July 06, 2013
ボルチモア第1戦は、イヴァン・ノヴァが、リードされている気楽さもあって、ゲーム後半に素晴らしいピッチングをみせ、ヤンキースがサヨナラ勝ちした。
このゲームの収穫は、大雑把なピッチングしかできなさそうに思われていたノヴァが、なんと「スカウティングどおりのピッチングでボルチモアの強力打線を封じ込めた」をみせたことだ。これは非常に大きい。(先制点を与えなければ100点満点だった)
今日のノヴァのクレバーさは、例えば、「アウトコースマニア」のマニー・マチャドに対して、彼の得意でないインコースでうちとるか、そうでない場合でも、まず初球にインコースを見せておいてからアウトコースを投げていることだ。「なにがなんでも最初から最後までアウトローのスライダー連投」などという馬鹿な配球は、今日のノヴァは一度もやってない。
Baltimore Orioles at New York Yankees - July 5, 2013 | MLB.com Classic
1回表 レフトライナー
9回表 ショートゴロ
MLBの先発ピッチャーは、サンフランシスコ、オークランド、ボストンなど、データ活用のうまいチームならば、クローザーも含め、ピッチャーが細かなスカウティングデータ通りに打者の弱点を効果的に攻めてくることも少なくない。
だが、たいていのチームの場合は、「そのピッチャーがもっている『非常に狭い、ワンパターンな配球パターン』どおりにしか投げようとしないし、投げられもしない。そもそも、打者ごとに柔軟に配球を変えて投げられる器用さ自体を、もともと持ち合わせていない」ことがほとんどだ。
だから、ゲームを見ていると、弱いチームに限って「なんで、このバッターの最も得意なコースに投げるのかね?」と首をひねるシーンを、イヤというほど見せられる。
ヤンキースはどうか。
ヤンキースの大半のピッチャーは、残念なことに、「バッターのスカウティングと無関係に、自分の投げたい球を投げている」、そういうチームだ。(「スカウティングどおりに投げる能力」がないのではない。そういう「能力」自体はあるのに、実行してない)
だから、「このバッターに、なぜその球種、そのコースに投げてしまうのか?」とイライラする場面がけして少なくない。
この傾向は、野手に怪我人が大量に出て、投手陣の頑張りで貯金を作ってきたといわれることの多い2013シーズンであっても、別にかわりない。
これだけ貧打の状態でも勝率が5割を割らないのは、上位打線の3人、ガードナー、イチロー、カノーが踏ん張っていること、もともとレベルの高い持ち球を持っている先発投手をそろえているから、だけであって、もしヤンキースの投手陣の配球がもっとテクニカルなものだったら(あるいはキャッチャーのサインがもっとクレバーだったら)勝てる試合はもっとあったし、勝率はこんなに低くない。
例えば、ボルチモアの伸び盛りの2番打者、マニー・マチャドは、ESPNのHot Zoneでもわかるとおり、「アウトコース、それも低めが、馬鹿みたいに強いバッター」だ。
これは、彼が打席の中でホームプレートから離れて立っていることから、バットを振らなくても最初から推定できた。例えば日本のプロ野球巨人の長野もその典型だが、インコースに苦手意識があるバッターというものは、えてしてプレートから離れて立って、強烈に踏み込んできて打ちたがるものだからだ。
マニー・マチャド
2013年全ゲーム 全投手・全球種・打率 Hot Zone
Manny Machado Hot Zones - ESPN
ヤンキースの右投手は、カウントが打者有利になったとか、強打者との対戦だとかいうと、すぐにビビッてしまい、まるで頭を使わずに、簡単に「右バッターのアウトローにスライダー」を投げてしまう。
これは右投手の悪いクセだ。
この、右投手のアウトローを狙い打ちすることでハイアベレージを挙げているのがわかりきっているマニー・マチャドに対してですら、「安易にアウトローのスライダーを投げてしまうような右投手」は、ハッキリ、「頭が悪い。馬鹿だ。」と言わせてもらう。
ちょっとはアタマを使え、と言いたくなる。
2013年直近30ゲーム
右投手・スライダー・長打 Hot Zone
ついでだから、マニー・マチャドの左投手に対するバッティング傾向も書いておこう。以下のデータを見ればわかるが、彼は、右投手のアウトローだけでなく、左投手のアウトローにも強い。一目瞭然だ。左投手でも、右投手と同様に、このアウトコース好きのバッターに、何の工夫もなくアウトローの球を投げてはいけない。
もちろん、右投手左投手それぞれに、「アウトコース好きのマニー・マチャドが、インコースを打てている球種」というのも、わずかながら存在する。「右投手のストレート」、「左投手のスライダー」が、それにあたる。これらの球種はインコースに投げても打たれる。
だが、それらは単に「例外」であって、投手があらかじめ「例外」として把握しておき、投げなければ何の問題も起きない。
マニー・マチャドのような「傾向のハッキリしている打者」に打たれるのを防ぐことは、どんな投手でもできる。それをしないのは、単に投手とチームの怠慢としかいいようがない。
2013直近30ゲーム 左投手・全球種・長打
2013全ゲーム 左投手・スピードボール・打率
2013全ゲーム 左投手・カーブ・打率
2013全ゲーム 左投手・チェンジアップ・打率
