August 13, 2013

MLBのアンパイアの「ストライクゾーンにまつわる判定の是非」を後から議論するにあたっては、必ず理解していなくてはならないことが、いくつかある。

何度も書いてきたことだが、MLBのストライクゾーンは、「ルールブック上のストライクゾーン」ではなく、不文律としての「MLBにおける基本的なストライクゾーン」があって、さらには、「右バッターと左バッター、それぞれに異なる慣例的ストライクゾーンがある」のだ。
そして、困ったことに、最終判定に決定的な影響を及ぼすのは、ルールブックでも、バッターの左右で異なるMLBの基本ゾーンでもなくて、「球審ごとに存在する個人差」、つまり、「その球審だけに特有のストライクゾーン」だ。(そして、さらにやっかいなことに、同じ球審でもゲームごとに判定傾向が異なることは往々にしてある)

1)MLBにおける左打者、右打者それぞれの
  基本的なストライクゾーン
2)その球審特有のストライクゾーンのパターン
3)その日だけのストライクゾーンの傾向


ダルビッシュが登板し、ノーヒットノーランかと騒がれた今日のテキサス対ヒューストン戦の6回裏、ジョナサン・ヴィラーの打席の判定で、球審Ron Kulpaのボール判定を不服として抗議したキャッチャーのピアジンスキーが退場処分になったが、このRon Kulpaの判定を、「事後判定」してみることにする。

GameDay
Texas Rangers at Houston Astros - August 12, 2013 | MLB.com Classic

2013年8月12日TEX vs HOU 6回裏 Jonattan Villar

ピアジンスキーが問題にしたのは、4球目の「アウトコースのストレート」と、5球目の「真ん中低めのスライダー」だろう。2球続けて、きわどいコースではある。

これら2つの投球は、以下に挙げたPitch f/xデータで見る限り、「ボール」である。
その意味は2つある。「ルールブック上のストライクゾーンからみると、論議の余地の全くないボール」であり、また、「アウトコースが非常に広い、というMLBの慣例的な左バッターのストライクゾーンからみても、きわどいが、疑いなくボール」なのである。

BrooksBaseball Pitchf/x
BrooksBaseball.net: PITCHf/x Tool

2013年8月12日 TEX vs HOU 6回裏 Jonattan Villar PitchF/X


6回裏 Jonattan Villarへの「4球目」
BrooksBaseball.net: PITCHf/x Tool | Strikezone Maps
破線は、「MLBでの慣例的な左バッターのアウトコースのストライクゾーン」だが、4球目は、わずかにアウトコースに外れている
2013年8月12日 TEX vs HOU 6回裏 Villarの4球目


とはいえ、MLBでのストライク判定を決めるのは、最後は球審の「個人差」だ。
もし、球審Ron Kulpaが「左バッターのアウトコースが通常では考えられないほど広い球審」であるなら、問題の4球目が「ストライク判定」になっていた可能性はある。だから彼のこれまでの判定傾向を確かめないと、何もいえない。
ちなみに、左バッターのアウトコースにあたる「レフト側」が広い球審、というと、過去のデータ上、Derryl Cousins、Tim Timmons、Laz Diaz、Ed Hickox、Bill Miller、Bill Werke、Lance Barksdale、Doug Eddingsなどがいる。ただ、今回問題になった「4球目」をストライク判定するほどレフト側が広い球審は、そのうちでも半分足らず、3人か4人しかいない。

このゲームで球審をつとめたRon Kulpaの判定傾向はどうかというと、彼の過去の判定傾向によると、彼のレフト側のゾーンは確かに「広め」ではあるが、かといって、問題の4球目をストライク判定するほど、広くはない
また、この試合を通しての判定傾向は、左バッターのアウトコースを極端に広くとっていたわけではないし、また、6回裏のジョナサン・ヴィラーの打席に限って判定傾向が大きく変わった、とはいえない。
そして、彼はもともと判定の正確なアンパイアのひとりである。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2011年6月2日、まるで「記録達成」を阻止したいのかとでも疑りたくなるような、今シーズンのイチローに対するアウトコースのストライクゾーン。(1)

球審Ron Kulpaの例年の判定傾向
(元資料:Hardball Times)
赤い線:「ルールブック上のストライクゾーン」
青い線:「Ron Kulpaの判定傾向」

Ron Kulpaのストライクゾーン


ここまでの検証によって、今回の「Ron Kulpaの判定」に対する事後検定というか、二次的な判定は、「4球目」、「5球目」、いずれも、「ボール判定」でさしつかえない」、となる。ジョナサン・ヴィラーの4球目、5球目は、いずれも「ボール」だ。

ちなみに、スポーツにおける退場処分を専門に扱うユニークなサイト、Close Call Sportsがこの判定をどう判断したのか、確かめてみると、彼らはこのRon Kulpaの判定に関してcorrect、つまり、球審Ron Kulpaの判断が「正しい」と断定している。

Close Call Sportsによる判断
MLB Ejection 129: Ron Kulpa (1; AJ Pierzynski) | Close Call Sports and the Umpire Ejection Fantasy League


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