March 17, 2013

カリブ海ベースボール文化圏

日本以外の2013WBCの4強は、ドミニカプエルトリコ、カリブ海に浮かぶキュラソー出身者を中心に構成されるオランダと、実質的にカリブの国々が占めたおかげで、日頃は日本のプロ野球しか見ない方々の間に、カリブ海沿岸国のプレーヤーたちが、いかに今のMLBで重要な位置を占めているかについて、知れ渡ったのではないかと思う。


こういう状況を説明するとき、中南米諸国出身者を指して、「ヒスパニック」「ラテン系」という言葉がよく使われるわけだが、ほかに「カリビアン」という、音楽的な響きに溢れた言葉があるのに、あまり使われないのは残念だ。


現在MLBでは、アフリカ系アメリカ人プレーヤーが減少傾向にある。
原因としてよく言われるのは、「MLBへの人材供給源であるアメリカのカレッジベースボールにおけるスカラシップ(=奨学金)支給額が、あまりに少なすぎるために、身体能力の高いアフリカ系アメリカ人プレーヤーがバスケットやフットボールなど、スカラシップの多い競技に流れてしまっている」という経済的な観点の説明だ。
だが、これまで「父親とベースボール」シリーズを含め、いくつかの記事で20世紀のアメリカ社会の変遷を描いてきた記事でわかるように、コミュニティ崩壊や南部回帰など、アフリカ系アメリカ人社会の変化は、金銭的な理由だけでは説明できない。大学スポーツにだけ起きている変化なら奨学金で説明がつくが、変化ははるかに広範囲に起きている。
Damejima's HARDBALL:「父親とベースボール」 MLBの人種構成の変化
こうしたMLBを取り巻く変化は、もちろん2013WBCの結果にも少なからず反映されており、残念ながらその影響はWBCアメリカ代表の相対的な弱体化傾向にも繋がっているといわざるをえない。


アフリカ系アメリカ人選手が減少する一方、増加の一途をたどってきたのは、ドミニカベネズエラ出身の選手たちだ。彼らは数だけでなく、質の高さにおいても群を抜きつつあり、メジャーリーガーを構成する人種地図は確実に塗り替えられつつある。
背景には、目先のきくMLBチームがアメリカ以外の国に育成組織を置き、現地での選手の発掘・育成を行いつつ、有望選手と安価にマイナー契約を結んで、メジャーで通用する人材を育て上げるといった、選手育成手法の変化がある。
例えば2013年MLBドラフトでは1位指名が高校生に集中し、大学生の指名が少なかったが、その理由は、単に今シーズン大学に有望選手数が少なかったということではなくて、おそらくアメリカ国内の大学卒業選手に対するメジャー側の期待度が年々下がっているということがあると、個人的には思っている。


ポジション別にいうと、かつてはカリビアンのメジャーリーガーというと、キャッチャー、ショート、パワー系ヒッターなどが伝統的に多く、逆に、投手は少ない、などと言われてきたものだが、今は違う。先発から、セットアッパー、リーグを代表するクローザーに至るまで、投手部門でも優秀な選手が出ている。
とりわけ、MLBで人材不足が著しいクローザーは、いまやカリビアンだらけである。
フェルナンド・ロドニー、ホセ・バルベルデ、カルロス・マーモル、ラファエル・ソリアーノ(以上ドミニカ)、フランシスコ・ロドリゲス、ラファエル・ベタンコート(以上ベネズエラ)、ホアキム・ソリア、アルフレッド・アセベス(以上メキシコ)、マリアーノ・リベラ(パナマ)、アロルディス・チャップマン(キューバ)、エルネスト・フリエリ(コロンビア)etc.
カリビアン系のクローザーはいまや、MLBに不可欠なのだ。(ちなみに2012ワールドシリーズを制したサンフランシスコのクローザー、セルジオ・ロモにしても、メキシコ移民二世)
Damejima's HARDBALL:2012年11月10日 2012オクトーバー・ブック 投げたい球を投げて決勝タイムリーを打たれたフィル・コーク、三冠王の裏をかく配球で見事に見逃し三振にしとめたセルジオ・ロモ。配球に滲むスカウティングの差。