このゲームの収穫は、大雑把なピッチングしかできなさそうに思われていたノヴァが、なんと「スカウティングどおりのピッチングでボルチモアの強力打線を封じ込めた」をみせたことだ。これは非常に大きい。(先制点を与えなければ100点満点だった)
今日のノヴァのクレバーさは、例えば、「アウトコースマニア」のマニー・マチャドに対して、彼の得意でないインコースでうちとるか、そうでない場合でも、まず初球にインコースを見せておいてからアウトコースを投げていることだ。「なにがなんでも最初から最後までアウトローのスライダー連投」などという馬鹿な配球は、今日のノヴァは一度もやってない。
Baltimore Orioles at New York Yankees - July 5, 2013 | MLB.com Classic
インコースをしっかり突きまくっておけば、マチャドは別に怖くない。このバッターは踏み込んでアウトコース(特に速い球)を強振することしか考えてないから。ノバのカーブをひっかけるくらいだし。逃げなければならないのは、バットじゃなくて、「自分の恐怖心」だけ
— damejima (@damejima) July 6, 2013
1回表 レフトライナー
9回表 ショートゴロ
MLBの先発ピッチャーは、サンフランシスコ、オークランド、ボストンなど、データ活用のうまいチームならば、クローザーも含め、ピッチャーが細かなスカウティングデータ通りに打者の弱点を効果的に攻めてくることも少なくない。
だが、たいていのチームの場合は、「そのピッチャーがもっている『非常に狭い、ワンパターンな配球パターン』どおりにしか投げようとしないし、投げられもしない。そもそも、打者ごとに柔軟に配球を変えて投げられる器用さ自体を、もともと持ち合わせていない」ことがほとんどだ。
だから、ゲームを見ていると、弱いチームに限って「なんで、このバッターの最も得意なコースに投げるのかね?」と首をひねるシーンを、イヤというほど見せられる。
ヤンキースはどうか。
ヤンキースの大半のピッチャーは、残念なことに、「バッターのスカウティングと無関係に、自分の投げたい球を投げている」、そういうチームだ。(「スカウティングどおりに投げる能力」がないのではない。そういう「能力」自体はあるのに、実行してない)
だから、「このバッターに、なぜその球種、そのコースに投げてしまうのか?」とイライラする場面がけして少なくない。
この傾向は、野手に怪我人が大量に出て、投手陣の頑張りで貯金を作ってきたといわれることの多い2013シーズンであっても、別にかわりない。
これだけ貧打の状態でも勝率が5割を割らないのは、上位打線の3人、ガードナー、イチロー、カノーが踏ん張っていること、もともとレベルの高い持ち球を持っている先発投手をそろえているから、だけであって、もしヤンキースの投手陣の配球がもっとテクニカルなものだったら(あるいはキャッチャーのサインがもっとクレバーだったら)勝てる試合はもっとあったし、勝率はこんなに低くない。
例えば、ボルチモアの伸び盛りの2番打者、マニー・マチャドは、ESPNのHot Zoneでもわかるとおり、「アウトコース、それも低めが、馬鹿みたいに強いバッター」だ。
これは、彼が打席の中でホームプレートから離れて立っていることから、バットを振らなくても最初から推定できた。例えば日本のプロ野球巨人の長野もその典型だが、インコースに苦手意識があるバッターというものは、えてしてプレートから離れて立って、強烈に踏み込んできて打ちたがるものだからだ。
マニー・マチャド
2013年全ゲーム 全投手・全球種・打率 Hot Zone
Manny Machado Hot Zones - ESPN
ヤンキースの右投手は、カウントが打者有利になったとか、強打者との対戦だとかいうと、すぐにビビッてしまい、まるで頭を使わずに、簡単に「右バッターのアウトローにスライダー」を投げてしまう。
これは右投手の悪いクセだ。
この、右投手のアウトローを狙い打ちすることでハイアベレージを挙げているのがわかりきっているマニー・マチャドに対してですら、「安易にアウトローのスライダーを投げてしまうような右投手」は、ハッキリ、「頭が悪い。馬鹿だ。」と言わせてもらう。
ちょっとはアタマを使え、と言いたくなる。
2013年直近30ゲーム
右投手・スライダー・長打 Hot Zone
ついでだから、マニー・マチャドの左投手に対するバッティング傾向も書いておこう。以下のデータを見ればわかるが、彼は、右投手のアウトローだけでなく、左投手のアウトローにも強い。一目瞭然だ。左投手でも、右投手と同様に、このアウトコース好きのバッターに、何の工夫もなくアウトローの球を投げてはいけない。
もちろん、右投手左投手それぞれに、「アウトコース好きのマニー・マチャドが、インコースを打てている球種」というのも、わずかながら存在する。「右投手のストレート」、「左投手のスライダー」が、それにあたる。これらの球種はインコースに投げても打たれる。
だが、それらは単に「例外」であって、投手があらかじめ「例外」として把握しておき、投げなければ何の問題も起きない。
マニー・マチャドのような「傾向のハッキリしている打者」に打たれるのを防ぐことは、どんな投手でもできる。それをしないのは、単に投手とチームの怠慢としかいいようがない。
2013直近30ゲーム 左投手・全球種・長打
2013全ゲーム 左投手・スピードボール・打率
2013全ゲーム 左投手・カーブ・打率
2013全ゲーム 左投手・チェンジアップ・打率