August 02, 2013
イチローが7月29日タンパベイ戦で打った4安打に関連して、投手力によって首位争いに浮上したタンパベイでは、マイナーであるDurham Bullsで集中的に育て上げてきたピッチャーたちが「共通して、ストレートとチェンジアップを持ち球にしている」こと、そして「配球面でも、ストレートとチェンジアップ(またはカーブ)による緩急という、共通した特徴をもっている」ことを書いた。
Damejima's HARDBALL:2013年7月29日、タンパベイとヤンキースのマイナーの差。イチローが投手の宝庫タンパベイ・レイズから打った4安打。
トロピカーナで行われた7月31日のゲームで、アリゾナが、そのDurham Bulls育ちのジェレミー・ヘリクソン先発のタンパベイを、7-0という一方的スコアであっさり退治してみせたので、そのゲームの中身をちょっと確かめておきたくなった。
Arizona Diamondbacks at Tampa Bay Rays - July 31, 2013 | MLB.com Classic
以下に、このゲームで登板したタンパベイ投手のうち、Durham Bullsで育て上げられてきた生え抜き投手(または他チームでドラフトされたが、タンパベイでメジャーデビューした投手)がアリゾナに打たれたヒットの球種を箇条書きにしてみた。
ヘリクソンが「チェンジアップ」を打たれた2本の長打から生まれた序盤の失点が、このゲームの流れを決定づけているのが、なかなか面白い。(ジェイク・マギーは4シームで押すタイプ)
イチローは「チェンジアップをカットしながら粘り、最終的にタンパベイ投手陣が低めの4シームに頼るのを待って、4安打した」わけだが、アリゾナ打線はちょっと方針が違っていて、タンパベイ投手の特徴である「チェンジアップ」に焦点を絞って(特にジェレミー・ヘリクソンを)打ち崩しているわけだ。
1回表
プラド 二塁打
投手ヘリクソン
球種:チェンジアップ
3回表
チャベス 2ランHR
投手:ヘリクソン
球種:チェンジアップ
それにしても、興味深いのは、ヘリクソンがバッターに粘られても、粘られても、「徹底してストライクゾーン内で勝負しようとしていて、明らかなボール球を投げていないこと」だ。
これだけ様々な球種を、あらゆるカウントでストライクゾーンに投げられるできる能力は、タンパベイの誇る投手陣に共通する「コントロールの良さ」「基本性能の高さ」を示しているわけだが、これは同時に、彼らのある種の「融通の無さ」と、「ある種の弱点」を示してもいる。
イチローの4安打の記事でも、こんなことを書いた。
まぁ、これはあくまで想像でしかないが、ロジカルなデータ分析野球の大好きなタンパベイ監督ジョー・マドンとしては、ピッチャーの出す四球に代表されるような、「無意味なランナーを出して、自らピンチを招く行為」がとことん許せないのではないか、と思うのだ。
だからこそ、タンパベイでは、自軍のバッターには「たとえ低打率になっても構わないから、長打と四球を推奨するようなOPS的バッティング」を強要するのだろうし(その結果、貧打に陥っているわけだ)、逆に自軍の育てる投手陣に対しては「シングルヒットは構わない。だが、ホームランと四球だけは、なにがなんでも絶対に阻止しろ」というような「教育」を、マイナーで若い投手たちに徹底して教え込んでいるのではないか、と思うのだ。
だからこそ、アリゾナ戦もそうだが、対戦するバッターにしてみると、ある意味で「タンパベイ投手との対戦は楽だ」、といえる面が出てくる。
なぜって、ジョー・マドンの発明したロボットともいえるような「どこを切っても金太郎的な共通性」をもつ若いタンパベイ投手陣は、どんなカウントであっても、彼らがマイナーで鍛え上げられたコントロールの良さも手伝って、「打者に対して絶対に逃げ腰にならず、必ずストライクゾーン内で勝負してくれる」からだ。
これは、(能力のないバッターでは凡退の山を築いてしまうだろうが)才能あるバッターにしてみれば、ありがたいことだ。苦手な球種、打てそうになるコースをカットする技術さえあれば、「タンパベイの投手との対戦では、粘りこみさえすれば、ピッチャーはストライクを投げてくれるので、安心してバットを出せる」という面があるからだ。
野球という「駆け引きのスポーツ」では、投手はコントロールが良ければそれでいい、とか、ストライクゾーンで勝負していればそれで万能とか、いえるわけではない。いくらタンパベイにいい投手が揃っていても、対応策は必ずある。