ウィンターリーグは、カリブのドミニカ、ベネズエラ、プエルトリコ、メキシコ、パナマ、5か国のプロの野球組織の総称で、パナマを除く4か国の優勝チームはカリビアンシリーズに出場し、カリブ海ナンバーワンを決定する。
Caribbean Series - Wikipedia, the free encyclopedia

Winter Leagues: Caribbean Series | MLB.com: Events


延長18回に及んだ2013カリビアンシリーズ・ファイナルを制したのは、18回表に元メジャーリーガーのDoug Clarkのソロホームランで挙げた虎の子の1点を守り抜いて強豪ドミニカを破ったメキシコのヤキス・デ・オブレゴン(2度目の優勝)だ。

2013WBC本戦が始まるにあたって、日本のマスメディアでは誰もカリビアン・シリーズのことなど報道しようとしないものだから、カリビアン・ベースボールの情報に疎い野球ファンにしてみれば、1st Roundでアメリカを苦しめたメキシコの健闘ぶりが、まるでトーナメントにありがちな「マグレ」のように思われていたかもしれない。
だが、よくよく情報が与えられていれば、今年のカリビアン・シリーズでメキシコが、いまやMLBの寵児となっているドミニカとすら対等に近いところまで渡り合ったことがわかり、2013WBC本戦で強豪と対戦しても、好勝負になるだろうということ、ベネズエラあたりが相手なら軽く一蹴してしまいかねないことは、想像がついたはずだ。
2013 Caribbean Series - Wikipedia, the free encyclopedia

MLB.com At Bat | MLB.com: Gameday



これはアメリカのコロラド州に住んでいるとプロフィールに書かれている野球ファン(彼がカリビアンかどうかまではわからない)が、テレビ画面を家庭用ビデオで撮影してYoutubeにアップしてくれている2013年カリビアンシリーズのファイナルの様子だ。
動画の9分30秒過ぎ、試合が決まった瞬間に、興奮した観客が怒涛のごとくグラウンドになだれこんで、ルチャ・リブレよろしく飛び跳ねながら選手と抱き合ってソンブレロの乱れ飛ぶリアル過ぎる姿(笑)が映っている。
そりゃ、WBCもなにも、2月初旬に終わるカリビアンシリーズで既にこれだけの熱い戦いをしておいて、それからWBC本戦に来てるんだから、カリビアンが4強に残るのはしょうがないわけだ(苦笑)

もちろん映像としての完成度は低いし、お洒落でもない。
だが、そんなどうでもいい細かいことよりも、むしろ、日頃は日本国内野球だけを楽しんでいる人に確かめてもらえればと思うのは、地球上には、真冬の日本のちょうど裏側で、スペイン語放送(この場合はESPN)で、メキシコ対ドミニカなんていう組み合わせのゲームを見て、スペイン語で興奮している熱い人たちが、こんなにもたくさんいるという事実だ。

テレビ画面を映しただけの粗い映像ではあるが、かえって、わからない言葉で興奮している人たちを眺めることで、「同じベースボールといっても、言語が違うだけで、こんなにも響きやリズムが違うもんなんだな・・・。同じスポーツか?(笑)」と、「強い酒を飲みながら、ちょっと蒸し暑い音楽を聞くみたいな感覚」が伝わってくるのが、なんともたまらなくいい、と思うのだが、どうだろう(笑)


それこそ東京スタジアムではないが、大昔の映像を見ると、昔の日本野球でも、チームの優勝が決まった瞬間に観客がグラウンドになだれこむ、なんてシーンがあった。
もちろん、もし今のMLBでそんなことがあったら、安全面で非常に問題だし、運営管理上のありえない大失態なわけだが、逆にいうと、こうした昭和っぽい出来事が今でも現実に行われている「カリビアン・ベースボール」が今、いかに「熱い音色で鳴っているか」、とてもよくわかる映像だと思うのだ。



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