部捕手のサインを出す度胸には、感心するしかない。



中国戦の球審Gerry Davis
日本の投打との関係


球審Gerry Davisは、1953年生まれの60歳のヴェテラン。
同じゾーンの狭いタイプの球審でも、高めはとってくれたブラジル戦の球審Guccioneとは違って、「高め」はとらない。加えて、もっと大事なことは、この記事の最初に挙げた図からわかるように、左右のゾーンが非常に狭い

実際、ゲームを見ていた人は、前田健太投手のキレのあるストレートが、左右のバッターのアウトコース一杯、あるいは右バッターのインコースに、『ズバッと決まった』と見えたのに、球審にあっさりボール判定され、マエケンが「えっ?」っと驚いた表情を浮かべるシーンを、かなりの回数見たはず。
もしそこで、かつてダメ捕手城島がやり続けた馬鹿リードのように、アウトローぎりぎりに投げさせることに無理矢理こだわり続ければ、逃げ道の無くなった投手は自滅するほかなくなる。


中国戦のマスクは、相川でなく、阿部が復帰している。これは大きかった。というのは、記憶力がよく柔軟性のある阿部捕手は、「球審が、コースぎりぎりのストレートを、ストライクとコールしないこと」に、早々と気づいたからだ。阿部はイニングを重ねるごとに、マエケンの主力球種をストレートではなく、スライダーなどの変化球に変えていった。

前の試合のブラジルは分析力のあるチームで、日本の投手それぞれの中心球種が何かを把握してゲームに臨んでいたし、アウトコースのボールになるスライダー(もっと正確にいえば、「きわどいが、球審にボールと判定されるスライダー」)を見逃すことができるバッターもいた。
だが、中国チームのバッターは、「この球審の場合、本来は見逃すべき、アウトコースのボール気味のスライダー」を投げても、やすやすと三振がとれた。これは中国チームの選手個人個人の野球センスの無さでもあるし、またチームとしてのスカウティング能力の無さでもある。



中国にない日本の野球史の長さを表わすこんなシーンがある。日本がようやく中国を突き離しにかかった5回裏、元メジャーリーガー、松井稼頭央が、フルカウントからの極めてきわどい外のストレートをあえて見逃して、貴重な四球を選んだシーンだ。
これは高度な選球眼が要求されるし、試合の流れをずっと追いかけて頭に入れて打席に入っていないとできないファインプレーだと思う。
マエケンのゲーム序盤の投球では、松井が四球を選んだような「アウトコースぎりぎり」の、それも「ストレート」は、大半がボール判定になっていた。
もし松井稼頭央が、このアウトコースのきわどい球に無理に手を出して凡退し、打線の繋がりが切れていたら、その後の大量点はどうなっていたか。地味に見えるかもしれないが、明らかにファインプレー。さすが松井稼頭央、さすがベテランとしか、言いようがない。


ちなみに、この中国戦の球審Gerry Davisが、そんじょそこらの「球場の雰囲気に左右されて、肝心の判定基準がフラフラと変わる」ような、ボンクラなアンパイアではないことは、この「松井稼頭央の四球」でも、よくわかる。
この1球の判定は、ただでさえ「アウトコース一杯」の難しい判定であるばかりでなく、この判定の結果で、打者松井が三振になるか、四球になるかが決まり、さらに、このイニングが、どのくらい日本のチャンス、中国のピンチになるかが決まる「重い」判定でもある。
もしここで、それまで重ねてきた「ボール」判定ではなく、突如として、この球だけに限って「ストライク」とコールしてしまうような「判定の揺らぎ」があれば、それこそゲームが混乱する大きな原因になる。

ボールなものは、ボール。
どんなにきわどい場面であろうと、なかろうと、変わらず自分の主張、自分のストライクゾーンを貫き通してくれるGerry Davisは素晴らしいアンパイアだ。


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