March 16, 2013

なんでまた、WBCなんてものをやっているのか。
WBCの「大会としての開催意義」についてのコメントや意見は数限りなく見てきた。だが、なるほど、と思わせてくれるような、説得力のあるコメントには一度も出会ってこなかった。


だが、嬉しいことに、初めて「なるほど」と簡潔に説明できていると思うコメントに出会った。MLB関連サイトの老舗、Hardball Timesの寄稿者のひとり、Dan Lependorfの以下の文章である。

The WBC isn’t designed to crown the best baseball country in the world. The WBC’s value lies in its ability to foster the growth of international baseball like no other event can.
「WBCは、どの国の野球が世界最高なのかを決め、栄誉を授ける目的でデザインされてはいない。WBCの価値とは、世界の野球の成長を育むことにある。それは、他のどんなイベントでも達成することができない。」
Hardball Times : Defending the World Baseball Classic

なるほどねぇ。 "foster" ね。さすが、Hardball Timesである。(Fosterとは、「フォスター・ペアレント」という言葉で使われるのと同じ「育てる」という意味だ)
ブログ主は、上の言葉の意図を自分なりにもっと明確にして、さらに明確な100パーセントに近い表現にしておく意味で、以下のようにさらに書き換えをこころみた。

WBCは、世界各国の野球が、それぞれの国で、いまどこまで成長したかを確かめるためにある。


たしかに敗退国はWBCのオモテ舞台から姿を消していく。

だが、WBCの目的が「優勝国を決めること」にあるのではなく「各国の野球の成長ぶりをたしかめること」とハッキリ意識して、これまでの対戦カードの意味を見なおしてみれば、景色はまるで違って見えてくる。

説明するまでもなく日本チームには優勝してもらいたいわけだが、WBC3連覇に燃えるその日本が、世界ランキング20位のブラジルに苦戦させられたこと、それこそが「WBC」、なのだ。ランキング11位のメキシコがアメリカを苦しめ、9位のイタリアがドミニカやプエルトリコを苦しめ、7位のオランダがキューバ、韓国を敗退に追いやったことが、WBCでしか確かめることのできない「世界野球のめざましい成長ぶり」なのだ。
穀物農家が穂を手にとって発育を確かめるように、アメリカや日本も含め、それぞれの国々での野球の育ち方がハッキリと確かめられること。これが「WBCを開催することの意味」なのだ。

もういちどしっかり書いておこう。

「WBCは、各国の野球の成長をたしかめるためにある」

勘違いしてもらっても困るのだが、これは、なにもオリンピックでよく言われる「参加することに意義がある」的な不明瞭なスポーツマンシップから言うのではない。
あくまで純粋に、野球というスポーツの種をまいた畑の成長を計測するマーチャンダイズの観点で言っているのである。そういう意味では、WBCという大会の基本的な性格は、オリンピックとは異なっているし、異なっていてまったく構わないし、また、異なっていてもらいたい。

よく、「WBCは世界最高のリーグであるMLBに有望選手を刈り取るための大会」だのと得意気に発言して、WBCを揶揄できているつもりになっているわけのわからない人を見かけることがある。また、「どこどこの国はベストメンバーではない」からどうとか、こうとか、どうでもいいことを指摘して得意気な人もしばしば見かける。
何をあたり前のことを、としか言いようがない(笑) 国際大会での活躍が認められて、そのスポーツの世界最高のリーグに招かれるなんてことは、あらゆるスポーツにある。ファン目線からいっても、WBCで最高のパフォーマンスを見せてくれた選手たちのプレーをもっと見てみたいと思うのは、当然の話だ。問題があるはずもない。


ちなみに、最初に挙げたコメントを書いたDan Lependorfは、もともとAthletics Nationというブログのライターだった。

Athletics Nationは、オークランドでTyler Bleszinskiが運営する地域限定のブログだったが、Bleszinskiは「ブログのネットワーク化」を目指して、他の有力スポーツブログとの提携をすすめ、新たに "SB nation" を設立し、社長になった。SBとは、 Sports Blog の意味だ。

この「ブログのネットワーク化」に成功したサイトといえば、他に、SB nationのライバルBreacher Reportがあるが、これらは、ESPNやFOX、CBS、スポーツ・イラストレイテッドなどの全米メディアが新聞雑誌テレビといったマス・メディア出身であるのと違って、いわば「たくさんのサイトが集合したブログ合衆国」、「クラウド・メディア」ともいえる草の根的スポーツメディアだ。提携サイトは、トップページを共同で利用するが、それぞれの記事の構成や執筆は、それぞれのサイトが独自に行う。
日本ではこうした組織が簡単に資金調達できるとも思えないが、アメリカではこうしたクラウド的なスポーツメディアに投資するファンドなどがあるため、運営には少なからぬ資金が投入されている。
資料:AOLの前幹部、スポーツ・ブログ・ネットワークのために資金調達 | TechCrunch Japan


最初に挙げた引用の元記事は、よく読むと実は、Athletics Nationというブログ出身のDan Lependorfが、FOXの有名ライターJon MorosiのWBCに関する意見が二転三転していることを批判するのが本来の主旨。
かたやLependorfが、クラウド的なブログ・ネットワークの創始者Athletics Nationの出身、かたやJon Morosiがもともと新聞系の出身で、いわゆる旧来のマス・メディアであるFOXのライターであることを知ってから読むと、またひと味違った味わいがある。
Jon Paul Morosi - FOX Sports on MSN | FOX Sports on MSN


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