Damejima's HARDBALL:2013年7月29日、タンパベイとヤンキースのマイナーの差。イチローが投手の宝庫タンパベイ・レイズから打った4安打。
トロピカーナで行われた7月31日のゲームで、アリゾナが、そのDurham Bulls育ちのジェレミー・ヘリクソン先発のタンパベイを、7-0という一方的スコアであっさり退治してみせたので、そのゲームの中身をちょっと確かめておきたくなった。
Arizona Diamondbacks at Tampa Bay Rays - July 31, 2013 | MLB.com Classic
以下に、このゲームで登板したタンパベイ投手のうち、Durham Bullsで育て上げられてきた生え抜き投手(または他チームでドラフトされたが、タンパベイでメジャーデビューした投手)がアリゾナに打たれたヒットの球種を箇条書きにしてみた。
投手:ジェレミー・ヘリクソン
チェンジアップ(二塁打)
カーブ
カットボール(タイムリー)
チェンジアップ(2ランHR)
チェンジアップ
4シーム
チェンジアップ
投手:アレックス・トーレス
チェンジアップ
投手:ジェイク・マギー
4シーム(タイムリー)
ヘリクソンが「チェンジアップ」を打たれた2本の長打から生まれた序盤の失点が、このゲームの流れを決定づけているのが、なかなか面白い。(ジェイク・マギーは4シームで押すタイプ)
イチローは「チェンジアップをカットしながら粘り、最終的にタンパベイ投手陣が低めの4シームに頼るのを待って、4安打した」わけだが、アリゾナ打線はちょっと方針が違っていて、タンパベイ投手の特徴である「チェンジアップ」に焦点を絞って(特にジェレミー・ヘリクソンを)打ち崩しているわけだ。
1回表
プラド 二塁打
投手ヘリクソン
球種:チェンジアップ
3回表
チャベス 2ランHR
投手:ヘリクソン
球種:チェンジアップ
それにしても、興味深いのは、ヘリクソンがバッターに粘られても、粘られても、「徹底してストライクゾーン内で勝負しようとしていて、明らかなボール球を投げていないこと」だ。
これだけ様々な球種を、あらゆるカウントでストライクゾーンに投げられるできる能力は、タンパベイの誇る投手陣に共通する「コントロールの良さ」「基本性能の高さ」を示しているわけだが、これは同時に、彼らのある種の「融通の無さ」と、「ある種の弱点」を示してもいる。
イチローの4安打の記事でも、こんなことを書いた。
ヤンキースのブルペン投手は「やたらとボール球のスライダーを振らせたがる」わけだが、どうやらタンパベイのピッチャーは「あくまでストライクを積極的にとりにいくピッチング」が信条のようだ。
まぁ、これはあくまで想像でしかないが、ロジカルなデータ分析野球の大好きなタンパベイ監督ジョー・マドンとしては、ピッチャーの出す四球に代表されるような、「無意味なランナーを出して、自らピンチを招く行為」がとことん許せないのではないか、と思うのだ。
だからこそ、タンパベイでは、自軍のバッターには「たとえ低打率になっても構わないから、長打と四球を推奨するようなOPS的バッティング」を強要するのだろうし(その結果、貧打に陥っているわけだ)、逆に自軍の育てる投手陣に対しては「シングルヒットは構わない。だが、ホームランと四球だけは、なにがなんでも絶対に阻止しろ」というような「教育」を、マイナーで若い投手たちに徹底して教え込んでいるのではないか、と思うのだ。
だからこそ、アリゾナ戦もそうだが、対戦するバッターにしてみると、ある意味で「タンパベイ投手との対戦は楽だ」、といえる面が出てくる。
なぜって、ジョー・マドンの発明したロボットともいえるような「どこを切っても金太郎的な共通性」をもつ若いタンパベイ投手陣は、どんなカウントであっても、彼らがマイナーで鍛え上げられたコントロールの良さも手伝って、「打者に対して絶対に逃げ腰にならず、必ずストライクゾーン内で勝負してくれる」からだ。
これは、(能力のないバッターでは凡退の山を築いてしまうだろうが)才能あるバッターにしてみれば、ありがたいことだ。苦手な球種、打てそうになるコースをカットする技術さえあれば、「タンパベイの投手との対戦では、粘りこみさえすれば、ピッチャーはストライクを投げてくれるので、安心してバットを出せる」という面があるからだ。
野球という「駆け引きのスポーツ」では、投手はコントロールが良ければそれでいい、とか、ストライクゾーンで勝負していればそれで万能とか、いえるわけではない。いくらタンパベイにいい投手が揃っていても、対応策は必ずある。